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幕間② アイリス嬢の救出Ⅱ
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場所は変わり、リエールの王宮にて。
「おい、ナピスにアイリスがいると法螺を吹いたのは誰だ?今すぐ極刑にしてやる」
「うわー……顔笑ってないしマジトーンだし口調違いすぎるしマジでこっわー。……まあいいや、とにかくほら、落ち着いて。ね?さ」
「そうよ、誰かを責め立ててもアイリスは帰ってきませんわ。早く新しい情報を仕入れねばなりませんのよ」
リエールの王女、ベルベット姫がヴェロール、ディラスを部屋に招いてアイリス救出に関わる近況報告をしていた。
この雰囲気から察せられるように、アイリスはまだ見つかってはいない。
ナピスにいるかもしれないという情報を聞き、ヴェロールはすぐにそこに向かった。が、アイリスを乗せた馬車はヴェロールがそこに着くよりも先にナピスを出ていた。完全に入れ違いになってしまった。
「……そうですね、私めらしくないことをしました。すみません」
「いえ、いいのよ。そうなる気持ちも分かるもの」
「……それにしたってアイリスちゃん、どこに連れてかれたのかなぁ……なぁんて、愚問かな。十中八九、アステアだろうね」
「えぇ、そうでしょう。彼らはおそらく、姫様のお気に入りを攫って人質にし、何かしら交渉するつもりなのでしょう」
三人はみな、溜息をついた。
……その時、この部屋の扉がノックされる音が聞こえた。か細く、今でなければ聞き漏らしていたかもしれない音が。
「じゃあオレが出ます。……はいはーい、どちらさんですか?」
ディラスが扉を開けるとそこには、まばゆく光る金髪を上の方でツインテールにした者がいた。
誰だこの子は……こんな可愛い子王宮にいたっけ、と首を傾げるディラスを押しのけ、前へ出たのはヴェロールだった。
「ルーナ!」
……おやおやぁ、これはまさかヴェロールの恋人登場で急展開を迎えるのか?修羅場になっちゃうのか?
ディラスはそう(面白半分に)思ったが、しかしそれは杞憂だった。
「ヴェロール様はこちらにいらっしゃると神官に聞きまして、失礼とは存じますがここまで来てしまいました」
ルーナと呼ばれたその者は、扉から顔を覗かせて姫様と目を合わせ、深々と礼をした。
「いいのよ、気にしないでちょうだい。……それで、ヴェロールに何か用かしら?」
「事件に関わっていた者が分かりましたので、そのご報告に」
「……なるほど。あなた確かルーナと言ったかしら。入りなさい」
「……失礼致します」
ルーナは恭しく礼をし、部屋に入った。そして先程割って入ってきたヴェロールは、近辺に誰もいないことを確認してそっと扉を閉めた。
「……それで、アイリス誘拐事件に関わったのは誰なのかしら?」
「関わったと言いますか、首謀者とも言いますか……その者の名を、ルーノと言います」
「ルーノ……ですか。どこかで聞いたような名ですが……その者は一体何者なんです?」
「……この人はあたしの実の兄、なんです」
そう言い放った途端、この部屋は静寂に包まれた。
「……道理で。あなたからお兄様の話は少し聞いています。アステアで護衛をしていると聞いたはずなのですが……」
「何故あなたの兄がアイリスを誘拐したのかしら?わたしはそこが聞きたいわ」
姫がそう言うと、ルーナはぽつりぽつりと話し出した。
◆◆◆
「……あたし、というかあたしたち、孤児だったんです。
「生まれた時にはもう親はいなくて。物心ついた時に周りにいたのは、孤児院のみんなでした。
「あたしたちは孤児院で育って、それで……10になった時、決断を迫られたのです。
「あたしに許されたのは、シスターになるか、身寄りもなくあたしたちふたりで下町で暮らすかというふたつの道だけ。
「兄に許されたのは、職を斡旋してもらってどこかで働くか、あたしとふたりで下町で暮らすかというふたつの道。
「あたしは兄とふたりで下町で暮らす気でいました。あたしには何もないけど、ふたりならどんな壁も乗り越えられるだろうって思ってました。でも……兄は違いました。
「兄は体格が良く、運動も勉学もそれなりにできる人間でした。だから色々職を斡旋してもらえたんですけど。
「その中に、あったんですよ。――隣国の第三王子の護衛役っていうのが。
「兄は体力に自信がありました。それに給金もそれなりに弾む。
「兄は、アステアに行って護衛になりました。
「だからあたしはシスターになるしかなくて、今はこんなです。
「……それで、兄とはたまに連絡を取り合ってるんですけど、つい昨日の夕方、こんな連絡が来まして。
「――リエールのえげつない人外じみたメイド、姫と間違えて連れてきちゃったって。
「人外じみたメイド……おそらくアイリスさんのことですよね。
「……皆さん強く首肯しすぎじゃないですか。失礼にも程がありますよ。
「……とにかく。あたしの兄はアイリスさんを誘拐した犯人と見て間違いなさそうです。
「……あと、最後にひとつ。これは兄から聞いたことなんですけれども。
「今、アステアは危機を迎えています。
「わざわざ10になったばかりの孤児に第三王子の護衛を頼むなんて、おかしいと思いません?
「……今、アステアでは人手も物資も、何もかも足りない状況です。猫の手も借りたいってやつです。
「それで、姫様を攫え、と命令が出たそうなのです。目的は分かりません、が……間違えてアイリスさんを攫ってしまったみたいで。アイリスさんは今、第三王子のメイド兼護衛してるそうですよ」
◆◆◆
「……ほう?」
最初に口を開いたのはヴェロールであった。
「アイリスは、姫様がいながら第三王子に仕えていると?会員番号1番でありながら?……ふふっ、面白いことになりましたね。…………次会った時、覚えてろよ」
絶対零度の笑みを零したヴェロールを、ディラスがビクビクしながらもたしなめた。
「まぁまぁ、向こうにも事情があったんでしょ。この際仕方ないとしか言えないけど、問題はそこじゃないよね」
「そうね……目下の問題は、どうやってアイリスを救い出すか、よ」
姫がそう言うと、皆の顔には一気に影が落ちた。
「あ、それであたしに考えがあるんですけど」
場の雰囲気を変えたのは誰であろう、アイリス誘拐事件の首謀者(仮)の妹、ルーナだった。
「兄に聞けば、誰がこの事件の黒幕か分かるのではないでしょうか?」
「おい、ナピスにアイリスがいると法螺を吹いたのは誰だ?今すぐ極刑にしてやる」
「うわー……顔笑ってないしマジトーンだし口調違いすぎるしマジでこっわー。……まあいいや、とにかくほら、落ち着いて。ね?さ」
「そうよ、誰かを責め立ててもアイリスは帰ってきませんわ。早く新しい情報を仕入れねばなりませんのよ」
リエールの王女、ベルベット姫がヴェロール、ディラスを部屋に招いてアイリス救出に関わる近況報告をしていた。
この雰囲気から察せられるように、アイリスはまだ見つかってはいない。
ナピスにいるかもしれないという情報を聞き、ヴェロールはすぐにそこに向かった。が、アイリスを乗せた馬車はヴェロールがそこに着くよりも先にナピスを出ていた。完全に入れ違いになってしまった。
「……そうですね、私めらしくないことをしました。すみません」
「いえ、いいのよ。そうなる気持ちも分かるもの」
「……それにしたってアイリスちゃん、どこに連れてかれたのかなぁ……なぁんて、愚問かな。十中八九、アステアだろうね」
「えぇ、そうでしょう。彼らはおそらく、姫様のお気に入りを攫って人質にし、何かしら交渉するつもりなのでしょう」
三人はみな、溜息をついた。
……その時、この部屋の扉がノックされる音が聞こえた。か細く、今でなければ聞き漏らしていたかもしれない音が。
「じゃあオレが出ます。……はいはーい、どちらさんですか?」
ディラスが扉を開けるとそこには、まばゆく光る金髪を上の方でツインテールにした者がいた。
誰だこの子は……こんな可愛い子王宮にいたっけ、と首を傾げるディラスを押しのけ、前へ出たのはヴェロールだった。
「ルーナ!」
……おやおやぁ、これはまさかヴェロールの恋人登場で急展開を迎えるのか?修羅場になっちゃうのか?
ディラスはそう(面白半分に)思ったが、しかしそれは杞憂だった。
「ヴェロール様はこちらにいらっしゃると神官に聞きまして、失礼とは存じますがここまで来てしまいました」
ルーナと呼ばれたその者は、扉から顔を覗かせて姫様と目を合わせ、深々と礼をした。
「いいのよ、気にしないでちょうだい。……それで、ヴェロールに何か用かしら?」
「事件に関わっていた者が分かりましたので、そのご報告に」
「……なるほど。あなた確かルーナと言ったかしら。入りなさい」
「……失礼致します」
ルーナは恭しく礼をし、部屋に入った。そして先程割って入ってきたヴェロールは、近辺に誰もいないことを確認してそっと扉を閉めた。
「……それで、アイリス誘拐事件に関わったのは誰なのかしら?」
「関わったと言いますか、首謀者とも言いますか……その者の名を、ルーノと言います」
「ルーノ……ですか。どこかで聞いたような名ですが……その者は一体何者なんです?」
「……この人はあたしの実の兄、なんです」
そう言い放った途端、この部屋は静寂に包まれた。
「……道理で。あなたからお兄様の話は少し聞いています。アステアで護衛をしていると聞いたはずなのですが……」
「何故あなたの兄がアイリスを誘拐したのかしら?わたしはそこが聞きたいわ」
姫がそう言うと、ルーナはぽつりぽつりと話し出した。
◆◆◆
「……あたし、というかあたしたち、孤児だったんです。
「生まれた時にはもう親はいなくて。物心ついた時に周りにいたのは、孤児院のみんなでした。
「あたしたちは孤児院で育って、それで……10になった時、決断を迫られたのです。
「あたしに許されたのは、シスターになるか、身寄りもなくあたしたちふたりで下町で暮らすかというふたつの道だけ。
「兄に許されたのは、職を斡旋してもらってどこかで働くか、あたしとふたりで下町で暮らすかというふたつの道。
「あたしは兄とふたりで下町で暮らす気でいました。あたしには何もないけど、ふたりならどんな壁も乗り越えられるだろうって思ってました。でも……兄は違いました。
「兄は体格が良く、運動も勉学もそれなりにできる人間でした。だから色々職を斡旋してもらえたんですけど。
「その中に、あったんですよ。――隣国の第三王子の護衛役っていうのが。
「兄は体力に自信がありました。それに給金もそれなりに弾む。
「兄は、アステアに行って護衛になりました。
「だからあたしはシスターになるしかなくて、今はこんなです。
「……それで、兄とはたまに連絡を取り合ってるんですけど、つい昨日の夕方、こんな連絡が来まして。
「――リエールのえげつない人外じみたメイド、姫と間違えて連れてきちゃったって。
「人外じみたメイド……おそらくアイリスさんのことですよね。
「……皆さん強く首肯しすぎじゃないですか。失礼にも程がありますよ。
「……とにかく。あたしの兄はアイリスさんを誘拐した犯人と見て間違いなさそうです。
「……あと、最後にひとつ。これは兄から聞いたことなんですけれども。
「今、アステアは危機を迎えています。
「わざわざ10になったばかりの孤児に第三王子の護衛を頼むなんて、おかしいと思いません?
「……今、アステアでは人手も物資も、何もかも足りない状況です。猫の手も借りたいってやつです。
「それで、姫様を攫え、と命令が出たそうなのです。目的は分かりません、が……間違えてアイリスさんを攫ってしまったみたいで。アイリスさんは今、第三王子のメイド兼護衛してるそうですよ」
◆◆◆
「……ほう?」
最初に口を開いたのはヴェロールであった。
「アイリスは、姫様がいながら第三王子に仕えていると?会員番号1番でありながら?……ふふっ、面白いことになりましたね。…………次会った時、覚えてろよ」
絶対零度の笑みを零したヴェロールを、ディラスがビクビクしながらもたしなめた。
「まぁまぁ、向こうにも事情があったんでしょ。この際仕方ないとしか言えないけど、問題はそこじゃないよね」
「そうね……目下の問題は、どうやってアイリスを救い出すか、よ」
姫がそう言うと、皆の顔には一気に影が落ちた。
「あ、それであたしに考えがあるんですけど」
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