グランサンクチュア 〜地底天空都市の伝説〜

大森六

文字の大きさ
4 / 55
第一章 ヒューマニア王国

第4話 魔土<ソイラ>で実験だ

しおりを挟む
「ノア~、ティア~! 始めるぞ!」

「「は~い!!」」


 5歳の頃、魔土ソイラや魔土術に関する知識をもっと増やしたいというノアの希望からロイが先生となって魔土学全般を、リリカが魔土術学全般を教えることになって、5年の月日が流れていた。今ではティアもその特別授業に参加していて、家族の日課の一つとなっている。

「よし、今日はソイラに関して復習だ。そうだな……ノア、ソイラって何か言えるかい?」

 ロイ先生の質問に嬉しそうな表情を見せるノア。

「うん! ソイラは魔素でできた土で、小さな正六面体の塊が基本体となって形成されている。モグラーが探掘刀で掘った時に採取できるソイラの形も正六面体が基本単位になってる! 
 そしてソイラは魔素による多孔質構造となっていて、その隙間の無数の孔のことを【マナポーラス】と呼んでいる。マナポーラスには水、火、風、光とかいろんな属性の魔素を蓄積することができる! それから……」


「ちょっ、ちょっと待て! ノアはソイラのことになると本当にすごいな……ていうか正六面体とか多孔質構造とかどこで覚えたんだ? 10歳とは思えんな」

「えへへ。 市場で買ってもらった本とか! 城下町にいる物知りボブ爺さんにも教えてもらってるんだ!」


「お兄ちゃんばっかりずるい! ティアも知りたい!」

 笑いながらロイがティアの頭を撫でる。

「そうか。ティアも知りたいか。 じゃぁ、試してみよう」


 そういって、3人は第1ブロッカ地域の適当な広場でソイラを掘ることにした。

「よし、ティア。この探掘刀でガイアを掘ってソイラを取り出してごらん」

「うん! わかった!」

「ティア、気をつけてね。探掘刀は危ないから」

「大丈夫だよ、お兄ちゃん心配しすぎ!」

 ティアがサクッと掘り返すと六面体のローソイラが取り出せた。

「やった! お父さん! ソイラが出てきたよ!」

「うまいぞティア! そうだ。これがソイラの一種で【ローソイラ】というんだよ」

「ローソイラ? えっと、魔土の中で一番ショボい土のこと?」


「う、うん。ショボいってどこで覚えたの、ティア? まぁそれはいいとして、低級魔土だね。低級といってもこの中にはお水や火の魔素が少しだけど含まれているんだよ」

「ふぅ~ん。じゃあ、このローソイラからお水出してもいい?」

「いいよ。やってごらん」

 ティアがローソイラに手をかざして水を出す。ちょぼちょぼとローソイラから水が出てきた。

「お水が出た!」

「ティア、もっとマナをローソイラに込めて水をいっぱい出してみよう」

「うん!」

 そしてティアがマナを込めた途端に2メートルほど水が水平に吹き出す。


「うわっ! 結構入ってたね。これは水属性系のローソイラかな?」


 ノアの質問に笑顔で答えるロイ。

「その通りだノア。つまりこのローソイラには元々たくさんの水属性の魔素がマナポーラスに含まれていたということだね。 じゃあ、ティア。試しにそのままマナを注いで火を出してみて。あっちの方にね。気をつけて」


「わかった! やってみる」

 すると、ポワッと小さな火がついてすぐに消えた。それ以上火は出てこない。

「火が消えちゃった」

 そしてティアの持っていたローソイラは茶色からみるみる内に白く変化していった。

「ノア、この白くなっているのはどういうことかわかるかい?」

「うん! ローソイラの中に含まれていた属性魔素が全て使われて空になったから。つまり今、このソイラのマナポーラスには何にも魔素が入っていないってこと!」

「ほとんど正解だ!」


「え? ほとんどって少し間違いなの?」

 ニヤッと笑うティア。悔しそうなノアに、ロイが説明する。

「実はこのローソイラには、まだほんの少し別の属性の魔素が含まれているんだ。例えば風とかな」

 ロイがティアの手の上の白いローソイラを借りて、風属性のマナを注いでみる。すると、すごく微弱なそよ風がフワッとノアの前髪をなびかせる。

「ほんとだ!」

「と、まぁこんな感じで、きっと闇とか光とか色々な属性の魔素がまだこのローソイラの中にはほんの少し含まれているわけだ」

「じゃあ、なんでそのローソイラは色が白く変化していったの?」

「うん、いい質問だな。それはこのローソイラが主属性魔素を失ったというサインなんだ。白とは言っても少しクリーム色だろ?」

「なるほど! そういうこと!」

 ノアはわかったようだが、ティアは憮然としている。わからないようだ。

「ティア、よくわかんない」


「あはは。いいかいティア。水の魔素を全部使い切って、その次に火も使いきってしまった時に、もうこのローソイラは何も仕事ができなくなったんだよ。それでもほんの少しだけ魔素が残っていてね。
 例えば……ティアもお腹が減って動けない時あるだろ? でもティアはちゃんと生きている。今このローソイラはお腹が減った状態と同じなんだ」

「あぁ! そうなんだ! お腹が減って少し白くなったんだね」

 機嫌を直すティア。そしてロイがノアに問題を出す。

「じゃあ、ノア。そのローソイラが完全な白になった状態をなんというか知っているかい?」

「えっと、確か……エンプティラ」

「おぉ! 正解だ! ちょっと知識ありすぎて逆にどうしようかな……」

「ねぇ父さん。質問!」

 ノアからの質問に嬉しがるロイ。


「マナと魔素の違いって何? 僕は同じ意味と思っているんだけどいいのかな?」

(質問の内容が10歳じゃねぇなぁ……)

「う、うん。そうだな。ノアの言うように同じ意味に使われることもあるね。エターナル・マナレインは永遠の魔素雨って意味だしなぁ。でも一般的にマナって言うのは生命の体内に含まれているエネルギーのことをいうみたいだ。そして魔素は環境から生まれるエネルギーのこと 」

 ロイがガイアに触れながら話す。

「ソイラに含まれる属性魔素、これは環境からのエネルギー、そしてさっきティアがエネルギーを注いでローソイラから水や火を出した。あれはマナを注いでいるって感じかな」

「……なるほど……マナを注いで魔素を外部に放出しているってことか……」


 ブツブツと理解しようと考え込むノア。

「お、おいノア。なんかおっさんみたいだから、もうちょっとティアみたいに元気に子供らしく楽しくはしゃいでもいいんだぞ。ちょっと使っている言葉や知識が軽くそこら辺の成人を超えてるような……」

「え? あ、いや。僕はこれが楽しいんだ! 父さんありがとう! 大分わかった気がした!」



「そ、そうか。マナや魔素に関してわからないことはお母さんに聞いたらもっと教えてくれると思うぞ! リリカは魔土術の天才だったからな」


「うん! 実は毎日お母さんにこの話を聞いていてね……この前うんざりされちゃってさ」



「あ……、そうなんだ……」




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~

Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。 それでも、組織の理不尽には勝てなかった。 ——そして、使い潰されて死んだ。 目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。 強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、 因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。 武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。 だが、邪魔する上司も腐った組織もない。 今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。 石炭と化学による国力強化。 情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。 準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。 これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、 「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、 滅びの未来を書き換えようとする建国譚。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...