【完結 R18版】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗

文字の大きさ
19 / 86

第19話 会社での噂

しおりを挟む
あれから2週間。
同じベッドを使っているけれど、レイがいつ寝ているのかわからない。
僕が朝起きた時には、すでに自分の準備を終えて僕の朝ご飯を作ってくれている。
スーツも一緒に選んでもらい、ネクタイも直してもらってから一緒に出勤する。

社長の車から僕がいつも出てくるので、会社では当然噂になっている。
そりゃそうだろう。つい最近まで一般社員で全然目立たなかった僕が、突然社長秘書補佐になり、さらには社長のそばにずっといる存在になったのだから。

昼休み。
会議室と会議室の間にある小さな休憩スペースで、僕はコーヒーを片手に一人ベンチに座っていた。

背後から、ひそひそ声が聞こえる。

「また社長と一緒に出社してた」
「なんであんな子が」
「キョウカさん、あれで我慢してるのすごいよね」
「まさか身体で……」

ぐさぐさ刺さる言葉たち。
僕は何も言えず、ただ膝の上で指を組むことしかできなかった。

社長のそばにいるのは、契約だから……。
でもそれを言うことはできなくて。
キョウカさんの名前が出たことで、より苦しくなる。

ふと、視界の端で影が伸びた。

「ねえ、それって——誰のこと?」

さらりとした声。
あまりに自然に入り込んできたその声に、僕も、陰口を言っていた数人も、びくりと肩を震わせた。

リョクだった。
さっきまでどこにいたのかもわからないのに、いつの間にかにこにこと笑顔でこちらを見ていた。

「楽しそうな話してたから、混ぜてほしいな~って」

無邪気に見えるその顔とは裏腹に、言葉の終わりには妙な重みがある。
陰口を言っていた数人が、一斉に黙り込んだ。

「……え、あ、いや、なんでもないんです。ほんとに」
「ちょっと話が飛躍してただけで」

顔を引きつらせた一人がそう言いながら、視線を宙に逃がす。

リョクは首をかしげた。

「そっかぁ。でも、アオのこと悪く言うのは、ちょっとやだな」

笑っているのに、空気が張り詰める。
ふわっとした雰囲気のまま、リョクは一歩だけ彼らに近づいた。

その瞬間、まるで空気が凍ったみたいに冷たくなった。
背中にぞくっと悪寒が走る。
僕まで息が詰まりそうになる。

リョクはただ笑っているだけだったのに。

何が起きているのかわからなかった。

「もう、その話題はしちゃダメだよ?」
リョクがどんな顔をしているのか、僕からは見えなかった。

振り返ったリョクは、いつもの笑顔で僕のほうに目を向けて言った。

「アオ、コーヒー飲んだら一緒に戻ろ?」

「……う、うん」
僕は思わず立ち上がって、リョクの横に並んだ。

「今日は、どうして?」
「あっ。アキトさんにちょっと。キョウカさんに頼まれたもの渡しに来たんだ」
いつものリョクだった。

さっき口を閉じてしまった人たちの顔を思い出すと、あのとき何が起きていたのか——わからない。
僕の知らないことがある?

リョクは僕の耳元にふっと顔を寄せて、
「アオ~。今日泊まりに行っていい?」
「明日学校があるでしょ?」
「ちぇっ、ケチ」
いつも変わらず甘えてくるリョクに安心した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!

夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。  ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公

処理中です...