【完結 R18版】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗

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第28話 番の正体

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アキトが連れ去られた場所は、あるビルの一室だった。

手足を拘束され、自力での脱出は難しい。セキュリティも堅固で、外部からの侵入は通常の人間には不可能に近い。

「カナメさん。やっぱり、あなただったんですね」
アキトは冷静に問いかけた。

「へぇ。いつから気づいてた?」
「まあ、ある程度は。ずっと僕を狙ってたでしょ?」
「さすが。さすがは一条社長の兄貴だね。侮れない」

「でも、どうして僕を? うちは一線を越えなければ、カナメさんのようにデータを取引する人は見逃していたし、レイを狙う方が合理的じゃない?」

「まぁ、そうなんだけどさ。そろそろ表の世界にも顔を出そうかなと思ってね」
「だから僕?」
「うちにはルガルがいないから。君と俺が番になれば、イルジオン以上の力が手に入るかなと」
「なるほど」

「その余裕な態度は、ルガルだから? ここの場所を特定しても、君の能力くらいないと入ってくるのは難しいと思うけど。でもそこまで時間はかけられないし、そろそろ番になるための手続きを進めようか」

そう言いながら、カナメはアキトの首筋に舌を這わせた。
「んっ……」
我慢しようとするも、思わず声が漏れる。

「ひどくはしない。優しくするよ」

ゆっくりとアキトの服のボタンが外されていく。首筋から胸へ、カナメの唇がゆっくりと落ちてくる。
「あっ……」
刺激には逆らえない。声が漏れてしまう。
ひどくはしないという言葉の通り、ゆっくりと落ちた唇がピタリと止まる。

「紋章が、ある」
「あ……バレちゃった。僕にはもう番がいるんだ」
「どうして。データベースにはそんな情報はなかった」

「当たり前でしょ? そんな大事な情報、僕が表に出すと思う?」
「くそっ」
「当てが外れたのは、それだけじゃないよ」

アキトがふっと笑った直後——

バンッ、とドアが開いた。

そこに立っていたのは、リョクだった。

「どうやってここに……誰だ、お前」
カナメの目が鋭く細まる。

「あれ? リョクくんだったの? それは想定外」
縛られているにも関わらず、アキトは冷静だった。

「外の人間の動きはすべて止めさせてもらったよ~」
「さすがリョクくん」

「お前……ルガルか」
「正解。アキトさんを返してもらうね」

「でもどうやって」
「あっ。気づかなかった? セキュリティを破れる子がもうひとりいるって」

カナメの目が大きく見開かれる。

「……もうひとり?」

リョクがルガルとしての「支配の力」を用い、周囲の警備網を一時停止させていた間、アオが全セキュリティの解除に成功していたのだ。

レイが遅れてやってきた。アキトの姿を確認した瞬間、レイの表情が怒りに染まる。

「……お前か。アキトに手を出したのは」
低く響く怒声とともに、レイがカナメに向かって走り出す。

「待って、レイさん!」

リョクがルガルとしての力をレイに向けて行使する。支配の力により、レイはギリギリで足を止めた。

「……ごめん、レイさん。時間ちょうだい。あとアオのことは任せるね」
リョクはそう言い残し、カナメを連れて退路を確保しながら視界から消えた。

レイはリョクの支配に足止めされ、追うことはしなかった。そしてアキトを背負って車へ戻った。

「レイ、ごめんね。捕まっちゃった……」
「自分を犠牲にするなって言っただろ。キョウカが心配してた」

「後でめちゃくちゃ怒られそうだな~」
そう言って、アキトは力なく笑った。

会社に戻ると、アキトの姿を見たキョウカが泣きながら抱きついてきた。

「キョウカ、泣かないで」
「心配したんだからね! どうして私から離れるの!?」
「ごめんってば」
「手当てするから。こっちに来て」

「わかった。アオくんも最後までありがとう。あのセキュリティは君じゃなければ突破できなかった。本当に助かったよ」

そう言って、アキトとキョウカはサーバールームへ入っていった。

「アキトのプライベートルームがあの裏にあるから大丈夫。さてと、俺たちは帰るよ。リョクの話も伝えたいし」
「え……キョウカさんを置いていって大丈夫?」
「番だしな、あの2人」

「え? キョウカさんって……レイの婚約者じゃなかったの?」
「キョウカはルガル。俺と同じ」
「じゃあ、アキトさんがムルなの?」

「ムル同士は気づけないって話は本当だな。アキトはムルだから狙われやすい。だからキョウカが俺と番を装って、アキトはルガルのふりをさせてた」

「そうだったんだ……」

すべてが一本の線で繋がる。

けれど、リョクがカナメと共に去っていったことだけは、まだ理解できなかった。

困惑する僕に、レイは一言だけ言った。

「それなりの対応は考えてる。リョクからの連絡は……たぶん、1か月後くらいだ」

その口調は、何かを知っていることを示していた。

僕はただ、リョクが無事であることを祈るしかなかった。
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