世界を破滅させる聖女は絶賛引き籠り中です

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引きこもり聖女のストレス発散方法?

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「盗賊退治の報償に、奴隷としての売却益、そしてギルドの手数料を差し引いた金額がこちらになります。」
そう言って受付嬢が銀貨の入った革袋を差し出す。
中を改めると、銀貨が120枚入っていた。
盗賊を奴隷として売ったことなど初めてのことなので、多いのか少ないのか分からないが、取り敢えずこのお金で、ユウと美味しい物を食べにいこう。

盗賊のアジトで暴れてから三日ほど、ユウは寝室から出てこなかった。
ずっとその場に留まっていても仕方がないので、ユウに移動しようと説得し、ようやくその気になるのに三日掛かったともいえる。
移動することが決まり、アジトに放置した盗賊たちの様子を見に行くと、盗賊たちの顔から生気が無くなっており、周りで踊り続けるゴーレム達の様子に益々シュールさを感じた。
そんな盗賊たちを縛り上げ、ゴーレムの一人にロープを引かせ、引き摺ってこのミモザの街まで連れてきたのが今朝のこと。
盗賊たちは一晩中引き摺られたため、逆らう元気もなくし、大人しく門番に引き渡され、その報告のためにこうしてギルドまで足を運んだ、と言うのが、今のエルザ達の現状である。
ちなみに、盗賊たちを見てから、ユウはずっと不機嫌オーラをまき散らしていて、危険極まりなかった。

「よう、嬢ちゃん達、かなり稼いだみたいだけど、何やったんだ?ひとつお兄さん達に教えてくれないか?」
ニヤニヤ笑いながら近付いてくる男達。
普段であれば、こういう輩と相対しないように、上手くやり過ごすエルザだったが、ユウの機嫌が悪い今、早めに美味しい物を食べさせて、機嫌を直してもらわなければ、と気が急いていたため、エルザは周りへの注意が散漫になっていた。
「えっと急いでいるので……。」
エルザは、そう言って避けて通ろうとするが、その腕を男が掴む。
マズい!とエルザが思ったときには、男達はすでに宙を舞っていた。
さらに追撃をかけるべく、魔力を練っているユウの手を掴み、慌てて駆け出すエルザ。
ギルドの目の前でこんな騒ぎを起こしたら、後々厄介になるのは目に見えている。
「ユウ、あっちに美味しいデザートを出してくれるお店が有るんだって。」
エルザがそう言ってユウの気を逸らす。
「ん。行く。」
幸いにも、ユウの興味はデザートに移ってくれたようで、その場から離れることに成功したのだった。


「えっ、ユウ、どうしたの?」
朝、エルザが目覚めると、ユウがすでに身支度を整えていた。
「ん?お出かけするんでしょ?」
「そうだけど、でも……。」
確かにユウとは、このミモザの街で2~3日観光しようと約束していたが……。
「いつもは、私がいくら言っても起きないのに……。」
起きないどころか、出掛けようとしないため、エルザはいつも苦労しているのだ。
「そう言う日もある。それより、お湯用意しておいたよ。」
「あ、うん、ありがと。」
エルザはユウにお礼を言って、用意してあったお湯で身体を拭く。
いつもは朝からお風呂にはいるのだが、宿屋でそんな贅沢は出来ない。
こんな事なら、街の外でログハウスに泊まった方が良かったかな?と思う。
ちなみに、この考え方がすでに一般常識から外れていることに気付いていないエルザだった。
さっぱりとした後は、ユウが用意してくれた服に着替え、身支度を整える。
今日の衣装は、トップスが白のセーラにミニのフレアスカート。少し動くと見えそうで恥ずかしいのだが、ユウの謎細工により、どれだけ激しく動いても、見えそうで見えないラインをキープするらしい。
たかが普段着にロストテクノロジーの無駄遣いだと思わないでもないが、かと言って見えるのは困るので、黙って受け入れることにしていた。
だったらミニを穿かなければいい、と言う意見は最初から存在しない。可愛いは正義なのだから。

「とりあえず、朝ご飯は下の食堂でいい?」
「ん。早く行こ。お腹空いた。」
「うん、ゴメンね、行こうか。」
エルザはユウと手を繋ぎ、部屋を出る。
ユウは手を繋ぐと嬉しそうにするので、最近一緒に出るときは、出来るだけ繋ぐようにしている。

「それで、今日はどうしようか?行きたいとこある?」
食事をしながら、ユウに聞いてみる。
「むぐ……ギルド……もぐもぐ……。」
「ギルドって、……珍しい。」
今まで、ユウ自らギルドに行きたいなんて言い出したことはなかったので少し驚く。
ユウは錬金術師《アルケミスト》を自称するだけあって、今の時代の生産技術には興味を示している。だからてっきり鍛冶屋とか魔導具屋に行きたいと言うと思っていただけに意外だった。
「モグモグ……ゴクン……。依頼を受けるの。」
最後の一口を飲み込んだユウが、事も無げにそんなことを言う。
「依頼って……あんなに興味なさそうだったのに?」
「ん、イライラするから……。別に無差別に暴れてもいいけど?」
「うん、依頼受けようね。いい依頼があるといいね。」
エルザは何も言わずに依頼を受けることを受け入れる。
世の中、平和に過ごしたいのならば、破壊神の御機嫌を損ねてはいけないという事だ。

`カランカラーン……。
扉を開くと、いつものようにベルが鳴り、酒場にいる冒険者たちが入り口に視線を向ける。
しかし、昨日の事がすでに噂になっているのか、入ってきたのがエルザたちだと分かると、皆、一様に不自然に視線を逸らす。
しかしユウは気にする風でもなく、依頼ボードの方へ向かい、見分し始める。
「いいのある?」
「あんまり。……とりあえず、これとこれとこれぐらいかな?」
ユウが選んだ依頼を確認する。
「えっと、『ゴブリン退治』と『ウルフ討伐』に『ワーキングベアの退治』ね……討伐系ばかりね。」
エルザは、その依頼書を受付へと持っていく。
「ハイ、討伐依頼ですね……いいんですか?」
「何か問題あるんですか?その依頼。」
「いえ、そうではなく、お二方は旅の途中っておっしゃってませんでしたっけ?」
「あ、うん、ちょっとした、ストレス発散だから。」
「ワーキングベアなんて、Eランクのパーティがストレス発散で倒せる相手じゃないんですが……。まぁ、あの盗賊団を壊滅させたお二人ですから、大丈夫だとは思いますが。」
受付嬢が盗賊団と口にしたとき、ユウの表情が不機嫌なものに変わる。
「あ、あはは。とりあえず問題なければ、詳細をお願いします。」
エルザは、慌てて話題を変えるように、依頼の詳細の説明を促す。
「そうですね、まずゴブリン退治ですが、ここから南に行ったところにある、村の近くでゴブリンの目撃例がありました。まだ被害が出ていませんので数は少ないと思われますが、調査及び討伐をお願いします。」
ゴブリンの数は推定20匹程度だそうだけど、以前と同じ状況にはなってないよね?
「ウルフ討伐は、南西にある森に、ウルフの個体数が増えているとの報告がありましたので、その数を減らして欲しい、というものです。今の所分かっているのは、ロケットウルフにジェットウルフ、タイガーウルフなどがいるそうです。ただ、未確認情報なのですが、スターウルフを見かけた、という話も出ているので気を付けてください。」
スターウルフは、ウルフ種の中でも最上位に位置する魔物で、群れがいる場合は、5人以上編成のBランクパーティで辛うじて討伐できるという、超危険な魔物だ。1頭いるだけでも危険度は跳ね上がるので、もしいたら、迷わず逃げ帰って来てくださいと言われた。
「最後にワーキングベアですが、同じ森の奥深くで縄張り争いをしているそうです。目撃例は3頭ですが、最低限、縄張り争いに負けた2頭は討伐をお願いします。」
ワーキングベアも、ベア種の中では上位に位置する魔物で、普段は、こちらから不用意に縄張りへ入り込まなければ何もしない大人しい性格だ。
しかし、縄張り争いをしているというのであれば話は違ってくる。争いに敗れた個体は、別の縄張りを持とうと、近くを荒らしまくるのだ。
結果として、追われた危険な魔物が、人里近くに出没し、人を襲うという事もあるため、このように討伐依頼が出される。
それなりに危険な魔物ではあるが、1対1であれば今のエルザでも倒せる程度なので、油断さえしなければ大丈夫だろう。
「刻限はどれも1週間となっておりますので、遅れないようにお願いします。」
受付嬢の言葉を聞くと、話は終わった、とばかりに出口に向かうユウ。
「あ、じゃぁ行ってきますね。」
エルザはそう頭を下げ、慌ててユウを追いかけるのだった。



「トルネードカッター!」
「メイルシュトローム!」
ユウが次々と魔法を唱える。
ユウの魔法が放たれるたび、ゴブリン数体の身体がバラバラに引き裂かれ、あたりに飛び散っていく。
「もう終わり?」
「終わりだよ。辺り一帯、生き物の気配がないよ?」
「……念のために、ヘル・インフェルノっ!」
「だぁっ!やりすぎっ!」
慌てて止めるが遅かった。周り一帯が火の海となり、そ叔母にあるものをすべて焼き尽くしていく。
「……ご飯にしよっか?」
エルザは考えるのをやめて、晩御飯の用意をするのだった。

「ねぇユウ、一体どうしたの?少し変だよ。」
「……。」
ユウの行動がいつもと違い過ぎるので、心配になって聞いてみるが、裕は答えてくれない。
「……何でもいいから話して?私はユウの力になりたいのよ。」
「……。」
その後もだんまりを決め込むユウだったが、エルザの声に涙が混じると、しぶしぶと話し出す。
「あの下衆な盗賊達がエルたんの胸を揉んだ。」
「それは……。」
「そのせいで、私が触ろうとしてもエルたんが怯えるようになった……エルたんの心を傷つけるの許せない。」
「……。」
確かに、ユウの言う通り、あれ以来、誰か身体に触れようとすると、無意識に拒否反応を示す様になってしまったことは事実だ。しかしだからといって……。
「本当は、そんな下衆な盗賊がいるこの町全体を灰にしても飽き足らない。でもそれすると、エルたんが困るでしょ?」
エルザは黙って頷く。
盗賊達に対する怒りはエルあの中にもあるが、だからといって街ごと灰にするのは、やり過ぎだ。
「だから、魔物で我慢してる。」
「そうなんだ……。」
エルザはそう言いながらも、軽いパニックを起こしている。
……コレって、私がトラウマを克服しないと、ユウがずっと八つ当たりを続けるって事?
それだけでも大変な気がするが、もし、魔物だけで気が晴れなくなったらどうなるんだろう?
エルザは怖い結論に行きつきそうな気がしたので考えることをやめる。
それより前向きに考えよう、とエルザはユウに提案をする。
「あのね、ユウ。確かに無意識に拒否反応示すけど、ユウの事が嫌なわけじゃないのよ?だから、ユウが優しく私を癒してくれれば、その内良くなると思うの。だから、ねっ?」
そう言いながらユウの手を取り、自分の胸へ引き寄せるエルザ。

その晩から、ユウがエルザの身体を求め、翌日ストレス発散によって辺りが焼け野原になるという日が続くようになったのだった。
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