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姫様とディラスの証言
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「まずはわたしから行きますわ。
「わたしは事件の日、アイリスに茶会の準備を頼みました。紅茶と茶菓子の準備をね。
「他のメイドたちに聞いたけど、その日はアイリス以外に茶会用のワゴンに触った人はいないそうよ。
「だったらアイリスが犯人なのはほぼ確定事項だ、ですって?
「……お黙りなさい。アイリスに対する侮辱は、主人であるわたしに対する侮辱と受け取りますわよ?今はわたしが話しているのです。横槍は入れないでいただきたいのですが。
「……静かになりましたわね、大変よろしい。では続きを話しますわ。
「わたしは確かにアイリスが淹れた紅茶を飲んでから倒れましたわ。
「でも、その紅茶からいつもしないような香りがしましたわ。
「飲んだ時には分からなかったけど、後味で分かりましたわ。そう、皆様のお察しの通り……トリカブトの香りですわ。
「ここでひとつ、不思議なことがあるのよ。
「アイリスがディラスに渡したのは、青色のトリカブト。でも凶器として上げられているのは、紫色のトリカブト。
「おかしいと思いませんの?
「アイリスが持っていたトリカブトと、犯人が使ったであろうトリカブトの種類が違うだなんて。
「それに、アイリスが渡したトリカブトは、確かに毒がないものでした。わたしがこの目で確認したわ。
「それにわたしはこの国の王族。人一倍鼻と舌の感覚が鋭くなるように訓練されました。だから分かるのです。
「わたしが飲んだ――飲まされたのは、確かに紫色のトリカブトの毒でしたわ。アイリスがディラスに渡したトリカブトとは違う香りだったのよ。
「それなのに何故、アイリスがこのような場所に立たされているのかしら?
「アイリスは無罪なのに、あたかも有罪であることが確定事項のように振る舞っていますけど。
「そもそもあなたたちはアイリスの主張をしっかり聞いたんですか?
「アイリスはわたしのことが大好きなのよ。それはわたしが1番よく知っているわ。
「アイリスはわたしのためなら何だってするわ。例えば、わたしが殺人を命令すれば迷わず人を殺せるでしょうね。
「それほどまでに異常……失礼、想像を遥かに超える忠誠心を持ったアイリスが、何故わたしを殺さなければならないのかしら?
「わたしは、アイリスに毒殺されかけたわけじゃありませんわ」
姫様は強い意志を瞳に込めながら、民衆に訴えかけた。
民衆は呆然としていた。
わざわざ姫様が証言に来たことに驚く声、姫様がそういうならそうなのかもしれないとうっすら私の方に傾きつつある姿。聞こえるもの、見えるものが少しずつ変わったのが感じられた。
そして私は姫様のそのひとつひとつの言葉が深く胸に刺さった。
姫様は私のことを全面的に肯定し、信頼してくれているということだ。
と感動に浸っていると、今度はディラスが声を張り上げだした。
「じゃあ次はオレが証言するよ!
「……アイリスちゃん、その目はやめようよ。オレがまともな証言をできるはずがないって思ってるんでしょ?
「……とにかく!オレが証言できるのは、ふたつ。
「まずひとつめ。
「オレは花祭りの日、青色のトリカブトをもらった。
「オレの記憶違いとか見間違いとかじゃなくて、オレがもらったのは確かに青色だったよ。
「でも今回凶器になったのは、紫色のトリカブトなんでしょ?
「ならアイリスちゃんは犯人じゃないと思うんだけどな。ま、これはさっき姫様が証言したことと重複してるんだけどね。
「で、ふたつめ。
「オレはもらったトリカブトの花を、確かにオレの部屋の花瓶に挿した。毎日嫌でも目に付くところに置いてあるから確実な情報だよ。
「じゃあもし仮にアイリスちゃんがくれたトリカブトが凶器だったとして、犯人はどうやってオレの部屋から持ち出したのかな?
「アイリスちゃんぐらいの身分なら、よっぽどのことがない限りオレたちが住んでる騎士塔には出入りできない。入るにしたって検閲門ってとこで詳しく事情聴取みたいなことされるんだよ。
「まぁアイリスちゃんなら窓から入る、なんてのは朝飯前なんだろうけど。でも、他の騎士たちや検閲門にいる検閲官は怪しい人物は見ていないって言ってたんだよね。
「そもそも、オレがアイリスちゃんから貰ったトリカブト、まだオレの部屋の花瓶に飾ってあるんだよね。
「だから思うんだ。
「犯人はアイリスちゃんじゃない、他に誰かいるってね。
「まぁ、オレの憶測を超えない話だけどね」
ディラスは言っても騎士だ。平生なら姫様の言葉の方が圧倒的な影響力を持っている。しかし、何よりディラスはトリカブトを受け取った張本人。民衆も姫様の言葉だけではなく、当事者であるディラスの言葉にも耳を傾けざるを得ないだろう。そして、多くの民衆は思った。
――もしかしてアイリスとやらは犯人ではないのかもしれない。
「わたしは事件の日、アイリスに茶会の準備を頼みました。紅茶と茶菓子の準備をね。
「他のメイドたちに聞いたけど、その日はアイリス以外に茶会用のワゴンに触った人はいないそうよ。
「だったらアイリスが犯人なのはほぼ確定事項だ、ですって?
「……お黙りなさい。アイリスに対する侮辱は、主人であるわたしに対する侮辱と受け取りますわよ?今はわたしが話しているのです。横槍は入れないでいただきたいのですが。
「……静かになりましたわね、大変よろしい。では続きを話しますわ。
「わたしは確かにアイリスが淹れた紅茶を飲んでから倒れましたわ。
「でも、その紅茶からいつもしないような香りがしましたわ。
「飲んだ時には分からなかったけど、後味で分かりましたわ。そう、皆様のお察しの通り……トリカブトの香りですわ。
「ここでひとつ、不思議なことがあるのよ。
「アイリスがディラスに渡したのは、青色のトリカブト。でも凶器として上げられているのは、紫色のトリカブト。
「おかしいと思いませんの?
「アイリスが持っていたトリカブトと、犯人が使ったであろうトリカブトの種類が違うだなんて。
「それに、アイリスが渡したトリカブトは、確かに毒がないものでした。わたしがこの目で確認したわ。
「それにわたしはこの国の王族。人一倍鼻と舌の感覚が鋭くなるように訓練されました。だから分かるのです。
「わたしが飲んだ――飲まされたのは、確かに紫色のトリカブトの毒でしたわ。アイリスがディラスに渡したトリカブトとは違う香りだったのよ。
「それなのに何故、アイリスがこのような場所に立たされているのかしら?
「アイリスは無罪なのに、あたかも有罪であることが確定事項のように振る舞っていますけど。
「そもそもあなたたちはアイリスの主張をしっかり聞いたんですか?
「アイリスはわたしのことが大好きなのよ。それはわたしが1番よく知っているわ。
「アイリスはわたしのためなら何だってするわ。例えば、わたしが殺人を命令すれば迷わず人を殺せるでしょうね。
「それほどまでに異常……失礼、想像を遥かに超える忠誠心を持ったアイリスが、何故わたしを殺さなければならないのかしら?
「わたしは、アイリスに毒殺されかけたわけじゃありませんわ」
姫様は強い意志を瞳に込めながら、民衆に訴えかけた。
民衆は呆然としていた。
わざわざ姫様が証言に来たことに驚く声、姫様がそういうならそうなのかもしれないとうっすら私の方に傾きつつある姿。聞こえるもの、見えるものが少しずつ変わったのが感じられた。
そして私は姫様のそのひとつひとつの言葉が深く胸に刺さった。
姫様は私のことを全面的に肯定し、信頼してくれているということだ。
と感動に浸っていると、今度はディラスが声を張り上げだした。
「じゃあ次はオレが証言するよ!
「……アイリスちゃん、その目はやめようよ。オレがまともな証言をできるはずがないって思ってるんでしょ?
「……とにかく!オレが証言できるのは、ふたつ。
「まずひとつめ。
「オレは花祭りの日、青色のトリカブトをもらった。
「オレの記憶違いとか見間違いとかじゃなくて、オレがもらったのは確かに青色だったよ。
「でも今回凶器になったのは、紫色のトリカブトなんでしょ?
「ならアイリスちゃんは犯人じゃないと思うんだけどな。ま、これはさっき姫様が証言したことと重複してるんだけどね。
「で、ふたつめ。
「オレはもらったトリカブトの花を、確かにオレの部屋の花瓶に挿した。毎日嫌でも目に付くところに置いてあるから確実な情報だよ。
「じゃあもし仮にアイリスちゃんがくれたトリカブトが凶器だったとして、犯人はどうやってオレの部屋から持ち出したのかな?
「アイリスちゃんぐらいの身分なら、よっぽどのことがない限りオレたちが住んでる騎士塔には出入りできない。入るにしたって検閲門ってとこで詳しく事情聴取みたいなことされるんだよ。
「まぁアイリスちゃんなら窓から入る、なんてのは朝飯前なんだろうけど。でも、他の騎士たちや検閲門にいる検閲官は怪しい人物は見ていないって言ってたんだよね。
「そもそも、オレがアイリスちゃんから貰ったトリカブト、まだオレの部屋の花瓶に飾ってあるんだよね。
「だから思うんだ。
「犯人はアイリスちゃんじゃない、他に誰かいるってね。
「まぁ、オレの憶測を超えない話だけどね」
ディラスは言っても騎士だ。平生なら姫様の言葉の方が圧倒的な影響力を持っている。しかし、何よりディラスはトリカブトを受け取った張本人。民衆も姫様の言葉だけではなく、当事者であるディラスの言葉にも耳を傾けざるを得ないだろう。そして、多くの民衆は思った。
――もしかしてアイリスとやらは犯人ではないのかもしれない。
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