有栖川悠は女の子が好き!?

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悠と明日香の夏休み その2

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ちゅんちゅんちゅん……。
小鳥のさえずりで、明日香は目を覚ます……そして愕然となる。
目の前に悠の顔があったからだ。

そして、自分はなぜか下着姿で、悠を抱きしめている。
悠を挟んだ向かい側には、都が同じような格好で、悠を抱きしめている。どうやら自分は、都と共に、悠を抱きしめながら眠ってしまったらしい。

ただ、自分と都が半裸なのに対し、悠はしっかりとパジャマを着ていて着崩れひとつない……。そんなところに、自分との女子力の差を思い知らされ、少しだけ落ち込む。

明日香は布団の横にちょこんと座り、すやすや眠る悠を覗き込んでいた。
無防備に眠る寝顔は、普段の元気いっぱいな様子と違ってあどけなくて……どうにもイタズラ心がうずいてくる。

「……少しくらい、いいよね?」
明日香はにやりと笑い、そっと顔を近づけ――

ぱちっ。

「……ふあぁ……ん? あ、あれっ? あ、明日香!?」
いきなり悠の目が開いた。

「ひゃっ!? ちょ、ちょっと待っ――」
明日香は驚いてのけぞり、危うく布団に頭をぶつけそうになる。

悠は寝ぼけ眼のまま、しかし顔を真っ赤にして慌てふためく。
「な、なにしてるの!? ボ、ボクの顔めちゃくちゃ近かったんだけど!?」

「ち、ちがっ……! こ、これはそのっ!」
明日香はしどろもどろになり、慌てて手をばたばた振る。
「あ、明日香っ……その……ボクは……」
悠は頬を真っ赤にしたまま布団をぎゅっと握りしめる。

「ち、違うってば! ユウちゃんが寝相悪いから布団直そうとしただけで……!」
必死に言い訳する明日香も、顔が熱くて仕方がない。

二人は互いに「やましい気持ちなんてない!」と言い張りながらも――
気がつけば至近距離のまま、目と目が合ってしまっていた。

「……」
「……」

沈黙。

ほんの数秒なのに、胸の鼓動がやけに大きく聞こえる。
悠はごくりと喉を鳴らし、視線を逸らそうとするけれど……なぜか明日香の瞳に引き止められてしまう。

(ど、どうしよう……顔、近い……!)
(や、やば……なんで逸らせないのよ……!)

互いに心臓が暴れるのを感じながら、無意識に、少しずつ顔が近づいていく。

「……あ、明日香……」
「……悠……」

吐息が触れ合うほどの距離。
お互いの顔が、あと数センチ――
唇が触れ合ってしまいそうな、その瞬間。

「――お熱いわねぇ、アンタたち」

背後から不意に声がして、二人はビクゥッと跳ね上がった。

「ひ、ひゃっ!?」
「きゃあっ!?」

慌てて距離を取った明日香と悠。振り返ると、同じベッドの端で寝転がっていたはずの都が、いつの間にか目を覚まして、にやにやと肘をついて二人を見ていた。

「な、なんで起きてんのよ都っ!」
「いやいや、こんな至近距離で今にもチューしそうになってる二人を前に、寝たふりなんて無理でしょ?」

悠は顔を真っ赤にし、両手で頬を覆いながら声を裏返す。
「ち、ちがっ……! べ、別にそんなつもりじゃなかったんだもん!」

「ふぅん? 『あと数センチ』の距離まで迫っといて、それは苦しい言い訳だと思うけどなぁ」
都は口元を押さえてクスクス笑う。

「う、うるさい! 違うのっつ、これはちがうんだからぁっ!!」
「どっちでもいいけど、今更だって気付いてる??」
「えっ……!」
「だって、あなた昨日……」

「も、もうやめてよ都っ……! 心臓がまだバクバクしてるんだから……」
悠が都の声を遮るように、泣きそうな顔で抗議する。
「へぇ、バクバク? なぁに、キス未遂でそんなにドキドキしちゃったの?昨日あんなにしたのに??」
「~~っ!」
「~~~~っ!!」

枕を手にした二人が同時に飛びかかり、都は「きゃははっ!」と笑いながらベッドの上で大乱闘に巻き込まれる。
因みに、明日香は昨晩二人にキスをしたことは、全く覚えていなかったらしく、都に教えられると、逃げるように帰っていったのだった。



「……話は分かった。しかしタダで、と言うのは虫が良すぎるのでは?」
目の前にいる男……生徒会長である天草満は、不敵に笑いながら都を見る。
「そう来ると思っていたわ。だからこれ……。」
都はそう言いながら一枚の写真を満に見せる。



「ぅおっ!」
天草が声にならない呻き声をあげる。

「この写真の販売許可を、悠から貰えるように交渉してみる、って言うのはどう?」
「う、うむ……。しかし、それだけでは足りんな。」
天草は内面の動揺を押し込んでそう告げる。
「……まぁ、事が事だからね。」
都も、この写真一枚で交渉成立するとは思ってもみなかったので、それ以上無理に押すことはしない。
「そちらの条件は?」
「勿論銀髪少……」
「却下!」
天草が言い終わらないうちに否定する都。
そう言ってくることは予想の範囲内ではあったが、出来ないものは出来ないのだ。

「ウム、ならばせめて学園案内祭ないさいの手伝いではどうかね?」
学園案内祭と言うのは、簡単に言えばオープンキャンパスみたいなものである。
初等部、中等部、高等部そして大学の受験を考えている生徒や保護者に対する、学園側の「営業」の一環ではあるが、学園長の「飾らない魅力」を感じて欲しいという理念の下、ちょっとしたミニ文化祭みたいな催しになっている。
テーマは「学園の魅力」と言う事で、有志による催し物がいくつか用意されている。実際の文化祭は秋にあるので、この内祭はプレ文化祭のような位置づけのように生徒たちは捉えていて、夏休み目前と言う事もあり、大半の生徒は運営には参加せず、降って湧いた「休み」を満喫してはいるが、中には妙に気合を入れている生徒たちも存在するのである。
特にステージ関連は、数少ない発表の場と言う事で、毎年希望者が殺到し、その振り分け処理だけでも生徒会が大忙しだというのは都も知っていた。

「手伝いと言うのはどこまで?」
「基本、当日の受付及び雑用。後、当日のステージのトリに上がってもらう。」
「ちょっと……。」
「一回だけだよ。それに、これは学園側の意向でもある。」

天草の話では、要は悠が楽しそうにしていて、生徒がそれを受け入れているという事をアピールしたい、と言うのだ。
このご時世、様々な個性の生徒がいる。特にトランスジェンダーに関する問題は非常にセンシティブで扱いが難しい。
それでも、これだけの生徒数がいる学園内では避けて通れない問題だと学園は捉えている。
そして、女装した男子生徒が、他者から差別やいじめを受けることなく、楽しく学園生活を送っている、他の生徒もそれを当たり前のように受け入れているという姿を世間に見せたい、というのだ。

「悠の場合、トランスジェンダーとは違うと思うのだけど?」
「関係ないのさ。どうせ、詳細など見学者にはわからぬ。知ったとしても「女装が趣味」という特殊性癖ですら受け入れることができる懐の深さ、と解釈させることもできるからな。ちなみに、このことについて有栖川本人の承諾は得ている。」
「悠が?………まぁ、そう言う事なら仕方がないわね。ただし、今回一回きりよ?後、こちらの満足する結果が出なければこの話はなしだからね。」
「よかろう。何なら、アフタフォローまでしようか?」
「……状況によってはお願いするわ。」
都は少し考えてからそう言う。
実を言えば、今回の事はこの先どう転ぶか分からない。信頼のできる人では多いに越したことはないのだ。

「ふむ、サポートに小宮をつけよう。何かあれば彼を通して言ってくるがよい。」
「解ったわ。で、結果はいつまでに?」
「事前調査と裏工作に2日はかかる。」
「了解、じゃぁ、三日後に、明日香の名前を使って呼び出すわ。」
「よかろう。こっちもそれまでに想定される可能性に関してのシナリオを完成させておく。」
「ありがとう、優秀な生徒会長サンで助かるわ。」
「ふっ、銀髪の持ち主を護るためなら、世界でも敵に回してくれようぞ。」
うっはっはっはっは……と高笑いをする天草を置いて、都は生徒会室を辞するのだった。




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