有栖川悠は女の子が好き!?

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球技大会のアレコレ その1

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……。
何も言えないって言うのは、こういうことを言うのだろう。
私の目の前には天使様に可愛らしいユウちゃんが、困った顔で微笑んでいる。
それも仕方がないだろう。私はユウちゃんのを知ってしまったのだから……。

こんな重大な秘密を秘密じゃないってユウちゃんは言うけど……。
ダメだ、頭の中が与えられた情報に追いつけない。
ここは、順番に整理していくのがいいと思う。
私は、1週間前の事を思い出していく……。




「……じゃぁ、これで決定ね。一応当日の変更も認められているから無理はしないようにね。」
都が黒板横でパンパンと手についた粉を払う。
……やっぱり、カッコいいなぁ。
てきぱきと話をすすめていく都を見ながら明日香はそんな事を考える。
都は、転校して来て初めてできた友達だ。
彼女のさっぱりとしていて、それでいながら細やかに気を使う性格のおかげなのか、今では、昔から仲が良かったかのような付き合いをしている。
かといって、何でもかんでも許容してくれるわけではなく、ダメなところはダメだと、きっぱり言ってくれる。それで気まずくなるとか考えてもいないように……。
彼女と一緒に居ると楽しい……そして苦しい……。
彼女は、私の理想……私が成りたかった私が、そこにいる。

「……ちゃん?……明日香ちゃん?」
「えっ、あっ?」
隣から声を掛けられる。
「都が睨んでいるよ?」
ユウちゃんに言われて前を見ると、都が「聞いてた?」っていうかんじでこっちをにらんでいたので「あはっ」と笑ってごまかしておく。

今話し合っているのは、来週の球技大会の選手決めについてだ。
種目は「バスケ」「バレー」「サッカー」「ソフトボール」「テニス」の5種目。
選手の掛け持ちも可能……というより、一クラス30人なので掛け持ちしないと、全部の種目に出ることが出来ない。
しかも強制参加ではないので、場合によっては全部の種目に出るという猛者も出てくる。
が、場合によっては、競技時間が重なる為棄権しなければならないこともある。
なので、運動神経のいいものを出来るだけ出すという作戦は、あまりお勧めされない。
また、大会が始まる前に、参加者名簿を提出し、その名簿に載っている生徒は、必ずどれか1種目に出なければならず、また、参加者名簿に載ってない者の途中参加は認められていない。

つまり、競技に出たくないものは参加者名簿に載せることはせず、途中で気が変わっても出場できないっ。
協議に出たければ参加表明をし、一度表明したら途中棄権は認めてもらえないという事。
人数が必要な団体戦種目だから、参加人数は多い方がいいけど、かといって運動が苦手な子が入ると戦力ダウンになり、お互いに気まずくなる。
その辺りの絶妙な采配が必要になるのだけど、都主体で進められた話し合いによる結果、現段階では最高と思える采配がなされていた。

「じゃぁ、後は各チームごとで話し合ってね。」
都が解散、というと、さっそく練習を始めるのか、何人かのグループが教室を出ていく。
「明日香、なにボーっとしてたの?」
都が目の前に来て話しかけてくる。
「あ、うん。なんか、球技大会ってこんなに盛り上がったっけ?って思ってさ。」
明日香の記憶にあるのは前の学校の球技大会。
当日はそれなりに盛り上がったものの、準備段階からこんな風に盛り上がる事なんてなかった。

「あー、今回は半分ユウの所為だからねぇ。」
都がそう言って、すでに帰って主のいない机に視線を向ける。
ユウちゃん……有栖川悠は、都と共に転校してきてすぐに出来たお友達。
実は転校する前に、ユウちゃんのバイト先で会ってるんだけど、出会って早々に「一目惚れした」って言われて少し焦ったことは未だに内緒にしている。
今から思えば、仲良くなるきっかけを作るために、そう言ってくれたのだと明日香は考えていた。
その悠が、何故か「球技大会の賞品」にされたことが発表されたのが数時間前の事。
だけど、なぜあんなに盛り上がるのかが、明日香には分からなかった。
確かに悠は可愛い。同性の自分でもクラっと来るような可愛らしさだ。
正直いえば、「一目ぼれした」と言われて嬉しかったし、少しだけきゅんと来た。
だけど、それだけだ。
あそこ迄騒ぎになる理由が分からない。

「うーん、なんて言えばいいかなぁ?クラスだけで言えば単なるノリみたいなところがあるけど、部活連中からすれば、かなり切実な問題もあるのよ。」
そう言って都は、マンモス校が故の悲哀話をしてくれる。
例えば夏の甲子園で有名な野球部。
甲子園常連校なんかは、野球部に200人も300人も在籍していて、ベンチ入りできるのは全体の1割に満たないというのはよくある話で、 3年間ずっとスタンドだったという部員は数多くいる……らしい。
そんな事はおかしい、と学園長は言い、すべての部員に平等に機会を与えるべきだ、と、学園内に野球部をたくさん作ったんだって。
現在は第一野球部から第七野球部まであるらしいんだけど、地区予選に出れるのは、一つの部だけらしいから、地区大会の始まる7月前に校内で試合をやってどこの部が地区大会に出るか決めているんだって。
理事長先生が言うには、「一生懸命練習し、試合をやった結果なら、地区大会に出れなくても納得できるだろう?」という事だけど、そんなものなのかな?
それは野球部に限らず、他の部活も同じで、陸上や水泳などの個人競技の部活以外は、最低3つ以上の部があるって話。

「でね、ユウって、ああ見えてスポーツ全般万能なのよ。」
なんでも、幼いころから運動の基礎を叩きこまれているから、大抵のスポーツは、少し練習しただけで、それなり以上の結果が出せるという。
「さっきの野球部もね、ユウが本気を出せば、甲子園ぐらいは余裕で行けると思うのよ。」
高校生レベルであればユウの本気の玉を打てる者はあまりいないらしい。
「ユウが投げて一人のランナーも出さず、ユウが1回ホームランを打てば、それで勝ちでしょ?」
都はそう言うが、そんな簡単なモノじゃないと明日香は思う。
だけど同時に、ユウの球を打てるバッターがいないのなら、他のメンバーがどうであれ、ユウ一人でそこそこは行くのではないかと思ってしまう。
そしてそれは野球に限らないとなれば……。

「まぁ、正直言って、ユウ一人におんぶにだっこじゃぁ、そんな部活なんて潰れてしまえって思うけどね。」
都の言葉に明日香も、うんうんと頷く。
「でもね、一人でもそんなすごいプレイヤーがそばにいるだけで、みんなの取り組み方が変わるって……そう思わない?」
「……おもう。」
自分よりすごい才能を持つプレイヤーが現れたら……悔しいだろうし、嫉妬もするかもしれない。
ただ、そこで止まるのであれば、その人はそれまでの人だったという事。
その悔しさをバネに代え、嫉妬心を燃料にして努力を続けたのなら……きっと才能以上のものが開花するに違いない。
「それに男なんて単純だから、ユウみたいな可愛い子に「頑張って」なんて言ってもらえば、いつも以上に努力するでしょ?」
(悠にしてみれば複雑な気分なんだろうけどね。)
都は小声でつぶやく。
「ま、そう言う事だから、ユウがいてくれれば、校内大会までの間にグンッと実力が上がることは目に見えてるからね、去年、その実績を創っちゃったし……。だからどこの部もユウに来て欲しいって訳なの。」

昨年の球技大会以降校内大会までの間に、ユウはいくつかの部活に体験入部し、そこでかなりの成績を収めてしまったらしい。
色々あって大騒ぎになったから、ユウは運動部に一切かかわらないことを宣言し、当時の生徒会もそれを認め擁護したことで騒ぎは収まったという事らしかったけど、今回の騒ぎで、昨年の騒ぎが再燃した、という事らしい。

「へぇ、そんなにすごいんだぁ。」
「一見してそう見えないところがね。」
「うん、でもユウちゃんみたいな可愛い女の子が、野球とか、サッカーって想像つかないよね?」
「あー、ウン、ソウネ……。」
都が顔を背けるが、一転して話題を変えてくる。
「そうそう、チアの衣装のサイズ合わせ、明日の放課後だから忘れないでよね。」
そう言って、サイズ票を手渡す都。
明日香は、都と共に球技大会の間チアダンサーになることに決まっていた。
このチアも、採点に関わってくるらしく、優勝の貢献度にかなり密接にかかわるって言うから気が抜けない。

元々運動はあまり得意ではないから、難しい振りはないというのなら、何とかなるかな?って、引き受けたのだが、後になって、引き受けるんじゃなかった、と後悔する羽目になることは、この時点の明日香には分からない事だった。






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