グランサンクチュア 〜地底天空都市の伝説〜

大森六

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第一章 ヒューマニア王国

第13話 ダンジョン調査の結果

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「ハイソイラ!」

 柔らかい光がロイを包んで一気に身体が回復する。

「いや~いきなりの激闘はおじさん二人には厳しいよな!」

 リックが笑いながら自虐的に話をふる。

「そうだな! 久々動いたけど、若い時と比べたら……いやぁ参ったぜ」

 大笑いする二人にヘンドリックが話しかける。

「いやいや、お二人とも本当に素晴らしい冒険者ですよ。後ろで見ていてその勇敢さに感心させられました」


「ははっ、ヘンドリックさんにそれ言われたら。俺たちはまだまだ若いってなるよな!」

「全くだ! はっはっは!」



 ノアが全員に水を配って回る。

「水分をしっかりとってくださいね。調査はもう少しで終わりになると思います。あと少し、頑張りましょう」

 エミラにそう言って笑顔で水を渡す。

「あ、ありがとう」

(この子は本当に10歳の子供なの? ここまでパーティのことを考えられるなんて。リーダーの資質と才能があるわ……メンバーの士気が下がらないようにフォローまでして……それに呼応して周囲も奮闘できる。まさに勇者のような存在だわ)


 休憩を終えて、さらに先へと進む。ノアの活躍で貴重なアイテムを探掘し、次々とA級の魔物や魔獣を撃破して進む。そして調査開始から四時間が経過したところで、再び一本道が行き止まりを迎えた。


「さぁ、どうする? ノア」

 リックが再び問う。

「サーチライト、スキャン!」

 周囲をスキャンするノア。そして何か情報を掴む。

「まず、ここの壁を2メートル、モグります」

 そう言って一人でサクサクモグっていく。そしてアイテムを獲得し、声をあげる。

「すごい! 父さん、リックさん! ロングソードが出てきましたよ!」

 ノアが後ろで待機しているロイたちにロングソードを渡す。そしてもう一つ貴重なものを見つけていた。

「おい! それって超級魔土<レアラ>じゃねぇか⁈」

「はい! やりました!」

 大喜びするノア。それを見て嬉しくなるロイ。そして回収した剣を手に取り、ロイが反応する。

「この剣の紋章……どこかで……」

「ん? どうした?」

 リックも見てみるが、特に何もわからない。

「なんだ? ロイ、どこかで見た記憶でもあるのか?」

「……多分、グランサンクチュアのどこかだ」

「はぁ? それがどうしてこんな西の果ての人族のダンジョンの中にあるんだ?」

「……わからない」

 興奮が収まってきたところで、ノアが話す。

「ここの下のソイラの層は薄いです。きっと更に下層へ行けます。しかし、僕らの調査はここまでで、一旦ダンジョン踏破とします。もうクタクタですから」


 ノアの判断を聞いて、ほっとするロイ。そしてリックはノアの頭をでながら言う。

「見事な判断だ。ここで目先の欲求を追うようじゃパーティが全滅しちまうからな。ノア、お前は必ずいい冒険者になれるぞ! ロイ以上のな!」

「ははは! 違いねぇわ! ノアの将来が楽しみだ!」


 こうして調査団はダンジョン調査を終了し、帰還した。戻りはスムーズに進み、結局所要時間は五時間半を要した。一般的なA級のダンジョンの踏破時間は八時間を優に超える。つまり今回のダンジョン調査団は極めて優秀だったことを意味していた。


 入口では大勢の観衆がノアたちの帰還を待っていた。ノアの姿が見えた瞬間、歓声とともにリリカとティアが駆けつけて抱き合って喜んだのだった。

 探掘した成果物としては、ソイラの塊が135個、ハイソイラが54個、レアラが1個、聖水10本、果実各種、貴重野菜各種、防具や謎のロングソードなど。考えられないほどの成果だった。
 更には良い防具や日用品として重宝されるA級魔獣及びB級魔物の死骸も大量に有り、これまでの未開ダンジョン調査史上最も成功した調査団として名を残すこととなった。


 10歳の子供と中年の叔父さん二人という一度だけ結成された特別なパーティーはこの日限りで笑顔の解散となった。



 そして、ノアのもとに騎士団のヘンドリックが歩み寄る。

「ノア殿、あなたへの無礼な発言をどうか許してほしい。あなたは素晴らしい冒険者であり、素晴らしいモグラーだ。私はこのことを国王に報告させてもらうよ」

 真摯しんしなヘンドリックの謝罪にノアも笑顔で対応する。

「僕には勿体無いお言葉、誠にありがとうございます」


 そして、仮面をつけたエミラがノアに話しかける。

「ノア様、近いうちにまたお話する機会があるかと思います。その時にゆっくりと。今はご家族との時間を大切になさってください。本日はA級ダンジョン踏破、お見事でした」


「あ、ありがとうございます。エ、エミラ様もゆっくりとお休みください」

 ニコッと笑ったような気がした。しかし仮面では表情はわからない。

「お~い、ノア!」

 リックが読んでいる。駆け足でリックの方へと向かうノア。

「今回のダンジョンはS級へ繋がるA級ダンジョンということで報告する事にした。ロイと相談してな。そうなると解放されてからは他の冒険者パーティーにS級を踏破される可能性が出てくるがそれでも構わないか?」


「もちろんですよ! みんなで利用できるならそれで進めてください」

「よし! わかった。あ、それからな。A級ダンジョンとS級ダンジョンには第一踏破者の名前が使われる。今回だと【A級ノア・グリードダンジョン】だろうな」


「え! そんな事知らなかったです! でも踏破は僕の力だけではないのでちょっと恐縮ですね……」


「いやいや、お前リーダーだから。ていうか本当に言葉使いが成人だよな。なんか怖いぞ」


 笑ってごまかすが、ノア自身、妙に大人っぽくなっている自分に少々戸惑っていた。


「なんか一気に疲れたな……」

 ロイたち家族が集まってきてノアをおんぶする。

「もう今日は休んでいいぞ」


「うん、そうするよ……」


 おんぶされたまま寝てしまった……相応なプレッシャーとストレスがあったに違いない。

 ロイはリリカに状況を報告する。意外にもリリカは表情を曇らせていた。それはロイにもわかる気持ちだった。


「ノアの成長速度が尋常じゃないわ。A級の魔物を相手にリーダーとして戦うなんて。しかもオリジナルの魔土術や鍛治の才能、戦闘の勘みたいなものが群を抜いてすごい」


「それを……王国騎士団に知られてしまったよ」

「引き抜かれてしまうのかしら。王国騎士団に……」

 心配するリリカに、ロイは意外な展開を口にする。


「いや、あれは……多分違うな」


「え? どういう事? 何が違うの?」


 ロイは少し考えて、間を空けてから話す。


「あれは王国騎士なんかじゃない。おそらく……とそのだ」





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