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完 これから先は
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ドアがノックされ、「失礼します」と硬質な声とともに高瀬陸が研究室に入ってきた。
(これが、湊の悩みの原因か……。見た目は好青年だが、その内心に抱えている独占欲が、湊の繊細な心を揺さぶっているのだろう)
「あの……」 なぜ呼ばれたのかわからない様子で、高瀬は不安げに視線をさまよわせた。
俺はデスク一つのボトルを置いた。
「これ。」
戸惑いながら、高瀬はそのボトルにおそるおそる手を伸ばし、手に取った。
「えっ……これって。今、全然手に入らないブランドの……ど……どうして僕にくれるんですか?」
琥珀色の液体が詰まった『イナンナ・ギ・アグ』のラベルを見て驚きながら、高瀬は俺を見た。
その時、プライベートルームから微かなコーヒーの香りを運びながら斗真がマグカップを二つ持って現れた。
「あれ?斗真さん」
なぜいるのか?という疑問の声の高瀬。
湊は俺と斗真の関係をまだ高瀬には伝えていないらしい。
「陸くん……それっ」 手元のボトルを見て、驚いた顔で俺を見る斗真。
高瀬はこのやり取りと、俺たちの間に流れる空気で、俺と斗真の関係を察したようだった。
「斗真さん、この間はすみませんでした。俺、斗真さんに湊を取られるんじゃないかと思ってしまって」
「気にしなくていいよ。湊は僕の大事な家族だからね」
しゅんとなる高瀬に、斗真は優しく微笑んだ。
斗真のその目線の先が俺ではないことに俺は不愉快さを覚える。斗真が笑いかけるのは俺だけでいい。そう思いながら、俺は椅子に深く腰掛け、両手を組んだ。
「湊を悲しませるなよ。斗真は俺より湊を優先させるからな」
これ以上、俺たちの貴重な時間を邪魔されたくない。
「わかりました……でも、これ一番弱いやつってことは、先生はどれくらいの効果があるのを使ったんですか?」 「そんなの決まってるだろ? 当然一番効果が出るやつだ。まぁ、高瀬にはまだ早い」
「ちょ……そこまで言わなくていいだろ」 斗真が慌てて俺の言葉を遮る。
その姿がかわいくて、俺は思わず口元を緩めた。
「心配ない。効果は確認済みだ。な? 斗真?」と付け加えた。 信じられないという顔をする斗真だが、湊を優先した罰だ。これくらいかわいい挑発だろう。
「それに、これは今開発中のもので、販売はされてないから高瀬が調べてるものとは違う。湊にはぴったりだと思うぞ」
「え? 開発中? 湊にぴったり? どういう意味ですか?」
戸惑う高瀬に、斗真がやれやれといった様子で肩をすくめ、穏やかなトーンで
「陸くん。色々なこと焦らないでね。湊に時間をあげてね」 と伝えていた。
意味を理解した高瀬は「わかりました」とだけ言って、一礼し、研究室を後にした。
俺が手伝えることはここまでだ。あとは、湊自身で決めることだろう。
「今日は、俺の部屋に帰るだろ?」 そう言って斗真の手を取り、その手の甲にキスをした。
斗真との時間は、もう誰にも邪魔されたくない。二人きりの空間に戻った安堵感が、俺の心を静かに満たしていく。
「うん」 そう微笑む斗真に、俺は心から安心した。
もっと、俺に溺れさせないと。俺から離れないように……
(これが、湊の悩みの原因か……。見た目は好青年だが、その内心に抱えている独占欲が、湊の繊細な心を揺さぶっているのだろう)
「あの……」 なぜ呼ばれたのかわからない様子で、高瀬は不安げに視線をさまよわせた。
俺はデスク一つのボトルを置いた。
「これ。」
戸惑いながら、高瀬はそのボトルにおそるおそる手を伸ばし、手に取った。
「えっ……これって。今、全然手に入らないブランドの……ど……どうして僕にくれるんですか?」
琥珀色の液体が詰まった『イナンナ・ギ・アグ』のラベルを見て驚きながら、高瀬は俺を見た。
その時、プライベートルームから微かなコーヒーの香りを運びながら斗真がマグカップを二つ持って現れた。
「あれ?斗真さん」
なぜいるのか?という疑問の声の高瀬。
湊は俺と斗真の関係をまだ高瀬には伝えていないらしい。
「陸くん……それっ」 手元のボトルを見て、驚いた顔で俺を見る斗真。
高瀬はこのやり取りと、俺たちの間に流れる空気で、俺と斗真の関係を察したようだった。
「斗真さん、この間はすみませんでした。俺、斗真さんに湊を取られるんじゃないかと思ってしまって」
「気にしなくていいよ。湊は僕の大事な家族だからね」
しゅんとなる高瀬に、斗真は優しく微笑んだ。
斗真のその目線の先が俺ではないことに俺は不愉快さを覚える。斗真が笑いかけるのは俺だけでいい。そう思いながら、俺は椅子に深く腰掛け、両手を組んだ。
「湊を悲しませるなよ。斗真は俺より湊を優先させるからな」
これ以上、俺たちの貴重な時間を邪魔されたくない。
「わかりました……でも、これ一番弱いやつってことは、先生はどれくらいの効果があるのを使ったんですか?」 「そんなの決まってるだろ? 当然一番効果が出るやつだ。まぁ、高瀬にはまだ早い」
「ちょ……そこまで言わなくていいだろ」 斗真が慌てて俺の言葉を遮る。
その姿がかわいくて、俺は思わず口元を緩めた。
「心配ない。効果は確認済みだ。な? 斗真?」と付け加えた。 信じられないという顔をする斗真だが、湊を優先した罰だ。これくらいかわいい挑発だろう。
「それに、これは今開発中のもので、販売はされてないから高瀬が調べてるものとは違う。湊にはぴったりだと思うぞ」
「え? 開発中? 湊にぴったり? どういう意味ですか?」
戸惑う高瀬に、斗真がやれやれといった様子で肩をすくめ、穏やかなトーンで
「陸くん。色々なこと焦らないでね。湊に時間をあげてね」 と伝えていた。
意味を理解した高瀬は「わかりました」とだけ言って、一礼し、研究室を後にした。
俺が手伝えることはここまでだ。あとは、湊自身で決めることだろう。
「今日は、俺の部屋に帰るだろ?」 そう言って斗真の手を取り、その手の甲にキスをした。
斗真との時間は、もう誰にも邪魔されたくない。二人きりの空間に戻った安堵感が、俺の心を静かに満たしていく。
「うん」 そう微笑む斗真に、俺は心から安心した。
もっと、俺に溺れさせないと。俺から離れないように……
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