グランサンクチュア 〜地底天空都市の伝説〜

大森六

文字の大きさ
51 / 55
第一章 ヒューマニア王国

第51話 二人でS級ダンジョンへ 03

しおりを挟む
 嬉しそうにソイラグリズリーの死骸を回収していくノア。

「ねぇ、ノア。そんなに熊の死骸を持って帰ってどうするの? 市場に売るの?」

「色々な事に使えるよ。毛皮を使って小物も作れるし、市場にも売れるし。何より僕の講義にも使えるしね」

 講義に使う? 聞き間違いか? 少し不安に思うエミラだった。

 ひと休憩して、再びダンジョンをモグりながら進んでいく二人。ノアがハイソイラを回収しまくるのでダンジョンの地面と壁面が一回り広がってしまった。

「ねぇ……ノア。こんなに広げちゃって大丈夫なの? あなたモグり過ぎじゃない?」

「モグラーのルールにも抵触していないから大丈夫。そもそもここモグれるのは僕しかいないけど。複数穴を開けていくよりも面で浅く広くモグッた方がモグラーマナーとしては正しいから」

「いや、モグラーのマナーとかどうでも良くて、ダンジョンに何か変化が起こったりしない?」

「そうなんだよね。ちょっとダンジョンの成長も期待していたんだけど、全然変化しないんだよなぁ……王宮の書籍を読んでいる限り、SS級とか絶対あるはずなんだよね……もうちょっとモグれば或いは……」

「いやS級ダンジョンをこれ以上成長させてどうするのよ! お願いだから普通に踏破して!」


 エミラに怒られて仕方なくモグりに制限をかけることにした。そうして暫く奥へ進んだ際にノアが何かを感じ取る。

「っ! 魔物がくるぞ!」

 ノアがエミラを抱えて横っ飛びして魔物の突進をかわす。

「キ、キラーソイラパンサーだわ、しかも三匹」


 ノアが4倍強化魔土術クアトロを二人にかける。更にエミラの身体強化も合わせてできる限りのバフをかけた。

「ガルルル……」

 キラーソイラパンサーが大きく口を開けて風魔土術を放ってきた。それを見切って二人とも別々に躱す。しかし、エミラが交わしたその先へ別の二匹が突進してきた。

 ドン! エミラがまともに喰らって壁に激突する。

「やばい! エミラ! くそ、気を失っている」

「射撃<水弾>」

 一匹の横腹に命中し、もう一匹には躱された。ものすごいスピードを持っている。そのままノアには目もくれず、再びエミラを攻撃し、右肩に噛みついた。

「グアァ! どっか行け!」

 エミラのヤケクソキックを腹に喰らって一旦下がってこちらの様子を伺っている。

「ハイソイラ!」

 ノアの回復魔土術で少し落ち着くエミラ。

「エミラ、大丈夫?」

「えぇ、ありがとう。回復したわ。あのハイエナ絶対に許さないわ……」

「ラ・ファイアを直接狙って放ってもこの距離だと躱されるよ。できるだけ近づいて僕が仕掛けて斬りかかるから、奴らがよけた方向へ魔土術を放つっていうのはどう?」

「わかったわ」

 ジワジワと魔物との距離を詰めながら詠唱を始めるエミラ。ノアはロングソードを抜いてエンチャント。

「デファイア」

 ボワッとノアのロングソードが燃え上がり、警戒するキラーソイラパンサー。
 先に風魔土術を飛ばしてきたが、ノアの一閃で真っ二つに術を切り裂く。そして一瞬で詰め寄って一匹を炎の太刀で斬り裂いた。

「今だ! 左側に逃げたよ、エミラ!」

「ラ・ファイア! さっきのお返しよ!」

 以前よりも洗練された業火によって一瞬で魔物を消し去った。


「やったわ! またS級魔物を倒せたわ」

「そうだね。個々の能力だと僕らが上だと思う。だけど、数匹出てきて戦術を備えて襲って来られたらやはり二人という人数は厳しいね」

「ノアでもさっきの戦いはちょっと厳しかったの?」

「うん。大きな魔土術で同時に瞬殺するのは簡単だけど、周りのハイソイラに与えるダメージが大きすぎるからそれはできないしね。一匹に集中すると残りの二匹が……」

「……あなたやっぱり余裕で倒せたんじゃない! なんで王女が気を失ってピンチの時にハイソイラ造りのダンジョンを気にしてんのよ! 真っ先に王女を助けなさいよ!」

「いや、アイツらのショボい攻撃なら頭や首を噛みちぎられないってわかっていたからさ。あとで回復魔土術かければ頑丈なエミラなら大丈夫って、ちゃんと考えていたんだよ。実際、その通りになったからよかったね。あははは……」

 ドゴン! 

 身体強化されたゲンコツを喰らって頭にたんこぶを作ったまま歩き始めるノア。
 ふと、目の前に輝くハイソイラの塊が現れた。

「なんだ! なんなんだあれは!!!」

 ノアが大興奮しているがエミラはなんの興味もない。

「すごい! なんでハイソイラが光っているんだ? これって……」

「ちょっ、ちょっとノア。明らかに怪しいわよ。もう少し様子を……」

 不用意に近づいていくノアの懐にパンチ炸裂! 吹っ飛んだノアだが辛うじて防御してダメージは軽い。エミラがノアに近寄る。ハイソイラの塊はゴーレムだった。

「何してるのよ、バカ!」

「あ、あれがハイソイラゴーレムかぁ! あんなの誰も気づかないぞ……」

「あんた以外誰も引っかからないわよ! いい加減にソイラに対する異常過ぎる好奇心を抑えろ!」

 するとノアがエミラの両肩に手をおいて、冷静に語りかける。

「エミラ……ここは僕に任せてくれ。君はさっきの戦いで不幸にも怪我を負った。回復できるとは言え、一国の王女に何回もダメージを負わせるような事態になってしまったら僕は…………」

 ワザとらしく俯いて震えている。

(こいつ……どの口が言っているの……)

「だからここは僕一人に任せてくれ!」

(目が輝いているわ……なんか腹が立つわね……)

 そして、ハイソイラゴーレムとノアの戦いが始まった。しかし、ノアは戦う気が全く無かった。

「絶対にアイツを持って帰ってやる」

 ゴーレムがミドルレンジで右ストレートを放ってきた。ぐんぐん腕が伸びている。

「おぉ! 伸縮できるの? すげぇ! 他に何ができるんだ?」

(アイツ……楽しんでるなぁ……なんかムカつくわねぇ)

 ノアがゴーレムの打撃をかわしながら胴体の接合部分など、そのディテールをじっくり観察している。余裕にかわしているように見えるからかゴーレムが弱いと思えてしまうのだが、実際は全く違う。ゴーレムの打撃スピードはさっきのキラーソイラパンサーよりも速いのだが、それ以上にノアの動きが圧倒的に早過ぎて、ゴーレムがついてこれないのだ。

 エミラもそれを理解して、ますますイラつく。さっきの戦いの苦戦はなんだったんだ。やる気がなかっただけかと。

「お~い! ノア! 私もマナを込めまくったラ・ファイアでサポートするね! ノアを助けるから待ってて!」

 ニヤつくエミラにノアが焦って止める。

「ちょちょちょちょ!! ダメダメ! それやったら本当にパーティー解散だからね!」

 焦るノアを見て大分気がおさまったエミラ。腹を抱えて笑っている。しかしノアの視線はもはやゴーレムにしか向けられていない。


「大分わかってきたぞ。コイツのコアはヘソの部分だな。そしてコイツはマナで動いている。驚くべき事実だけど、人族と同じようにマナを巡らせているんだ。つまりそのマナが無くなればゴーレムは止まる」

 ゴーレムの攻撃をかわしながら回収方法をまとめる。そして……

「よし! これで行くぞ! エミラ、バリアを自分に張って守ってね!」

 ノアが一瞬でゴーレムの懐に入る。そして左手でゴーレムの核に触れ、右手から無詠唱で強大な魔土術をダンジョンの壁に向かって連続して唱え続けた。

「炎槍5連発! いけぇ!」

「え? ちょっと待って! バリア!」

 ギリギリでバリアを張ったエミラ。

 轟音と煙で吹っ飛ばされそうになるエミラ。何が起こったのか全くわからない。徐々に煙が薄くなり視界がひらけてきた。

「はぁ!!」

 エミラはゾッとした。

 放たれた炎の槍……というより、もはや炎の柱がダンジョンを破壊する。
 エミラの目の前を塞いでいたはずの硬質なハイソイラウォールがポッカリと大きな穴を開け、奥へ続く洞窟へと姿を変えていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~

Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。 それでも、組織の理不尽には勝てなかった。 ——そして、使い潰されて死んだ。 目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。 強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、 因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。 武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。 だが、邪魔する上司も腐った組織もない。 今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。 石炭と化学による国力強化。 情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。 準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。 これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、 「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、 滅びの未来を書き換えようとする建国譚。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...