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第一章 勇者の旅立ち
旅の仲間……その1
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……ン……イヤっ……。
私は腕の中の温もりが去っていく気がして、腕に力を籠める。
……げん……さいよ……。
何か聞こえるけど……この温もりは放したくないよぉ。
私はさらにぎゅっと力を籠めた。
「レフィーア、見てないで何とかしてよ。」
『そうはいってもねぇ……ミカゲがこんなに寝起きが悪いの初めて見たからね。』
「……ン、うるさいよぉ……。」
耳元で騒がれては、ゆっくりと寝てられない。
「ミカゲ、アンタ起きたのなら放しなさいよっ。」
「んー……おはようのチュー。」
「ふざけんなっ!」
「……いきなり頭突きは酷いと思うのですよ。」
私は額を擦りながらミュウに文句を言う。
ミュウは私を睨みつける様にしている。
「アンタが寝惚けてヘンな事するからでしょうが!」
「……いいじゃない、お早うのチュウぐらい……女の子同士なんだし。」
「アンタ、まさかソッチの人!?」
ミュウが自分の胸を両腕で抱える様にして隠し、私から距離を取る。
「やだなぁ、そんなわけないじゃない。私はノーマルだよ……自信ないけど。」
『自信ないんかい!!』
レフィーアがすかさずツッコむ。
その後も私はレフィーアと他愛の無い会話をしつつ、ミュウにも会話を振りながら朝食をとる。
和やかな雰囲気に、いつしかミュウの警戒心も解けたようだった。
「ところで、私達話し合う必要があると思うのよ。ミュウちゃんのミミの愛らしさとか、ミュウちゃんの尻尾の触り心地とか、ミュウちゃんのスリーサイズの事とか……。」
『ミュウの事ばっかりかいっ!』
「コホン……冗談は置いといて、ミュウちゃんの事について聞きたいのは確かなのよ……特に今後どうするつもりなのかとか。」
私がそう言うと、ミュウも神妙な面持ちで頷く。
「そうね、私も聞いておきたいこと色々あるかな。」
「じゃぁ、まずはミュウちゃんの事聞きたいな……。」
そうして私とミュウはお互いについての情報を交換することにした。
「ふーん、つまり最初の旅立ちで躓いちゃったってわけね……散々だね。」
私はポンポンとミュウの頭を軽くたたく。
ミュウの種族は成人したら村を出なきゃいけないらしく、それに倣ってミュウも村を出たのはいいけど、最初の依頼で商人に騙されて盗賊に売られたところを私達に助けられた……という事だったらしい。
「軽いな、オイ。……もう少し慰めたり同情してくれてもいいんだよ。」
冗談半分なのだろうが、ミュウはそんな事を言ってくる……でもね、私の方が同情してほしいのよ。
「次は私の番ね……。」
私はミュウにこれまでの事を話す。
ある目的の為に旅に出る事になったはいいけど、所持金が銀貨1枚だけで、旅の支度を整えたら碌に残らなかった事、行く先々でトラブルが起きてまともに寝泊まりをしたことが無い事などを話す。
「……と言うわけで行く先々で散々な目にあったのよ。」
「ゴメンね、苦労してたの私だけじゃないんだね。」
ミュウはそう言って私の頭を撫でてくれる。
「でも、行く先々で村を追い出されるようなトラブルって、一体何があったの?」
「そ、それは……。」
私は思わず口籠る。
『ミカゲが所構わず吹き飛ばしたんだよ。』
「……オイ。」
ミュウの私を見る目が冷たい……。
「違うのよっ、男の人が触ってくるからなんだもん、私は悪くないモン。」
目に涙を溜めながら必死になって訴える。
「つまり、ミカゲは男の人が触られるのも嫌なくらい怖い……と、そういう事?」
「ウン、以前はもう少しマシだったんだけど、急にこっちへ来ることになって、環境が変わったからどうしてもね……。」
「おいおい、そんなんでこれから先大丈夫?」
ミュウが呆れたように言ってくる。
確かに、ミュウの言う通り、このままでは旅に重大な支障をきたすことは間違いないので、少しづつでもなれて行かないといけないと思うのだが……。
『だからさ、ミュウも一緒に旅しないかい?』
突然レフィーアがそんな事を言い出す。
『ミュウが一緒にいてくれれば、ミカゲも助かるし、ミュウも一人旅よりは心強くない?』
「そんなこと言われても……。」
ミュウは突然の事で狼狽えている……まぁ、そうだよね、昨日今日あったばかりの、しかもいかにもトラブルメーカーですと言うような美少女(私の事よ)と一緒に旅をって言われても困るよね。
『旅の目的とかある?』
「……ない。」
『行くアテとか、行こうとしてたところとかある?』
「……ない。」
『路銀とか食料とかのアテは?少なくとも私達と一緒なら希少種の果実が食べられるよ?』
「…………。」
なんか、食べ物でつられそうな雰囲気……ミュウちゃんそれでいいの?
「ミカゲの『目的』って何だ?」
それ次第では一緒に行ってもいいって言うけど……それ聞いちゃう?
「うーん、それは一緒に行ってくれるって行ってくれないと言えないよぉ。」
「そんなに重大な事なの……。」
……ミュウが悩み始める……ってか、何か勘違いさせちゃってるみたいだけど……ま、いっか。
「ウン、分かったわ。一緒に行ってあげる。」
しばらく考え込んでいたミュウが、顔を上げるとそう言ってくる。
「いいの?」
「まぁね、確かにそこの妖精が言う通り、私のは特に目的とかないからね。だったらミカゲ達についていくのも悪くないと思ってさ。」
レフィーアに視線を向けてそういう。
「だからさ、教えてよ、ミカゲの旅の目的。」
ミュウの眼が好奇心に輝いている。
「えっと、……笑わない?」
「笑わないよ。」
「ホントにホント?」
「ホントだってば。だから焦らさないで教えてよ。」
「えっとね……魔王退治。」
「ゴメン、良く聞こえなかった、もう一回。」
ミュウが呆然としながらそう言ってくる。
「だからね、悪い魔王さんを退治に行くのが目的なの。」
私がゆっくりとそう言うと、ミュウは私の額に手を当ててくる。
失礼だなぁ、熱なんてないよ。
「……何でまた魔王退治?」
ミュウは何かを堪える様にしながらそう聞いてくる。
「……私勇者なんだって。」
「……っ……ぷっ……くっ……くく……。」
ミュウの身体が小刻みに震え、一生懸命笑いを堪えているのが分かる。
「ヤッパリ笑ったっ!」
「わ、笑って……くっ……ないよ……クスクス……ミカゲが……勇者……ぷっ……。」
こらえきれずに笑いだしそうになりながらそう言ってくるミュウ。
「笑ってるじゃない!もう、こうなったら……!」
私は既に笑い転げ始めているミュウに飛び掛かり、ミミや尻尾を愛撫する。
「クスクス……やん……やめて……クックック……そこダメ……。」
「うるさいよ。こうしてあげるからね。」
「あ、……しっぽダメェ……やん、耳噛まないでぇ……ダメッ……ゴメン、……謝るから、……あ、そこダメぇぇぇ……。」
ミュウはどうやらしっぽが弱いみたい……笑った罰だからね、もう少し遊ばせてもらうからね。
私はそう思いつつ、ミュウの耳を甘噛みする。
私の腕の中で見悶えているミュウを見てると、何かおかしな気持ちが沸き上がってくる。
あ、これダメなヤツだ……これ以上続けるとヘンな気になっちゃう。
「ソレはだめぇぇぇ~~~~~。」
私は、最期にミュウの尻尾を逆なですると、ミュウを開放する。
「はぁはぁはぁ……危ない所だったわ。もう少しでミュウちゃんを襲う所だったわ。」
「既に襲われてるよっ!」
ミュウはズササッと、壁際に後退り、しっぽを丸めて小さくなっている。
でも、もとはと言えばミュウが可愛い……じゃなくて笑うからいけないのよ。
「冗談はともかくとして、一応私が勇者で魔王を倒せって言われてるのは本当なの。」
「そうなんだ……。」
ミュウは今度は笑わずに聞いてくれる。
「でもね、いきなり魔王を倒せって無茶だと思わないっ?大体魔王ってどこにいるのよっ!魔王を倒すための支度金が銀貨1枚ってどういう事よっ!こん棒とお鍋のフタで魔王を倒せっての?だったらアンタたちが倒しなさいよっ!」
ゼェゼェ、と息とつく私の背中を撫でながら、まぁまぁ、落ち着いて、と言ってくるミュウ。
「ゴメン……取り乱しちゃった。」
「ウン、気持ちはわかるから。」
お互いに遠い目をする私達。
「だからね、取りあえず魔王討伐は置いといて、取りあえずは落ち着いて暮らせる場所が必要だと思うのよ……いい加減ベッドで寝たいのよ。」
私はそう言って、レフィーアに聞いた東にあるラウエルの街を目指している事を告げる。
「うーん、まぁ、とりあえずはそこでもいいかもね。」
ミュウの歯切れが悪い。
「何か気になる事でも?」
「ウン、ミカゲ達だけなら問題ないのよ……でも私がいると……。」
「どゆこと?」
ミュウはどうしようか悩んでいたようだが、やがて意を決したように言う。
「あの町は亜人排斥者が多いのよ。だから私が行くとトラブルに巻き込まれそうで……。」
『そんなの今更だよ~。』
ミュウの言葉をレフィーアが笑い飛ばす。
『ミュウがいなくても、ミカゲがトラブル起こすからね。』
レフィーアの言葉を聞いてミュウが笑いだす。
「それもそっか。」
「二人とも酷いよぉ!」
◇
「じゃぁ、ミュウは隣のイスガニア王国に行くのがいいって事?」
「ウン、イスガニア王国は冒険者の依頼も多いらしいし、治安もいいみたいだし、それに何より亜人に対して悪感情を持っていないからね。」
ミュウの言葉に私は成程、と頷く。
しかしこんなに可愛いのに嫌うなんて、人生損してるとしか思えないよねぇ。
私はミュウの耳を弄りながらそう考える。
『ボクはいいと思うよ。イスガニアの王様は亜人が大好きみたいだしね。』
レフィーアがそう言う。
「ん、じゃぁそうしましょうか。まずはラウエルの街で旅支度を整えて……出来れば1日ぐらいはゆっくりして、それからさらに東のイスガニア王国を目指す……取りあえずこんな感じかな?」
私は今後の方針をまとめる。
何か、ミュウが加わっただけでこの先が楽しくなってきたのが不思議だ。
「あ、出来ればラウエルの街でもう一人くらい仲間を見つけたいわ。」
唐突にそんな事を言ってくるミュウ。
「なんでまた、いきなり?」
二人でも別に構わないと思うんだけどなぁ、と思いつつミュウに聞いてみる。
「排斥主義者の男、見たいに私やミカゲだけじゃ対処できない相手がいるかもしれない、と言う理由もあるけど……私の身が危険だからよっ!」
ミカゲが大好きな女の子を捜してあてがうのよっ!等と言うミュウ……失礼だなぁ。
話がまとまり、私達はラウエルの街を目指す。
私にとって嬉しい誤算だったのは、ミュウのハンターとしての能力の高さ。
夜営の度に森の中で獲物を狩ってきてくれるの……しかも捌くのも上手いんだよ。
ただ、捌いた後は丸焼きする事しか知らないみたいだったから、そこからは私の出番、と言うわけでスープにしたり、シチューにしたり、ハンバーグなんかも作って見たりしたら、とっても大喜びしてくれた。
だからミュウにとっても私達と一緒に来ることにしたのは間違ってなかったと思っているに違いないわ。
更に、たくさん作っても、私の『勇者の袋』に入れておけば問題ないし……って言うか、この勇者の袋、マジで便利すぎる。
そしてもう一つ……私より大きいと思っていたミュウのお胸が、私とそれほど変わらないことが判明したのよ。
道中おさまりが悪そうだったから、窮屈かもしれないけど、って私の下着を貸したらね、なんとぴったりだったのよ。
ミュウは私より小柄だから、相対的に大きく見えただけだったのよ。
その事を知って大喜びしている私を見るミュウの眼がちょっと痛かったけどね。
そんな感じで、旅の道中を楽しく過ごしながら、目的の街ラウエルに辿り着いたのだった。
私は腕の中の温もりが去っていく気がして、腕に力を籠める。
……げん……さいよ……。
何か聞こえるけど……この温もりは放したくないよぉ。
私はさらにぎゅっと力を籠めた。
「レフィーア、見てないで何とかしてよ。」
『そうはいってもねぇ……ミカゲがこんなに寝起きが悪いの初めて見たからね。』
「……ン、うるさいよぉ……。」
耳元で騒がれては、ゆっくりと寝てられない。
「ミカゲ、アンタ起きたのなら放しなさいよっ。」
「んー……おはようのチュー。」
「ふざけんなっ!」
「……いきなり頭突きは酷いと思うのですよ。」
私は額を擦りながらミュウに文句を言う。
ミュウは私を睨みつける様にしている。
「アンタが寝惚けてヘンな事するからでしょうが!」
「……いいじゃない、お早うのチュウぐらい……女の子同士なんだし。」
「アンタ、まさかソッチの人!?」
ミュウが自分の胸を両腕で抱える様にして隠し、私から距離を取る。
「やだなぁ、そんなわけないじゃない。私はノーマルだよ……自信ないけど。」
『自信ないんかい!!』
レフィーアがすかさずツッコむ。
その後も私はレフィーアと他愛の無い会話をしつつ、ミュウにも会話を振りながら朝食をとる。
和やかな雰囲気に、いつしかミュウの警戒心も解けたようだった。
「ところで、私達話し合う必要があると思うのよ。ミュウちゃんのミミの愛らしさとか、ミュウちゃんの尻尾の触り心地とか、ミュウちゃんのスリーサイズの事とか……。」
『ミュウの事ばっかりかいっ!』
「コホン……冗談は置いといて、ミュウちゃんの事について聞きたいのは確かなのよ……特に今後どうするつもりなのかとか。」
私がそう言うと、ミュウも神妙な面持ちで頷く。
「そうね、私も聞いておきたいこと色々あるかな。」
「じゃぁ、まずはミュウちゃんの事聞きたいな……。」
そうして私とミュウはお互いについての情報を交換することにした。
「ふーん、つまり最初の旅立ちで躓いちゃったってわけね……散々だね。」
私はポンポンとミュウの頭を軽くたたく。
ミュウの種族は成人したら村を出なきゃいけないらしく、それに倣ってミュウも村を出たのはいいけど、最初の依頼で商人に騙されて盗賊に売られたところを私達に助けられた……という事だったらしい。
「軽いな、オイ。……もう少し慰めたり同情してくれてもいいんだよ。」
冗談半分なのだろうが、ミュウはそんな事を言ってくる……でもね、私の方が同情してほしいのよ。
「次は私の番ね……。」
私はミュウにこれまでの事を話す。
ある目的の為に旅に出る事になったはいいけど、所持金が銀貨1枚だけで、旅の支度を整えたら碌に残らなかった事、行く先々でトラブルが起きてまともに寝泊まりをしたことが無い事などを話す。
「……と言うわけで行く先々で散々な目にあったのよ。」
「ゴメンね、苦労してたの私だけじゃないんだね。」
ミュウはそう言って私の頭を撫でてくれる。
「でも、行く先々で村を追い出されるようなトラブルって、一体何があったの?」
「そ、それは……。」
私は思わず口籠る。
『ミカゲが所構わず吹き飛ばしたんだよ。』
「……オイ。」
ミュウの私を見る目が冷たい……。
「違うのよっ、男の人が触ってくるからなんだもん、私は悪くないモン。」
目に涙を溜めながら必死になって訴える。
「つまり、ミカゲは男の人が触られるのも嫌なくらい怖い……と、そういう事?」
「ウン、以前はもう少しマシだったんだけど、急にこっちへ来ることになって、環境が変わったからどうしてもね……。」
「おいおい、そんなんでこれから先大丈夫?」
ミュウが呆れたように言ってくる。
確かに、ミュウの言う通り、このままでは旅に重大な支障をきたすことは間違いないので、少しづつでもなれて行かないといけないと思うのだが……。
『だからさ、ミュウも一緒に旅しないかい?』
突然レフィーアがそんな事を言い出す。
『ミュウが一緒にいてくれれば、ミカゲも助かるし、ミュウも一人旅よりは心強くない?』
「そんなこと言われても……。」
ミュウは突然の事で狼狽えている……まぁ、そうだよね、昨日今日あったばかりの、しかもいかにもトラブルメーカーですと言うような美少女(私の事よ)と一緒に旅をって言われても困るよね。
『旅の目的とかある?』
「……ない。」
『行くアテとか、行こうとしてたところとかある?』
「……ない。」
『路銀とか食料とかのアテは?少なくとも私達と一緒なら希少種の果実が食べられるよ?』
「…………。」
なんか、食べ物でつられそうな雰囲気……ミュウちゃんそれでいいの?
「ミカゲの『目的』って何だ?」
それ次第では一緒に行ってもいいって言うけど……それ聞いちゃう?
「うーん、それは一緒に行ってくれるって行ってくれないと言えないよぉ。」
「そんなに重大な事なの……。」
……ミュウが悩み始める……ってか、何か勘違いさせちゃってるみたいだけど……ま、いっか。
「ウン、分かったわ。一緒に行ってあげる。」
しばらく考え込んでいたミュウが、顔を上げるとそう言ってくる。
「いいの?」
「まぁね、確かにそこの妖精が言う通り、私のは特に目的とかないからね。だったらミカゲ達についていくのも悪くないと思ってさ。」
レフィーアに視線を向けてそういう。
「だからさ、教えてよ、ミカゲの旅の目的。」
ミュウの眼が好奇心に輝いている。
「えっと、……笑わない?」
「笑わないよ。」
「ホントにホント?」
「ホントだってば。だから焦らさないで教えてよ。」
「えっとね……魔王退治。」
「ゴメン、良く聞こえなかった、もう一回。」
ミュウが呆然としながらそう言ってくる。
「だからね、悪い魔王さんを退治に行くのが目的なの。」
私がゆっくりとそう言うと、ミュウは私の額に手を当ててくる。
失礼だなぁ、熱なんてないよ。
「……何でまた魔王退治?」
ミュウは何かを堪える様にしながらそう聞いてくる。
「……私勇者なんだって。」
「……っ……ぷっ……くっ……くく……。」
ミュウの身体が小刻みに震え、一生懸命笑いを堪えているのが分かる。
「ヤッパリ笑ったっ!」
「わ、笑って……くっ……ないよ……クスクス……ミカゲが……勇者……ぷっ……。」
こらえきれずに笑いだしそうになりながらそう言ってくるミュウ。
「笑ってるじゃない!もう、こうなったら……!」
私は既に笑い転げ始めているミュウに飛び掛かり、ミミや尻尾を愛撫する。
「クスクス……やん……やめて……クックック……そこダメ……。」
「うるさいよ。こうしてあげるからね。」
「あ、……しっぽダメェ……やん、耳噛まないでぇ……ダメッ……ゴメン、……謝るから、……あ、そこダメぇぇぇ……。」
ミュウはどうやらしっぽが弱いみたい……笑った罰だからね、もう少し遊ばせてもらうからね。
私はそう思いつつ、ミュウの耳を甘噛みする。
私の腕の中で見悶えているミュウを見てると、何かおかしな気持ちが沸き上がってくる。
あ、これダメなヤツだ……これ以上続けるとヘンな気になっちゃう。
「ソレはだめぇぇぇ~~~~~。」
私は、最期にミュウの尻尾を逆なですると、ミュウを開放する。
「はぁはぁはぁ……危ない所だったわ。もう少しでミュウちゃんを襲う所だったわ。」
「既に襲われてるよっ!」
ミュウはズササッと、壁際に後退り、しっぽを丸めて小さくなっている。
でも、もとはと言えばミュウが可愛い……じゃなくて笑うからいけないのよ。
「冗談はともかくとして、一応私が勇者で魔王を倒せって言われてるのは本当なの。」
「そうなんだ……。」
ミュウは今度は笑わずに聞いてくれる。
「でもね、いきなり魔王を倒せって無茶だと思わないっ?大体魔王ってどこにいるのよっ!魔王を倒すための支度金が銀貨1枚ってどういう事よっ!こん棒とお鍋のフタで魔王を倒せっての?だったらアンタたちが倒しなさいよっ!」
ゼェゼェ、と息とつく私の背中を撫でながら、まぁまぁ、落ち着いて、と言ってくるミュウ。
「ゴメン……取り乱しちゃった。」
「ウン、気持ちはわかるから。」
お互いに遠い目をする私達。
「だからね、取りあえず魔王討伐は置いといて、取りあえずは落ち着いて暮らせる場所が必要だと思うのよ……いい加減ベッドで寝たいのよ。」
私はそう言って、レフィーアに聞いた東にあるラウエルの街を目指している事を告げる。
「うーん、まぁ、とりあえずはそこでもいいかもね。」
ミュウの歯切れが悪い。
「何か気になる事でも?」
「ウン、ミカゲ達だけなら問題ないのよ……でも私がいると……。」
「どゆこと?」
ミュウはどうしようか悩んでいたようだが、やがて意を決したように言う。
「あの町は亜人排斥者が多いのよ。だから私が行くとトラブルに巻き込まれそうで……。」
『そんなの今更だよ~。』
ミュウの言葉をレフィーアが笑い飛ばす。
『ミュウがいなくても、ミカゲがトラブル起こすからね。』
レフィーアの言葉を聞いてミュウが笑いだす。
「それもそっか。」
「二人とも酷いよぉ!」
◇
「じゃぁ、ミュウは隣のイスガニア王国に行くのがいいって事?」
「ウン、イスガニア王国は冒険者の依頼も多いらしいし、治安もいいみたいだし、それに何より亜人に対して悪感情を持っていないからね。」
ミュウの言葉に私は成程、と頷く。
しかしこんなに可愛いのに嫌うなんて、人生損してるとしか思えないよねぇ。
私はミュウの耳を弄りながらそう考える。
『ボクはいいと思うよ。イスガニアの王様は亜人が大好きみたいだしね。』
レフィーアがそう言う。
「ん、じゃぁそうしましょうか。まずはラウエルの街で旅支度を整えて……出来れば1日ぐらいはゆっくりして、それからさらに東のイスガニア王国を目指す……取りあえずこんな感じかな?」
私は今後の方針をまとめる。
何か、ミュウが加わっただけでこの先が楽しくなってきたのが不思議だ。
「あ、出来ればラウエルの街でもう一人くらい仲間を見つけたいわ。」
唐突にそんな事を言ってくるミュウ。
「なんでまた、いきなり?」
二人でも別に構わないと思うんだけどなぁ、と思いつつミュウに聞いてみる。
「排斥主義者の男、見たいに私やミカゲだけじゃ対処できない相手がいるかもしれない、と言う理由もあるけど……私の身が危険だからよっ!」
ミカゲが大好きな女の子を捜してあてがうのよっ!等と言うミュウ……失礼だなぁ。
話がまとまり、私達はラウエルの街を目指す。
私にとって嬉しい誤算だったのは、ミュウのハンターとしての能力の高さ。
夜営の度に森の中で獲物を狩ってきてくれるの……しかも捌くのも上手いんだよ。
ただ、捌いた後は丸焼きする事しか知らないみたいだったから、そこからは私の出番、と言うわけでスープにしたり、シチューにしたり、ハンバーグなんかも作って見たりしたら、とっても大喜びしてくれた。
だからミュウにとっても私達と一緒に来ることにしたのは間違ってなかったと思っているに違いないわ。
更に、たくさん作っても、私の『勇者の袋』に入れておけば問題ないし……って言うか、この勇者の袋、マジで便利すぎる。
そしてもう一つ……私より大きいと思っていたミュウのお胸が、私とそれほど変わらないことが判明したのよ。
道中おさまりが悪そうだったから、窮屈かもしれないけど、って私の下着を貸したらね、なんとぴったりだったのよ。
ミュウは私より小柄だから、相対的に大きく見えただけだったのよ。
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