世界を破滅させる聖女は絶賛引き籠り中です

Red

文字の大きさ
28 / 88

領都にて……。

しおりを挟む
「はぁ………もう直ぐ着くわね。」
エルザがグッタリとしながら呟く。

それも仕方がない。
ミモザの街で受けた依頼に始まって、今日までユウが荒野にした土地は数知れず……。
もし、誰かが空の上からこの地を見下ろしたのならば、街道に沿って、不自然な更地がポツポツと出来ているのを不思議に思うことだろう。

そして、毎晩のように行われる、ユウの優しく、そして激しい責めに、エルザの身体は陥落寸前であり、一欠けらの理性がギリギリ一線を越えずに踏みとどまっている、といった状態だ。
なので、エルザは身も心も疲れ果てていた。
そうでなければ、この後起きる騒動など起こさなかったであろう。

「とまれっ、怪しい奴らめっ!」
外から声が聞こえる。と同時に、馬車?が急停車する。
ユウが外に出て何やら話しているようだけど……。
ぼーっとした頭でそんなことを考えながらエルザも外に出る。

「まだいたのかっ!……お前らひっ捕らえろっ!」
……えっ?何、何が起きてるの?
馬車?を取り囲んでいた男たちが、エルザに向かって飛び掛かる。
状況を把握しきれていない、ぼーっとした頭では何が起きているかわからず、そのために反応が送れる。
男の一人がエルザの腕を掴み、後ろ手に捻り上げる。
「い、痛っ!」
「エルに何するのっ!」
ひねられた腕の痛みに思わず声を上げるエルザ。
その声を聴いた瞬間、ユウの魔法が放たれ、エルザの腕を掴んでいた男はもとより、傍にいた男たちを吹き飛ばす。
その時になって、ようやくエルザの頭が回り出す。

……この人たち、領都の衛兵さん達じゃないっ!
「ユウダメっ!」
追撃をかけようとするユウの手を掴んで押しとどめる。
「でも……。」
「でもじゃないのっ!逃げるわよっ。」
エルザは、ユウに馬車?を仕舞わせると、腕を掴んで走り出す。
こんな行動を選択するあたり、エルザの意識は、まだはっきりと覚醒していなかった。
本来であれば、ユウの行動を止めた後、衛兵の偉い人を呼んでもらい、内緒で身分を明かせば済むことだったのだが……。

「ハァハァハァ……なんでこうなるのよっ。」
人気のない路地裏迄移動し、追いかけてくる人影がないのを確認すると、エルザはその場に座り込む。
「エル、逃げてよかったの?」
「よくないわよっ。でも仕方がないじゃないのよっ!」
「エル落ち着く。とりあえず、ゆっくり出来るところに行こ。」
ユウがエルザの手を引っ張り、街中へと歩き出す。
それはいつもとは逆の光景だった。


「……ユウありがとね。」
宿の一室で落ち着いたところで、エルザがそう呟く。
「構わない。でもお腹空いた。」
「そうね。……と言っても宿の食事時間はまだだし、ちょっと今は外に出たくないし……。」
「何か作って。」
ユウは、そう言ってアイテム袋からコンロや鍋などの調理器具を取り出す。
宿の室内で料理など、普通ならできない事ではあったが、ユウの持っているコンロなどの魔道具は、火を使わず煙も出さないという特別製なので、こっそりとであれば可能ではあった。
最も匂いまでは何ともならないので、換気などは必須なのだが。
「そうね……折角だから何か作ろっか?朝ごはんも食べてないしね。」
エルザは自分のアイテム袋の中から、玉子とベーコン、ミンチにした肉の塊などを取り出す。
食材などを入れてあるアイテム袋は、エルザが持っていたものではなく、ユウに作ってもらったものであり、ユウの亜空間格納と同様の中では時が止まる、特別製だ。
容量も、エルザの魔力に準じているうえ、ユウの魔力を封じた魔石の補助があるので、現在では馬車5台分ぐらいは余裕で入る。とはいえ、出し入れに魔力が必要ではあるので、エルザは食材や氷など、時が止まっていた方が都合の良いものだけをこっちの袋に入れている。

フライパンを二つコンロの上に乗せると、すぐに加熱が始まる。
その間にミンチ肉を一口大より少し大きめに千切り、形を整えていく。
ミンチ肉の形が出来ると、片方のフライパンの上に乗せる。
そしてもう片方のフライパンにベーコンをのせて焼き始める。
ベーコンがある程度焼けたあたりで卵を割って落とし、少しだけ水を加えて蓋をする。
その後、もう片方のフライパンにあるミンチ肉をひっくり返し、焼け具合を確認する。
ある程度焼けているのを確認し、特製のたれをかけると、肉とたれが焼ける美味しそうな匂いが部屋の中に充満する。

「エルたん、ひどい。匂いだけなんてなんて拷問。」
「仕方がないでしょ。もう少しだけ待って。」
ユウの顔も見ずにそう答えるエルザ。たれをかけると焦げやすくなるので、フライパンから目が離せないのだ。
ミンチ肉の乗っているフライパンを気にしつつ、もう片方のフライパンの過熱を止める。
ある程度焼きあがったところで、ミンチ肉の上にチーズの塊をのせると、すぐ、とろーりと溶け始める。
チーズの溶け具合を見ながら、フライパンの過熱を止める。

フライパンが余熱で温まっている間に、テーブルの上にお皿を出し、アイテム袋からパンと果実水を取り出して並べていく。
そして、出来上がったカリカリベーコンの目玉焼きと、一口ミニハンバーグをフライパンからお皿へと移す。
「ハイ、出来たわよ。やけどしないように気を付けてね。」
エルザがそう言う前に、ユウはすでにハンバーグを口にしていた。
「お行儀悪いわよ。」
エルザは苦笑しながら、自分もパンをちぎって口に入れる。
エルザ自身も朝食を食べていないため、かなり空腹だったのを調理中に思い出していたのだ。
それからしばらくの間、黙々と食事をすすめる二人。


「ふぅ、落ち着いたね。」
「うん、美味しかった。」
「これからどうしようね。一応中には入れたし、ほとぼりが冷めるまで大人しくしていてもいいんだけど……。」
「遊びに行かないの?」
「うーん……騒ぎ起こさない?」
「……。」
顔を背けるユウ。
……ここは素直に頷いて欲しかったよぉ。

結局、ユウには暴走しないことを約束させて、外に出ることにする。
普段なら、宿に引き籠ることを選択するユウにしては珍しい、という事もあった。
エルザとしては、この機にユウの引き籠り体質が改善されるのなら、という思いもあったし、何より領都の街中をユウと歩きたかったのだ。

「ユウはどこ行きたいの?」
宿から出て、まずは中央の市場を目指して歩きながら問いかける。
「ん~、エルの行きたいところ?」
「私の?ユウは行きたいところはないの?」
「どこに何があるかわからないから。エルたんのおすすめにお任せ。」
「そう?……じゃぁ、出来るだけユウの空きそうなところに行くね。」
エルザは、市場に出る直前の路地を曲がる。
ユウの好きそうな所と言えば、まずはあそこだろう、と目の前に迫ったお店を目指す。

「ここは?」
「魔道具屋さんよ。ユウ、こういうの好きでしょ?」
店内には、魔道ランタンや着火装置などと言った、生活に密着した一般に流通している魔道具や、魔力付与のされた服やナイフなど、どちらかと言えば冒険者に向けた品物迄各種取り揃えていた。
「むー……。」
ユウが真剣に見て悩んでいる。
そんなユウを見て、エルザは『これを機に常識を学んでもらおう』などと考えていた。
その実、エルザも久しぶりに見た店内の品を見て「この程度の店だっけ?」などと考えていたりするのだから、ユウの事を言えなくなっていることに本人だけが気づいていなかった。

「エル、別の所に行こ。」
「もういいの?」
「うん、今の時代の技術は大体理解した。これ以上ここにいたら、店内の道具全部改造したくなる。」
「うん、早く出ようね。」
ユウの言葉を聞いて、そそくさと店を出るエルザ。

次はどこに行こうかと、市場の店を見ながら歩くエルザ。
ユウは珍しいのか、市場に並ぶ屋台をキョロキョロと見ている。
……武器屋とか防具屋は、ダメよね。さっきと同じになりそうだし。後は……神殿?
観光案内を任されたエルザだったが、その実、街中の事はろくに知らないエルザだったので、案内できる場所が限られていた。

「ねぇ、ギルド行きたい。」
「珍しいね、ユウから行きたがるなんて。」
「うーん、しばらくここにいるんでしょ?だったらエルが危険な依頼を受けないようにチェックが必要。」
「チェックって……。」
……アンタはおかんかっ!
と叫びそうになりながらも、他に行く当てもないのでギルドに向かうことにする。
どうせ、領主様の都合を確認するためにも、ギルドに行かなければならなかったのだからちょうどいい。

カランカラーン。
ギルドの扉を開けると、どの街のギルドでも変わりのないドアベルの音が響く。
と同時に、併設された酒場の客が、一斉に入り口に視線を向ける。
これも、どのギルドでも同じ反応だった。
来たのが依頼人なのか、自分たちと同じ冒険者なのか?
冒険者であるならば、顔見知りか、そうでないか?
見たことのない余所者であれば、自分より腕が立つのか否か?
そんなことを一瞬で見極めるのだ。そう言う一瞬の判断が、自分たちの生死にかかわることを、体験として知っているだけに、知らずに身に着いた癖であるともいえる。
最も、正しい判断ができるかどうかは別の話ではあるが。

実際、ユウとエルザが「依頼で来た冒険者だ。」と受付に告げた時、ちょっかいをかけようとした冒険者が数人いた。
「オイオイ、お嬢ちゃんたちが冒険者だってよ。ママのお使いかぁ?」
「やめとけよ。騒ぎを起こすな。」
「いいじゃねぇか。世の中の厳しさを教えてやるのも、センパイの務めってもんだぜ。そうだろ?」
そんな言い合いをしているのを聞いた別の冒険者が、同じテーブルにいた男たちに声をかける。

「なぁ、ここの支払を賭けないか?」
「賭けって、何をだ?」
興味を持った男が、身を乗り出してくる。
「いや、あっちの奴らが、今来た女の子たちにちょっかいを掛けようとしているだろ?その結果どうなるか、を賭けないか?」
「あん?そんなの女の子たちが怯えて謝るんだろ?賭けにもなりゃしねぇ。」
「いや、面白いかもな?俺はあの子たちが逃げ出すに賭けるぜ。」
「おー、じゃぁ俺は、一撃入れて決闘騒ぎになるに賭ける。……ちなみに、この後頼んだ分も含むよな?」
そう言いながらエールの追加を頼む男。
それを皮切りに、次々へと、この後の予測をしながら駆けに乗ってくる男たち。
気づけば近くのテーブルを巻き込んでの大きな集団が出来上がっていた。

「じゃぁ、俺は、あいつらが何もできずに吹っ飛ばされ宙を舞うって言うのにかけるよ。」
最初に言いだした男がそう言うと、周りの騒ぎが一層大きくなる。
「オイオイ、いくら賭けだっていっても大穴狙いすぎだろ?」
「そうだ、そうだ。もしそんなことになったら、今日の支払いだけじゃなく、明日の分も持ってもいいぜ。勿論、外したら、そっちに持ってもらうがな。」
別の男の言葉に、周りがゲラゲラと笑いだす。
しかし、最初の男は真面目な顔をして受け答えをする。
「その話のるぜ。俺の一人勝ちで悪いなぁ。」
「オイオイ、マジかよっ。」
「やめとけ、やめとけ。」
「お前ら、見かけで判断すると痛い目にあうぞ。」
男の言葉に、一瞬周りの喧騒が収まる。
誰しもが身に覚えがあるのだろう。

「オイ、黙ってきてりゃ、勝手な事ばかりほざきやがって。この俺様が、あんな嬢ちゃんたちに一方的にやられるってか?このCランクのコーザ様がよっ!」
「そう言う可能性もあるって賭けだよ。あまりカッカするんじゃねぇよ。怒りは判断を鈍らせるぜ。」
「言ってくれるじゃねぇか。覚えておけよ。嬢ちゃんたちの後はお前に礼儀ってモノを教えてやるぜ。」
「出来るのならな。楽しみにしてるぜ。」
コーザは、フンっと鼻を鳴らし、ギルドのカウンターへと向かう。

「オイオイ、何コーザに喧嘩売ってるんだよ。」
「まぁ、いいじゃねぇか。それより面白いもんが見れるぜ。……エール追加ね。」
男は給仕に追加の酒を頼むと、ジョッキを片手にコーザの行った方を眺める。
コーザは女の子二人に声をかけ、何やら話しながら一人の女の子の肩に手を置く。
その瞬間!
一瞬の眩い光の後、コーザの姿が忽然と消えた。……いや、よくよく見ると、天井に突き刺さっている男がいる。あれがコーザだろう。

「はははっ、みたか?あのCランク様が宙を舞ったぜ?」
「いや、アレは宙を舞ったとは言わんだろ?」
「そもそも何が起きたんだよ。何も見えなかったぜ。」
「あの、ちっちゃい方の嬢ちゃんが、コーザを殴ったように見えたぞ。」
男たちが口々に、今の光景を口にする。
「まぁ、とにかく賭けは俺の勝ちだな。……エールを樽で!それから高い食べ物を順に持ってきてくれっ!」
「「「「「「鬼かっ!」」」」」」
叫ぶ一同たちに手を上げて笑う男。
男は、少し前までグランの街にいた。
グランの街であの二人は有名だった。あの街を拠点にする冒険者の殆どは、あの二人にちょっかいを掛けて吹き飛ばされるのを経験している。勿論、男もそのうちの一人だった。
……『血まみれ聖女ブラッディ・マリア』と呼ばれていることは内緒にしておかないとな。まかり間違って、彼女たちの耳に入りでもしたら報復が怖いからな。



また、つまらぬものを斬ってしまった、と呟くユウに「いや、斬ってないからね?」とツッコミを入れるエルザ。
「お待たせしました。」
受付嬢は慣れているのか、目の前で起きた出来事を見事なぐらいスルーして、カードを返却してくれる。

「後、領主様とのお約束ですが、訳あって、いつになるかがわからなくなっております。」
小声でそっと教えてくれる受付嬢の言葉に、エルザはイヤな予感を覚えるのだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─

石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」 貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。 「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」 かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。 ときどき舞い込んでくるトラブル。 慌ててミーナを探しているルカ。 果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。 甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。 *サイトより転載になります。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

処理中です...