13 / 29
東の大陸
魔導が好調の鬱陶しい
しおりを挟む
これでヒュリアの敵と戦えんじゃねぇ?
しかも治癒術もあるじゃん!
マジ嬉しいんだけど!
つまり、こうやって盟友を登録してけば、僕の力はどんどん増えていくってことですよね。
だけど問題があります。
それは耶代からの指示がないと登録ができないところです。
僕発信で登録したいと思っても、方法がどこにも見当たらないのです。
つまり全て『耶代』だのみってことです。
なんかムカつく。
でも今はとにかく、ヒュリアに報告しときましょう。
「ヒュリア! なんか炎魔導術と治癒術を取得しちゃったんだけど! しかも、どっちも『四冠』だってさ! これで君の役に立てるかもしれないよ!」
ヒュリアは意味がわからないようで、顔が?マークになってます。
「たぶん、『盟友登録』の効果だと思うんだ」
「そんなことが本当にあるのか……? 『四冠』といえば中級の魔導師だぞ」
困惑気味のヒュリア。
まあ信じられなくて当然でしょうね。
だってさっきまで家事しかできない、メイド地縛霊だったんですから。
魔導の力ってものは、生まれながらに人に備わっているのですが、最初は『十冠』か、『九冠』クラスだそうです。
その程度だと魔導師といえるほどの力は出せません。
炎摩導ならせいぜい、指先に火をともすぐらいだそうです。
100円ライターと同じですな。
魔導師と呼ばれるには、少なくとも『六冠』まで導迪を成長させなければなりません。
そのためには本人の才能と努力が必要なのです。
だから高位の魔導師を目指す人は、そりゃもう、寝る間も惜しんで修練するんだそうです。
もし、昨日まで全く使えなかった奴が、いきなり『四冠』になったって聞いたら、真面目に修練してる人は、絶対ブチギレるでしょうね。
「中級の魔導師っていうと、どのくらいの力なのかな?」
「だいたい標準の魔導師は『五冠』だから、それより上といういことになる。国の要職に付くこともできる、かなり有用な存在と言っていい」
ヒュリアの話では、今現在、魔導の最高位である『一冠』の魔導師はいないそうです。
公式に、一番高位と認められている魔導師は『正統魔導国オクル』の三統括と呼ばれる三人で、『二冠』だそうです。
「そもそも『一冠』の魔導師は存在できないと言われてるんだ。『一冠』になると、霊核がその力に耐えられず自壊し、人は死んでしまうらしい」
「じゃあ、今まで『一冠』になった人は、いないってこと?」
「いいや、私の知るかぎり、一人だけいる。聖師フゼイフェだ」
「ああ、そゆことなのねぇ」
「ただ、それは人間に限定したときの話でね。妖精族を含めると、人数は増えると思う。彼らは魔導との親和性が高いからね。――実は賢者アイダンも『一冠』だったという話だ」
だからフゼイフェさんも、アイダンさんも三傑として認められてて、聖師とか賢者なんていう大そうな二つ名がついてるんですね。
「そういうわけで、魔導師の高みを目指す人間は皆、聖師フゼイフェを尊敬してやまない。『聖政天授国マリフェト』の国民などは、地母神様や霊龍様と同様に信仰しているんだ」
『正統魔導国オクル』はアイダンの弟子が、『聖政天授国マリフェト』はフゼイフェの養女が建てたんだそうです。
「ところがだ、最も賢者や聖師に敬意を払うべき魔導王国オクルは、なぜか微妙な態度でね。賢者のことも聖師のことも、どこか軽視している雰囲気がある。何らかの政治的思惑があるのかもしれないが、理由は定かではないんだ」
腑に落ちないようで首を傾てるヒュリア。
まあ、国の政治なんて大人の事情で雁字搦めですからね。
そんなことより、いい機会なんで、ずっと気になってことを聞いてみようと思います。
「えーと、そのぉ……、ヒュリアは以前、魔導が使えてたんでしょ?」
「ああ」
「『三冠』だったら、オクルのお偉いさんの一つ下ってことだよね。かなりスゴいことなんじゃないの?」
「うん、まあ、そうだね……。当時の私は『氷刃の皇女』なんて呼ばれて、いい気になっていたんだ。今思うと顔から火が出そうなほど恥ずかしくなるよ」
両手で顔を隠すヒュリア。
大丈夫だよ、って頭をポンポンしたくなりますね。
魔導師には『元素照応性』ってものがあり、原則、一個人が使役できる元素は一種類に限られるそうです。
つまり炎の元素が使役できるなら、その他の氷とか水の元素は使えません。
『氷刃』って言うからには、以前ヒュリアは氷の元素魔導が使えてたんでしょう。
「それでぇ……、ちょっと聞きにくいんだけどぉ……」
「なんだ、私と君の仲だ。かしこまることはないぞ」
私と君の仲……。
甘美な響き……。
「――断迪刑って痛かった?」
刑罰を受けたって聞いてから、ずっと心がモヤモヤしてました。
こういうのはホント、気分が悪くなります。
「いいや、薬をもられ、眠っている間に執行されたから、痛みも何も感じなかった。私の魔導を恐れたケメットとメシフが命じたのだろう」
権力にとりつかれた人間って、ホントどうしょもない奴らですよね。
「メシフのことを傲慢と罵りはしたが、昔の私も、かなり傲慢だったと言わざるを得ない。自分の魔導を過信して、未熟な者を見下していたんだ。自分こそが次の英雄だと自惚れてもいた。だが魔導を失い、周囲から蔑んだ目を向けられて初めて、それまで見下してきた人達の気持ちがわかるようになった。だから今はこう考えている。きっと神が、彼らの気持ち理解させるために、私から魔導を奪ったんだとね」
良い統治者になるには、できるだけ多くの人の気ちを理解できなければならないってことでしょうか。
若いのに大したもんだ、ヒュリア!
あんたについてくぜ!
深く息を吐いたヒュリアは、自嘲気味に笑います。
「ところでツクモ、良かったら君の術法を見せてくれないか」
「あっ、そうだね。そんじゃ治癒術から、いってみようか。ついでに君の脚の傷治しちゃえば一石二鳥ってわけだし。――じゃあ、ちょっと見せてみて」
ヒュリアの太腿の傷はまだ治っていません。
ならばこの際、治癒術で完治させてしまいましょう。
てなわけで、早速実践しようとしたんですが、いきなりコンプラにひっかかりそうな事案が発生してしまいましてぇ……。
普段、包帯を変えるときは、ズボンを巻上げて処置してるんですけどぉ……。
今日は、そうくるかぁ……。
さっさとズボンを脱ぎ捨てたヒュリアが、セクシーなパンツ姿を披露してくれとるわけです。
「あのさ、全部脱がなくてもいいんだよ」
一応、目を逸らしながら伝えます。
「いいや、魔導を初めて実践するんだ。なるだけ不要なものは除いておいた方がいい」
と、皇女様は仰りまして……。
確かに脱いでくれた方が、処置はしやすいんですけど……。
はぁぁ、全くぅぅ……。
どうして、この娘はこうも簡単に脱ぐんでしょうかねぇ……。
お風呂に入った後なんかも、全裸でウロつくし。
服着るようにお願いしても、汗がひくまでは着るべきでないとか言うてるし。
裸族なのか?
見せつけてるのか?
僕としては、困るというか、嬉しいというか。
いや、嬉しいってのは違うか。
椅子に座ると上着の裾からのぞく魅惑の三角地帯がより強調されまして……。
なんかこう全裸よりも、エロさが増すというか、なんというか……。
そこに目がいかないように治癒術に全集中しなくてはいけません。
はい、集中、集中!
包帯を取ると、傷口の赤黒さが強くなっていました。
壊死が進んでるのかもしれません。
「えーと、どうすればいいのかな?」
今までは何も考えずに『耶代』の機能や家事全般の儀方が使えてました。
たぶん『耶代』がバックアップしてくれてたんでしょう。
でもこれは『耶代』を介しない、僕個人の力なので、今まで通りでいいのかどうか……。
「これまでと同じようにやってみてくれ。何しろ耗霊が魔導を使うなんて初めて見るからね」
「わかったよ」
とりあえず異世界アニメで見たように傷口に手をかざし、治れって念じてみました。
だけど、いくら待っても何も起こりません。
「うむ、上手くいかないようだね。――魔導師が初めて修練する場合、先に自分の霊核の状態を確認するんだが……。死者には霊核が無いしな……」
ヒュリアは口に拳を当てて、考え込んでます。
「霊核ってさ、霊器と同じってことにはならないのかな?」
「なるほど……。君の本体は霊器にあるんだったね……。確かに霊が宿るという意味で、霊器と霊核は類似している。ならばまずは、自分の内面世界にある霊器とのつながりを見つけてみてくれ」
「霊器とのつながりかぁ……」
言葉の意味はわかりますが、具体的にどうすればいいかさっぱりわかりません。
仕方なく目を閉じて、瞑想してみました。
瞼は焼けてっから閉じられないだろうって?
文学的表現なのですよぉぉだっ。
真暗な心の中を彷徨ってると、かなり深いところに、紫色に光るものを見つけました。
近づくと『倉庫』にあるのと同じ涙滴型をした宝石です。
ただし、大きさは僕の三倍ぐらいあります。
人間の霊核も内面世界では、かなり大きいらしいです。
ヒュリアに聞いたら、これが霊器との繋がりってことで良いようでした。
内側をのぞいてみると、そこには青い光の粒子と赤い光の粒子が無数に飛び交っています。
青いのが恃気で赤いのが英気だそうです。
「恃気がどんなものか理解できたなら、それが掌に集まるように導くんだ。すると掌が青く光り始める。次に傷が治るように念じながら、恃気を傷に注ぐような動作を思い描いてみてくれ」
「了解」
指示に従って、霊器から恃気を掌へ導きます。
今度はスムーズに掌に恃気が集まってっくれました。
掌が青く光ったところで傷が治るように念じます。
すると赤い英気の粒子までもが集まってきます。
そして両者は混ざり合い、薄い赤紫色に光始めたのでした。
「英気が混ざっちゃったけど、大丈夫なのかなっ?!」
「ああ、それで良いんだ。治癒術には英気も必要なんだよ」
ビビってる僕を安心させるように、ヒュリアは深く頷きます。
最後に、光ってる掌を傷口にかざし、恃気を注いでるところを想像しました。
すると、薄紫色の光が、水のように掌からトロトロと傷に流れこんでいったんです。
そしてあるとき、傷口が一瞬紫色に輝いたかと思うと、すぐに消えました。
「見てみろ、治ってるぞ」
満足げなヒュリアの顔。
彼女の言う通り、あのひどい矢傷は、きれいさっぱり無くなっていました。
よっしゃあ!
すっごいね、治癒術!
僕もこれで魔導師だぜっ!
「ありがとう、ツクモ」
可憐に微笑むヒュリア。
てぇてぇなぁ。
「ならば、次は炎魔導の方を見せてもらおうか」
炎を使うってことで、とりあえず外へ出ます。
おっと、安心してください、ズボン、はいてますよ。
「元素魔導術を行うときに必要なことを説明するよ」
暗い空に浮かぶ白の月が、いつも通り僕らを照らします。
「元素魔導術には、治癒術と比べたとき、大きく異なる点があるんだ。それは元素の姿を常に心に思い浮かべながら行うということなんだ。それを『心措』という。これは魔導の基礎的な作法である、『施法』の一つなんだ……」
『心措』とは、術の実行中、常に元素のイメージを心にもっておくことだそうです。
たとえば炎魔導なら、炎が燃えてるイメージです。
イメージを途切れさせると周囲の元素は反応しなくなり炎は消えてしまうのです。
「『施法』には『心措』以外にも、いくつか重要な作法がある。主要なものを挙げるなら『発動の態様』、『場の威勢』、『率導』、『充典』だ」
『発動の態様』は、恃気を『どのように発動させるのか』ということです。
治癒術のときに、水を注ぐような動作を思いうかべましたが、あれは治癒術を発動させるときに最もよく使われる態様だそうです。
『発動の態様』は、元素の種類、術法の違い、術者の好みや考え方で様々に変化します。
たとえば元素を弾のように撃ち出す『元素弾』という技があります。
この技は、炎や氷などの元素ならできますが、光と闇の元素では、弾として撃出すという態様をとることができません。
これは元素の種類からくる違いです。
「私を襲った三人の騎士の魔導を覚えているか?。あのとき水魔導を使った者がいただろう。あいつの水魔導は、水を弾として撃出すのではなく、指先から持続的に水流を発し、その力で根を切断するというものだった。もちろん『水弾』とすることも可能だし、その態様をとる魔導師の方が多いかもしれない。これは術者の好みによる違いとなる」
ヒュリア教官のお話、ためになるのでありますっ!
敬礼!
「次に『場の威勢』についてだが、これは術を発動する『場所』の問題になる。普通の場所と、火災で周囲が燃えているような場所では、炎摩導を使うとき、術者への負担の大きさ、術の強さ、持続時間に違いが出る。子供でもわかるだろうが、当然、周囲が燃えている場所の方が炎摩導を使う者に有利となる。だから、たとえ『冠位』が低くても、『場の威勢』によって、上位の魔導師を退けることも可能というわけだ」
ヒュリア教官、わかりやすいのであります!
敬礼!
「土魔導や風魔導は、基本的な攻撃力は、あまり高くないが、『場の威勢』に最も恵まれているために、炎や氷とも互角に戦える場合がある。土や空気が無い場所なんて滅多にないからな。――ヤルタクチュも、周囲の土を使うことで、騎士達の魔導を押さえ込むことができていただろう?」
ヒュリア教官、凛々しいのであります!
敬礼!
「次は『率導』だ。これは発動後、術の効果を、使った分の恃気が尽きるまで、自在に操るというものだ」
ヒュリア教官、美しいのであります!
敬礼!
「三人の騎士のうちで、わかりやすいのは風魔導を使った者だろう。あいつは風の元素をまず旋風として発動させた後、自在に動かし、周囲の根を粉砕していた。あれが率導だ。ヤルタクチュが土魔導を発動後に、壁の状態になるように土を操って攻撃を防いでいたのも同じものだ」
ヒュリア教官、エモいのであります!
敬礼!
「――ツクモ、私が話し終わるたびに、直立不動になって額に手をかざしているが、それは何の仕草なんだ?」
ちょっと冷たいヒュリアの視線。
「これはニホンノトウキョウ式の敬礼なんだよ」
「なるほど、そういうことか。――私の話に敬意をはらってくれるのはありがたいが、もうやらなくていいぞ。少し鬱陶しい」
ごめんなさぁい、ケロケぇロ。
「最後に充典について話そう。これは恃気を十分に貯めてから発動させるというものだ。同じ『炎弾』を撃ちだす場合でも、すぐに撃つより、恃気を貯めてから撃った方が、威力が格段に強まるのは当然だろう。ただし時間がかかるのが欠点だがね」
なるほど、溜め撃ちってことね。
「ここまでの炎魔導の術の流れを総括してみよう。まず心に炎の心措を映し、恃気を手などに導き、対象を燃やすように念じ、炎弾などの術の態様を選択して思い描く。そして発現した炎弾を率導で操り、弾の軌道を変化させるなどして攻撃するわけだ。さらに炎弾を撃つ前に充典で威力を増すこともできる、という具合だな」
「これって、いちいち考えるんだよね」
「そうだ。魔導師はこの判断を一瞬で、できるように日々修練している」
うへっ!
むつかしいっすねぇ!
やっぱ現実はラノベより大変だわ!
そんな僕の心を読んだかのように、ヒュリアは悪戯っぽく微笑みました。
しかも治癒術もあるじゃん!
マジ嬉しいんだけど!
つまり、こうやって盟友を登録してけば、僕の力はどんどん増えていくってことですよね。
だけど問題があります。
それは耶代からの指示がないと登録ができないところです。
僕発信で登録したいと思っても、方法がどこにも見当たらないのです。
つまり全て『耶代』だのみってことです。
なんかムカつく。
でも今はとにかく、ヒュリアに報告しときましょう。
「ヒュリア! なんか炎魔導術と治癒術を取得しちゃったんだけど! しかも、どっちも『四冠』だってさ! これで君の役に立てるかもしれないよ!」
ヒュリアは意味がわからないようで、顔が?マークになってます。
「たぶん、『盟友登録』の効果だと思うんだ」
「そんなことが本当にあるのか……? 『四冠』といえば中級の魔導師だぞ」
困惑気味のヒュリア。
まあ信じられなくて当然でしょうね。
だってさっきまで家事しかできない、メイド地縛霊だったんですから。
魔導の力ってものは、生まれながらに人に備わっているのですが、最初は『十冠』か、『九冠』クラスだそうです。
その程度だと魔導師といえるほどの力は出せません。
炎摩導ならせいぜい、指先に火をともすぐらいだそうです。
100円ライターと同じですな。
魔導師と呼ばれるには、少なくとも『六冠』まで導迪を成長させなければなりません。
そのためには本人の才能と努力が必要なのです。
だから高位の魔導師を目指す人は、そりゃもう、寝る間も惜しんで修練するんだそうです。
もし、昨日まで全く使えなかった奴が、いきなり『四冠』になったって聞いたら、真面目に修練してる人は、絶対ブチギレるでしょうね。
「中級の魔導師っていうと、どのくらいの力なのかな?」
「だいたい標準の魔導師は『五冠』だから、それより上といういことになる。国の要職に付くこともできる、かなり有用な存在と言っていい」
ヒュリアの話では、今現在、魔導の最高位である『一冠』の魔導師はいないそうです。
公式に、一番高位と認められている魔導師は『正統魔導国オクル』の三統括と呼ばれる三人で、『二冠』だそうです。
「そもそも『一冠』の魔導師は存在できないと言われてるんだ。『一冠』になると、霊核がその力に耐えられず自壊し、人は死んでしまうらしい」
「じゃあ、今まで『一冠』になった人は、いないってこと?」
「いいや、私の知るかぎり、一人だけいる。聖師フゼイフェだ」
「ああ、そゆことなのねぇ」
「ただ、それは人間に限定したときの話でね。妖精族を含めると、人数は増えると思う。彼らは魔導との親和性が高いからね。――実は賢者アイダンも『一冠』だったという話だ」
だからフゼイフェさんも、アイダンさんも三傑として認められてて、聖師とか賢者なんていう大そうな二つ名がついてるんですね。
「そういうわけで、魔導師の高みを目指す人間は皆、聖師フゼイフェを尊敬してやまない。『聖政天授国マリフェト』の国民などは、地母神様や霊龍様と同様に信仰しているんだ」
『正統魔導国オクル』はアイダンの弟子が、『聖政天授国マリフェト』はフゼイフェの養女が建てたんだそうです。
「ところがだ、最も賢者や聖師に敬意を払うべき魔導王国オクルは、なぜか微妙な態度でね。賢者のことも聖師のことも、どこか軽視している雰囲気がある。何らかの政治的思惑があるのかもしれないが、理由は定かではないんだ」
腑に落ちないようで首を傾てるヒュリア。
まあ、国の政治なんて大人の事情で雁字搦めですからね。
そんなことより、いい機会なんで、ずっと気になってことを聞いてみようと思います。
「えーと、そのぉ……、ヒュリアは以前、魔導が使えてたんでしょ?」
「ああ」
「『三冠』だったら、オクルのお偉いさんの一つ下ってことだよね。かなりスゴいことなんじゃないの?」
「うん、まあ、そうだね……。当時の私は『氷刃の皇女』なんて呼ばれて、いい気になっていたんだ。今思うと顔から火が出そうなほど恥ずかしくなるよ」
両手で顔を隠すヒュリア。
大丈夫だよ、って頭をポンポンしたくなりますね。
魔導師には『元素照応性』ってものがあり、原則、一個人が使役できる元素は一種類に限られるそうです。
つまり炎の元素が使役できるなら、その他の氷とか水の元素は使えません。
『氷刃』って言うからには、以前ヒュリアは氷の元素魔導が使えてたんでしょう。
「それでぇ……、ちょっと聞きにくいんだけどぉ……」
「なんだ、私と君の仲だ。かしこまることはないぞ」
私と君の仲……。
甘美な響き……。
「――断迪刑って痛かった?」
刑罰を受けたって聞いてから、ずっと心がモヤモヤしてました。
こういうのはホント、気分が悪くなります。
「いいや、薬をもられ、眠っている間に執行されたから、痛みも何も感じなかった。私の魔導を恐れたケメットとメシフが命じたのだろう」
権力にとりつかれた人間って、ホントどうしょもない奴らですよね。
「メシフのことを傲慢と罵りはしたが、昔の私も、かなり傲慢だったと言わざるを得ない。自分の魔導を過信して、未熟な者を見下していたんだ。自分こそが次の英雄だと自惚れてもいた。だが魔導を失い、周囲から蔑んだ目を向けられて初めて、それまで見下してきた人達の気持ちがわかるようになった。だから今はこう考えている。きっと神が、彼らの気持ち理解させるために、私から魔導を奪ったんだとね」
良い統治者になるには、できるだけ多くの人の気ちを理解できなければならないってことでしょうか。
若いのに大したもんだ、ヒュリア!
あんたについてくぜ!
深く息を吐いたヒュリアは、自嘲気味に笑います。
「ところでツクモ、良かったら君の術法を見せてくれないか」
「あっ、そうだね。そんじゃ治癒術から、いってみようか。ついでに君の脚の傷治しちゃえば一石二鳥ってわけだし。――じゃあ、ちょっと見せてみて」
ヒュリアの太腿の傷はまだ治っていません。
ならばこの際、治癒術で完治させてしまいましょう。
てなわけで、早速実践しようとしたんですが、いきなりコンプラにひっかかりそうな事案が発生してしまいましてぇ……。
普段、包帯を変えるときは、ズボンを巻上げて処置してるんですけどぉ……。
今日は、そうくるかぁ……。
さっさとズボンを脱ぎ捨てたヒュリアが、セクシーなパンツ姿を披露してくれとるわけです。
「あのさ、全部脱がなくてもいいんだよ」
一応、目を逸らしながら伝えます。
「いいや、魔導を初めて実践するんだ。なるだけ不要なものは除いておいた方がいい」
と、皇女様は仰りまして……。
確かに脱いでくれた方が、処置はしやすいんですけど……。
はぁぁ、全くぅぅ……。
どうして、この娘はこうも簡単に脱ぐんでしょうかねぇ……。
お風呂に入った後なんかも、全裸でウロつくし。
服着るようにお願いしても、汗がひくまでは着るべきでないとか言うてるし。
裸族なのか?
見せつけてるのか?
僕としては、困るというか、嬉しいというか。
いや、嬉しいってのは違うか。
椅子に座ると上着の裾からのぞく魅惑の三角地帯がより強調されまして……。
なんかこう全裸よりも、エロさが増すというか、なんというか……。
そこに目がいかないように治癒術に全集中しなくてはいけません。
はい、集中、集中!
包帯を取ると、傷口の赤黒さが強くなっていました。
壊死が進んでるのかもしれません。
「えーと、どうすればいいのかな?」
今までは何も考えずに『耶代』の機能や家事全般の儀方が使えてました。
たぶん『耶代』がバックアップしてくれてたんでしょう。
でもこれは『耶代』を介しない、僕個人の力なので、今まで通りでいいのかどうか……。
「これまでと同じようにやってみてくれ。何しろ耗霊が魔導を使うなんて初めて見るからね」
「わかったよ」
とりあえず異世界アニメで見たように傷口に手をかざし、治れって念じてみました。
だけど、いくら待っても何も起こりません。
「うむ、上手くいかないようだね。――魔導師が初めて修練する場合、先に自分の霊核の状態を確認するんだが……。死者には霊核が無いしな……」
ヒュリアは口に拳を当てて、考え込んでます。
「霊核ってさ、霊器と同じってことにはならないのかな?」
「なるほど……。君の本体は霊器にあるんだったね……。確かに霊が宿るという意味で、霊器と霊核は類似している。ならばまずは、自分の内面世界にある霊器とのつながりを見つけてみてくれ」
「霊器とのつながりかぁ……」
言葉の意味はわかりますが、具体的にどうすればいいかさっぱりわかりません。
仕方なく目を閉じて、瞑想してみました。
瞼は焼けてっから閉じられないだろうって?
文学的表現なのですよぉぉだっ。
真暗な心の中を彷徨ってると、かなり深いところに、紫色に光るものを見つけました。
近づくと『倉庫』にあるのと同じ涙滴型をした宝石です。
ただし、大きさは僕の三倍ぐらいあります。
人間の霊核も内面世界では、かなり大きいらしいです。
ヒュリアに聞いたら、これが霊器との繋がりってことで良いようでした。
内側をのぞいてみると、そこには青い光の粒子と赤い光の粒子が無数に飛び交っています。
青いのが恃気で赤いのが英気だそうです。
「恃気がどんなものか理解できたなら、それが掌に集まるように導くんだ。すると掌が青く光り始める。次に傷が治るように念じながら、恃気を傷に注ぐような動作を思い描いてみてくれ」
「了解」
指示に従って、霊器から恃気を掌へ導きます。
今度はスムーズに掌に恃気が集まってっくれました。
掌が青く光ったところで傷が治るように念じます。
すると赤い英気の粒子までもが集まってきます。
そして両者は混ざり合い、薄い赤紫色に光始めたのでした。
「英気が混ざっちゃったけど、大丈夫なのかなっ?!」
「ああ、それで良いんだ。治癒術には英気も必要なんだよ」
ビビってる僕を安心させるように、ヒュリアは深く頷きます。
最後に、光ってる掌を傷口にかざし、恃気を注いでるところを想像しました。
すると、薄紫色の光が、水のように掌からトロトロと傷に流れこんでいったんです。
そしてあるとき、傷口が一瞬紫色に輝いたかと思うと、すぐに消えました。
「見てみろ、治ってるぞ」
満足げなヒュリアの顔。
彼女の言う通り、あのひどい矢傷は、きれいさっぱり無くなっていました。
よっしゃあ!
すっごいね、治癒術!
僕もこれで魔導師だぜっ!
「ありがとう、ツクモ」
可憐に微笑むヒュリア。
てぇてぇなぁ。
「ならば、次は炎魔導の方を見せてもらおうか」
炎を使うってことで、とりあえず外へ出ます。
おっと、安心してください、ズボン、はいてますよ。
「元素魔導術を行うときに必要なことを説明するよ」
暗い空に浮かぶ白の月が、いつも通り僕らを照らします。
「元素魔導術には、治癒術と比べたとき、大きく異なる点があるんだ。それは元素の姿を常に心に思い浮かべながら行うということなんだ。それを『心措』という。これは魔導の基礎的な作法である、『施法』の一つなんだ……」
『心措』とは、術の実行中、常に元素のイメージを心にもっておくことだそうです。
たとえば炎魔導なら、炎が燃えてるイメージです。
イメージを途切れさせると周囲の元素は反応しなくなり炎は消えてしまうのです。
「『施法』には『心措』以外にも、いくつか重要な作法がある。主要なものを挙げるなら『発動の態様』、『場の威勢』、『率導』、『充典』だ」
『発動の態様』は、恃気を『どのように発動させるのか』ということです。
治癒術のときに、水を注ぐような動作を思いうかべましたが、あれは治癒術を発動させるときに最もよく使われる態様だそうです。
『発動の態様』は、元素の種類、術法の違い、術者の好みや考え方で様々に変化します。
たとえば元素を弾のように撃ち出す『元素弾』という技があります。
この技は、炎や氷などの元素ならできますが、光と闇の元素では、弾として撃出すという態様をとることができません。
これは元素の種類からくる違いです。
「私を襲った三人の騎士の魔導を覚えているか?。あのとき水魔導を使った者がいただろう。あいつの水魔導は、水を弾として撃出すのではなく、指先から持続的に水流を発し、その力で根を切断するというものだった。もちろん『水弾』とすることも可能だし、その態様をとる魔導師の方が多いかもしれない。これは術者の好みによる違いとなる」
ヒュリア教官のお話、ためになるのでありますっ!
敬礼!
「次に『場の威勢』についてだが、これは術を発動する『場所』の問題になる。普通の場所と、火災で周囲が燃えているような場所では、炎摩導を使うとき、術者への負担の大きさ、術の強さ、持続時間に違いが出る。子供でもわかるだろうが、当然、周囲が燃えている場所の方が炎摩導を使う者に有利となる。だから、たとえ『冠位』が低くても、『場の威勢』によって、上位の魔導師を退けることも可能というわけだ」
ヒュリア教官、わかりやすいのであります!
敬礼!
「土魔導や風魔導は、基本的な攻撃力は、あまり高くないが、『場の威勢』に最も恵まれているために、炎や氷とも互角に戦える場合がある。土や空気が無い場所なんて滅多にないからな。――ヤルタクチュも、周囲の土を使うことで、騎士達の魔導を押さえ込むことができていただろう?」
ヒュリア教官、凛々しいのであります!
敬礼!
「次は『率導』だ。これは発動後、術の効果を、使った分の恃気が尽きるまで、自在に操るというものだ」
ヒュリア教官、美しいのであります!
敬礼!
「三人の騎士のうちで、わかりやすいのは風魔導を使った者だろう。あいつは風の元素をまず旋風として発動させた後、自在に動かし、周囲の根を粉砕していた。あれが率導だ。ヤルタクチュが土魔導を発動後に、壁の状態になるように土を操って攻撃を防いでいたのも同じものだ」
ヒュリア教官、エモいのであります!
敬礼!
「――ツクモ、私が話し終わるたびに、直立不動になって額に手をかざしているが、それは何の仕草なんだ?」
ちょっと冷たいヒュリアの視線。
「これはニホンノトウキョウ式の敬礼なんだよ」
「なるほど、そういうことか。――私の話に敬意をはらってくれるのはありがたいが、もうやらなくていいぞ。少し鬱陶しい」
ごめんなさぁい、ケロケぇロ。
「最後に充典について話そう。これは恃気を十分に貯めてから発動させるというものだ。同じ『炎弾』を撃ちだす場合でも、すぐに撃つより、恃気を貯めてから撃った方が、威力が格段に強まるのは当然だろう。ただし時間がかかるのが欠点だがね」
なるほど、溜め撃ちってことね。
「ここまでの炎魔導の術の流れを総括してみよう。まず心に炎の心措を映し、恃気を手などに導き、対象を燃やすように念じ、炎弾などの術の態様を選択して思い描く。そして発現した炎弾を率導で操り、弾の軌道を変化させるなどして攻撃するわけだ。さらに炎弾を撃つ前に充典で威力を増すこともできる、という具合だな」
「これって、いちいち考えるんだよね」
「そうだ。魔導師はこの判断を一瞬で、できるように日々修練している」
うへっ!
むつかしいっすねぇ!
やっぱ現実はラノベより大変だわ!
そんな僕の心を読んだかのように、ヒュリアは悪戯っぽく微笑みました。
0
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる