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第5章 ぼくの運命の先輩は。
心配されています。
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乙葉はぼくらの会話を盗み聞きしている。
カラコン先輩はそのことに気付いていないようだ。
「怪我はそれだけか? 見たところ元気そうだけど」
「は、はい。これも、すぐに治るって言われたので」
ぼくは左手を持ち上げて見せると、カラコン先輩は安心したような顔を見せる。
なんだなんだ? ただ単にぼくの怪我が気になったから来たのか?
いや、きっと罠だ。
素直に受け答えをしても、どうせ揚げ足取って揶揄ってくるに決まってる。だが次の瞬間、カラコン先輩はぼくに頭を下げた。
「悪かったな、そんな怪我させちまって」
「えっ? いや、別に先輩は、何もしてないじゃないですか」
「いや、お前に怪我をさせたあいつ、俺の友達なんだ。試合見てたけど、まさかあんな風にお前につっこんでいくとは思わなくて」
カラコン先輩は顔を上げて、ぼくを真っ直ぐ見つめた。
「実はあいつに頼まれてここに来たんだ。放課後、小峰に謝りたいって。ここだと周りの目もあるし、気を遣わせるだろうからって」
そうして一枚の手紙を手渡された。
名前は書いていない、よくあるタイプの白い便箋だ。しっかりとのり付けしてある。
「俺もその中身は見ていない。そこに場所が書かれてるらしい。行ってやってくれるか」
「あぁ……そうなんですか」
こうして律儀にされる方が、かえって申し訳ない気持ちになる。
ぼくはもう気にしていないので、と手紙を返そうとしたのだが、カラコン先輩は頑として受け取らなかった。
「あいつ、ちょっとプライド高いところがあって。本当はこの手紙も自分で渡せと言ったんだが、それは無理だって言って俺に押し付けてよ。きっとあいつなりに反省してるんだ。俺からも頼むよ。行ってやってくれ」
その時、生徒指導係りでもある強面の教師がカラコン先輩の背後を通り過ぎた。
先生は数人の生徒を引き連れてどこかへ向かう途中みたいだったが、カラコン先輩を頭のてっぺんから爪先まで一瞥した後、こっちに近づいてきた。
「おい、カクライ。せめてズボンくらいはしっかり履けよ。せっかく足長いんだから。短足に見えちまうぞ」
先生はカラコン先輩の頭を持っていたファイルでコツンと叩く。
カラコン先輩……もといカクライ先輩は、注意されるのなんて慣れてるのか「うっせーなぁ」と笑いながら軽く流していた。先生もそれ以上は言わずに、その場を立ち去って行った。
「あぁ悪りぃ。で、行ってくれるか」
ぼくは改めて渡された手紙を見る。
この手紙の主の顔は、正直覚えていない。けれどこうして謝りたいと言ってくれているんだ。その人が納得するなら、その気持ちをちゃんと受け取ってあげよう。
「わかりました。必ず行きます」
「ありがとよ。じゃあ、俺はこれで」
カクライ先輩が廊下の真ん中を歩いて去っていく。他の生徒たちはカクライ先輩が通ると、サッと廊下の角に寄っていた。
見た目はあんなチャラついた人なのに、友達思いのいい人なんだなぁとちょっと感心した。
振り返ると、乙葉は顎に手をあてながら何かうんうんと唸っていた。
「どうしたの?」
「あの人、カクライって呼ばれてたよね」
「うん。あ、やっぱり知ってる人だった?」
「いや……ううん、まさかな」
乙葉はぼくの手紙を手に取って隅々まで見る。
「雫、この場所に行くの? 俺も付いていこうか?」
「いいよ。こんな手紙書くくらいだから、きっと誰にも見られたくないんだよ。一人で行ってくるよ」
「そっか」
昼休みが終わった後、授業を受けている最中にこっそり手紙を読んで場所を確認した。
放課後、ぼくは指定されたその場所へ向かった。
カラコン先輩はそのことに気付いていないようだ。
「怪我はそれだけか? 見たところ元気そうだけど」
「は、はい。これも、すぐに治るって言われたので」
ぼくは左手を持ち上げて見せると、カラコン先輩は安心したような顔を見せる。
なんだなんだ? ただ単にぼくの怪我が気になったから来たのか?
いや、きっと罠だ。
素直に受け答えをしても、どうせ揚げ足取って揶揄ってくるに決まってる。だが次の瞬間、カラコン先輩はぼくに頭を下げた。
「悪かったな、そんな怪我させちまって」
「えっ? いや、別に先輩は、何もしてないじゃないですか」
「いや、お前に怪我をさせたあいつ、俺の友達なんだ。試合見てたけど、まさかあんな風にお前につっこんでいくとは思わなくて」
カラコン先輩は顔を上げて、ぼくを真っ直ぐ見つめた。
「実はあいつに頼まれてここに来たんだ。放課後、小峰に謝りたいって。ここだと周りの目もあるし、気を遣わせるだろうからって」
そうして一枚の手紙を手渡された。
名前は書いていない、よくあるタイプの白い便箋だ。しっかりとのり付けしてある。
「俺もその中身は見ていない。そこに場所が書かれてるらしい。行ってやってくれるか」
「あぁ……そうなんですか」
こうして律儀にされる方が、かえって申し訳ない気持ちになる。
ぼくはもう気にしていないので、と手紙を返そうとしたのだが、カラコン先輩は頑として受け取らなかった。
「あいつ、ちょっとプライド高いところがあって。本当はこの手紙も自分で渡せと言ったんだが、それは無理だって言って俺に押し付けてよ。きっとあいつなりに反省してるんだ。俺からも頼むよ。行ってやってくれ」
その時、生徒指導係りでもある強面の教師がカラコン先輩の背後を通り過ぎた。
先生は数人の生徒を引き連れてどこかへ向かう途中みたいだったが、カラコン先輩を頭のてっぺんから爪先まで一瞥した後、こっちに近づいてきた。
「おい、カクライ。せめてズボンくらいはしっかり履けよ。せっかく足長いんだから。短足に見えちまうぞ」
先生はカラコン先輩の頭を持っていたファイルでコツンと叩く。
カラコン先輩……もといカクライ先輩は、注意されるのなんて慣れてるのか「うっせーなぁ」と笑いながら軽く流していた。先生もそれ以上は言わずに、その場を立ち去って行った。
「あぁ悪りぃ。で、行ってくれるか」
ぼくは改めて渡された手紙を見る。
この手紙の主の顔は、正直覚えていない。けれどこうして謝りたいと言ってくれているんだ。その人が納得するなら、その気持ちをちゃんと受け取ってあげよう。
「わかりました。必ず行きます」
「ありがとよ。じゃあ、俺はこれで」
カクライ先輩が廊下の真ん中を歩いて去っていく。他の生徒たちはカクライ先輩が通ると、サッと廊下の角に寄っていた。
見た目はあんなチャラついた人なのに、友達思いのいい人なんだなぁとちょっと感心した。
振り返ると、乙葉は顎に手をあてながら何かうんうんと唸っていた。
「どうしたの?」
「あの人、カクライって呼ばれてたよね」
「うん。あ、やっぱり知ってる人だった?」
「いや……ううん、まさかな」
乙葉はぼくの手紙を手に取って隅々まで見る。
「雫、この場所に行くの? 俺も付いていこうか?」
「いいよ。こんな手紙書くくらいだから、きっと誰にも見られたくないんだよ。一人で行ってくるよ」
「そっか」
昼休みが終わった後、授業を受けている最中にこっそり手紙を読んで場所を確認した。
放課後、ぼくは指定されたその場所へ向かった。
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