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第61話 狙われた
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「アオ、こっちに来て」
低い声が背後から落ちた。
振り向くと、いつの間にかレイが立っていた。口調は穏やかだが、瞳だけが冷たく細められている。
神宮寺は微笑を崩さず、一歩だけ後ろへ退いた。
「一条社長自らご対応とは光栄です。またあらためて伺いましょう」
それだけ言い残し、男は踵を返して歩き去っていく。まるで最初から引き際を計算していたかのような、静かな足取りだった。
アオが戸惑った表情のままレイを見上げると、レイはそっと髪を撫でながら呟いた。
「……心配しなくていい。大丈夫。アオは俺のそばにいればいい」
その声は穏やかだったが、底に沈む感情は明らかに怒りだった。
「……レイ?」
「ん?」
その声は、いつもの優しいレイに戻っていた。
「ごめんなさい」
アオは小さな声で呟いた。
何に対して謝っているのか、自分でもわからなかった。ただ、レイを不安にさせてしまったことだけは確かだった。
「俺、もっと気をつける。もう、ああいう人には近づかないようにするから」
「違うよ。アオが謝ることじゃない。俺は、自分の番に指一本でも触れようとする奴を、絶対に許さない」
「ありがとう、レイ」
*---------------
その頃——
「やはり本物だ」
黒い車の後部座席で、神宮寺が小さく呟いた。助手席の若い部下が身を竦ませる《すくませる》。
神宮寺はスマホの画面を指先でなぞった。そこには、先ほど撮影されたアオの姿があった。
——この顔を見た途端、紋章が疼いた。
「……ようやく見つけた」
(——ムル・ナンバー7。失われたはずのムル最大の能力を持つ存在)
眼差しは、執着に似た熱を秘めている。
「次は『直接』接触する」
その言葉に、部下が小さく頷いた。
低い声が背後から落ちた。
振り向くと、いつの間にかレイが立っていた。口調は穏やかだが、瞳だけが冷たく細められている。
神宮寺は微笑を崩さず、一歩だけ後ろへ退いた。
「一条社長自らご対応とは光栄です。またあらためて伺いましょう」
それだけ言い残し、男は踵を返して歩き去っていく。まるで最初から引き際を計算していたかのような、静かな足取りだった。
アオが戸惑った表情のままレイを見上げると、レイはそっと髪を撫でながら呟いた。
「……心配しなくていい。大丈夫。アオは俺のそばにいればいい」
その声は穏やかだったが、底に沈む感情は明らかに怒りだった。
「……レイ?」
「ん?」
その声は、いつもの優しいレイに戻っていた。
「ごめんなさい」
アオは小さな声で呟いた。
何に対して謝っているのか、自分でもわからなかった。ただ、レイを不安にさせてしまったことだけは確かだった。
「俺、もっと気をつける。もう、ああいう人には近づかないようにするから」
「違うよ。アオが謝ることじゃない。俺は、自分の番に指一本でも触れようとする奴を、絶対に許さない」
「ありがとう、レイ」
*---------------
その頃——
「やはり本物だ」
黒い車の後部座席で、神宮寺が小さく呟いた。助手席の若い部下が身を竦ませる《すくませる》。
神宮寺はスマホの画面を指先でなぞった。そこには、先ほど撮影されたアオの姿があった。
——この顔を見た途端、紋章が疼いた。
「……ようやく見つけた」
(——ムル・ナンバー7。失われたはずのムル最大の能力を持つ存在)
眼差しは、執着に似た熱を秘めている。
「次は『直接』接触する」
その言葉に、部下が小さく頷いた。
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