転生できずに地縛霊のままなんですけど……

朝羽ふる

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東の大陸

龍とはらすかす姫<1>

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「それで引越ひっこしと食堂しょくどうだが、具体的ぐたいてきにどうするんだ、ツクモ」

 一口ひとくちちゃをすすったヒュリアが、あくまでも冷静れいせい口調くちょういてきました。

 引越ひっこし宣言せんげんから一夜明いちやあけた翌日よくじつ昼食後ちゅうしょくご、これからの方針ほうしんめる会議かいぎひらくことにしたのでして。
 高級感こうきゅうかんのある重厚じゅうこう四人よにんがけのテーブルにはヒュリアとアティシュリが着席ちゃくせきしていて、いつものように食後しょくごのおちゃをちょうどいま提供ていきょうしたところです。

「まずは耶代やしろをどこへ『転居てんきょ』させるかをめなきゃいけないね。それと食堂しょくどう店長てんちょう従業員じゅうぎょういん必要ひつようになるとおもうんだ」

 『建替たてかえ』で『食堂しょくどう』になった『耶代やしろ』は、外見的がいけんてきには北海道ほっかいどうにあるあかレンガ倉庫そうこてます。
 あそこまでカッコくは、ないですけど。

 一方いっぽう内部ないぶ構造こうぞうはどうかといえば、玄関げんかんから両開りょうびらきのとびらけてなかはいると、四人掛よにんがけテーブルせきが12とカウンターせきが10しつらえられたホールがひろがります。
 
 また西にしかべには硝子がらすはいったまどがあり、そと景色けしきながめることができます。
 ヒュリアのはなしだと、こんなにうす透明とうめい硝子がらすはじめてたということでした。

 カウンターのおくにある東側ひがしがわかべへだてたこうはクローズドキッチンで、その北側きたがわには東西とうざいはし廊下ろうかがあり、廊下ろうかはさんだかいには、もと丸太小屋まるたごやにあったダイニングがそのままのこされています。
 もちろんお風呂ふろとトイレもそのままです。

 キッチンとダイニングのあいだにある廊下ろうかは、ホールから屋敷やしきおくまでびていて、最終的さいしゅうてきには裏口うらぐち二階にかいへの階段かいだん行着いきつくことになります。

 そして二階にかいがると、中央ちゅうおう廊下ろうかがあり、その両脇りょうわき各部屋かくへやならんでるっていう間取まどりがあらわれます。
 部屋へや全部ぜんぶいつつあり、その内訳うちわけは、アティシュリ、ジョルジ、ヒュリアの個人部屋こじんべやとゲストルーム、錬成室れんせいしつとなっております。

 食堂しょくどうホールの内装ないそうは、ぼくきているとき、よくかよっていた近所きんじょ洋食屋ようしょくやさんに、よくています。
 くすんだあかい“バア”のかべ木製もくせい天井てんじょうゆか、そこかしこにるされたランプ、重厚じゅうこうなテーブルや椅子いす、それらがかんじの雰囲気ふんいきかもしだしていて、グルメサイトだったら大人おとなかく家的がてきなレストラン、なんて紹介しょうかいしてくれそうな仕上しあがりなのです。

 そんな御洒落おしゃれなホールで、人間にんげんとドラゴンと地縛霊じばくれい会議かいぎをしているわけです。
 らんひといたら、どういうシチュよ?ってツッコみたくなりますよね。

「タヴシャンのやつが転居てんきょさきについて、てめぇになにってやがったよな」

 いつものようにアティシュリさまは、おちゃわりに本日分ほんじつぶんのキャラメルを一粒ひとつぶずつみしめ、堪能たんのうしてらっしゃいます。

「ええ。食堂しょくどうをやるんなら、それなりにおおきくて、最近さいきんできたようなまちいんじゃないかってことでしたよ。ちいいのや、ふるくからあるのは人間関係にんげんかんけいみつなんで、新参者しんざんもの目立めだちますからね。おおきいか、あたらしいなら人間関係にんげんかんけい希薄きはくなんで、それほどあやしまれることはないってわけです」

 ホールのすみにある客用きゃくようのトイレからジョルジのエズくこえひびいてきます。
 おひるした牛肉ぎゅうにく香味野菜こうみやさい春巻はるまきを、なんとか完食かんしょくしたのはいんですが、やっぱり気持きもわるくなったみたいでして……。

 でも、エズくだけでゲロってはいけないのです。
 アティシュリから、吐出はきだすなって厳命げんめいけてますからね。

 でもあれ、絶対吐ぜったはいてるよね。
 しかし、いくらリバース寸前すんぜんだったからって、客用きゃくようのトイレはダメだろ。
 あとで説教せっきょうだな。

 昨日きのう盟友めいゆうらんのアティシュリのした名前なまえつらねることになったジョルジは、引越ひっこし宣言せんげんあときゅうにフラフラしはじめ、その座込すわりこんでしましいます。
 そしてすぐに、あそつかれた子供こどもみたいにねむってしまいました。
 
 予想通よそうどおり、耶代やしろちからってかれたようです。
 結果けっか、ドラゴンねえさんがかたかついで二階にかいはこび、ジョルジの名札なふだがついた部屋へやのベッドにかされたのでした。

 会議かいぎ開催かいさい今日きょう持越もちこされたのは、ひとえにジョルジが寝込ねこんだせいなのです。
 一応いちおう、ジョルジも『耶代やしろ』の住人じゅうにんになったんですから、無視むしして引越ひっこしすすめるわけにはいきませんからね。

 ちゃんとかれthoughtソートかないと。
 さっきからずっと嘔吐おうとしてますけどね。

 いまはこんなですけど起抜おきぬけジョルジは、『耶代やしろ』の機能きのうである『休養きゅうよう』で完璧かんぺき体力たいりょく回復かいふくし、血色けっしょく溌剌はつらつとしてたんです。
 追出おいだされる心配しんぱいくなったんで、気持きもちが安定あんていしたんでしょう。
 まあそれも、お昼御飯ひるごはんまでだったですけど。
 
 それと今朝けさのことなんですけど、ヒュリアに『霊器れいき錬成れんせい手解てほどきをしてくれたタヴシャン先生せんせいが、おかえりのはこびとなったのです。
 いつまでも自分じぶんみせめてるわけにはいかないというわけです。

 彼女かのじょわかれの挨拶あいさつをしているときにきてきたジョルジは、そのながれで御見送おみおくりをすることになったのですが、そこでついに、この世界せかい秘密ひみつ一端いったんれることになります。

 タヴシャンをせるため、アティシュリが赤芒せきぼうはなつドラゴンの姿すがたもどったからです。
 もちろんジョルジは、こしかしてヘタりこみ、アワアワといながら小刻こきざみにふるえるという典型的てんけいてきなリアクションを披露ひろうしてくれました。

 タヴシャンをせて飛立とびたまえ、アワアワしてるジョルジにかい、ほのおのドラゴンはあた一面いちめん鳴響なりひびこえけい宣告せんこくしました。

「いいかっ、ジョルジっ! 『耶代やしろ』のまわり50しゅう腕立うでたて100かい腹筋ふっきん100かいおれかえってくるまでにやっとけ! 出来できてなかったらそらからとすかんなっ!」

「はいぃぃぃっ!」

 あせって立上たちあがったジョルジは、くびたてにブンブンってこたえます。
 もちろん拒否権きょひけんはないのです。

 ジョルジの返答へんとう納得なっとくした様子ようす霊龍れいりゅうさまは、巨大きょだいつばさ数回すうかいはためかせると、つぎ瞬間しゅんかん、まるでそら吸込すいこまれるように舞上まいあがります。
 見上みあげると、あの巨体きょたいはすでに500円玉えんだまほどのおおきさになっていました。

「まぁたねぇぇぇ!」

 かぜったタヴシャンのこえかすかにこえたかとおもうと、ドラゴンは飛行機雲ひこうきぐもいてはるとおくのそらへとえていったのでした。

 さて、トレーニングメニューをいただいたジョルジは、とされたくない一心いっしん必死ひっし課題かだいをこなし、なんとかクリアに成功せいこうします。
 でもかれ災難さいなんは、それでわりじゃありません。

 昼前ひるまえもどって霊龍れいりゅうさま監視かんしもと今度こんどは“にくう”というトレーニング以上いじょうきびしい試練しれん乗越のりこえなければならかったのです。
 そして、その結果けっかがトイレへの直行ちょっこうと、“エズき”のはじまりなのでした。

「――従業員じゅうぎょういん必要ひつようなのはわかるが、店長てんちょうはツクモがやればいいんじゃないのか?」

 可愛かわいらしくくびかしげるヒュリア。

「いやあ、そういうわけにもいかないよ。みせをやるんなら、対外的たいがいてきいろんなひと交渉こうしょうしたり、接客せっきゃくしたりしなきゃならないでしょ。だとすると真黒まっくろ地縛霊じばくれい問題外もんだいがいなわけ。きみだって手配書てはいしょまわってるから、人前ひとまえにはるのはなるだけけたほうがいいでしょ。まして『耶代やしろ』の移転先いてんさき土地とちうなんてことになれば、その契約けいやくなんかもわりにやってもらわなきゃならいしねぇ」

「なるほど、たしかにそのとおりだな。――ならば、アティシュリさま店長てんちょう引受ひきうけていただくことは出来できないでしょうか?」

おれがやるわけねぇだろう。面倒めんどくせぇ」

「そうですか……、ならば、ひょろジは……?」

 トイレのほうるヒュリア。

 ひょろジ……。
 素晴すばらしいふた頂戴ちょうだいしましたぞ、ジョルジくん
 
 しかし、皇女殿下こうじょでんかから頂戴ちょうだいしたとう本人ほんにんは、トイレから、ふらふらとこちらにもどってくる途中とちゅうでして……。
 そのかおさおで、げっそりとやつれております。

「――無理むりだな」

 一人ひとり納得なっとくし、うなずくヒュリア。

「そういうことだから、みせかおになってくれるひとしいのよ」

 やっとのことでせきについたジョルジはなんのことかわからずみんなかお見回みまわしてます。

具体的ぐたいてきには、どんな人物じんぶつ希望きぼうするんだ?」

「そうだね、どっしりと落着おちついていて、見栄みばえもあたまくて、いかにも信用しんようがありそうで、ぼくやヒュリアのことをっても密告みっこくしたり、バラしたりしないくちかたひといよね」

「そんなやつ、そうそういるはずねぇだろうが」

 あきがおのドラゴンねえさん。

 ただじつは、このけんかんするヒント、もうつけちゃってるんです。
 それがこちら。

従業員じゅうぎょういん俺娘おれっこ紹介しょうかいしてもらう』

 昨日きのうまではまった意味不明いみふめいだったこのヒント。
 『耶代やしろ』が進化しんかしたことで、やっと意味いみがわかりました。
 “俺娘おれっこ”はもちろんアティシュリさましてますよね。
 なのできっと、従業員じゅうぎょういんについては、ドラゴンねえさんにまかせればいいってことじゃないでしょうか。

「えーとじつはですね、アティシュリさん。『耶代やしろ』が、あなたにけば従業員じゅうぎょういんつかるってってるんですけどぉ?」

 アティシュリはくちをぽかんとけて、ぼくをガンします。

「はぁっ?! 何をぅ?! またわけのわからねぇことをいやがって! 霊龍れいりゅうであるおれに、そんなてがあるわけねぇだろうが! だいたいおれが、この姿すがたいにける人間にんげん自体じたい、ほとんどいねぇんだぞ!」

ぼくにそんなおこられても、ねぇ……?」

 ヒュリアに同意どういもとめると、苦笑にがわらいをかえされました。

「まあ、人間にんげんじゃねぇ従業員じゅうぎょういんでもいいなら、いててるほどてはあるけどよ……。だいたい人間にんげん従業員じゅうぎょういんしいんなら、おれじゃなく、商業組合しょうぎょうくみあいにでもたのめばいいだろうが……」

 ぶつぶついながらキャラメルをくちれようとしたアティシュリは突然とつぜんなにかにづいたようにフリーズします。

「――ちょっまてよ、ひょっとして『耶代やしろ』は、あいつのことをってやがんのか……?」

「あいつってだれです?」

 質問しつもんをスルーして、忌々いまいましげにあたまくドラゴンねえさん。

「ちっ、そんなことまで見透みすかしてやがんのか、この『耶代やしろ』はよぉ……。クソっ、仕方しかたねぇ、ひさしぶりにかおしてるか」

 立上たちあがったアティシュリはのこりのキャラメルを一気いっきくちながむと、玄関げんかんむかってあるきだしました。

おれはちょっとかけてくるぜ。明日あしたにはもどるからよ。――それと、ヒュリア」

「はい?!」

「ジョルジに剣術けんじゅつおしえてやってくれ」

わたしが……、ですか……」

 あきらかにいやそうなかおのヒュリア。

「おまえ剣術けんじゅつ超一流ちょういちりゅうだからな。――たのんだぜ」

「おちください! まだおしえるとはってません!」

 ヒュリアは抗議こうぎしますが、アティシュリはどこかぜそといき、すぐさまドラゴンの姿すがたになってんでいってしまいました。

 不満ふまんそうに溜息ためいきき、こぶしでテーブルをなぐりつけるヒュリア。
 ジョルジの身体からだがビクっとなります。
  
「ご面倒めんどうば、おかけしまして……、申訳もうしわけねぇこって……」

 きそうなかおいあやまるジョルジ。

「――ツクモ、木剣ぼっけん二本にほんつくってくれないか」

 無感情むかんじょうなヒュリアのこえ
 でも、ぎゃく内心ないしんのイライラがつたわってきます。
 ジョルジの未来みらい暗雲あんうん立込たちこはじめているようです。

 とりあえず『工作こうさく』の機能きのう木剣ぼっけんつくり、テーブルのうえ具現化ぐげんかさせました。

「すごいですねぇ、ツクモさん!」

 んださかなのようだったジョルジのかがやいてます。
 皮肉ひにくなことに、すこ元気げんきになったみたいです。

 そうだよ、すごいだろ。
 だけど、このけんはね、地獄じごくへの片道切符かたみちきっぷなんだよぉ。 
 これをにとったが最後さいご鬼教官おにきょうかんによる責苦せめくはじまるんだよぉ。

 みじか生涯しょうがいだったな、ジョルジ。
 んだらぼく一緒いっしょ耗霊もうりょう漫才まんざいでもやって営業回えいぎょうまわろうぜ。

「――おい、ひょろジ!」

「ひょろジ? ――それ、オラのこっですか?」

「そうだ、今日きょうからおまえは、ひょろジだ! いいなっ!」

 ヒュリアは宣言せんげんするとけん取上とりあげ、片方かたほうをジョルジのむね押付おしつけました。
 そして、音痴おんち理不尽りふじんなガキ大将だいしょうのたけしくん憑依ひょういさせたような表情ひょうじょうでジョルジを凝視ぎょうしします。

「な、なんでしょうか?」

 にらまれて困惑こんわくするジョルジ。

いまからおまえに、わたし修得しゅうとくした剣術けんじゅつおしえてやる。これはアティシュリさま厳命げんめいだから、いのちがけで修練しゅうれんするように」

「オ、オラ、けんなんてにぎったこともねぇですが……」

「だぁ・かぁ・らぁ、いまからやるんだろぉ、いまからぁ……」

 こめかみをヒクヒクさせたヒュリアは、ジョルジにかおちかづけ、ひとみのぞきこむようにしています。

「は、はいぃっ!」

 ガタガタふるえながら返事へんじをするジョルジ。

 よしっ! 
 さあ、くのだ、ひょろジ!
 かがやかしい未来みらいのために!
 英雄えいゆうほしとなるために!

 かろやかにり、二人ふたりおくしました。

 そのあと家事かじをこなしたり、食堂しょくどうすメニューをかんがえたりしていると、いつのまにか太陽たいようかたむ頃合ころあいとなっていたのです。

 でもヒュリアとジョルジは、まだ修練しゅうれんからもどってきません。
 おひるすぎからはじめて夕方ゆうがたですから、もうかなりの時間じかんってます。
 心配しんぱいになったんでそとてみました。

「――どうした、それでわりか、ひょろジ!」

「まだ、まだぁ……」

 きずだらけでボロボロになってるジョルジ。
 いきみだすこともなくたたずむヒュリア。

 両手りょうてにぎめたけん振上ふりあげ、突進とっしんするジョルジ。

 ろされるけん易々やすやすかわして、間合まあいにはいったヒュリアは、ジョルジの喉元のどもと剣先けんさきをつきつけます。
 ジョルジは、ただそれだけですべ攻撃こうげきふうじられ、うごけなくなってしまいます。

すべてのうごきがざつだ。予備動作よびどうさつぎ攻撃こうげきめてしまう。だから……」

 喉元のどもとからけんいたヒュリアは、かげのようにジョルジの左側面ひだりそくめんへとまわりこみ、左肩口ひだりかたぐちけんたたきつけました。

「――こうなる」

 ジョルジはたたかれた左肩ひだりかたさえ、片膝かたひざいてしまいました。
 をくいしばって、いたみにえてます。

 かねてこえをかけました。

「そろそろ、わりにしたら?」

「――どうする、ひょろジ、もうやめにするか?」

 挑発ちょうはつするようなヒュリアの笑顔えがお。 

「いいえ、まだやれます……」

 まんまとせられるジョルジ。

「そうか、ならばて」

 ジョルジは立上たちあがると、すぐに猛然もうぜんとヒュリアにかってりかかります。
 半身はんみになったヒュリアはけん紙一重かみひとえでかわしてジョルジのすぐ左斜ひだりななまえはりりこみ、左手ひだりてにぎったけんでジョルジのけんさえ、右手みぎて掌底しょうていでジョルジのしたアゴをげたのでした。
 したアゴに掌底しょうていけたジョルジは白目しろめをむくと、ガクっとくずれてたおれこみ、そのままうごかなくなりました。

「まさか、んだ?」

 おどいてるぼくかってさわやかに微笑ほほえむヒュリア。
 なんかスッキリしてますな。

「いや、気絶きぜつさせただけだ。――ツクモ、すまんが、こいつを部屋へやまではこんでやってくれ。当分とうぶんまさないだろう」

「ラジャー」

 ジョルジをかついでもどりがてらいてみました。

「ところでさ、ジョルジって、けん才能さいのうありそう?」

「うむ、そうだな……、けんさいしは、まだわからん。ただこいつはみょう勘働かんばたらきがするどいときがあるな」

勘働かんばたらき?」

「ああ。相手あいて気配けはい攻撃こうげきこりを察知さっちする能力のうりょくとでもったらいいだろうか。戦闘せんとう生業なりわいとするものにとっては、貴重きちょう資質ししつひとつなんだ」

「つまりジョルジは、戦士せんしとしての才能さいのうは、ありってことでいいの?」

すこしムカつくが、そういうことになるな」

 へぇ。
 うても『復体鎧チフトベンゼル』の保持者ほじしゃ
 やはり、ただものではない。

 こうして気絶きぜつしちゃったジョルジは、その夕飯ゆうはんきてこず、結局けっきょくそのままつぎむかえることになったのです。 
 ずっと心配しんぱいしてたんですけど、あさ、ヒュリアに朝食ちょうしょくしてるとき、二階にかいからりてきたんで、ホッとしました。
 
 そんで朝食後ちょうしょくご、ヒュリアがまた剣術けんじゅつおしえるながれになりまして。
 ジョルジはあきらかにおびえてましたが、背中せなかけんつつかれて否応いやおうなくそと追立おいたてられます。
 ぼくも、とりあえずやることがかったんで見学けんがくすることにしました。

 木剣ぼっけんかまえたジョルジはヤケクソ気味ぎみにヒュリアにっこんでいきます。
 もちろんけんかすりもせずくうり、ぎゃく手痛ていた反撃はんげきらって地面じめんころがされる始末しまつです。

 そんなことが何度なんど繰返くりかえされると、だんだんてるのがつらくなっきました。
 なので一旦いったん食堂しょくどうもどろうとしたんです。

 すると突然とつぜんはげしい突風とっぷう空地あきち吹荒ふきあれました。
 そしてそらくらくなったかとおもうと巨大きょだいかげふたつ、舞降まいおりてたのです。

 ひとつは、おなじみのあかほのおりゅう
 そしてもうひとつは、褐色かっしょく表皮ひょうひりゅうです。

 ドラゴンが二体にたい
 すげぇ!
 かっけぇ!

「――もどったぜ」

 アティシュリのこえがした途端とたんそらはまたあかるさを取戻とりもどし、霊龍れいりゅうたちひと姿すがたになっていました。
  
 ドラゴンねえさんのよこにいるのは、暗褐色あんかっしょくかみみじかげたたか男性だんせいです。
 スラリとした体形たいけいをしてますが、ジョルジのように弱々よわよわしさがありません。

 こげ茶色ちゃいろ長袖ながそで上着うわぎくろいパンツをわせた地味目じみめ服装ふくそう
 としは20代後半だいこうはんぐらいで、ドラゴンねえさんより年上としうえってかんじがします。

 かおほうはといえば、塩顔しおがおのイケメンなのです。
 濃緑色のうりょくしょく一重ひとえひとみ細面ほそおもてうすめのくちびる
 韓国かんこく人気にんきモデルっていったらわかりやすいかも。

 二人ふたりは、こっちにあるいてるんですけど、ちかづくにつれあつがどんどんつよくなっていきました。
 なんせドラゴン二体分にたいぶんですからねぇ。

 ぼくまえまでると、アティシュリはとなり男性だんせい親指おやゆび指差ゆびさしました。

紹介しょうかいすんぜ。こいつはおれ同胞はらからで『壌土じょうど』を受継うけつぐ『レケジダルハ』だ」

「えーとぉ……、レケジダルハってうのは……?」

「ウガリタで、レケジダルハはつちりゅうという意味いみになる」

 そばにやってきたヒュリアがおしえてくれました。
 ジョルジはヒュリアのうしろかくれるようにしています。

 なるほど、ほのおつぎつちですか。

「――おはつにおにかかります、壌土龍じょうどりゅうさまわたしは、チラック・ウル・エスクリムジの血統けっとうにして、聖騎士団帝国せいきしだんていこく第一皇女だいいちおうじょ、ヒュリア・ウル・エスクリムジともうします」

 ヒュリアは厳粛げんしゅく態度たいどひざまずき、むね御辞儀おじぎをしました。
 それを壌土龍じょうどりゅうは、予想よそうはんしてやわらかく微笑ほほえみます。

「そんなにかしこまらないでくれ。自分じぶんはチェフチリク、よろしくたのむ」

 チェフチリクはひくいトーンのイケボでそうげると、ヒュリアのって立上たちあがらせました。
 おとこぼくでも、ちょっとドキッとするこえしてます。
 しかも、ちょい強面こわもてなのに、なんかしちゃって。

 アティシュリよりも全然優ぜんぜんやさしいじゃん。
 こりゃ、モテる。
 絶対ぜったいモテるなぁ。

きみがヒュリアか。――チラックの血筋ちすじのわりには、かなり美人びじんだな」

「えっ?」

 ヒュリアは、ほほさえ、かおを真赤《まっか》にしてます。

 なんかおんなになっちゃってない?
 壌土龍じょうどりゅう、あなどりがたし。
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