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そうだ、嫌がらせをしましょう
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当面の目標(まず手始めにドドリーに嫌われるところから始めましょう!)を設定し、私は姫様を連れて部屋に戻った。
姫様が眠るのを見届けてから私は、あの純粋無垢な料理長、もといドドリーからいかにして嫌われようか……ということを一心に考えていた。
ただ悪口や嫌味を言うだけではアイツには効かない。純粋無垢というプラスの性格が、私にとってはマイナスでしかない。
悪口とか嫌味以外で、となると何かしらの行動で嫌われるしかないか……と思っていると、私は思いついてしまった。
「そうだ、嫌がらせをしましょう」
嫌がらせをされればその人のことを好きになるなんてありえないだろう。そう考えた私は、彼が最も嫌がるであろうことを考え、真っ先に思いついたのは、料理に関する嫌がらせだ。
ちなみに余談だが、姫様とドドリーの初イベントはマンツーマンのお料理教室だ。というのも、姫様は壊滅的に料理が下手なので幼馴染でもあり料理長でもあるドドリーに教えを乞うたというわけだ。
それゆえ、彼は最初姫様のことをさほど好きではなかった。もちろん嫌いでもなかったが。……それとも、小さい時から一緒にいるから好きも嫌いもないと言った方が正しいか。
だが、いざ料理を教えてもらおうとなり、最初は失敗ばかりだったから「食材を粗末にするなんて……」と僅かながら憤りを見せていた。
だが、何度失敗しても諦めず、懸命に料理を勉強する姫様を見て、彼は考えを変える。彼女は失敗した料理ですら食べきり、食材を粗末にしない。失敗してもそれを乗り越えてここまで来たんだ、なんて根気強く、なんて頑張り屋さんなんだ、と。そしてそこから恋に発展するのだ。
料理長である彼が庭園にいた理由はハーブを摘みに来たから。……なるほど、ハーブか。
嫌味を言っても気付かないなら直接手を下すしか方法はない。
私が思いついたのは次のような作戦だ。
私は彼が来る前に庭園にやって来て、ハーブを摘む。
そしてそれを、庭園の入り口であるバラのアーチの下に積み上げる。
アーチの下となればかなり視界に入りにくい場所であるため、このハーブは恐らく見つからないだろう。
そうすれば、今必要としているハーブが見つからずにイライラするだろう。そこに私が颯爽と登場するのだ。
「やっぱり貴様には庭園が似合いませんね。ところでハーブはどうしたのですか?昨日はハーブのためにここへ来ているとおっしゃっていましたけど、あれは嘘だったのですか?」
と言ってさらにイラつかせるだけイラつかせておいて、「あら、時間ですのでこれで失礼します、脳内お花畑さん」と言い残して颯爽と去る――はぁ、完璧すぎる作戦に思わずドヤ顔を決めてしまう。
これで彼は私のことを嫌ってくれるはずだ。いやむしろ嫌われすぎて、これから私が嫌がらせを受けるかもしれない。……それはちょっと嫌だけど、どれもこれも全て姫様のために!
善は急げと言うし、明日にでも決行しなければ!
私は布団に入って意気込むと、意識を眠りに沈めた。
おはよう私、おはよう姫様、おはよう世界!
結局ドドリーが悔しがる――否、私のことを嫌って睨みつけてくる――のが楽しみで一睡もできなかった私だ。だが、ドM精神からくるそれではない。断じて違う、そこだけは勘違いしないでほしい。
深呼吸を2、3回ほどし、ようやく昂っていた気持ちが落ち着いてきた(ような気がした)ので私は身支度を整え、姫様のもとに向かう。
メイドである私の朝は、姫様より先に起きて準備をし、姫様の身支度の手伝いをすることから始まる。なんて幸せな仕事なんだ。
私は控えめに姫様の部屋の扉をノックし、失礼します、と小声で言い、部屋に入った。
「おはようございまーす」
気分は寝起きドッキリだ。姫様をどうしてくれよう、寝起きバズーカ……さすがにまずいか。そもそもこの世界にバズーカなんてないのだろう。仮にあっても軍事用か。
「姫様、おはようございます。朝ですよ」
姫様を起こすために私は姫様のベッドを向いて声をかける。
「……あら、もうそんな時間?」
ふわぁ、と欠伸をしながら起き上がった姫様は、いつものように完璧な姿ではない。寝起きなのだから。あられもない……というほどではないが、それなりに崩れたその姿からは、ギラッギラに輝く後光が差していた。
「……こんな姿を見れるなんて、役得にも程がある。私そろそろ死ぬんじゃない?」
「何か言ったかしら?」
「いえ何も」
姫様を起こして身支度を整えると、姫様とともに朝食の席へ向かった。
姫様の部屋からさほど遠くないところに食堂があり、そこで姫様と私とで朝食を食べる。
本来なら主とメイドが同じ場所でご飯を食べるというのはタブーだ。だから私も最初は「いえ、そんな……いけません、姫様」と断っていたのだが……。
姫様が「一緒に食べましょう?」と、それはもう麗しい笑顔で(首を傾げるという高度な技術を駆使して)言ったので、私はあっさり陥落……いや、かなり時間を要したがやむを得ず「はい、喜んで!」と答えたのだ。内心はお祭り状態だった。どんちゃん騒ぎどころの話ではない。ガチャンガチョンドゥルルルル気分だった。……なんだそれ。
とにかく、私は紆余曲折を経て、姫様と一緒にご飯を食べることになったのだ。
「今日の朝食は何かしら……」
「楽しみですね」
たわいもないことを話しながら朝食の席につくと、ウェイターたちが料理を運んできた。
そして、料理長であるドドリーが今日の料理の説明をし――
「ドドリーだ!まずい!」
「……何がまずいのかしら?」
「ま、不味かったか……?すまなかった!今すぐ作り直してくる!」
「……あ、違います!美味しいです!だから大丈夫です帰ってきてください!」
必死に言い募れば、「よ、良かった……!」と、隠しもせず安堵の表情を浮かべたドドリー。
ダメだな、今日は思ったことが口に出てしまう日のようだ。極力黙っておこう。
無事に朝食を食べ終え、姫様を部屋に送り届ける。
いやはや、ドドリーの作る料理は天下一品級に美味しい。のに、性格が残念なせいでそれを楽しめない。――「どうだ、うまいか?」とそう何度も聞かれればさすがに嫌になるというものだ。いやまぁこれも「姫様に美味しい料理を食べていただきたい!」という純粋さからくるものなのだろうが――
姫様主催の茶会があるらしく、その準備のため今日は朝食後真っ直ぐ部屋に帰りたいと言われたのだ。いつもなら散歩なり何なりするのだが。
「そうですか……」
私は落ち込むフリをした。姫様主催の茶会があるなんてことを、この私が知らないとでもお思いか?先週くらいから把握していたぞこっちは。
だから、今日なのだ。
「では、わたくしも仕事があるので失礼します」
「えぇ。頑張りなさい」
やった!仕事が姫様公認になった、これで安心して嫌がらせしまくれる!……姫様に今日これからすることは一切伝えていないのだけれど。
なんてしょうもないことを考えながら歩いていたら、いつの間にかもう庭園に着いていた。
私は庭園に着くなり、せっせせっせと、しかしコソコソとハーブを摘む。そしてそれをアーチの下に積んだ。
「……よし、できた!」
ざまぁみろ!これでドドリーも私のことを嫌いになるだろう!
これで準備は整った、私は彼に見つからないうちにそそくさと退散して……
「……何を、しているんだ?」
運悪く、ちょうど私がハーブたちを積み上げた直後に、彼はここにやってきた。
しかも、私が懇親のドヤ顔を決めているその瞬間だ。バッチリ見られた。めちゃくちゃ恥ずかしい。
「俺のハーブに何してる?」
え、待って。そのお顔はガチの顔では……
「……おい」
待てって。テレビなら不適切な表現でモザイクかけられるレベルの般若顔だぞ。結構……いやかなり怖いぞやめろよー。
「俺のハーブに、何したって聞いてるんだ!」
「ひえぇぇぇっ!ごめんなさいぃぃぃ!」
私は無事彼に嫌われた。……のはいいのだが。私はふたつほど分かったことがある。
コイツはハーブ、あるいは植物、食物が関わると面倒くさい。そして、怒らせてはいけない。
ハーブについて怒ると、言葉で表しきれないほどに、恐ろしい。
嫌われることができたのはいい、だが、こう……彼を怒らせてしまった罪悪感と言うべきか、胸にしこりが残る心地だった。
まぁこれで姫様が幸せになれるなら……と自分に言い聞かせ、私は眠りについた。
怒り顔のドドリーがハーブを両手いっぱいに持ち、「俺のハーブをよくも……」と言いながらゆらゆらと、それなのにめちゃくちゃ速く追いかけてきた夢は、おそらく前世と今世含めても1番恐ろしい夢だった。
姫様が眠るのを見届けてから私は、あの純粋無垢な料理長、もといドドリーからいかにして嫌われようか……ということを一心に考えていた。
ただ悪口や嫌味を言うだけではアイツには効かない。純粋無垢というプラスの性格が、私にとってはマイナスでしかない。
悪口とか嫌味以外で、となると何かしらの行動で嫌われるしかないか……と思っていると、私は思いついてしまった。
「そうだ、嫌がらせをしましょう」
嫌がらせをされればその人のことを好きになるなんてありえないだろう。そう考えた私は、彼が最も嫌がるであろうことを考え、真っ先に思いついたのは、料理に関する嫌がらせだ。
ちなみに余談だが、姫様とドドリーの初イベントはマンツーマンのお料理教室だ。というのも、姫様は壊滅的に料理が下手なので幼馴染でもあり料理長でもあるドドリーに教えを乞うたというわけだ。
それゆえ、彼は最初姫様のことをさほど好きではなかった。もちろん嫌いでもなかったが。……それとも、小さい時から一緒にいるから好きも嫌いもないと言った方が正しいか。
だが、いざ料理を教えてもらおうとなり、最初は失敗ばかりだったから「食材を粗末にするなんて……」と僅かながら憤りを見せていた。
だが、何度失敗しても諦めず、懸命に料理を勉強する姫様を見て、彼は考えを変える。彼女は失敗した料理ですら食べきり、食材を粗末にしない。失敗してもそれを乗り越えてここまで来たんだ、なんて根気強く、なんて頑張り屋さんなんだ、と。そしてそこから恋に発展するのだ。
料理長である彼が庭園にいた理由はハーブを摘みに来たから。……なるほど、ハーブか。
嫌味を言っても気付かないなら直接手を下すしか方法はない。
私が思いついたのは次のような作戦だ。
私は彼が来る前に庭園にやって来て、ハーブを摘む。
そしてそれを、庭園の入り口であるバラのアーチの下に積み上げる。
アーチの下となればかなり視界に入りにくい場所であるため、このハーブは恐らく見つからないだろう。
そうすれば、今必要としているハーブが見つからずにイライラするだろう。そこに私が颯爽と登場するのだ。
「やっぱり貴様には庭園が似合いませんね。ところでハーブはどうしたのですか?昨日はハーブのためにここへ来ているとおっしゃっていましたけど、あれは嘘だったのですか?」
と言ってさらにイラつかせるだけイラつかせておいて、「あら、時間ですのでこれで失礼します、脳内お花畑さん」と言い残して颯爽と去る――はぁ、完璧すぎる作戦に思わずドヤ顔を決めてしまう。
これで彼は私のことを嫌ってくれるはずだ。いやむしろ嫌われすぎて、これから私が嫌がらせを受けるかもしれない。……それはちょっと嫌だけど、どれもこれも全て姫様のために!
善は急げと言うし、明日にでも決行しなければ!
私は布団に入って意気込むと、意識を眠りに沈めた。
おはよう私、おはよう姫様、おはよう世界!
結局ドドリーが悔しがる――否、私のことを嫌って睨みつけてくる――のが楽しみで一睡もできなかった私だ。だが、ドM精神からくるそれではない。断じて違う、そこだけは勘違いしないでほしい。
深呼吸を2、3回ほどし、ようやく昂っていた気持ちが落ち着いてきた(ような気がした)ので私は身支度を整え、姫様のもとに向かう。
メイドである私の朝は、姫様より先に起きて準備をし、姫様の身支度の手伝いをすることから始まる。なんて幸せな仕事なんだ。
私は控えめに姫様の部屋の扉をノックし、失礼します、と小声で言い、部屋に入った。
「おはようございまーす」
気分は寝起きドッキリだ。姫様をどうしてくれよう、寝起きバズーカ……さすがにまずいか。そもそもこの世界にバズーカなんてないのだろう。仮にあっても軍事用か。
「姫様、おはようございます。朝ですよ」
姫様を起こすために私は姫様のベッドを向いて声をかける。
「……あら、もうそんな時間?」
ふわぁ、と欠伸をしながら起き上がった姫様は、いつものように完璧な姿ではない。寝起きなのだから。あられもない……というほどではないが、それなりに崩れたその姿からは、ギラッギラに輝く後光が差していた。
「……こんな姿を見れるなんて、役得にも程がある。私そろそろ死ぬんじゃない?」
「何か言ったかしら?」
「いえ何も」
姫様を起こして身支度を整えると、姫様とともに朝食の席へ向かった。
姫様の部屋からさほど遠くないところに食堂があり、そこで姫様と私とで朝食を食べる。
本来なら主とメイドが同じ場所でご飯を食べるというのはタブーだ。だから私も最初は「いえ、そんな……いけません、姫様」と断っていたのだが……。
姫様が「一緒に食べましょう?」と、それはもう麗しい笑顔で(首を傾げるという高度な技術を駆使して)言ったので、私はあっさり陥落……いや、かなり時間を要したがやむを得ず「はい、喜んで!」と答えたのだ。内心はお祭り状態だった。どんちゃん騒ぎどころの話ではない。ガチャンガチョンドゥルルルル気分だった。……なんだそれ。
とにかく、私は紆余曲折を経て、姫様と一緒にご飯を食べることになったのだ。
「今日の朝食は何かしら……」
「楽しみですね」
たわいもないことを話しながら朝食の席につくと、ウェイターたちが料理を運んできた。
そして、料理長であるドドリーが今日の料理の説明をし――
「ドドリーだ!まずい!」
「……何がまずいのかしら?」
「ま、不味かったか……?すまなかった!今すぐ作り直してくる!」
「……あ、違います!美味しいです!だから大丈夫です帰ってきてください!」
必死に言い募れば、「よ、良かった……!」と、隠しもせず安堵の表情を浮かべたドドリー。
ダメだな、今日は思ったことが口に出てしまう日のようだ。極力黙っておこう。
無事に朝食を食べ終え、姫様を部屋に送り届ける。
いやはや、ドドリーの作る料理は天下一品級に美味しい。のに、性格が残念なせいでそれを楽しめない。――「どうだ、うまいか?」とそう何度も聞かれればさすがに嫌になるというものだ。いやまぁこれも「姫様に美味しい料理を食べていただきたい!」という純粋さからくるものなのだろうが――
姫様主催の茶会があるらしく、その準備のため今日は朝食後真っ直ぐ部屋に帰りたいと言われたのだ。いつもなら散歩なり何なりするのだが。
「そうですか……」
私は落ち込むフリをした。姫様主催の茶会があるなんてことを、この私が知らないとでもお思いか?先週くらいから把握していたぞこっちは。
だから、今日なのだ。
「では、わたくしも仕事があるので失礼します」
「えぇ。頑張りなさい」
やった!仕事が姫様公認になった、これで安心して嫌がらせしまくれる!……姫様に今日これからすることは一切伝えていないのだけれど。
なんてしょうもないことを考えながら歩いていたら、いつの間にかもう庭園に着いていた。
私は庭園に着くなり、せっせせっせと、しかしコソコソとハーブを摘む。そしてそれをアーチの下に積んだ。
「……よし、できた!」
ざまぁみろ!これでドドリーも私のことを嫌いになるだろう!
これで準備は整った、私は彼に見つからないうちにそそくさと退散して……
「……何を、しているんだ?」
運悪く、ちょうど私がハーブたちを積み上げた直後に、彼はここにやってきた。
しかも、私が懇親のドヤ顔を決めているその瞬間だ。バッチリ見られた。めちゃくちゃ恥ずかしい。
「俺のハーブに何してる?」
え、待って。そのお顔はガチの顔では……
「……おい」
待てって。テレビなら不適切な表現でモザイクかけられるレベルの般若顔だぞ。結構……いやかなり怖いぞやめろよー。
「俺のハーブに、何したって聞いてるんだ!」
「ひえぇぇぇっ!ごめんなさいぃぃぃ!」
私は無事彼に嫌われた。……のはいいのだが。私はふたつほど分かったことがある。
コイツはハーブ、あるいは植物、食物が関わると面倒くさい。そして、怒らせてはいけない。
ハーブについて怒ると、言葉で表しきれないほどに、恐ろしい。
嫌われることができたのはいい、だが、こう……彼を怒らせてしまった罪悪感と言うべきか、胸にしこりが残る心地だった。
まぁこれで姫様が幸せになれるなら……と自分に言い聞かせ、私は眠りについた。
怒り顔のドドリーがハーブを両手いっぱいに持ち、「俺のハーブをよくも……」と言いながらゆらゆらと、それなのにめちゃくちゃ速く追いかけてきた夢は、おそらく前世と今世含めても1番恐ろしい夢だった。
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