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東の大陸
ヘタレの勇者に成りたがり<1>
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「がぁっ!」
トゥガイの叫び声が聞こえたかと思うと、何かが地面に落ちたような音がして、同時に視界がパッと明るくなりました。
踏んづけていた足が、どかされたようです。
一瞬、ヒュリアが殺されたのかと思いましたが、胸が上下に動いているので、まだ息があるのが確認できました。
だとすると何が起こったんでしょう?
周りを見回すと、ヒュリアのすぐ横にトゥガイがいるのが分かります。
なぜか彼は、地面に座込んで、左脚の膝辺りを両手で押さえています。
よく見ると、トゥガイの左膝から下が綺麗に無くなっているのでした。
両手の指の隙間からは、滝のように血が流れ落ちています。
ヒュリアの頭の横には、斬られたトゥガイの脚が落ちていました。
一体、これはどういうことなんでしょうか?
全く意味がわかりません。
でもとりあえずヒュリアが助かったんで良かったです。
「団長っ!」
鎧の人?と戦っていた赤毛の女が、トゥガイの下に駆寄ります。
すでに根暗の男は鎧の人?に殴られて動かなくなっていました。
なので今はスキンヘッドの男が一人で相手をしています。
両者とも大分疲れてるみたいで、ふらふらですけど、戦闘をやめるつもりはないようです。
赤毛の女はトゥガイの傍にしゃがみこむと、脚に治癒術をかけて血を止め、次に左肩の傷も治しました。
でも、切離された左脚を元に戻すことは出来ないみたいですね。
「副長、皇女にとどめをさせっ!」
治癒術で出血が止まったトゥガイは、鬼の形相で命じました。
赤毛の女は立上がり、持っていた銃をヒュリアに向けます。
僕はヒュリアを守るために恃気を集中させ、女に炎弾を撃とうとしました。
ところが、女が撃鉄を起こしたとき、ふいに背後から現れた親指と人差し指が撃鉄をつまんで、動かなくしてしまったのです。
「――もう、やめとけ」
女の耳元で優し気に囁くアティシュリ。
霊龍様は、いつのまにか、すぐ後ろに来ていたのでした。
「ひっ!」
赤毛の女は驚きと恐怖で顔をひきつらせ、その場にヘタりこみました。
銃はアティシュリの指の間に取残され、ぶらぶら揺れています。
「こいつを殺されると寝覚めが悪くなりそうでよ」
アティシュリは、困った風に頭を掻きます。
なんか言訳してるみたいです。
助けないとか言ったんで、恥ずかしいんですよ、きっと。
「今撤退すんなら、無事に逃がしてやる。だがな、まだ戦うってんなら、今度は俺が相手をすることになるぜ」
そう言いながらアティシュリは、その場にいる者全てを圧倒する、あの猛烈な殺気を放ちました。
赤毛の女は、座りこんだまま震えだします。
離れたところで戦っていたスキンヘッドの男と鎧の人?は、身体をビクッとさせて動きを止めました。
トゥガイは、大きく目を見開き、驚いたような、賞賛するような視線をアティシュリに向けます。
そして溜息を吐いた後、苦笑いを浮かべ、諦めたように言いました。
「副長、撤退する……」
気のせいかもしれませんけど、トゥガイの表情は、どことなく楽しそうなんです。
さっきまでの鬼の形相が嘘のようです。
「そんなっ! 団長! ここまできてっ!」
赤毛の女が反論しますが、トゥガイは首を振りました。
「これ以上は無駄死になる。――上には上がいるということだ」
アティシュリは愉快そうにトゥガイと目を合わせました。
「ふん、分別はあるみてぇだな。それでいい。生きてりゃ、また運が巡るってもんよ」
アティシュリが赤毛の女に、ポイっと銃を投げ渡しました。
銃を取戻した女は、呆然としてアティシュリとトゥガイを交互に眺めています。
上手い具合に休戦になったんで、すぐさまタヴシャンに来てもらいました。
首飾りをヒュリアの傷口に当ててくれるように御願いするためです。
腹の傷からは、かなりの出血がありましたが、なんとか血を止めることはできました。
タヴシャンの見立てでは、相当な深手で、もう少し時間が遅ければ命は無かったかもしれないとのことです。
治癒術で危機的状況は脱しましたが、まだ内臓へのダメージが残っているので、ヒュリアの様子をみながら、もう二、三度、治癒術をかけることになりそうです。
『四冠』以上の治癒術は確かに外傷を迅速に治療することができます。
しかし治癒術を自己治癒にではなく、負傷者の治療に行使する場合、自分と相手の英気との兼合いも考慮にいれなければなりません。
重い外傷を一気に治そうとすると身体への負担が大きく、逆に衰弱させてしまうことも多々あるからだそうです。
なので重傷者への治癒術の行使は、何度かに分けて行うのが理想だってタヴシャンが教えてくれました。
一方、左の太腿はといえば、焼け焦げたズボンの穴から、抉れたような傷と赤いミミズばれの火傷が広がっているのが確認できました。
でも、クズムスで斬ったおかげで、地面に開いてる穴と比べると、威力が落ちてると思います。
応急的な処置はできましたが、こっちもやっぱり重傷なので、治癒術を一度に行わず何度かに分けて施すことになるでしょう。
とりあえずの処置は終わりました。
だけど、ヒュリアの意識が戻りません。
傷の痛みが激しかったせいかもしれないです。
治療中に、赤毛の女がやってきて、ヒュリアを睨みつけながら、斬落とされたトゥガイの左脚を拾い上げます。
そして、ふて腐れ気味に声を張上げて仲間を呼びました。
すぐにスキンヘッドが、鎧の人?との戦いを放棄してやってきました。
鎧の人?は、敵が突然自分に背を向けて離れていったので、呆気にとられた感じでファイティングポーズを解きました。
さらに森の中からは、口ひげをはやした商人風の男が現れ、合流します。
戦闘中、ずっと森に隠れていたってことでしょうかね。
口ひげは、スキンヘッドと協力して両側からトゥガイに肩を貸し、立上がらせました。
赤毛の女は斬落とされた左脚を大事そうに抱えトゥガイの前に立ちます。
そして黙ったまま悔しそうに彼を見上げました。
「すまんな、不甲斐ない団長で……」
自嘲気味に笑うトゥガイ。
赤毛の女の瞳から大粒の涙が零れます。
「不甲斐なくなんてありませんっ!」
そう叫んだ赤毛の女は、トゥガイの胸に飛込み、顔を埋めます。
トゥガイは自分の胸で泣く女の頭に手をのせ、なだめていました。
その後、四人は身体をひきずるように森に向かって歩き出します。
ヒュリアの傍を通るとき、僅かな間でしたが、トゥガイは足を止め、横たわる彼女を見つめていました。
そのとき彼の口元には何故か、かすかな微笑みが浮かんでいました。
まるで、懐かしい友人に再会したときのような優しげな笑顔でした。
トゥガイ達が森に消えて暫くすると、ヒュリアが薄っすらと目を開きました。
「戦いは……、どうなりましたか……? トゥガイ達は……?」
「奴らは撤退したぜ」
アティシュリが答えます。
「撤退……? アティシュリ様の……、御加勢が……、あったのでしょうか……?」
「いいや、俺は奴らに脅しをかけただけだ。あいつの脚を斬って追払ったのは、ツクモだ」
「ツクモが……?」
「いやいや、僕じゃないですって……」
そのときふいに、何かが倒れる音がしました。
見てみると鎧の人?が、仰向けで地面に横たわっています。
限界が来たんでしょうかね。
「おいっ、しっかりしろ!」
アティシュリが駆寄り、声をかけました。
タブシャンもついていったので、自動的に僕も連れてかれるわけです。
傍にいくと、見る見るうちに青い鎧が消失し、中の人の姿が現れました。
目を閉じて気絶してますけど、とても綺麗な顔つきをしているのがわかります。
男か女かの判断がつきにくいですが、人間なのは確かなようです。
それと、右胸の辺りに傷があり、そこから大量に出血していました。
こんな状態で、ずっと戦ってたんですね。
「こいつには聞きてぇことがある。治癒術をかけて、『耶代』で養生させてやってくれ、ツクモ」
「随分、こいつに肩入れしますよね」
ヒュリアのことは見捨てようとしたくせに。
「ちっ、小煩ぇことをほざくんじゃねぇ! さっさとやれっ!」
「へぇへぇ」
今一つ納得できてませんが、とりあえず鎧の人の胸も治癒させます。
出血は止まりましたが、こちらの傷も大分深そうです。
Dr.タヴシャンの見立てでは、傷が肺まで達しているらしく、完治するまでに時間がかかるということでした。
手当てが済むと、アティシュリは気絶したままの鎧の人を肩に担ぎ、ヒュリアはタヴシャンに支えられ、僕はまたヒュリアの胸元に納まります。
こうしてドラゴンとダークエルフ、それに人間二人と地縛霊達は、どうにかこうにか安息の地である『耶代』への帰還を果たしたのでした。
そして長く厳しい一日は、終わりを告げ、新しい一日がやってくるわけです。
「――おはようございます。昨日はご迷惑をおかけし、申訳ありません」
自室から出てきたヒュリアは、先にテーブルについていたアティシュリとタヴシャンに頭を下げました。
「よかったぁ、ヒュリアちゃん、起きられたのね」
「まあ、その程度で済んで何よりだ」
「ご心配をおかけしました」
二人への挨拶を終えたヒュリアは、僕に向直ります。
「ツクモ……、今日こうして生きていられるのは全て君のおかげだ……。本当に、本当に、感謝している……」
ヒュリアは僕の手をとって、そう言ってくれたんです。
照れちゃうけど、嬉しかったな……。
「いや、大袈裟だって。僕は『耶宰』なんだよ。『耶卿』を助けるのは当然のことじゃないか」
「そう謙遜するな、ツクモ。私は今、心からこう思ってるんだ。あのとき『耶卿』になって、本当に良かったと……」
微笑むヒュリア。
美しく、尊い笑顔。
ホント、生きてて良かった……。
いやいや、死んでて良かった……。
で、良いのか……?
まあ、結果オーライってやつで。
「――朝食、食べられそう?」
「ああ、頂くよ」
『休養』で体力を回復したヒュリアは、まだ左脚は引きずってますけど、歩くには支障はないようです。
ただ、お腹の傷の方は、ちょい心配です。
まあ食欲は、あるみたいだから大丈夫だとは思いますけど。
とりあえず『羅針眼』で『耶卿』の状態を確認してみることにしました。
するとパラメーターの値が68/100になってます。
通常よりは低いですけど、あれだけ傷を受けてこの値なら、良しとすべきでしょうかね。
朝食を終え、お茶を出しながら、昨日から気になってたことヒュリアに聞いてみることにしました。
「ヒュリア、昨日、トゥガイのことを『三席の勇者』って言ってたでしょ。あれってどういうことなの?」
「ああ、そのことか……」
ヒュリアは帝国で認定されてる『勇者』について説明してくれました。
バシャルの勇者は、ゲームやラノベとかの物凄ぇ強ぇあの勇者じゃなくて、一年に一度開かれる『勇者号の闘儀』っていう大会で騎士達が競い合い、優勝者から第六位までに与えられる帝国独自の称号のことを言うんだそうです。
そこで優勝した騎士が『首席勇者』になり、二位が二席、三位が三席ってな具合で表彰されて、最終的に六位までが勇者と名乗ることを許されるのだとか。
ちなみに帝国にいたときヒュリアは『二席勇者』で、あのトゥガイは『三席勇者』だったというわけです。
「ヒュリアって勇者だったんだぁ。凄ぇなぁ……」
「昔の話だ、ツクモ。それ以上言わないでくれ」
耳を塞いで赤くなってるヒュリア。
かぁいい。
「じゃあ、首席って誰だったの?」
「イドリス・ジェサレットという男だ。私より三つ年上で、平民上がりの騎士だった。16歳のとき初めて『勇者号の闘儀』に出場し、その破格の強さで当時首席だったトゥガイを破り、一躍首席勇者となった。私は奴と三度戦ったが、一度も勝つことはできていない……」
ヒュリアでも、あのトゥガイでも勝てなかった男。
上には上がいるもんです。
いやぁ、なんかちょっと会ってみたい気もしますねぇ。
「噂では、前の英雄、シャファク・アクシュと戦って勝利し、英雄になったということだ」
勇者になった騎士には英雄と戦う資格が与えられるんだそうです。
ちなみにバシャルでは勇者よりも英雄の方が格上みたいです。
まあ辞書なんかで調べると英雄の方が偉いように書かれてますから、当然といえば当然ですかね。
「そんなことよりもだ、あのトゥガイって奴の脚を斬ったのは、てめぇなんだよな、ツクモ?」
アティシュリが、朝食分のキャラメルを食べながら聞いてきました。
「いや、だから違いますって。僕は、あのときトゥガイに踏んづけられてたんですから」
「じゃあ、ヒュリアがやったっのか?」
「それも無理でしょう。ヒュリアは痛みで朦朧としてたんだし……」
「じゃあ、誰がやったってんだ?! ああん?!」
ドラゴン姉さんは自分に理解できないことがあると、すぐ不機嫌になります。
「僕は、てっきりアティシュリさんがやったと思ってましたけど」
「介入しねぇって言っただろが。俺が気づいたときには、あいつはもう斬られちまってたんだよ」
「じゃあ、タヴシャンさん?」
「か弱い私に、そんなことできるわけないでしょう。私は愛を身にまとった華麗なる錬金術師なんだからぁ」
キスで身をナメまわす加齢なる錬金術師でしょうに……。
とにかく、あの場には僕らとトゥガイ達以外には誰もいなかったはずです。
だったらトゥガイを斬ったのは一体誰なんでしょう?
なんか背筋が、ゾワっとなりますな。
「あいつが斬られる寸前、一瞬だけだが異様な力が周囲に満ちていたんだが……。ありゃ、今までに感じたことのないもんだった……」
アティシュリは、首をひねります。
「そうです、そうです。私も感じました。身体中が総毛立つっていうのかなぁ。かなり不気味なやつでしたよね」
タヴシャンは、眉をひそめます。
「『耶代』がやったという可能性は、ありませんか?」
さすが鋭いね、ヒュリア。
「――なるほど、ありえねぇ話じゃねぇ」
細かく何度も頷くアティシュリ。
「この『耶代』は何をしでかすかわからねぇからなぁ。俺でさえ恐ろしくなるときがある」
アティシュリは疑しげにダイニングを見回します。
「まあ、そうは言っても、全部ヒュリアのためにやってることですし」
「そうよ、ヒュリアのためなら俺から力を盗むなんてことも平気でやらかす。いつか何もかも奪われるなんてことにならなきゃいいがな……」
「ハハハ、まさかぁ」
でも……、ありえるかも……。
ふいにアティシュリの部屋の扉が開きました。
全員の視線が一斉に扉へと向かいます。
現われたのはもちろん鎧の人で、怯えた表情で、こっちを見返しています。
少女のように綺麗な顔をしてますけど、男性だそうです。
でも身体の線も細くて全体的に華奢なんもんで、いわゆる“男の娘”って言っても過言ではないのです。
歳は十代後半から二十代前半てとこでしょうか。
「あ、あんのぉ……?」
「やあ、起きた? 傷の具合はどうかな?」
「――ば、化物ぉぉぉっ!」
僕に気づいた男の娘は、驚いてヘタりこみました。
おっ、懐かしいな、このリアクション。
ヒュリアと最初に出会ったときも、こうだったよねぇ。
「カカカカっ、ツクモ、せっかく命を救ってやったのに化物だとよ」
アティシュリの意地の悪い笑顔。
マジむかつく。
「いいですよ、別に。化物の自覚ありますんで」
胸を張って、開き直っときます。
「何威張ってんのよぉ」
タヴシャンが呆れてます。
「大丈夫かい?」
男の娘の側に行き、手を貸そうとしました。
「おめ、何もんだぁ、なして真黒よぉ?!」
「まあまあ、とにかく座って。お話しは、それからね」
恐怖と嫌悪が入混じったような表情を浮かべる男の娘。
もちろん差出した手を取ることなく立上がり、空いていたアティシュリの隣に座りました。
目の前には加齢なるキャバクラ嬢がいて、ウインクで御出迎えします。
男の娘は、ぎょっとした後、顔を赤らめて俯いてしまいました。
「はい、どうぞぉ」
男の娘の前にハーブティーを出しました。
ティーカップと僕を交互に睨みつける男の娘。
「毒なんか入ってないから、安心して飲んで」
でも、男の娘は硬い表情のまま、美しい花の模様が絵付けされた白いカップを睨み続けるのでした。
信用されてませんな。
「おい、お前」
男の娘の斜め前に座るヒュリアが、徐に口を開きました。
「――えっ? あの、オ、オラんことだべか?」
男の娘は怯えと敵意の混じった視線をヒュリアに向けます。
ヒュリアはそんな視線なんて、どこ吹く風で、自分のカップから悠然とお茶をすすりました。
「名前は?」
「オラはジョルジ・エシャルメンってもんです」
「ジョルジか……。おい、ジョルジっ!」
「は、はいっ」
急にヒュリアに怒鳴られてジョルジの背筋がピンとなります。
「お前の胸の傷を治し、命を助けたのは、お前が化物と罵ったこのツクモだ。確かに見た目は真黒で恐ろしく、かなり不気味で、少し焦臭いが、根は優しい、ひょうきん者だ……」
ズーン……。
真黒で……、恐ろしい……。
「もし、茶に毒でもいれて殺すつもりなら、傷を治したうえ、清潔な寝台に寝かせたりするか?!」
「そ、それは……」
「相手の姿がどうであれ、助けてくれた者に対して感謝を述べるのは、人としての道理だとは思わんのか?」
「――お、おっしゃるどおりです……。申し訳ねぇこって……」
ズーン……。
不気味で……、焦臭い……。
「私に謝る前に、まずツクモに謝意を示すのが先だろう」
「そ、そうでがんすな」
ズーン……。
不気味で……、真黒で……。
「あ、あのっ、ツ、ツクモさん……」
ズーン……。
焦臭い……。
「さきほどは、命の恩人に、ご無礼なこど言っちまって、ごめんすてけさい。そいとぉ、オラん命ば、お救いくださり、ありがどがんした」
起立したジョルジが深々と頭を下げてます。
ガックシの彼方に飛ばされていた僕は、それに気づいて、なんとか現実世界に生還することができたのでした。
「へっ?! は、はあ、こりゃ、どういたしまして」
僕とジョルジは、しばらくお見合いしてしまい、気まずいバイブスがただよいます。
「愛を確かめ合ってるとこ悪いんだがよ。ジョルジ、お前のあの力について、詳しく話しちゃくれねぇか」
いつも一言余計なのよね、このドラゴン。
ここに愛は、あるんかっ!?
「あ、あの力……。やっぱりオラ、また、やずもねえごどすてしまったべか」
やずもねえごどって……。
ビール大ジョッキぐらい、なまってますねぇ。
ジョルジは疲れ切った感じで腰をおろし、うなだれます。
「オ、オラ、そんごとで、隠者様に助けて欲しぐてぇ……」
「隠者様だとぉ?!」
「んでがす……。こだどごまで来たんは、そんためでがんす。ここらに人喰い森っちゅう、おっかねぇ森さあっで、そごには焼け屋敷っちゅう、らずもねぇ力ば持った隠者様のおすまいさ在るっちゅう話でぇ……」
僕達は顔を見合わせました。
トゥガイの叫び声が聞こえたかと思うと、何かが地面に落ちたような音がして、同時に視界がパッと明るくなりました。
踏んづけていた足が、どかされたようです。
一瞬、ヒュリアが殺されたのかと思いましたが、胸が上下に動いているので、まだ息があるのが確認できました。
だとすると何が起こったんでしょう?
周りを見回すと、ヒュリアのすぐ横にトゥガイがいるのが分かります。
なぜか彼は、地面に座込んで、左脚の膝辺りを両手で押さえています。
よく見ると、トゥガイの左膝から下が綺麗に無くなっているのでした。
両手の指の隙間からは、滝のように血が流れ落ちています。
ヒュリアの頭の横には、斬られたトゥガイの脚が落ちていました。
一体、これはどういうことなんでしょうか?
全く意味がわかりません。
でもとりあえずヒュリアが助かったんで良かったです。
「団長っ!」
鎧の人?と戦っていた赤毛の女が、トゥガイの下に駆寄ります。
すでに根暗の男は鎧の人?に殴られて動かなくなっていました。
なので今はスキンヘッドの男が一人で相手をしています。
両者とも大分疲れてるみたいで、ふらふらですけど、戦闘をやめるつもりはないようです。
赤毛の女はトゥガイの傍にしゃがみこむと、脚に治癒術をかけて血を止め、次に左肩の傷も治しました。
でも、切離された左脚を元に戻すことは出来ないみたいですね。
「副長、皇女にとどめをさせっ!」
治癒術で出血が止まったトゥガイは、鬼の形相で命じました。
赤毛の女は立上がり、持っていた銃をヒュリアに向けます。
僕はヒュリアを守るために恃気を集中させ、女に炎弾を撃とうとしました。
ところが、女が撃鉄を起こしたとき、ふいに背後から現れた親指と人差し指が撃鉄をつまんで、動かなくしてしまったのです。
「――もう、やめとけ」
女の耳元で優し気に囁くアティシュリ。
霊龍様は、いつのまにか、すぐ後ろに来ていたのでした。
「ひっ!」
赤毛の女は驚きと恐怖で顔をひきつらせ、その場にヘタりこみました。
銃はアティシュリの指の間に取残され、ぶらぶら揺れています。
「こいつを殺されると寝覚めが悪くなりそうでよ」
アティシュリは、困った風に頭を掻きます。
なんか言訳してるみたいです。
助けないとか言ったんで、恥ずかしいんですよ、きっと。
「今撤退すんなら、無事に逃がしてやる。だがな、まだ戦うってんなら、今度は俺が相手をすることになるぜ」
そう言いながらアティシュリは、その場にいる者全てを圧倒する、あの猛烈な殺気を放ちました。
赤毛の女は、座りこんだまま震えだします。
離れたところで戦っていたスキンヘッドの男と鎧の人?は、身体をビクッとさせて動きを止めました。
トゥガイは、大きく目を見開き、驚いたような、賞賛するような視線をアティシュリに向けます。
そして溜息を吐いた後、苦笑いを浮かべ、諦めたように言いました。
「副長、撤退する……」
気のせいかもしれませんけど、トゥガイの表情は、どことなく楽しそうなんです。
さっきまでの鬼の形相が嘘のようです。
「そんなっ! 団長! ここまできてっ!」
赤毛の女が反論しますが、トゥガイは首を振りました。
「これ以上は無駄死になる。――上には上がいるということだ」
アティシュリは愉快そうにトゥガイと目を合わせました。
「ふん、分別はあるみてぇだな。それでいい。生きてりゃ、また運が巡るってもんよ」
アティシュリが赤毛の女に、ポイっと銃を投げ渡しました。
銃を取戻した女は、呆然としてアティシュリとトゥガイを交互に眺めています。
上手い具合に休戦になったんで、すぐさまタヴシャンに来てもらいました。
首飾りをヒュリアの傷口に当ててくれるように御願いするためです。
腹の傷からは、かなりの出血がありましたが、なんとか血を止めることはできました。
タヴシャンの見立てでは、相当な深手で、もう少し時間が遅ければ命は無かったかもしれないとのことです。
治癒術で危機的状況は脱しましたが、まだ内臓へのダメージが残っているので、ヒュリアの様子をみながら、もう二、三度、治癒術をかけることになりそうです。
『四冠』以上の治癒術は確かに外傷を迅速に治療することができます。
しかし治癒術を自己治癒にではなく、負傷者の治療に行使する場合、自分と相手の英気との兼合いも考慮にいれなければなりません。
重い外傷を一気に治そうとすると身体への負担が大きく、逆に衰弱させてしまうことも多々あるからだそうです。
なので重傷者への治癒術の行使は、何度かに分けて行うのが理想だってタヴシャンが教えてくれました。
一方、左の太腿はといえば、焼け焦げたズボンの穴から、抉れたような傷と赤いミミズばれの火傷が広がっているのが確認できました。
でも、クズムスで斬ったおかげで、地面に開いてる穴と比べると、威力が落ちてると思います。
応急的な処置はできましたが、こっちもやっぱり重傷なので、治癒術を一度に行わず何度かに分けて施すことになるでしょう。
とりあえずの処置は終わりました。
だけど、ヒュリアの意識が戻りません。
傷の痛みが激しかったせいかもしれないです。
治療中に、赤毛の女がやってきて、ヒュリアを睨みつけながら、斬落とされたトゥガイの左脚を拾い上げます。
そして、ふて腐れ気味に声を張上げて仲間を呼びました。
すぐにスキンヘッドが、鎧の人?との戦いを放棄してやってきました。
鎧の人?は、敵が突然自分に背を向けて離れていったので、呆気にとられた感じでファイティングポーズを解きました。
さらに森の中からは、口ひげをはやした商人風の男が現れ、合流します。
戦闘中、ずっと森に隠れていたってことでしょうかね。
口ひげは、スキンヘッドと協力して両側からトゥガイに肩を貸し、立上がらせました。
赤毛の女は斬落とされた左脚を大事そうに抱えトゥガイの前に立ちます。
そして黙ったまま悔しそうに彼を見上げました。
「すまんな、不甲斐ない団長で……」
自嘲気味に笑うトゥガイ。
赤毛の女の瞳から大粒の涙が零れます。
「不甲斐なくなんてありませんっ!」
そう叫んだ赤毛の女は、トゥガイの胸に飛込み、顔を埋めます。
トゥガイは自分の胸で泣く女の頭に手をのせ、なだめていました。
その後、四人は身体をひきずるように森に向かって歩き出します。
ヒュリアの傍を通るとき、僅かな間でしたが、トゥガイは足を止め、横たわる彼女を見つめていました。
そのとき彼の口元には何故か、かすかな微笑みが浮かんでいました。
まるで、懐かしい友人に再会したときのような優しげな笑顔でした。
トゥガイ達が森に消えて暫くすると、ヒュリアが薄っすらと目を開きました。
「戦いは……、どうなりましたか……? トゥガイ達は……?」
「奴らは撤退したぜ」
アティシュリが答えます。
「撤退……? アティシュリ様の……、御加勢が……、あったのでしょうか……?」
「いいや、俺は奴らに脅しをかけただけだ。あいつの脚を斬って追払ったのは、ツクモだ」
「ツクモが……?」
「いやいや、僕じゃないですって……」
そのときふいに、何かが倒れる音がしました。
見てみると鎧の人?が、仰向けで地面に横たわっています。
限界が来たんでしょうかね。
「おいっ、しっかりしろ!」
アティシュリが駆寄り、声をかけました。
タブシャンもついていったので、自動的に僕も連れてかれるわけです。
傍にいくと、見る見るうちに青い鎧が消失し、中の人の姿が現れました。
目を閉じて気絶してますけど、とても綺麗な顔つきをしているのがわかります。
男か女かの判断がつきにくいですが、人間なのは確かなようです。
それと、右胸の辺りに傷があり、そこから大量に出血していました。
こんな状態で、ずっと戦ってたんですね。
「こいつには聞きてぇことがある。治癒術をかけて、『耶代』で養生させてやってくれ、ツクモ」
「随分、こいつに肩入れしますよね」
ヒュリアのことは見捨てようとしたくせに。
「ちっ、小煩ぇことをほざくんじゃねぇ! さっさとやれっ!」
「へぇへぇ」
今一つ納得できてませんが、とりあえず鎧の人の胸も治癒させます。
出血は止まりましたが、こちらの傷も大分深そうです。
Dr.タヴシャンの見立てでは、傷が肺まで達しているらしく、完治するまでに時間がかかるということでした。
手当てが済むと、アティシュリは気絶したままの鎧の人を肩に担ぎ、ヒュリアはタヴシャンに支えられ、僕はまたヒュリアの胸元に納まります。
こうしてドラゴンとダークエルフ、それに人間二人と地縛霊達は、どうにかこうにか安息の地である『耶代』への帰還を果たしたのでした。
そして長く厳しい一日は、終わりを告げ、新しい一日がやってくるわけです。
「――おはようございます。昨日はご迷惑をおかけし、申訳ありません」
自室から出てきたヒュリアは、先にテーブルについていたアティシュリとタヴシャンに頭を下げました。
「よかったぁ、ヒュリアちゃん、起きられたのね」
「まあ、その程度で済んで何よりだ」
「ご心配をおかけしました」
二人への挨拶を終えたヒュリアは、僕に向直ります。
「ツクモ……、今日こうして生きていられるのは全て君のおかげだ……。本当に、本当に、感謝している……」
ヒュリアは僕の手をとって、そう言ってくれたんです。
照れちゃうけど、嬉しかったな……。
「いや、大袈裟だって。僕は『耶宰』なんだよ。『耶卿』を助けるのは当然のことじゃないか」
「そう謙遜するな、ツクモ。私は今、心からこう思ってるんだ。あのとき『耶卿』になって、本当に良かったと……」
微笑むヒュリア。
美しく、尊い笑顔。
ホント、生きてて良かった……。
いやいや、死んでて良かった……。
で、良いのか……?
まあ、結果オーライってやつで。
「――朝食、食べられそう?」
「ああ、頂くよ」
『休養』で体力を回復したヒュリアは、まだ左脚は引きずってますけど、歩くには支障はないようです。
ただ、お腹の傷の方は、ちょい心配です。
まあ食欲は、あるみたいだから大丈夫だとは思いますけど。
とりあえず『羅針眼』で『耶卿』の状態を確認してみることにしました。
するとパラメーターの値が68/100になってます。
通常よりは低いですけど、あれだけ傷を受けてこの値なら、良しとすべきでしょうかね。
朝食を終え、お茶を出しながら、昨日から気になってたことヒュリアに聞いてみることにしました。
「ヒュリア、昨日、トゥガイのことを『三席の勇者』って言ってたでしょ。あれってどういうことなの?」
「ああ、そのことか……」
ヒュリアは帝国で認定されてる『勇者』について説明してくれました。
バシャルの勇者は、ゲームやラノベとかの物凄ぇ強ぇあの勇者じゃなくて、一年に一度開かれる『勇者号の闘儀』っていう大会で騎士達が競い合い、優勝者から第六位までに与えられる帝国独自の称号のことを言うんだそうです。
そこで優勝した騎士が『首席勇者』になり、二位が二席、三位が三席ってな具合で表彰されて、最終的に六位までが勇者と名乗ることを許されるのだとか。
ちなみに帝国にいたときヒュリアは『二席勇者』で、あのトゥガイは『三席勇者』だったというわけです。
「ヒュリアって勇者だったんだぁ。凄ぇなぁ……」
「昔の話だ、ツクモ。それ以上言わないでくれ」
耳を塞いで赤くなってるヒュリア。
かぁいい。
「じゃあ、首席って誰だったの?」
「イドリス・ジェサレットという男だ。私より三つ年上で、平民上がりの騎士だった。16歳のとき初めて『勇者号の闘儀』に出場し、その破格の強さで当時首席だったトゥガイを破り、一躍首席勇者となった。私は奴と三度戦ったが、一度も勝つことはできていない……」
ヒュリアでも、あのトゥガイでも勝てなかった男。
上には上がいるもんです。
いやぁ、なんかちょっと会ってみたい気もしますねぇ。
「噂では、前の英雄、シャファク・アクシュと戦って勝利し、英雄になったということだ」
勇者になった騎士には英雄と戦う資格が与えられるんだそうです。
ちなみにバシャルでは勇者よりも英雄の方が格上みたいです。
まあ辞書なんかで調べると英雄の方が偉いように書かれてますから、当然といえば当然ですかね。
「そんなことよりもだ、あのトゥガイって奴の脚を斬ったのは、てめぇなんだよな、ツクモ?」
アティシュリが、朝食分のキャラメルを食べながら聞いてきました。
「いや、だから違いますって。僕は、あのときトゥガイに踏んづけられてたんですから」
「じゃあ、ヒュリアがやったっのか?」
「それも無理でしょう。ヒュリアは痛みで朦朧としてたんだし……」
「じゃあ、誰がやったってんだ?! ああん?!」
ドラゴン姉さんは自分に理解できないことがあると、すぐ不機嫌になります。
「僕は、てっきりアティシュリさんがやったと思ってましたけど」
「介入しねぇって言っただろが。俺が気づいたときには、あいつはもう斬られちまってたんだよ」
「じゃあ、タヴシャンさん?」
「か弱い私に、そんなことできるわけないでしょう。私は愛を身にまとった華麗なる錬金術師なんだからぁ」
キスで身をナメまわす加齢なる錬金術師でしょうに……。
とにかく、あの場には僕らとトゥガイ達以外には誰もいなかったはずです。
だったらトゥガイを斬ったのは一体誰なんでしょう?
なんか背筋が、ゾワっとなりますな。
「あいつが斬られる寸前、一瞬だけだが異様な力が周囲に満ちていたんだが……。ありゃ、今までに感じたことのないもんだった……」
アティシュリは、首をひねります。
「そうです、そうです。私も感じました。身体中が総毛立つっていうのかなぁ。かなり不気味なやつでしたよね」
タヴシャンは、眉をひそめます。
「『耶代』がやったという可能性は、ありませんか?」
さすが鋭いね、ヒュリア。
「――なるほど、ありえねぇ話じゃねぇ」
細かく何度も頷くアティシュリ。
「この『耶代』は何をしでかすかわからねぇからなぁ。俺でさえ恐ろしくなるときがある」
アティシュリは疑しげにダイニングを見回します。
「まあ、そうは言っても、全部ヒュリアのためにやってることですし」
「そうよ、ヒュリアのためなら俺から力を盗むなんてことも平気でやらかす。いつか何もかも奪われるなんてことにならなきゃいいがな……」
「ハハハ、まさかぁ」
でも……、ありえるかも……。
ふいにアティシュリの部屋の扉が開きました。
全員の視線が一斉に扉へと向かいます。
現われたのはもちろん鎧の人で、怯えた表情で、こっちを見返しています。
少女のように綺麗な顔をしてますけど、男性だそうです。
でも身体の線も細くて全体的に華奢なんもんで、いわゆる“男の娘”って言っても過言ではないのです。
歳は十代後半から二十代前半てとこでしょうか。
「あ、あんのぉ……?」
「やあ、起きた? 傷の具合はどうかな?」
「――ば、化物ぉぉぉっ!」
僕に気づいた男の娘は、驚いてヘタりこみました。
おっ、懐かしいな、このリアクション。
ヒュリアと最初に出会ったときも、こうだったよねぇ。
「カカカカっ、ツクモ、せっかく命を救ってやったのに化物だとよ」
アティシュリの意地の悪い笑顔。
マジむかつく。
「いいですよ、別に。化物の自覚ありますんで」
胸を張って、開き直っときます。
「何威張ってんのよぉ」
タヴシャンが呆れてます。
「大丈夫かい?」
男の娘の側に行き、手を貸そうとしました。
「おめ、何もんだぁ、なして真黒よぉ?!」
「まあまあ、とにかく座って。お話しは、それからね」
恐怖と嫌悪が入混じったような表情を浮かべる男の娘。
もちろん差出した手を取ることなく立上がり、空いていたアティシュリの隣に座りました。
目の前には加齢なるキャバクラ嬢がいて、ウインクで御出迎えします。
男の娘は、ぎょっとした後、顔を赤らめて俯いてしまいました。
「はい、どうぞぉ」
男の娘の前にハーブティーを出しました。
ティーカップと僕を交互に睨みつける男の娘。
「毒なんか入ってないから、安心して飲んで」
でも、男の娘は硬い表情のまま、美しい花の模様が絵付けされた白いカップを睨み続けるのでした。
信用されてませんな。
「おい、お前」
男の娘の斜め前に座るヒュリアが、徐に口を開きました。
「――えっ? あの、オ、オラんことだべか?」
男の娘は怯えと敵意の混じった視線をヒュリアに向けます。
ヒュリアはそんな視線なんて、どこ吹く風で、自分のカップから悠然とお茶をすすりました。
「名前は?」
「オラはジョルジ・エシャルメンってもんです」
「ジョルジか……。おい、ジョルジっ!」
「は、はいっ」
急にヒュリアに怒鳴られてジョルジの背筋がピンとなります。
「お前の胸の傷を治し、命を助けたのは、お前が化物と罵ったこのツクモだ。確かに見た目は真黒で恐ろしく、かなり不気味で、少し焦臭いが、根は優しい、ひょうきん者だ……」
ズーン……。
真黒で……、恐ろしい……。
「もし、茶に毒でもいれて殺すつもりなら、傷を治したうえ、清潔な寝台に寝かせたりするか?!」
「そ、それは……」
「相手の姿がどうであれ、助けてくれた者に対して感謝を述べるのは、人としての道理だとは思わんのか?」
「――お、おっしゃるどおりです……。申し訳ねぇこって……」
ズーン……。
不気味で……、焦臭い……。
「私に謝る前に、まずツクモに謝意を示すのが先だろう」
「そ、そうでがんすな」
ズーン……。
不気味で……、真黒で……。
「あ、あのっ、ツ、ツクモさん……」
ズーン……。
焦臭い……。
「さきほどは、命の恩人に、ご無礼なこど言っちまって、ごめんすてけさい。そいとぉ、オラん命ば、お救いくださり、ありがどがんした」
起立したジョルジが深々と頭を下げてます。
ガックシの彼方に飛ばされていた僕は、それに気づいて、なんとか現実世界に生還することができたのでした。
「へっ?! は、はあ、こりゃ、どういたしまして」
僕とジョルジは、しばらくお見合いしてしまい、気まずいバイブスがただよいます。
「愛を確かめ合ってるとこ悪いんだがよ。ジョルジ、お前のあの力について、詳しく話しちゃくれねぇか」
いつも一言余計なのよね、このドラゴン。
ここに愛は、あるんかっ!?
「あ、あの力……。やっぱりオラ、また、やずもねえごどすてしまったべか」
やずもねえごどって……。
ビール大ジョッキぐらい、なまってますねぇ。
ジョルジは疲れ切った感じで腰をおろし、うなだれます。
「オ、オラ、そんごとで、隠者様に助けて欲しぐてぇ……」
「隠者様だとぉ?!」
「んでがす……。こだどごまで来たんは、そんためでがんす。ここらに人喰い森っちゅう、おっかねぇ森さあっで、そごには焼け屋敷っちゅう、らずもねぇ力ば持った隠者様のおすまいさ在るっちゅう話でぇ……」
僕達は顔を見合わせました。
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