11 / 55
ダメだ、勘違いするな
しおりを挟む
私は花を大量にバスケットに入れて部屋を出た。
まず向かう先は――
「おはようございまーす!わたくしが来ましたよーっと!」
このテンションでもうお分かりだろう。
「料理人のみなさーん!今日は花祭りですよー!」
料理場で私は叫ぶ。真顔で。
あ、ドドリーとカルラはいないのか。嬉しいような、残念なような。
「お、来たきた」
「悪いけど今日は毒味用の料理はないんだ」
「いいですよ、今日は皆様にこれを持ってくるために来たんですから」
そう言って私がバスケットから取り出したのは、ヒマワリ。
「花言葉は知ってますか?」
「知ってるように見えるか?」
「……愚問でしたね、失礼しました。ヒマワリの花言葉は『崇拝』です。これほどまでに美味しい料理を作るあなたたちを、わたくしは崇拝しております。わたくしが料理できるようになったのはあなたがたのお陰ですから」
「……ったく、アイリスさんってば……」
「流石としか言いようがねぇわ、これは」
料理人たちは、やれやれと肩を竦めながら顔を見合わせていた。
「ま、ありがたく貰っとくよ」
「俺たちからは……はい、これ。アイリスちゃんが来るだろうからって、カルラさんが作っておいたよ」
そう言って差し出されたのは――
「ま、まままっま……っ、マカロン様……!しかも花の形……!綺麗です!ありがとうございます……!」
彼らは「はいはい」と言いながら私を追い払った。扱いが酷い!
次に来たのは、城の門。
「ディラス様ー、今日は花祭りですよー」
「いや知ってるし……ってもしかしてこれ、オレに持ってきてくれたの?」
「はい。トリカブトです」
「と、トリカブト!?オレを殺す気!?」
「いいえ?毒性がないものを選んでますから安心してくださいませ」
「安心できない……!まぁいいや、ありがたくもらうよ。ありがとう」
「ちなみに花言葉は……騎士道、」
「騎士!?何なに、もしかしてアイリスちゃんってツンデレなだけで、オレのこと好きなの!?」
「……と、『復讐』です、ディラス様」
ニッコリと言い放ってやれば、
「…………こっわ」
と怯えた目をされた。よし、それでいい、その反応なら私ルートは回避できたはずだ。
次はどこに行こうかな……
「……あ、姫様の」
「…………おはようございます、クローム様」
突然イケメンが目の前に現れれば誰でも驚く。しかもそれが2番目の推しともなれば尚更だ。
「……そうそう、今日は花祭りですよ」
「……そうだね」
「どうぞ、これ」
私が差し出したのは、ゼラニウム。
「……これ、ゼラニウム?」
「はい。クローム様なら花言葉は知ってそうですね」
「……うん。『信頼』、でしょ」
さすがクローム。どこぞの料理バカたちとは違って博識だ。
「そうです。わたくしは貴方を信頼してますよ、クローム様。貴方なら姫様を裏切らない。貴方なら……姫様を幸せにしてくれる。そう、信じています」
「……それって、姫様を、ボクにくれるって、そういうこと……?」
「その通りで……おっと、何でもないです。聞かなかったことにしてくださいまし。……とにかく。わたくしは貴方を信じている、それだけです」
「……そう」
少し残念そうなのは、やはりそういうことなのか、脈アリなのか!?
「……ありがと、貰っとく」
はい好きですその笑顔!ご馳走様です!花祭りの返礼はいりません、貴方の笑顔だけで満腹です……!
ちなみにクロームも返礼をくれた。
『大切な友達』が花言葉の、ライラックという花を貰った。
ちなみに花祭りは、返礼というものがある。今のように、基本は女の子が男の子に花を贈り、男の子も女の子が好きなら返礼をする。もちろん、同性の場合もそうだ。
返礼をされれば、少なからず相手のことを気にかけているということになる。
――まぁ、私もあなたのことが好きです、みたいな意味合いのものがほとんどなのだが――
簡単に言えば、バレンタインパート2みたいなものか。
ちゃんとバレンタインイベントも存在している。
さすが乙女ゲーム、ロマンティックなイベント目白押しだ。
…………さぁ、問題はここからだ。
「これはこれはアイリスさん。こんにちは」
「……こんにちは」
ヴェロールだ。
今日はやけに攻略対象サマとすんなり会える。さすがイベント。ありがたい限りだ。
――だが、彼ばかりはそうは言えない。
タイミングが悪い。
心の準備ができてないんだこっちは。心臓バックバクだぞ。
「おや、今日はいつものように絡んでこないんですね。調子でも悪いんですか?」
「いえ、大丈夫ですよ」
大丈夫じゃねぇよ馬鹿かコイツは。お前のせいだ。
「……とりあえず、これを渡しておきます。花祭りですから」
私はシオンを渡した。
「なんと、まさかアイリスさんから頂けるとは思ってませんでしたよ。ありがとうございます」
「どういたしまして。……じゃあ私はこれで」
「……待ってください」
「……何でしょう」
いいから早くしてくれ、心臓がさっきからやかましいんだ、だから早く!
「……そう嫌そうな顔をしなくてもいいじゃないですか」
「すみません、貴方と喋る時のクセみたいなもので」
「そうでしたか。……貰うだけというのは性に合わないのでね、お返しはしますよ」
そう言って差し出されたのは、ブーゲンビリア。
花言葉は――『あなたは魅力に満ちている』
ダメだ、勘違いするな。違う、彼がこの花を渡してきたことに深い意味は無い。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。……ちなみに、アイリスさんがくれた花の名前を聞いても?」
「……えっと、シオン、です」
どこか言いづらい名前だ。前世の名前が紫苑だったから、言うなれば自己紹介している気分なのだ。
「シオン、ですか……後ほど花言葉を調べてみますね」
「し、調べていただかなくて結構です。ヴェロール様はこの花に何か想いでも込めたんですか?」
いつも通りにするんだ、私。いつも通り、ヴェロールを嘲笑え。
「えぇ、それはもう。あなたにはこの花を贈りたいと思ったのでね。花言葉的に、です」
……これでは言い逃れのしようがない。
ヴェロールは、「わたくし」に、少なくとも悪くは思っていない、しかし彼は私に対して――少なからず、好意を抱いている。
この事実を知ってもなお、いつも通りに対応できるものか。
「そう、でしたか。わたくしも花言葉を調べてみます。……ま、貴方のことですからどうせ『復讐』みたいなものなのでしょうね」
なんとかいつも通りを取り繕うことはできた。だが、よく見ている人ならばこれが取り繕われた偽物の表情であることくらい、すぐに分かってしまうだろう。
「あなたという人は……まぁいいでしょう。シオン、でしたっけ。ありがとうございました」
「えぇ、こちらこそありがとうございました」
名前を呼ばれているようで、さっきから私の心臓が落ち着かない。
私は――未だにヴェロールのことが好きなようだ。
まず向かう先は――
「おはようございまーす!わたくしが来ましたよーっと!」
このテンションでもうお分かりだろう。
「料理人のみなさーん!今日は花祭りですよー!」
料理場で私は叫ぶ。真顔で。
あ、ドドリーとカルラはいないのか。嬉しいような、残念なような。
「お、来たきた」
「悪いけど今日は毒味用の料理はないんだ」
「いいですよ、今日は皆様にこれを持ってくるために来たんですから」
そう言って私がバスケットから取り出したのは、ヒマワリ。
「花言葉は知ってますか?」
「知ってるように見えるか?」
「……愚問でしたね、失礼しました。ヒマワリの花言葉は『崇拝』です。これほどまでに美味しい料理を作るあなたたちを、わたくしは崇拝しております。わたくしが料理できるようになったのはあなたがたのお陰ですから」
「……ったく、アイリスさんってば……」
「流石としか言いようがねぇわ、これは」
料理人たちは、やれやれと肩を竦めながら顔を見合わせていた。
「ま、ありがたく貰っとくよ」
「俺たちからは……はい、これ。アイリスちゃんが来るだろうからって、カルラさんが作っておいたよ」
そう言って差し出されたのは――
「ま、まままっま……っ、マカロン様……!しかも花の形……!綺麗です!ありがとうございます……!」
彼らは「はいはい」と言いながら私を追い払った。扱いが酷い!
次に来たのは、城の門。
「ディラス様ー、今日は花祭りですよー」
「いや知ってるし……ってもしかしてこれ、オレに持ってきてくれたの?」
「はい。トリカブトです」
「と、トリカブト!?オレを殺す気!?」
「いいえ?毒性がないものを選んでますから安心してくださいませ」
「安心できない……!まぁいいや、ありがたくもらうよ。ありがとう」
「ちなみに花言葉は……騎士道、」
「騎士!?何なに、もしかしてアイリスちゃんってツンデレなだけで、オレのこと好きなの!?」
「……と、『復讐』です、ディラス様」
ニッコリと言い放ってやれば、
「…………こっわ」
と怯えた目をされた。よし、それでいい、その反応なら私ルートは回避できたはずだ。
次はどこに行こうかな……
「……あ、姫様の」
「…………おはようございます、クローム様」
突然イケメンが目の前に現れれば誰でも驚く。しかもそれが2番目の推しともなれば尚更だ。
「……そうそう、今日は花祭りですよ」
「……そうだね」
「どうぞ、これ」
私が差し出したのは、ゼラニウム。
「……これ、ゼラニウム?」
「はい。クローム様なら花言葉は知ってそうですね」
「……うん。『信頼』、でしょ」
さすがクローム。どこぞの料理バカたちとは違って博識だ。
「そうです。わたくしは貴方を信頼してますよ、クローム様。貴方なら姫様を裏切らない。貴方なら……姫様を幸せにしてくれる。そう、信じています」
「……それって、姫様を、ボクにくれるって、そういうこと……?」
「その通りで……おっと、何でもないです。聞かなかったことにしてくださいまし。……とにかく。わたくしは貴方を信じている、それだけです」
「……そう」
少し残念そうなのは、やはりそういうことなのか、脈アリなのか!?
「……ありがと、貰っとく」
はい好きですその笑顔!ご馳走様です!花祭りの返礼はいりません、貴方の笑顔だけで満腹です……!
ちなみにクロームも返礼をくれた。
『大切な友達』が花言葉の、ライラックという花を貰った。
ちなみに花祭りは、返礼というものがある。今のように、基本は女の子が男の子に花を贈り、男の子も女の子が好きなら返礼をする。もちろん、同性の場合もそうだ。
返礼をされれば、少なからず相手のことを気にかけているということになる。
――まぁ、私もあなたのことが好きです、みたいな意味合いのものがほとんどなのだが――
簡単に言えば、バレンタインパート2みたいなものか。
ちゃんとバレンタインイベントも存在している。
さすが乙女ゲーム、ロマンティックなイベント目白押しだ。
…………さぁ、問題はここからだ。
「これはこれはアイリスさん。こんにちは」
「……こんにちは」
ヴェロールだ。
今日はやけに攻略対象サマとすんなり会える。さすがイベント。ありがたい限りだ。
――だが、彼ばかりはそうは言えない。
タイミングが悪い。
心の準備ができてないんだこっちは。心臓バックバクだぞ。
「おや、今日はいつものように絡んでこないんですね。調子でも悪いんですか?」
「いえ、大丈夫ですよ」
大丈夫じゃねぇよ馬鹿かコイツは。お前のせいだ。
「……とりあえず、これを渡しておきます。花祭りですから」
私はシオンを渡した。
「なんと、まさかアイリスさんから頂けるとは思ってませんでしたよ。ありがとうございます」
「どういたしまして。……じゃあ私はこれで」
「……待ってください」
「……何でしょう」
いいから早くしてくれ、心臓がさっきからやかましいんだ、だから早く!
「……そう嫌そうな顔をしなくてもいいじゃないですか」
「すみません、貴方と喋る時のクセみたいなもので」
「そうでしたか。……貰うだけというのは性に合わないのでね、お返しはしますよ」
そう言って差し出されたのは、ブーゲンビリア。
花言葉は――『あなたは魅力に満ちている』
ダメだ、勘違いするな。違う、彼がこの花を渡してきたことに深い意味は無い。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。……ちなみに、アイリスさんがくれた花の名前を聞いても?」
「……えっと、シオン、です」
どこか言いづらい名前だ。前世の名前が紫苑だったから、言うなれば自己紹介している気分なのだ。
「シオン、ですか……後ほど花言葉を調べてみますね」
「し、調べていただかなくて結構です。ヴェロール様はこの花に何か想いでも込めたんですか?」
いつも通りにするんだ、私。いつも通り、ヴェロールを嘲笑え。
「えぇ、それはもう。あなたにはこの花を贈りたいと思ったのでね。花言葉的に、です」
……これでは言い逃れのしようがない。
ヴェロールは、「わたくし」に、少なくとも悪くは思っていない、しかし彼は私に対して――少なからず、好意を抱いている。
この事実を知ってもなお、いつも通りに対応できるものか。
「そう、でしたか。わたくしも花言葉を調べてみます。……ま、貴方のことですからどうせ『復讐』みたいなものなのでしょうね」
なんとかいつも通りを取り繕うことはできた。だが、よく見ている人ならばこれが取り繕われた偽物の表情であることくらい、すぐに分かってしまうだろう。
「あなたという人は……まぁいいでしょう。シオン、でしたっけ。ありがとうございました」
「えぇ、こちらこそありがとうございました」
名前を呼ばれているようで、さっきから私の心臓が落ち着かない。
私は――未だにヴェロールのことが好きなようだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
社畜の私は異世界でも社畜精神が残ったままだった
木嶋うめ香
恋愛
貴族学園の小さな部屋で、私は一人書類仕事に追われていた。
今日も寮には帰れそうにない、机の上には大量の未処理の書類。
せめて空腹を紛らわそうと、ビスケットを鞄から取り出し水を汲んでこようとして立ち上がった途端、視界が暗くなり倒れた。
床に倒れた反動で、頭を床にぶつける。
その衝撃で思い出した、私は前世ブラック企業に勤めていた社畜で、二十三連勤サービス残業付きの末、体調を崩し亡くなったアラサー営業職だった。
他サイトでもアップしています。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!
ユウ
恋愛
伯爵令嬢ジゼルはある騒動に巻き込まれとばっちりに合いそうな下級生を庇って大怪我を負ってしまう。
学園内での大事件となり、体に傷を負った事で婚約者にも捨てられ、学園にも居場所がなくなった事で悲しみに暮れる…。
「好都合だわ。これでお役御免だわ」
――…はずもなかった。
婚約者は他の女性にお熱で、死にかけた婚約者に一切の関心もなく、学園では派閥争いをしており正直どうでも良かった。
大切なのは兄と伯爵家だった。
何かも失ったジゼルだったが隣国の王太子殿下に何故か好意をもたれてしまい波紋を呼んでしまうのだった。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる