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9 距離を詰める声
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昼休み。中庭のベンチで、斗真さんとランチをしていた。
秋の風が心地よくて、穏やかな時間が流れていた。
「湊、やっぱり変わったな」
「え?」
「大人になったってこと。前より自分を抑えるようになった」
「……そうかもしれない」
笑って答えたその瞬間――背後から、低い声が落ちた。
「ちょっと、いい?」
振り向くと、陸が立っていた。
いつもの穏やかな表情ではなく、どこか冷えた目をしている。
「陸!」
思わず立ち上がると、陸はゆっくり近づいてきた。
そして、斗真さんを一瞥し、僕の腕を軽くつかんだ。
その手の温度が、思っていたよりも熱かった。
怒っているのか、焦っているのか――。
陸は人目を避けるように、木陰へと僕を連れて行った。
「……あの人と、ずっと一緒にいるの?」
「え? 斗真さん? 斗真さんは……」
言葉を切ると、陸の視線が僕の顔を射抜いた。
「……俺といない間、あの人と過ごしてたのか?
あんな顔、俺には見せたことなかった」
「え……?」
心臓が、一瞬で跳ねる。
「笑ってた」
その一言に、呼吸が止まる。
「違うよ。ただ懐かしくて――」
言い訳をしようとした瞬間、陸が一歩、距離を詰めた。
すぐ目の前。息が触れるほど近い。
「……湊、俺のこと避けてたろ」
低く押し殺した声。震えているように聞こえた。
「避けてなんか……」
「じゃあ、なんで返信くれなかった? 大学で会っても、いつも笑ってごまかすだけで」
「だって……陸と花井さんの邪魔をしたくなかった。
もう、そんなの見たくなかったんだ」
陸の瞳が一瞬、揺れた。
僕は俯いたまま続けた。
「もう我慢するの、嫌なんだ。陸が誰かと仲良くしてるの、見たくない」
沈黙が落ちた。
風が木の葉をかすめる音だけが響く。
陸が、ふっと笑った。
「じゃあ、俺が湊以外の誰とも仲良くしなかったら――
湊は、俺のそばを離れない?」
僕は静かにうなずいた。
次の瞬間、陸はもう一歩近づき、耳元で囁いた。
「ねぇ、湊。今日、お前の家に行くから。……いいよね?」
息が触れた。
陸は僕の答えを待たず、離れていった。
そして何事もなかったように、斗真さんの方へ歩いていく。
僕は、その場に立ち尽くした。
何が起こったのか、自分でもわからなかった。
秋の風が心地よくて、穏やかな時間が流れていた。
「湊、やっぱり変わったな」
「え?」
「大人になったってこと。前より自分を抑えるようになった」
「……そうかもしれない」
笑って答えたその瞬間――背後から、低い声が落ちた。
「ちょっと、いい?」
振り向くと、陸が立っていた。
いつもの穏やかな表情ではなく、どこか冷えた目をしている。
「陸!」
思わず立ち上がると、陸はゆっくり近づいてきた。
そして、斗真さんを一瞥し、僕の腕を軽くつかんだ。
その手の温度が、思っていたよりも熱かった。
怒っているのか、焦っているのか――。
陸は人目を避けるように、木陰へと僕を連れて行った。
「……あの人と、ずっと一緒にいるの?」
「え? 斗真さん? 斗真さんは……」
言葉を切ると、陸の視線が僕の顔を射抜いた。
「……俺といない間、あの人と過ごしてたのか?
あんな顔、俺には見せたことなかった」
「え……?」
心臓が、一瞬で跳ねる。
「笑ってた」
その一言に、呼吸が止まる。
「違うよ。ただ懐かしくて――」
言い訳をしようとした瞬間、陸が一歩、距離を詰めた。
すぐ目の前。息が触れるほど近い。
「……湊、俺のこと避けてたろ」
低く押し殺した声。震えているように聞こえた。
「避けてなんか……」
「じゃあ、なんで返信くれなかった? 大学で会っても、いつも笑ってごまかすだけで」
「だって……陸と花井さんの邪魔をしたくなかった。
もう、そんなの見たくなかったんだ」
陸の瞳が一瞬、揺れた。
僕は俯いたまま続けた。
「もう我慢するの、嫌なんだ。陸が誰かと仲良くしてるの、見たくない」
沈黙が落ちた。
風が木の葉をかすめる音だけが響く。
陸が、ふっと笑った。
「じゃあ、俺が湊以外の誰とも仲良くしなかったら――
湊は、俺のそばを離れない?」
僕は静かにうなずいた。
次の瞬間、陸はもう一歩近づき、耳元で囁いた。
「ねぇ、湊。今日、お前の家に行くから。……いいよね?」
息が触れた。
陸は僕の答えを待たず、離れていった。
そして何事もなかったように、斗真さんの方へ歩いていく。
僕は、その場に立ち尽くした。
何が起こったのか、自分でもわからなかった。
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