Bloody Code 〜特殊な血を持つ天才少年が謎のリングで仲間になった「アイドル」と現実世界を無双する〜

大森六

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第四章 関東大一揆、洛中編

第128話 完璧なミスリード

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「急ぐぞ! 今ならまだ間に合う!」

「ちょ、ちょっと太地君、待って!」

 片奈の手を取りダッシュして皇居に向かう太地。月人もわけがわからないがついていく。不思議そうな月人の表情を見て太地が走りながら語り出す。

「新撰組は確かに幕府を守ろうとして尊王攘夷派そんのうじょういはを取り締まっていた。宍土の視点で現代に置き換えた時に偽りの幕府として存在している日本政府は当然潰すべき存在だろう」

『そうだろ! だったら何故永田町を離れる必要があるんだ?』

「……今の政府を完全に消しても同じだからだ。また同じように宍土が言うダミーガバメントが形成されるだけで何も変わらないんだよ」

『……制度自体を……法を変える必要があるってことか』


「そうだ。宍土の真の目的は日本国憲法を変えること、まず最初にその象徴となる存在、天皇を消し去ることだ」

「嘘でしょ……」

「今の宍土率いる新撰組NFNFにとって、歴史上のすべての『幕府』は不完全な存在だったんだ。武家政権を握って支配していても片隅で国の象徴として存在している天皇家。その構図が続く限り、結局同じ過ちを犯すことに繋がってしまう」


『同じ過ちってのは今の日本政府か。つまり国の象徴を壊してこそ、真の武家政権となる幕府を生み出せる。新撰組の真意を深掘りしたら天皇を消すことが目的達成への一番の近道……そういうことだな?』


 そうだと答える太地。かなり焦ってはいるが迷いのない真っ直ぐな表情だ。

『摂関家しか官位を受け継ぐことができないはずの関白の地位に辿り着いた農民出身の豊臣秀吉。秀吉が建てた聚楽第じゅらくだいと政権を握ったという偉業を宍土が真似ても同じ過ちとなるだけ……』

「狙うべきは新たな聚楽第ではなく、そのそばに位置する京都御所天皇の存在の消滅。つまり、永田町を乗っ取って政権を支配するではなく、側に位置する皇居をまず消滅させて、天皇という国の象徴を消す事だったんだ」

「……永田町なんて、その後どうにでもなるってことね」

 片奈も同調し始める。


「新撰組も聚楽第もNFNFエヌフの真意に迫ると言えるし、まさに渾身のブラフだった。関東大一揆の侵攻の中心は永田町ではなく、皇居が中心となって描かれた円だったんだ。実際、宍土は過去のNOUKAプロジェクトの経緯から政府を憎んでいるしね……完璧なミスリード。やられたよ。見事に騙されてた」


 何故か笑っている太地。ずっと不可解だった謎に挑んで、解き明かせた快感なのか、これからの勝負の行方に自信を持っているのか……月人にもわからなかった。


 残り時間が1分を切る。


「あ! あれ! 宮内庁辺りの上空を見て! 光の……あの光の砲撃が……」


 視力がいい片奈が曇り空の更に遥か上空に大きな光の塊があることに気付いた。


『クッソー! アレを空から真下に打ち込むつもりか⁈』


 桜田門手前に来た太地達。事前に着弾地点にたどり着けそうにない……


「月人!!! 一旦リングに戻れ! ……一気に飛ばすぞ!」

 何も聞かずに瞬時に太地の指示にしたがってエンドサーフェイスに戻る月人。
今の太地の言葉に絶大な信頼があるせいか、それとも意図を共有できたのか……


 立ち止まる太地。それを見て更に焦る片奈。

「何してるの! 光がくる! 間に合わないよ!」


「……load range …… 300 ! ……グハァ! 」

 太地の身体が衝撃に耐えきれず吐血する! 月人を300m先の坂下門付近へロードできたがかなりの負荷がかかったようだ。


「いきなり血を吐くな! どうしたのよ!」

「す、すみません。 ちょっと……」

「あぁ! もう! しょうがないなぁ。 まだむっちゃんの薬は早いでしょ~」

 ふらつきながら急ごうとする太地を背負って片奈も月人を追う。



 月人は太地が懸命に開いた道が閉ざされないように気合いを入れて空を見上げる。

『太地、後は任せろ。俺が余裕で止めてみせる……この左手で』


 時刻が9:15を回った。


「ハァ、ハァ……これで……すべて終わりだ……壊光砲!!」


 空からとんでもない光の砲撃が皇居に向かって放たれる。


『スキル<フリーハンド>!』


 月人の左肩からデジタルレインの渦が煙とともに飛び出して巨大な光の砲撃にぶち当たる。それは徐々に大きな左手へと形を変えて砲撃を包み込む。

『stock!』

 月人の一言と共に巨大な左手が壊光砲を吸い込んでいく。

「何それ……そんなの無敵じゃん」

 背負っていた太地を下ろしながら、片奈が思わずぼやく。しかしその代償なのか太地にBloody Codeの強烈な負荷がかかる。


「ぐぁ! ぐそぉ! づぎど……早く……はなて……」

 全てを左手のひらで吸い込んだ月人がそのまま宍土側に向かって左手をかざす。


『テメェも一回喰らってみろ……release!』


 爆風と共に同じ光の束が空へ向かって放たれる。そう、月人はついにフリーハンドを解放できたのだ。


 円形にえぐれて吹き飛んだ雲を初めて見て、口を開けたまま固まる片奈。

「技は最強やけど……太地君大丈夫?」


 血まみれの口元を拭きながら引きつった笑顔で答える。

「大丈夫です! でもしんどかったので、後で月人をぶん殴ってやります」


 そしてついに黒鬼が現れた。ゆっくりと太地達のもとへ向かって歩いてくる。


《太地、片奈! コイツら相当ヤバイぞ。 気をつけろ。最初から集中していけよ》

《うん。私ちょっと震えてるかも。武者震いであることを祈るわ……》


 二人とも黒鬼般若くろおにはんにゃの能面をつけている。

《月人。あの左側の黒鬼は……あの時の?》

《あぁ、色祭りの時の黒鬼だ。間違いねぇ。》

 あの衝撃は忘れられない。あれからたった一ヶ月半で自分がどこまで奴らと戦えるようになったのか。黒鬼般若二人が太地たちの正面で立ち止まる。


『NFNF黒鬼一番隊隊長の沖田総司。宍土将臣ししどしょうじんの真の傀儡かいらいは私だ』

『NFNF黒鬼二番隊隊長の永倉新八。総帥の目的の邪魔をするものは全て斬る』

『おい、なぜ宍土は出てこないんだ?』

『答える必要はない』

 月人の問いを軽く流し、構える永倉と沖田。二人とも日本刀の侍スタイルだ。
 数秒間、双方動きが止まったまま、出方をうかがっている。

 そして黒鬼般若から動く。


「一文字斬り!」


 遠距離斬撃か? いや、刀が伸びているのか? 太地と片奈は素早くしゃがんでかわし、月人は宙に浮いてよける。

『上だ! 片奈! 避けろ!』


 斬撃をかわした片奈に向かって空から細かい光の刃が降り注がれた。


光撃こうげき時雨しぐれ>」
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