姫様を幸せにするために恋愛フラグを回避しまくります!

夕闇蒼馬

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この記憶を閉じこめて

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 花祭り当日。

「姫様、ちゃんと花は確保できましたか?」
「えぇ、完璧よ……!わたし、おかしくないかしら……っ!?」
「大丈夫です姫様、いつも通り……いえ、いつも以上に麗しいですよ。自信を持ってください」
「えぇ……!」

 慌てる姫様と、落ち着かせる私。
 今日の姫様の部屋はてんやわんやだった。

「報告を楽しみに待ってますね。頑張ってくださいまし……!」
「えぇ……!」
 私は先から「えぇ」としか言わない姫様のことが少なからず心配ではあるが、しかし姫様とディラスなら大丈夫だろうと、笑顔で見送った。


「……さて」
 私は姫様の部屋を出て、私の部屋に向かう。
 部屋を開ければそこには、4種類の花が。
 トリカブトとヒマワリ、ゼラニウム。それから――
「……シオン」


 少しだけ私の前世の話をしよう。
 私は前世、18歳のただのJKだった。ちょっと乙女ゲームが好きなだけの、至って普通のJKだ。
 ……乙女ゲームが好きな時点で普通ではないという反論はしないで欲しい。

 私の名前は、井上 紫苑いのうえ しおん
 雨の日に車に轢かれて――というのは既にした話だったか。
 決して悪くない頭を持っていた私であったが、家が少々貧乏だったが故に大学進学を諦めて就活をしていた時に轢かれた。タイミングが悪すぎる。


 ……とまぁ誰の得にもならない話をしたが、とにかく今は花祭りの話だ。

 私の名前と一緒であるこの花に心を奪われたのもあるが、私がこの花を選んだ理由は。

『あなたを忘れない』

 私しか知らない彼の一面。
 それは前世という意味でもあり、前世が関わっていることもあり、しかし。
「……私の初恋なんだよなぁ」
 彼は、私の乙女心を確実に奪っていった。
 私しか知らない彼が。
 ゲームをやっていたからこそ知っている彼の情報を駆使して、私は彼と対等に話している。それこそ、姫様ファンクラブの話なんてそうだ。公式ファンブックにこの情報が載っていたのを思い出したのが幸いした。
 しかし、その情報がなければ私は彼と話す理由もなければ、それどころか対等に話すことすらできなかったのだ。

「やーいやーい、姫様ファンクラブ会員番号2番のヴェロール様ー!」
「や、やめなさい!大声を出しては近所迷惑ですよ!」
 ……とまぁとても知性のかけらも感じない会話ではあるが、このような会話もできないわけだ。

 なかなかさらけ出せない、素の私。
 それはもちろんカルラに、料理人たちには前世の私のテンションをぶつけることはよくある。

「やっほー、みんな元気ぃー?アイリスちゃんのお出ましだぞいっ!」
 ばちこーん、とウインクも飛ばす。
 こんな芸当、料理場でくらいしかできないことだ。

 だが、この世界で私の素――人をおちょくったり、煽ったりが趣味なのが素の私だ――をさらけ出しても、彼はそれを受け入れて、乗ってくれる。

 届いてはいけないこの思い。気付かれてはいけない、この想い。

『あなたを忘れない』

 ――私はこの想いを隠して、この記憶を閉じ込めて。

「……いざ出陣!」
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