庶民の俺が金持ちグループに入ったら、完璧な御曹司になぜか異常に懐かれた【目線の先には。一織×千尋編】

綾波絢斗

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沈黙が続く。もう誰も話すこともできない。

「佐久間社長」
深山さんが、静かに声をかけた。

この状況で?深山さん、すごくない?
俺、こんなの怖くて無理だ。

「四宮さんの洞察力と、予測数値の出し方については、現在進行しているプロジェクトにも役に立つと思います。
まずは「秘書預かり」という形で、私の仕事のお手伝いをお願いしてもよろしいでしょうか?」

「…秘書の?」
一織が、静かに聞き返す。

「はい。そうすることで、会社全体について学ぶことができ、即戦力となりうる人材の確保にもつながると思いますが」

「…皆さんは、どう思われますか?」
静かな部屋に、一織の声が響いた。

すると、今日一緒に来てくれたスタッフの人が、「あの…」と、手を挙げた。

一織が、頷く。

「四宮くんには、新しい意見を聞きたくて質問した時に、とても明確な答えをもらいました。いろいろな視点を持つことで、もっと鋭い考え方ができると思います。私は、秘書預かりに賛成です」

「私も」
「僕もです」

次々に、賛同の声が上がった。

「…皆さんも、深山さんと同じ意見ということですね」
一織が、順番にみんなの顔を見ていく。

その途中で、目が合った。

ビクッ、と身体が反応する自分がいる。
「…四宮さん、でしたね」

「はい」

「次回から、深山さんのもとで秘書業務を行い、私と行動することも多くなりますが、問題ありませんか?」

「えっ…と」

周りを見渡すと、みんなが「はい」って言え、という顔をしている。

「が…頑張ります」

「わかりました。では、今回の資料の件については、追って深山さんから連絡をします。また、四宮さんは、仕事の内容について深山さんから説明を受けてください」

そう言って、一織と深山さんは、部屋を出て行った。

ドアが閉まった途端、みんなの力が抜けた。

「マジで、佐久間社長、怖かったね」
「今日、資料まとめたやつ誰だよ。とばっちりだよ」

一織がいなくなったミーティングブースは、水を得た魚のように話が飛び交った。

そこへ、資料を作れと言ってきたスタッフの人がやって来た。

「勝手に資料を使ってごめん。手柄を取りたいとか、そういうつもりはなくて…今回、求められている要求が高くて悩んでたら、四宮くんの作った資料が使えそうで…本当にごめん」

「あっ、全然。大丈夫です。ただ…そのせいで社長が怒っていたから」
「でも、どのみち俺一人じゃ作れなかったし…それに、ごめん。秘書付けにして」
「えっ」

周りにいた社員たちも集まってくる。

「ごめん。生贄みたいにしちゃった」
「深山さん、優しい顔してるけど、かなり厳しいんだ。だからこそ、社長の秘書が務まるんだけど」

…あの深山さんが?

「社長と行動か…息が詰まるかもしれないな」
「大変だと思うけど、これも社会勉強だと思って頑張って」

「でもさ、誰だよ。四宮くんがコネじゃないかって言ったの。社長、マジで怖かったぞ」

「だよね。ちょっと疑ってたから…ごめんね」

次々と、同情と謝罪の言葉を向けられていると、深山さんが入ってきた。

一斉に、口を閉じる社員のみなさん。

「四宮さん。これからのことをお話ししたいので、ついて来ていただけますか?」
「あっ、はい」

振り向くと、みんなが「頑張れ」とガッツポーズをしてくれていた。
軽くお辞儀をして、その場を離れた。
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