【完結 R18版】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗

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第60話 目的は?

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アオは、その姿をじっと見つめる。低く落ち着いた声が会場に響く。人を魅了する言葉に、会場全体が静まり返った。

「かっこいい」ほんの小さく呟いたアオの声に気づいたかのように、レイはステージの上からこちらに視線を送ってきた。

わずかに微笑んだ姿に会場がざわつき——カシャ、カシャッ。たくさんのシャッター音が重なった。

その中に、レイではなくアオだけを何枚も撮っているグレーのスーツの男がいた。アオは視線を感じ、その方向を見た。「……!」

その様子にアキトが気づき、すぐに警備担当が男に近づいた。だが男は慌てた様子もなく、そのまま静かに会場の外へと姿を消していった。

「アオ君、大丈夫?」
アキトが心配そうに確認にきた。

「はい。たぶん気のせいだと思うんですけど」
簡単に事情を話すと、アキトは一瞬だけ表情を曇らせた。

「写真を撮られたってことは、誰かへ確認のために送る可能性がある」
「確認……ですか?」
「アオ君の顔を知っている誰か、だね」

(誰かが、僕を探してる?)

「一応すぐにレイに連絡したけど……たぶん、なんとなく察してると思う」
「レイが?」
「うん。一人にならないよう、しばらく気をつけてね」

「はい」(大丈夫。レイが守ってくれる。そう、思っていいんだよね)アオは腕についている黒いバングルを撫でた。

*---------------

ステージが終わり、会場にはひと息ついたようなざわめきが広がった。多くの参加者がレイの言葉を反芻しながらメモを取り、隣同士で感想を交わしている。

そんな中、アオの存在に向けられる視線もまた増えていた。
「レイの隣にいる青年」としてではなく、彼自身に向けられる関心が。

(……やっぱり、さっきの人のせいで余計に気になってる?)
アオは少し肩をすくめる。

そこへ、黒いスーツに身を包んだ一人の男が姿を現した。背筋をまっすぐに伸ばし、どこか冷ややかで、それでいて圧倒的な存在感を放つ人物。

「神宮寺専務……」会場の誰かが小声で名を漏らす。

国家直轄の統制局に所属する幹部であり、複数の企業とも強固なパイプを持つ人物。その姿が会場に現れるだけで、空気が張りつめた。

神宮寺の視線が、真っすぐアオに注がれる。深く観察するような、獲物を値踏みするような目。

「……初めてお目にかかります。君が——神川 アオ君だね?」

丁寧な口調なのに、どこか背筋に刺さるような鋭さがある。アオは思わず一歩後ずさった。

「……何かご用ですか?」
「ええ。あなたに、ぜひお伝えしたいことがありまして」

にこりと笑みを浮かべて差し出された手。その笑顔の裏にあるものは、決して柔らかくはなかった。

とっさに礼儀を崩さないよう応じるが、背筋が粟立つ。

「なるほど……確かに。うわさ以上だ」
「え……」
「ぜひ一度ゆっくりお話したいものだ」

距離を詰めてくる神宮寺に、アオは自然と後ずさる。

その瞬間——ステージを降りてきたレイと目が合った。
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