Bloody Code 〜特殊な血を持つ天才少年が謎のリングで仲間になった「アイドル」と現実世界を無双する〜

大森六

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第三章 関東大一揆、洛外編

第86話 お嬢専用エンドサーフェイス

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 12月10日 9:00—— 権田支部 研究室

 太地たいちたちは練馬志の輔ねりましのすけの研究室で真新しい真っ白の物体を囲むように立っていた。

「これが、例のNFNFエヌフのエンドサーフェイスを改良したものですわ?」

「はい。そうですね。正確には般若はんにゃのお面を詳しく分析してから、その機構を活用して新しく成美さんに最適なエンドサーフェイスとして、かなりのアレンジを加えたものです」

『かなりのアレンジってなんだ?』


「成美さんのBloody Codeを分析しまして、その力を十分に発揮できるように手を加えたって感じですね」


「……その結果、真っ白いただのシンプルな楕円の面になってますね」

 太地が優しくつっこむが、笑顔で返答する志の輔。

「まぁまぁ、まずは成美さん。このお面をつけてみてください。」

「わかりましたわ」


 手に取って、ゆっくりとお面を装着する成美。爺やとクルミも見守る中、お面から光が溢れ出す。そして白い面が一気に広がり成美の身体を覆い尽くして一気に光を解き放つ。

「うわ! なんだこの光!」

「成美お姉様! 大丈夫ですわ~!」


 強烈な光が放たれている間に成美の全身を包む白いお面の形状がどんどん変化していく。そして、ゆっくりと輝きが消えていき、全貌が明らかになる。

『なっ、なんだこれ……』

「いいですね! 想定していた以上の出来です! さすが成美さんだ」

「か、格好いい! 成美先輩! やばいですよ!」


 お面が全身をまとって射手用のバトルスーツへと変化していた。お面は顔の右側半分が残っている。これは的を射る際になんらかの効果がありそうだ。

 太地が大興奮するのも理由があった。弓道着と袴姿はかますがたという伝統的弓道精神を引き継ぎつつ、現代アレンジを加えたフォルムで仕上がっている成美の格好は、太地の美学としては完璧だったのだ。

「うぉ~! 志の輔さん! 僕にもこういうのを作ってくださいよ!」

「いや、これは成美さんだからこうなったわけですし……」

 太地が欲しそうにしているのをみて、嬉しくなる成美。

「ふふふ。ワタクシにふさわしいエンドサーフェイスですわ!」

「ですわ~!」

 クルミも爺やも喜こんでいる。


『よし! じゃぁ、お嬢は今から俺と特訓な。太地はさっき渡したメモの内容をしっかりトレーニングしろよ!』


 月人がお嬢の襟元えりもとを掴んで連れて行く。手を振るクルミと太地。


「え! も、もうちょっとこの余韻に浸っていたいのですわ~」

『そんな時間ねぇんだって。このエンドサーフェイスをもっと理解しとかねぇとな!』


 頭を切り替えて、太地は志の輔に単刀直入にある質問をしてみた。

「志の輔さん、このエンドサーフェイスとか、これまで志の輔さんが把握しているNFNFエヌフの技術力ってGSDジスド研究課のそれよりも優れていると思いますか?」


 唐突な質問に驚く志の輔だったが、ニコッと笑って答える。


「多分、今のGSDジスドの技術者とそこまで差はないと思います。太地さんは不安ですか?」

 太地は考えていることを素直に打ち明けてみた。父親の六条勝規ろくじょうかつのりNFNFエヌフ側の技術力を底上げしている可能性があるかどうか。すると志の輔は笑ってそれを否定した。


「六条さんはNFNFエヌフには力を貸していませんよ。そこは安心してください。根拠はありませんが。あと、あの般若のエンドサーフェイスはあの天才科学者六条勝規の開発したものとは思えません」


「何か違いみたいなものがあるんですか?」


「違いと言っていいのかな……なんと表現するべきかわかりませんが、構築されている数式があまり美しくありません。あれは六条さんのものではないとわかります。それに私が解読できて改良品を生み出せるレベルの技術力ですから、そもそもすごくありませんしね。六条さんのは分析することもできません。わけがわからないから」


「なるほど。ちょっとわかる気がします」


 妙に納得して少し気が晴れた太地は礼を言ってトレーニングルームへ向かった。


 * * *


 トレーニングルームの休憩スペースに置かれたテーブル。その上に『ドラック』と書かれた看板が掛かった小さなドラッグストアのようなものを太地は発見した。
 昔ながらの駄菓子屋に良くありそうな木製引戸をカラカラと開けてみると中で六太むったがレジ台の奥に座っている。


『いらっしゃい』


「むっちゃん、何してるの?」


『回復薬売ってるんだよ。太地も欲しいか?』


「……1本いくら?」

『6万円だ』

 ガラガラガラ。

 扉を閉める太地。

 そして何も見なかったことにして月人のメニューをこなす。

 闇夜刀あんやとうを使って長時間トレーニングをしていた片瀬があのロクドラックの方へ向かって行く。

(まさか……買うのか?)

 扉をあけてリポメタンMを六太むったから受け取って飲んでいる。


「おっしゃー! 回復! 月人、ちょっと一対一やろうよ!」

『おう、いいぜ! お嬢、イメージだぞ! 絶対に出せるからな。俺ちょっと片奈を鍛えてくるから』

「……月人さん、鬼コーチすぎですわ。休憩が欲しいですわ~」


 笑って拒否する月人。


「あの……片瀬さん。お金出して回復薬を買ったんですか?」


「へ? むっちゃんタダでくれたよ?」

(……あのクソポメ。主人にとは)



 ちなみにトンボに対しても無料だったようだ。月人には6億円で売ると言ってぶっ飛ばされたようだが。

(僕には6万ってことは月人よりも評価されているってことか?)

 ここ2日間で15本は作ったとの話も聞いたので、太地は説教するのをやめることにした。六太も次の戦いに向けて頑張って回復薬を作ってくれているようだ。
 飼い主以外のシーカーのために。



 暫くしてロクドラッグのお店から六太が出てきてシャッターをガラガラ閉め始めた。どうやら閉店時間のようだ。まだ、午後の3時だが。


「むっちゃん。もう薬作らないの?」

『おう。ちょっと今から新しい薬の開発に着手しようと思ってな』


「新しいって、どんな薬?」


『秘密だ。決して店の裏側を覗くんじゃねーぞ』


(いや、見てもわからないから)


 その横で千鶴はずっと目を閉じて集中している。ピクリとも動かずに数時間ずっと同じ姿勢だ。六太むったもちゃんとそのことを把握している。


(今回は無理でもそのうち、千鶴も化けるかもしれねぇなぁ)

 六太はそう感じた。




 こうしてシーカーそれぞれがある程度手応えを感じながら、課題をクリアしようと努力し続けて4日が過ぎた。
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