夜くらいゆっくり眠らせろ

空夜 喜雨

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1人目 眠るまでは今日である

はじめから諦めている

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掛け持ちのバイトを見つけようと考えて、1週間。

変わってしまった生活に馴染むのに必死だったのだ。大学への手続きや、友人からの心配の声に適当に返信をしていた。学生証以外にも図書館で借りていた本を返したり、ゼミの担当に連絡をしたりした。派遣のバイトは、賑やかなところで笑顔を振り撒く元気がなかった。その分、コンビニのシフトを増やしてもらった。

水夜みよ君、無理しないでね?店長としてはシフトを増やしてくれるの嬉しいけど…若いからって無理すると、店長くらいの時にこうなっちゃうよ。」

心配そうに僕の顔を見つめてくる店長は、LEDライトによく反射する頭を撫でながら言っていた。

「大丈夫です。また大学受験するときのために少しでも貯めときたくて。」

「そうなの?一度実家に帰って、気持ちを落ち着かせてもいいんじゃないかなぁ。親御さんも心配してるでしょ?」

その言葉に僕は曖昧に微笑む。
母親はしているだろう。息子に頼ってしまったダメな親だと泣いていたのを覚えている。
お米はあるのとか、トイレットペーパー買ってるのとか、帰ってきたくないかもしれないけどきついなら帰っておいでとか。
2日に1度は連絡がきている。

父親は休学すると連絡して、一言だった。

身の丈にあったことをしないからだ

「水夜くん?」

「あっすいません。品だししときますね。」

また心配そうにする店長に、頭を下げてパンコーナーに向かう。

重く深く、汚い感情になりそうだった。

大丈夫。大丈夫。
そう自分に言い聞かせながら、パンを並べる。

「でさぁ~、関係行政論のあいつ。」

「出席絶対確認野郎ね。」

「そう!あいつの期末レポート意味わからん。明日までやろ?」

「うわ。だる。なぁ俺んちで今日2人でやろうぜ。1人とか寝落ちるのが目に見えてる。」

「お前単位ヤバイくせに呑気だな。」

アルコールコーナーにいた、おそらく元同じ大学に通っているであろう男たちが楽しそうに会話をしていた。あんな風に、ふざけていたんだよな。

金がないなりに、笑いあって。
必死に期日に間に合うように、電話しながらレポートをして。単発の割りのいいバイトを見つけては連絡をして。
ただ、普通に。

「あー、すいませーん。おねがいします!」

「はーい!」

大学生2人に声をかけられ、レジへと向かう。

操作をしながら、また繰り返していた。

大丈夫、大丈夫。
まだ僕は立ち止まっていない。


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