死にたがりの少女 〜 夕空を見上げる

あらき恵実

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8.

愛し方がわからないという人は……

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チリンチリン、とどこかから音がする。
耳に涼しくて、美しい音。
でも、ガラス細工みたいに、壊れやすそうなものを思わせる音。

私たちは、夜の公園にいて、
お腹をすかせていた。
食べるものも、お金もなかった。

時間だけがたくさんあった。
夜空の星みたいに、たくさん。

私たちは、空腹を意識しないように、ずっと話をしていた。

私はレンにさくら園で飼っていた金魚の話をした。
さくら園には、赤い金魚が二匹、黒いデメキンが一匹いた。三匹とも、尾ひれをひらひらさせて泳ぐ姿がきれいだった。

金魚のエサは、エサ係の子供があげていた。エサ係は毎日かわる。誰がその日のエサ係なのかは、食堂のホワイトボードに書かれていた。
「本日のエサ係 ◯◯さん」と。

私はエサ係の仕事を丸一日忘れていたことがある。
朝寝坊して、しかも学校で嫌なことがあったのだ。私は自分のことで頭がいっぱいで、金魚のことなんて、さっぱり忘れていた。
その日、私は夜間にトイレに起きた。
トイレからの帰り、食堂の前を通過して、エサをあげ忘れていたことをようやく思い出した。

忘れていた!
金魚が死んでいたらどうしよう!

すぐに金魚の様子を確認してあげたら良かったのに、私は自分の失敗が他の子供や先生に知れるのが怖くて、走って自分の部屋に戻った。

次の日の朝、金魚は弱っている様子もなく、金魚鉢の中をクルクルと舞っていた。
私は、ホッとしたのと同時に、エサをあげていないと気がついた時に、エサをあげなかったことを後めたく思った。前日、金魚はいったいどんな気持ちで過ごしていたんだろう。
金魚は空腹を感じるのだろうか。
もし、感じるなら、かわいそうなことをした。
空腹で、空腹で、しかも、鉢から逃げ出すこともできないでーー。

チリンチリン、と音がする。
空腹をこらえながら耳をすます。

「なんの音かな」

音がする方に目を向けると、公園を囲む塀のそばに屋台が立っているのが見えた。

「風鈴じゃないかな。屋台につるされているんだよ」

屋台は私たちに背中を向けていたので、なんの屋台なのかはわからなかった。
酔っ払ったサラリーマン風のおじさんが数人、屋台に近づいて行くのが見えた。屋台の物陰におじさんたちの姿が隠れた。その一、ニ分後、おじさんたちは紙袋を手に提げて、屋台の陰から姿を現した。

おじさんたちは公園の中へ歩いてきて、公園のゴミ箱のそばでタバコを吸った。
それから、また公園を出て行った。

じゃあ、まあ、帰りますか。
また、明日もがんばりますか。

そんなふうに言い合いながら。

酔っ払うと声が大きくなるのはどういうわけだろう。
静かな公園で,おじさんたちは必要以上ににぎやかにしゃべって、にぎやかに笑っていた。
酒とタバコの香りも、声に負けず強烈だった。

しかし、立ち去ると、そこに残ったのはほのかな甘いにおいだった。
おじさんが手に提げてブラブラさせていた紙袋から香っていたにおいだ。
どうやら、屋台の方からもうっすらと香っているみたいだった。

昔、さくら園で借りた絵本に、ふっくら焼いたホットケーキの挿絵が載っているものがあった。
私はその挿絵を見るたびに、焼きたてのホットケーキのにおいを想像した。

今かいでいるにおいは、ホットケーキの甘く優しいにおいにとても近かった。

卵と牛乳、お砂糖を使った生地。
焼きたての香ばしいにおい。

「ベビーカステラのにおいだね」
と、レンが言った。

私たちは、においにつられるようにベンチから離れ、屋台のそばに行った。

公園を出て、屋台の表側をのぞくと、
確かにそれはベビーカステラ屋さんだった。
そして、屋台の軒先には金魚の絵がついたガラス風鈴がつるされていた。

屋台の下に取り付けられた電球のこうこうとした明かり。
額にかいた汗を手の甲で拭いながら、丸いくぼみに生地の材料を流し込むおじさん。
焼けたベビーカステラをひっくり返す手つき。
クルックルッと見事にひっくり返す。

私たちはすることもなかったし、
しばらくおじさんの見事な手つきを眺めていた。
クルクル回されて、まんべんなくキツネ色に焼き上がったベビーカステラは、おじさんの手で二つの袋に詰められた。
それから、おじさんは前かけのポケットからハンカチを取り出した。手を拭いながら、私たちをチラリと見る。

おじさんは四角い輪郭をしていて、一重まぶたでムスッとしていた。
チリン、と風鈴が夜風に吹かれて鳴る。

なんだ、何を見てるんだ!
そんなふうに怒鳴られるんじゃないか。
あるいは、追い払われたりするのではないか。
そう思ったが、おじさんは私たちを見て、ムスッとしたまま手招きをした。

私たちは、顔を見合わせ、どうするか迷ったが、レンが、
「行ってみよう」
と言うので、私たちは恐る恐るおじさんの前へと歩いて行った。

おじさんは腕組みをして、私たちが歩みよってくるのを待っていた。
そして、私たちが屋台のすぐ目の前にまで来ると、
「お前ら、こんな時間に子供だけで何をしてるんだ?
帰らなくていいのか」
と聞いてきた。

私たちは二人で顔を見合わせた。
レンは、〝なんだ、説教か〟という顔をしていた。

「だんまりか」
と、おじさんが言う。

レンは私の手をひきながら、クルリとおじさんに背を向けた。私は手を引っ張られ、おじさんに肩を向けるような格好になった。

「答えなくていいよ。行こう」

レンがグイッと私の手をひく。
私はレンに手を引かれながら屋台をあとにした。

私たちの背後でチリンチリンと風鈴が鳴る。

私は歩きながら、チラリとおじさんに振り返った。
おじさんは悲しそうな顔をしていた。
なんとなくだけど、おじさんにも私たちぐらいの歳の子供がいるんじゃないかという気がした。

「おいっ!」

おじさんが私たちの背中に大きな声で呼びかけてきた。
私たちはその時、公園の門のそばにいた。
レンは私の手を引っ張りながら、公園に戻ろうとしていた。

「なんだよ!」

振り返ったレンは、おじさんに噛みつきそうなくらい怒った目をしていた。

「また説教か?!」

威嚇するように叫ぶ。

「これ、持ってけ!」

おじさんは、私たちにベビーカステラを二袋差し出した。

無骨な手に握られたその紙袋には、アニメのキャラクターのイラストが印刷されていて、ベビーカステラでパンパンに膨らんでいた。

公園のベンチに腰掛けて袋を開けると、甘いにおいが湯気とともに立ち上ってきた。
二人とも途端にお腹が鳴った。
二人で、それを黙々と食べた。
それは、焼きたてほかほかで、香ばしくて、甘くて幸福な味がした。

「おいしいね」
と二人で言った。
顔を見合わせて微笑み合う。
その笑みの底には、また次の食べるものを心配しないといけない不安がよぎっていたが、私たちは二人ともそれを口に出さなかった。
 
チリンチリン、と音がした。

屋台の下で、風鈴が鳴っている。
薄いガラスに描かれた金魚を思い出す。赤い尾ひれは、夜風にゆらゆら揺れているみたいだった。
にぎりつぶせそうなくらい、薄いガラスに描かれた金魚。

チリンチリン。

風鈴の音はどこか儚い。

私たちは、その音を聞きながら、今夜の晩餐を食べた。
甘い優しい味が、空っぽの胃を満たした。

明日も二人でこうやって、なんとか時間をやり過ごせますように。
明日も、二人で過ごしていけますように。

そう願いながら食べた。

私たちは、食べ終わると夏祭りごっこをした。

夜店がそこらじゅうにいっぱい並んでいるつもりで遊んだ。
レンが、あれは射的屋、あれは焼きとうもろこし屋、あれはりんご飴屋、あれはヨーヨー釣り、あれは……と、架空の屋台を次々指差して言った。
私の目には、レンが言った通りの光景が見えた。
いらっしゃい、いらっしゃい、と陽気な呼び込みの声も聞こえる。
焼きとうもろこしやリンゴ飴、屋台に並ぶ食べもののにおいもした。
私たちはヨーヨーをすくうふりをしたり、
架空のお面をつけて見せ合ったりした。

自然に笑みがこぼれていた。
屋台からこぼれる灯りみたいに、明るい顔をしていた。
視線を通わせ、互いの思いを噛み締めた。
屋台は、幻だけど、
明日自分たちがどうしているかもわからないけれど、
幸福だと思いたかった。

夏の夜の公園は暑かった。
そして虫がたくさんいた。

私たちは、延々と夏祭りごっこをした。
ベンチに二人して倒れ込むまで遊んだ。
そうしないと、そこでは眠れそうになかった。

すっかり真夜中になって、二人して使い込んだシャツみたいにクタクタになったころ、私たちはようやく夏祭りごっこをやめた。
ベンチに腰掛け、互いの肩にもたれてうとうとしながら、レンの家の話をした。
 
レンから話を聞いて想像する限り、レンの家は〝お屋敷〟という呼び名が似合いそうなくらい大きくて立派だった。
庭は、庭師をやとわないといけないくらい広いし、ひいおじいさんが生きていた頃は庭で五匹もドーベルマンが飼われていたそうだ。
家には、客間が三つもあるし、ビリヤードをする部屋も、お茶会をする部屋もある。使用人が着替えたり食事をしたりする部屋もある。
家が広すぎて誰がどこにいるのかわからないので、家族全員呼び集めるとなると苦労する。
その苦労を省略するために、夕食は十九時と時間が決まっていて、その時間きっかりに家族全員が食堂に集まること、というルールがあるらしい。

「なんだか、住む世界が違うみたい。
両親はなんの仕事をしてる人なの?」

「父親は政治家。政治家になる前は弁護士。
母親は普通の人」

レンは両親についてそれ以上深くは語ろうとしなかった。

レンには兄が三人いたそうだ。
一番上は東大を卒業して医師になった。二番目の兄はアメリカに留学中。三番目の兄についてはなぜか何も語らなかった。

兄たちには、優秀な家庭教師がいたらしい。
家庭教師を雇ったのは祖母だ。
祖母は教育熱心で、母が口を挟むことを許さなかった。
祖母は家の中で非常に発言権が強かった。
母はいつも使用人みたいに小さくなっていたという。

祖母は、孫たちに厳しく勉強をさせたそうだ。
問題を解かせて、全問マルがつくまで何度でも家庭教師から指導を受けさせた。
厳しすぎるのではないかと母は度々祖母に言った。
祖母はそのたびに、〝自己肯定感を高めるためにこうしないといけないんだ〟と答えたそうだ。
〝バツがついたままで終わらせず、マルがつくまでやらせるんだ。
そうじゃなきゃ自己肯定感が育たないんだ〟
祖母はいつも母をそう言って説き伏せていた。

レンは勉強が不得意だった。
家庭教師が教えてくれることが、なかなか理解できなかった。
問題はバツばかりだった。
何度解き直しても、バツ、バツ、バツ……。

そのうち、バツをつけられるのがすごく怖くなっていった。
問題が解けない恐怖心と羞恥心。
兄弟と比べられ劣等感。

何回やり直しても百点がとれなかったときには、祖母はレンに罰を与えた。
その罰はいつも同じで、食事を一食抜くというやり方だった。
母はこっそりレンに食事をくれたが、それが祖母にばれるとレンも母も二食分食事を抜かれた。

そのうち、レンはなんでもマルかバツで考えるクセがついていった。
優秀な成績の兄はマル。
自分はバツ。
クラスメイトも百点を取れる人はマル。
その他の人はバツ。

レンはバツが怖くてたまらなくて、
家庭教師がトイレにいっているすきに答えを丸写しすることがあった。
それで、なんとかマルをもらってホッとして、
次の瞬間には〝いつかズルがばれやしないか〟と恐怖して、
〝明日はどうやってのりきろう〟と不安で不安で身悶えする。
そんな学童期を過ごしていた。

九歳の十二月、レンはホーム・アローンという映画を、テレビの映画番組で見た。

それはある一家が旅行に出発する際、息子が一人、家に取り残されてしまう話で、一人きりになった息子は、一人暮らしを満喫し、やってきた泥棒まで撃退してしまう。コミカルな映画で、最後には感動のシーンもあった。とても良い映画だった。

しかし、レンには、その映画が思わぬ影響を及ぼした。

ちょうど、映画をみる数日前、母親が交通事故にあって入院をしていた。母親の不在を寂しく思っていたころに、レンはその映画を見た。

レンは映画を見た翌日から、こんな夢を連日見るようになった。

朝起きたら、家族がレンをおいていなくなっているという夢だ。

捨てられた、捨てられたーー。

とうとう僕は見限られたーー。

広い屋敷の中で、レンは一部屋ずつドアを開きながら恐怖に押しつぶされそうになっていた。

そんな夢を見るようになってから、レンは学校で暴力を振るうようになった。
どんな小さなことでもクラスメイトや担任から注意されることが我慢ならなくなってしまった。
注意したクラスメイトや担任を殴った。
バツをつけられたくなくて、怒りわめいた。
どんな小さなバツでも嫌だった。
レンは全身で暴れ、自分を否定する言葉を全身で拒絶した。

レンは小学校で問題児としてみなされるようになった。
祖母はそれ以来、レンをいない人みたいに扱った。兄たちもそれに習った。
父は家のことに無関心だった。

母は、次の年の二月に骨折の治療を終えて家に帰ってきたが、なぜか以前のような母ではなくなっていた。
正気が抜け、しおれてしまったみたいだった。抑うつ的で、レンが話しかけても、あまり言葉を返さなくなった。
そして、理由はわからないが、ある日、突然精神科の病院に入院してしまって、何年も帰ってこなくなった。

レンを守る人は、誰もいなくなってしまった。

そこから先の話を、私はまだ知らない。

でも、レンにはそのあとも、いろんな出来事があったんだろうと思う。

レンは、非行少年が更生するための施設に二年入っていたことがあるという。

私は肩にもたれかかるレンの頭をなでた。

どんな言葉も、レンを癒すには足りない気がした。
なでてあげるくらいしかできなかった。

「リコ」
と、レンが小さな声で呼びかけてくる。
公園に生えた雑草の影で、リーリーと鳴く虫の音よりも小さな声だった。

「どうしたの」

ゆっくりと、レンの頭をなでながら尋ねた。

「そばにいて」

こんなにそばにいるのに、どうしてレンは〝そばにいて〟と言うのだろう。
私は、すうっと夜の空気を胸に吸い込む。夜の空気のにおいがした。なんだか寂しいにおいだった。

「ずっとそばにいるよ」

「リコは俺を裏切らないよね?」

不安そうな声で言う。

裏切らないよね、かーー。
私は心の中でため息をついた。
レンは、私の心を確かめるような言葉をよく口にする。

レンはとても疑り深い。
そして臆病だ。
それから、人を黒か白でしか見られないところがある。
悪い人か、いい人か。
自分の敵か、味方か。
自分を否定する人か、肯定する人か。
自分を拒絶する人か、そばにいてくれる人か。
人をキッパリ二種類にわけている。
少しでも、レンを否定するような言動ーーそれがレンのことを思っての忠告だったとしてもーーがあると、それ以降、その人を避けるようになる。

レンは考え方がゆがんでいる。

いつもまわりを、〝自分の敵かもしれない〟と警戒しながら生きている。
私すら、いつか敵になるかもしれないと思っている。

「リコは俺を否定しないで。
リコを嫌いにならせないで。
リコは、ただ一人、自分のことをわかってくれる人だと思ったんだ。
だから、失望させないで。
リコがたった一つの光だから」

レンは、私に失望することを恐れている。

私たちの足元には、ぺしゃんこになったベビーカステラの袋が落ちていた。
甘いにおいに誘われたアリが袋の周りをウロウロと歩いていた。

レンを安心させてやりたい。
そんなに警戒しなくても、世界はそんなに怖いものじゃない。

だけど、私も不安がりで怖がりなので、少しも説得力がない。

私たちは、形がないものをいつも恐れている。
〝他人〟(具体的な誰かではなく〝他人〟)とか、
〝未来〟とか。

そして、形がないものと戦っている。
〝不安〟とか、〝恐怖〟とか。

私たちのエネルギーの大半はそこに費やされてしまう。
戦うことをやめたらいいのだけど、そのやめ方がわからない。

「君たち、何してるの」

突然、まばゆい光に照らされた。

目を細めて、光が放たれている方を眺めた。
四、五メートル先に警察官が立っているのが見えた。

「未成年だよね?」

問いかけながら、警察官が接近してくる。

「こんな時間に何やって……」

警察官が言い終わる前に私たちはベンチから立ち上がって逃げ出した。

二人で手を取り合って全力で走った。
息がきれても、足がもつれても走った。
公園を飛び出し、いつのまにか閉まっていたベビーカステラの屋台の前を通り抜け、繁華街の裏路地をうねうねと曲がりくねりながら走った。
裏路地にはスナックやら居酒屋やらがたくさんあって、時々酔っ払った大人にぶつかりながら走った。

「ごめん」 
と走りながらレンはつぶやいた。

「なんで謝るの?」

「何にも先のことを考えずに、病院から連れ出したりして」

私は走りながら、ギュッとレンの手を握り直した。

「ついてきたのは私だよ」

「そうだとしても……」

レンは言いかけて言葉をのみこんだ。

「病院にもどりたい?」

レンは恐れの混じった口調で私に問いかけた。

「レンと一緒ならどっちでもいい」

レンは目を腕でこすった。
レンは泣き虫だ。
走りながら鼻をすすっている。

「病院は嫌いだ。
俺とリコを離そうとするから」

走りながらレンを見ると、また腕で目をこすった。

「病院はさみしい。
敵ばっかりだから。
俺はリコしかいらない。
リコとずっと一緒にいたい。
だけど、こんなふうに病院から連れ出しても、リコにつらい思いをさせるだけだった。
俺は、自分の気持ちで頭がいっぱいになると、先のことも、リコのことも、考えられなくなる。
叫びたくなる。
愛し方がわからない」

レンは立ち止まった。
膝に手をついてハアハアと息を切らす。
私は、レンのそばで膝に手をついて一緒にハアハアと息をした。

それから、ゆっくりと息を整え、レンを抱きしめた。レンの体は、汗だくで服が体にはりついていた。

「私、思うんだ。
愛し方がわからない人は、
愛されたかったのに、愛されなかった人だよ」

レンは、膝から力が抜けたみたいにその場に崩れ落ちた。

私は小さな子供をだきしめるように、レンの頭を両腕で包み込んだ。

レンは腕の中で泣いた。
みっともなく、うなりながら泣いた。
顔を熱くして泣いていた。

私は、レンを抱きしめながら、小さなころの自分も抱きしめているような気持ちがしていた。
小さなころにできた胸の傷が、じんわりと癒されていくーー。


続く~
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