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私は一生姫様についていきます!
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しん、と静寂が降りた。
さっきまではワイワイガヤガヤしていた舞踏会会場をここまで静かにさせたのは、恐らく私が初だろう。
なんて軽口を叩いている暇はなく。
「な、何言ってるの?アイリスちゃん、オレのこと嫌いなの?好きだよね?」
そう言いながら美しい顔を真っ白にしていく彼――姫様の騎士、ディラス。
勝手に私がお前のことを好きだって決めないでいただきたい。いやむしろ嫌いな部類だよ、今世も前世も。
「わたくしは姫様一筋です。姫様の幸せがわたくしの幸せ。姫様を不幸にしてまで幸福を手にしたいと思うほど、わたくしは幸福に飢えていませんの」
私はお前に気はない!さっさと姫様のことを好きになりやがれ!と言外に伝えれば、ディラスは顔を伏せた。
「……そっ、か。オレの勝手な片思いだったってわけか」
そうだよ、と言いかけ慌てて口を閉ざした。傷口に塩を塗るほど、私の性格は悪くない……はずだ。
だがしかし、憂いを隠すことなく顔に浮かべるディラスは、不本意ながら目を奪われそうになった。
金髪碧眼の彼は、見目麗しい上に若くして姫様の護衛になれるほどの剣の腕も持っている。天は二物を与えずとは嘘っぱちだ。そのせいで彼は王宮中の視線を集めている。
だが生憎と、その顔は私の趣味ではないし、告白を受けるのも私の本意ではない。
「分かっていただけたようで何より。ではわたくしたちは失礼します。……よろしいですか、姫様」
そう言って姫様の方を向けば――姫様が泣いていた。誰だ、姫様を泣かせたのは!
「……お前か、ディラスぅ!」
「違うから!てかアイリスちゃんってそんな性格だったっけ!?」
……おっと、口が滑った。
「……失礼いたしました。姫様を泣かせたのは貴様でございますか、ディラス様?」
「丁寧に言った方が怖い!」
いつも通りのうるささを取り戻したディラスは、コホンと咳払いをした。……おいおい、それで空気を変えたつもりかい?変わってないぜ、私の中ではな!
「……とにかく、オレは姫様を泣かせてない。原因があるとすればアイリスちゃん、キミなんじゃないの?」
「……は?」
私が原因、とな?
「……そ、そうなのですか姫様……わたくしのせいですか……?」
姫様にそう尋ねれば、今まで固く閉ざされていた口がようやく開かれた。
「……えぇ、そうよ。貴女が――」
「も、申しわけございませんでした姫様……!何が原因だろうと、わたくしが悪いのならわたくしが責任を負うのが道理ですわ……あぁ、この罪はわたくしが腹を切れば少しは軽くなりますか……?いや、でもダメですわ、それだと姫様の幸せを見届けることが出来ませんもの……」
「人の話は最後まで聞きなさい!」
いつも冷静沈着な姫様らしからぬ、大きな声がホールに響いた。
「貴女のその言葉が嬉しくて、泣いてしまったの!」
「……どの言葉、でしょうか」
わたくし如きには、分かりかねます。
「わたしの幸福を願っていると、アイリスがわたしの幸せを見届けると」
「……はい」
「わたし、人からそう素直な感情をぶつけられることは少ないのよ。王女だからよく言われるのだけれど、それは全て本心からのものじゃないの。だから、貴女にそう言ってもらえたのが、すごく嬉しかったの」
そう言って、涙目を細めて笑う姫様。
「~~っ」
私も涙が浮かび、しかし嬉しさのあまり、姫様めがけて走った。
淑女が走るなんてみっともないけれど、今回ばかりは。
「……ありがたき光栄です、姫様……っ」
私は姫様を力の限り抱きしめ――ようとし、ギリギリ思いとどまった。一介のメイドが馴れ馴れしくしていい相手ではないのだ。姫様だぞ?
腕を広げたまま数秒固まった私は、その腕を下ろすとコホン、と咳払いをして私は改めてディラスの顔を見る。
「……ということですので。姫様はわたくしが幸せにします。それ故、貴様に用はございません。姫様は体調が優れないようですので、非常に申し訳ない限りなのですが、お先に失礼させていただきます」
矢継ぎ早にそう言い残し、私は姫様の手を取り、ホールを辞した。
「……申し訳ありません、姫様!勝手に姫様を連れ出してしまって……なんとお詫びして良いことか……」
「いいのよ、体調が優れなかったのは事実ですもの。気に病む必要は無いわ」
「っ、ありがとう、ございます……っ!」
と、姫様の寛大なお心のお陰で私の首はなんとか繋がったままだ。勝手な振る舞いを咎められて打首……とまでは行かなくとも、解雇処分されていた可能性もある。私にはそんなバッドエンドもあるのだから、エンドがちょっと早くなったと考えれば……いや笑えないな、やめよう。
結局あのあと、姫様の元に1本のバラが届いた。
送り主は書かれていなかったが、大方ディラスだろう。こんなキザなことする奴、ディラス以外に思いつかなかった。
私は姫様とディラスの恋路を応援するため、(勝手に)メッセージカードを添えて姫様にバラを渡した。――というのも、姫様はディラスに好意を寄せているのは私は知っている。だから私は姫様の恋路を応援するため、余計なことかもしれないが、一応努力はしようという考えでメッセージカードを使うという発想に至ったのだ。
まぁ、内容はお察しの通りだろう。「あの時はすまなかった」的なアレだ。
ひと仕事終えて満足した私は、風呂に入って今日の疲れを癒した。ちなみにメイドというのは、基本的に風呂が与えられるのは専属のメイドだけだ。私は姫様に世話係を任命されたので、風呂も自由に入れるのだ。
姫様最高、私は一生姫様についていきます!
さっきまではワイワイガヤガヤしていた舞踏会会場をここまで静かにさせたのは、恐らく私が初だろう。
なんて軽口を叩いている暇はなく。
「な、何言ってるの?アイリスちゃん、オレのこと嫌いなの?好きだよね?」
そう言いながら美しい顔を真っ白にしていく彼――姫様の騎士、ディラス。
勝手に私がお前のことを好きだって決めないでいただきたい。いやむしろ嫌いな部類だよ、今世も前世も。
「わたくしは姫様一筋です。姫様の幸せがわたくしの幸せ。姫様を不幸にしてまで幸福を手にしたいと思うほど、わたくしは幸福に飢えていませんの」
私はお前に気はない!さっさと姫様のことを好きになりやがれ!と言外に伝えれば、ディラスは顔を伏せた。
「……そっ、か。オレの勝手な片思いだったってわけか」
そうだよ、と言いかけ慌てて口を閉ざした。傷口に塩を塗るほど、私の性格は悪くない……はずだ。
だがしかし、憂いを隠すことなく顔に浮かべるディラスは、不本意ながら目を奪われそうになった。
金髪碧眼の彼は、見目麗しい上に若くして姫様の護衛になれるほどの剣の腕も持っている。天は二物を与えずとは嘘っぱちだ。そのせいで彼は王宮中の視線を集めている。
だが生憎と、その顔は私の趣味ではないし、告白を受けるのも私の本意ではない。
「分かっていただけたようで何より。ではわたくしたちは失礼します。……よろしいですか、姫様」
そう言って姫様の方を向けば――姫様が泣いていた。誰だ、姫様を泣かせたのは!
「……お前か、ディラスぅ!」
「違うから!てかアイリスちゃんってそんな性格だったっけ!?」
……おっと、口が滑った。
「……失礼いたしました。姫様を泣かせたのは貴様でございますか、ディラス様?」
「丁寧に言った方が怖い!」
いつも通りのうるささを取り戻したディラスは、コホンと咳払いをした。……おいおい、それで空気を変えたつもりかい?変わってないぜ、私の中ではな!
「……とにかく、オレは姫様を泣かせてない。原因があるとすればアイリスちゃん、キミなんじゃないの?」
「……は?」
私が原因、とな?
「……そ、そうなのですか姫様……わたくしのせいですか……?」
姫様にそう尋ねれば、今まで固く閉ざされていた口がようやく開かれた。
「……えぇ、そうよ。貴女が――」
「も、申しわけございませんでした姫様……!何が原因だろうと、わたくしが悪いのならわたくしが責任を負うのが道理ですわ……あぁ、この罪はわたくしが腹を切れば少しは軽くなりますか……?いや、でもダメですわ、それだと姫様の幸せを見届けることが出来ませんもの……」
「人の話は最後まで聞きなさい!」
いつも冷静沈着な姫様らしからぬ、大きな声がホールに響いた。
「貴女のその言葉が嬉しくて、泣いてしまったの!」
「……どの言葉、でしょうか」
わたくし如きには、分かりかねます。
「わたしの幸福を願っていると、アイリスがわたしの幸せを見届けると」
「……はい」
「わたし、人からそう素直な感情をぶつけられることは少ないのよ。王女だからよく言われるのだけれど、それは全て本心からのものじゃないの。だから、貴女にそう言ってもらえたのが、すごく嬉しかったの」
そう言って、涙目を細めて笑う姫様。
「~~っ」
私も涙が浮かび、しかし嬉しさのあまり、姫様めがけて走った。
淑女が走るなんてみっともないけれど、今回ばかりは。
「……ありがたき光栄です、姫様……っ」
私は姫様を力の限り抱きしめ――ようとし、ギリギリ思いとどまった。一介のメイドが馴れ馴れしくしていい相手ではないのだ。姫様だぞ?
腕を広げたまま数秒固まった私は、その腕を下ろすとコホン、と咳払いをして私は改めてディラスの顔を見る。
「……ということですので。姫様はわたくしが幸せにします。それ故、貴様に用はございません。姫様は体調が優れないようですので、非常に申し訳ない限りなのですが、お先に失礼させていただきます」
矢継ぎ早にそう言い残し、私は姫様の手を取り、ホールを辞した。
「……申し訳ありません、姫様!勝手に姫様を連れ出してしまって……なんとお詫びして良いことか……」
「いいのよ、体調が優れなかったのは事実ですもの。気に病む必要は無いわ」
「っ、ありがとう、ございます……っ!」
と、姫様の寛大なお心のお陰で私の首はなんとか繋がったままだ。勝手な振る舞いを咎められて打首……とまでは行かなくとも、解雇処分されていた可能性もある。私にはそんなバッドエンドもあるのだから、エンドがちょっと早くなったと考えれば……いや笑えないな、やめよう。
結局あのあと、姫様の元に1本のバラが届いた。
送り主は書かれていなかったが、大方ディラスだろう。こんなキザなことする奴、ディラス以外に思いつかなかった。
私は姫様とディラスの恋路を応援するため、(勝手に)メッセージカードを添えて姫様にバラを渡した。――というのも、姫様はディラスに好意を寄せているのは私は知っている。だから私は姫様の恋路を応援するため、余計なことかもしれないが、一応努力はしようという考えでメッセージカードを使うという発想に至ったのだ。
まぁ、内容はお察しの通りだろう。「あの時はすまなかった」的なアレだ。
ひと仕事終えて満足した私は、風呂に入って今日の疲れを癒した。ちなみにメイドというのは、基本的に風呂が与えられるのは専属のメイドだけだ。私は姫様に世話係を任命されたので、風呂も自由に入れるのだ。
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