幼なじみに毎晩寝込みを襲われています

西 美月

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第一夜

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 スマホのアラームが大音量で鳴り、
飯田恭介いいだ きょうすけは目を覚ました。

 顔を枕に伏せたまま手探りでスマホをつかみ、そのけたたましいアラーム音を止める。

 幼い頃から恭介は、『一度寝ると中々起きない』そんな子供だった。
 また『どこでも眠れる』という特技も持ち合わせており、両親にとっては時に扱いやすく、時に厄介な子供だったらしい。

 小1の時に大きな地震が起こったときも彼はずっと寝ていて気づかなかったし、小6の時の修学旅行では、寝相の悪い同級生に顔面を蹴られても寝ていた。

 授業中の爆睡は造作もないが、教師に頭を叩かれても起きることが出来ないので、学校では極力寝ないように心がけていた。

 人の声では起きられないという欠点はあるのだが、スマホのアラームを最大音量で鳴らせば必ず起きれるので、今のところ生活に支障はない。

 そんな恭介は、この春から都内の大学に通っている。

 今日は一限から講義がある日だった。

 ベッドから起き上がり、足を下ろして立ち上がろうとした刹那──。

「うわあっ!!」

 べしゃっ、とそのまま床に崩れ落ちた。

 自分の身に何が起こったのか全く分からず、呆然と目の前の床を見つめる。

 尻に痛みが走り、そして腰には力が入らず、恭介はまともに歩けずに転んでしまったのだ。

──え?まさか…………痔か……??

 場所が場所なのでそれを疑ってしまう。だが全く心当たりがない。

「恭介!?でかい声したけどどうした!?」

 ルームシェアをしている内田海斗うちだ かいとが声を聞きつけ飛び込んできた。
 彼は恭介の幼なじみで、この春から同じ大学に通うことになったので、家賃を浮かせるため一緒に住んでいる同居人だ。

 2LDKの間取りなのでそれぞれに個室があり、プライバシーは確保されている。
 幼稚園からの幼なじみということもあって無駄に気を使う必要もなく、ルームシェアを始めて1ヶ月になるが苦に思うことは今のところひとつも無い。
 海斗は恭介よりも小柄なので、圧迫感のなさがいいのかもしれない。

「ナンカ、ケツ、イタイ。コシモ、イタイ」

 しゃべると尻に響く。
 恭介が片言でそう伝えると、海斗ははじめ腹を抱えて笑ってきた。しかし恭介が中々起き上がらないことから、事態の深刻さに気づいたらしく、今日は休んだら?、と心配そうに提案してきた。

「代返できる講義はしとくし」

 にっこりと笑うその表情にはまだ少し子供のような可愛らしさがある。
 な?、と海斗が首を傾けると、その明るい茶色の髪が揺れた。
 恭介が幼なじみの優しさを噛み締めていると、海斗は突然その笑顔をスッと消した。

「今日俺バイト無いからさ、帰りにボラギ、買ってきて……やるよ…………ブッ」

 真顔をキープしようと必死に笑いを堪えていたようだが、後半から肩を震わせはじめ結局笑ってしまっている。

「オイ、なに笑って……!ッイテテテ……」

「フッ、……なあ、外に塗るのと中に注入するのとどっちがいいんだよ?」

 ポンと肩に手を置かれ、またしてもキリッとした真顔で聞いてくるが、その肩はやはり震えている。

「海斗お前っ、イテッ、た、楽しんでるだろ……!」

「だって恭介、どんなウンコしたんだよ」

 ついに堪え切れずといった様子で、海斗は大笑いをはじめた。

「してねえよ!毎日快便だわ!イッテ……、心当たり、全然ねえんだよ……」

 恭介が痛みに顔をしかめて言うと、ひとしきり笑って満足したらしい海斗が、そこでピタリと動きを止めた。

 未だに床に突っ伏している恭介を、間近から見下ろしてくる。

 見上げるかたちとなった恭介は、そんな海斗のどこかいつもと違う雰囲気に思わずドキリとしてしまう。

「……ふうん、それは不思議だなァ」

 薄い笑みを浮かべて、海斗はそう呟いたのだった。
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