勇者と魔王、選ぶならどっち?

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第二章 勇者のスローライフ??

護衛依頼終了!そして……。

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「乾杯~♪」
 皆でグラスを合わせる。
 ココはアスカの街の中でも、ちょっとだけお高いレストラン。
 無事に護衛依頼が終了したので打ち上げをやろうという事になったのよ。

 言い出したのは白銀の翼の皆さんなんだけどね、最初は断ったのよ。
 だってねぇ、なんでわざわざ、むさ苦しい男達ばっかの場末の酒場に、行かなきゃならないのよ?
 そう言って断ったんだけど、そうしたら暁のユナさんとミナさんがね、ここを指定してきたのよ。
 雰囲気もいいし、料理もおいしいって噂のこのレストラン、ちょっとだけお高いのを除けば断る理由もなくてね、更に助けてもらったお礼もしたいって言われたらねぇ、断れないでしょ。

 結局、ここで打ち上げって事になったんだけど、ザモンさん達、暁の覇者の皆さんは、貴族からの指名依頼を受けることもあるので、こう言う所での会食は慣れているらしく、堂々とした振る舞いだったんだけど、白銀の翼の皆さんは逆にどうしていいか分からす小さくなっていたのよ。
 なんか悪い事しちゃったかな?

 まぁ、それでも食事が進み、アルコールも回り出すと些細な事は忘れて、会話も弾むようになったんだけどね。

「嬢ちゃん、飲んでるか?今日は俺の奢りだから遠慮するなよ。」
 少し顔を赤らめたザモンさんがそう言ってくれるけど、あまりお酒って飲んだことないんだよねぇ。
「ミカゲちゃん、これなんかどう?美味しいよ?」
 ユナさんが、青みがかった液体の入ったグラスを回してくれる。
「あ、美味しい。」
「でしょう?ブルーシャンデリアって言ってね、私のお気に入りなのよ。」
 ユナさんはそう言って、私と同じ色をした、自分のグラスの中身を飲み干し、お代わりを頼んでいる。

「でもねぇ、ホント今回は、ミカゲちゃん達がいてくれてよかったわぁ。」
 少し酔いが回っているのか、頬を染めたミナさんが新しいグラスを私の方に差し出しながら言ってくる。
「そうですか?別に何もしてないと思うんですけど?」
 私はグラスを受け取りながらそう答える。

「イヤイヤ、風呂や食事などの快適な道中に、グリフォンを始めとした高級素材、その上、盗賊団の襲撃で助けられた事、どれ一つとっても、アンタらのお陰だよ。ここの支払いぐらいじゃ足りないぐらい感謝してる。」
 横からガンドルフさんがそう言ってくる。
 そうは言われてもねぇ……、私としては普段と変わった事をしたつもりもないので、そんな風に言われても困る。
 こういう時は、困った時のミュウちゃんだよ。
 という事で、ミュウに視線を向けると、ミュウはやれやれ、と言った感じで口を開く。

「皆さんの感謝の気持ちは受け取っておきますので、出来たら今回の事、余り吹聴しないでくださいね。ヘンなのに絡まれると、ミカゲが暴走するので。」
 なんか、私に対する扱いが酷い気もするけど、この場はミュウに任せて、私は料理を楽しむことにする。
 今出て来たメインディッシュ、何おお肉か分からないけど、柔らかくて美味しいのよ。
 変な癖もなく、付け合わせの香草から漂う香りが、何とも言えずに食欲をそそるのよ。
 更に、ミナさんが渡してくれた飲み物と合う事……私は料理とお酒を堪能することに集中したのよ。



「ミカ姉、そろそろやめようよ。飲み過ぎだよ。」
 クーちゃんが私を心配そうにのぞき込んでくる。
「あんでぇ?これ、おいひぃのよぉ……。クーひゃんもぉ、飲むぅ?」
 全く心配症なんだから。
「まぁまぁ、いいじゃないか。ミカゲさん、もう一杯どう?」
「んー、おなひのぉ、飲むぅ。」
 私はリゥイさんにもう一杯頼む。
 リゥイさんは新しいお酒を「ハイどうぞ」と私に手渡してくれるのだけど、何故か私の手を握って離さないのよ。
 まぁ、面倒だからいっかぁ、とそのままにしていたんだけどね、何故か段々引き寄せられていくのよ。

「ちょっと、いい加減にしなさいよ。ミカゲを放して。ミカゲも、いつの間にそんなに飲んでるのよ。」
「エヘヘ、ミュウちゃんがぁ、ふたりいるぅ……。」
「別にいいじゃないか、本人も嫌がってないんだし。」
「そうそう、ミュウちゃんはこっちで一緒に飲もうよ。」
 白銀の翼の、他の二人がミュウの腕を引っ張る。
 何、勝手にミュウに触れてるのよっ!

「「えっ!」」
 ミュウに触れている手が燃え上がる。
「なっ、熱っ……何だこりゃぁ!」
 熱いんだぁ……じゃぁこれね。
 燃え上がった二人の腕の炎が消え、急速に凍り付いていく。

「みゅーはぁ、わらしのよめぇ……、かっひぇに触んじゃないわよぉ……。」
「ちょ、ちょっと、ミカゲやりすぎ。」
「あんらも、なに、いひゅまで、触ってんのよぉ。」
 私は空いている手の指先に、焔を灯し、いつでも撃ち出せることを示す。
「髪の毛にぃ、うつるとぉ、はげるのよぉ。くふっ、くふっ……。」
「ご、ごめんなさいっ!」
 リゥイさんが慌てて飛びのく。

「いーい、みゅーもぉ、クーひゃんもぉ、マリアひゃんもぉ、わらしのぉ、だいじなぁ、よめなのよぉ……手を出したらぁ、燃やすからねぇ。」
 そう言って私は指先の炎を白銀の皆さんに向けて撃ち出す。
「わわっ……。」
 いきなりパニックに陥る店内。
「バカッ!何やってんのよ!……クー、消せる?」
「今やってるよぉ、でも消えないんだよ。」
 私が出した焔をクーちゃんが水の魔法で消そうとしているけど中々消えない。
「クーひゃん、こうするんだよぉ。すぷらっしゅぅぅ……。」
 私が呪文を唱えると、頭上から大量の水が落ちてきて、燃え盛る炎を鎮火する。
「キャハハハハ……楽しぃねぇ……アイシクルぅ。」
 私は大量の水を凍らせ、氷像を作る。
 祈りを捧げるマリアちゃんの氷像がテーブルの上に鎮座する。
「クーちゃんもぉ。」
 私はさらに水を出して凍らせ、マリア像の横に、ちょっと慌てた感じのクーちゃんの氷像を作り出す。
「みゅーも、いないとねぇ……。」
 更にその横に、プンスカしているミュウの氷像を並べてみる。

「こーしてみるとぉ、みんなぁ、可愛ぃ~♪」
 なんか気持ちよくてフワフワしていて、ちょっと調子に乗った気もするけど、それが楽しくて……いい気持ち……。
「そうそう、ぎあすって魔法がぁあってぇ、これをつかうとねぇ…………。」
 私はフワフワした気分のままミュウにもたれかかる……ずっとこんな楽しい日が続けばいいのにねぇ。

「こらっ、ミカゲっ!……って寝ちゃったよ。」
「ミュウお姉ちゃん、どうしよ、コレ?」
 クーちゃんが困ったようにミュウに助けを求めるけど、ミュウにもどうしようもない。
「逃げるよ、そっとね……。」
 ミュウは眠る私を抱きかかえ、今だパニックの只中にあるレストランから、クーちゃんとマリアちゃんと共に逃げ出したのだった。



「ん……。頭が痛い……。」
「あ、ミカ姉起きた?」
「うん……。なんか頭が痛いのよ。」
「えっとね、起きたなら、とりあえず助けてくれると嬉しいなぁ。」
「助ける?………えっ!クーちゃん、どうしたのっ!」
 私は目の前の惨劇を見て、あっという間に目が覚める。
 目の前にいるクーちゃんは、あられもない格好で縛り上げられていたのだ。

「何でこんな事に……クーちゃん、今助けてあげるね。」
 私はクーちゃんを戒める縄を解こうとして、ふと気付く。
「ねぇ、クーちゃん……、胸大きくなった?」
「そ、そんなことより、早く解いてよぉ。」
 クーちゃんが顔を真っ赤にして叫ぶ。
 この反応は、間違いなく大きくなってるね。
 恥ずかしそうに顔を染めているクーちゃんを見てると、ちょっとした悪戯心が湧いてくる。

「んー、お姉ちゃんにナイショにしてるなんてぇ、イケナイ子だねぇ。どれくらい大きくなったか、調べてあげるねぇ。」
 私はクーちゃんのその双丘に手を伸ばす……。

「いい加減にしなさいっ!」
 背後から思いっきり、頭突きを喰らう。
「いたたっ……。ミュウ!?何やってるの?」
 私が振り返ると、ぐるぐる巻きにされたミュウが転がっていた。
「全部、アンタがやったことでしょうがっ!いいから早く解きなさいっ!」
 みると、ミュウの横にぐるぐる巻きの芋虫がもう一人……マリアちゃん?
 ミュウもマリアちゃんも、ぐるぐる巻きなんだけど、なぜか、その……お胸だけが強調されるような縛られ方をしているんだけど……私がやったの?

「いいから早く……って、ミカゲ?何、その目は?」
「うふふ……ミュウは今動けないんだよねぇ?」
「ちょ、ちょっとまって……アンタまだ酔ってるの?……ってイヤっ……どこ触って……イヤぁぁぁ……!」

 ◇

「くすん……もぅ、お嫁に行けなぃ……。」
「全部アンタが悪いんでしょうがっ!ちょっとは反省しなさい!」
「クーちゃぁぁん……。」
「……知らない!」
 クーちゃんに助けを求めるけど、プイッと顔を背けられる。

 ……解放するときに、ちょっとした悪戯をしただけなのにぃ……。
 それに、自由になった後、全部やり返されたよね?

「まぁまぁ、ミカゲさん、私がお嫁にもらってあげますから。」
 落ち込む私に、マリアちゃんが優しく声をかけてくれる。
「マリアちゃぁぁん。」
 私は彼女の、そのふくよかな胸に顔を埋める。
「マリアちゃんありがとね。……でも深みにハマりそうで怖いから、お嫁の事は考えさせてね。」
 私は彼女から離れながらそう告げておく。

 
「とにかく、ミカゲは今後お酒は禁止!わかった?」
「はぁーい……。」
 ひとしきりの騒ぎの後、朝食の席でミュウがそう告げてくる。
 どうやら、今朝のあの惨状は、昨晩お酒に酔った私がやったことらしい。
 詳しい事に触れなかったり、何故かみんな顔を赤らめたりしているところから、かなりのことをしでかしたっぽい。
 特にクーちゃんは、私の顔を見る度「お姉ちゃんのばかぁ……。」と呟いているので、ご機嫌を直すのに時間が掛かりそうなのよ。


「ま、それはそれとして、今後のことについてなんだけど……。」
 ミュウが今日の予定について話し始める。

 元々、アスカの街に来たのは、北にあるセルアン族の集落を訪ねる為だったのだから、護衛依頼を終えた今は、その事について詳細を詰める必要があった。

「……って感じでいきたいと思うんだけど、どう?」
 ミュウが提案してきたのは、北行きの準備を整えながら、セルアン族の集落について情報を集める事だった。
 まぁ、妥当な線だし、情報が無ければ動きようもないので、その意見に従って行動することにした。



 カラン、カラーン……。
 ギルドの扉をくぐると、耳慣れたドアベルの音が鳴り響き、中でダベっている冒険者達の視線が注がれる。
 初めて訪ねるギルドでは、お馴染みの光景であり、受付してる間に、一組か二組の冒険者に絡まれるって所までがお約束なんだけど……。

「ねぇ、なんかおかしくない?」
 私は小声でミュウに聞いてみる。
「何が?」
「だって、ほら……いつもなら、私達のこと探るように、じっと見てくる人が多いのに、なんか皆視線そらしているよ?」
 私がそう言うと、ミュウは暫く私を見つめてから「気のせいじゃない?」と言った。

「そうかなぁ?……ってあれ白銀さん達だ。おーい……って……何だろ?確かにこっち見たと思うんだけど、逃げるように出て行っちゃった。」
「……気付かなかったんだよ、きっと。」
 クーちゃんがそう言う。
「そうかなぁ、確かに目があったと思うんだけど……。」
「まぁまぁ、それより早くお話聞きに行こ?」
 クーちゃんに引っ張られて、カウンターへと連れて行かれる。
 カウンターでは先に行っていたミュウが、何やら難しい表情で、受付のお姉さんと話をしていた。

「どうしたの?」
「イヤ、なんかギルドマスターが話があるから、奥へ来てくれって……。」
「なんか面倒そうだからパス……って訳には行かない……よね、やっぱり……。」
 受付のお姉さんに睨まれたので、逃走を諦める。

 私達は、お姉さんの案内で、ギルドマスターの待つ奥の部屋へと通された。



「昨夜は、かなり暴れてくれたそうだな?」
 ギルドマスターは開口一番にそう言ってくる。
「何のこと?」
「レストラン『静寂の調べ』の事だ。おまえ達が昨夜行った事は分かっている。」
 『静寂の調べ』??昨日行った、ちょっとお高いレストランってそう言う名前だったんだ。

「……確かに昨日食事はしたけど、暴れたなんて言いがかりを付けられても困る。何か証拠でも?」
 私がそう言うと、ギルドマスターが渋い顔になる。
 でも私暴れてないもんね。
 そう思ってミュウ達の方へ視線をやると、彼女たちは一斉に視線を逸らす……もしかして何かやっちゃった?

「証拠か……。おい、アレを。」
 ギルドマスターが近くにいた職員に声をかけると、奥から3体の氷像が運ばれてくる。

「わぁ、ミュウ達そっくりー。これくれるの?」
 目の前の氷像は、怒っているミュウ、あわわしているクーちゃん、何故か胸を強調しつつ祈りを捧げるマリアちゃん、とそれぞれに特徴を捉えた素晴らしい出来栄えだった。
 しかも氷像なのに溶ける様子が無い。

「これ程の物は関係者じゃないと造れんと思うがどうだ?」
「うん、そうだねぇ、三人を知らないと、ここまで特徴を捉えることできないよね。」
 私はそう言ってミュウを見ると、彼女は頭を抱えている。
「そうか、認めるんだな……これは昨夜レストランで暴れた女性魔術師・・・・・が造って置いていったものだ。」
 ギルドマスターが私を見ながらそう告げる。
「えっ……、ひょっとしてこれ造ったの私?」
 違うよね?と思いつつ振り返ると、皆は諦めたように首を縦に振っている。

「えっと、…………ブレイク!」
 取りあえず氷像を壊す。
「ふぅ、証拠もなくなったし、これで一安心だよね。」

「そんなわけあるかっ!」
 ギルドマスターが大声で叫ぶ。
 うぅ……私何もした覚えないのに、酷いよぉ。
 助けを求める様にミュウを見つめても、彼女は力なく首を振るだけだったのよ。
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