幼なじみに毎晩寝込みを襲われています

西 美月

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第九夜(1)

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 翌朝、海斗はいつも通りだった。

 強いて言うなら、寝不足なのか酷く眠そうだったが、それを除けば至って普通で、1限から授業があるらしく、さっさと大学へ行ってしまった。

 一方で、いつも通りじゃないのは、恭介のほうだった。

 朝起きると、唇はヒリヒリと痛み、足腰には重い怠さがあって、寝たのに、寝た気がしないほど疲れきっていた。

 そしてそれは、不思議なことに、夜を越すごとに増していき、恭介は身体の違和感に頭を悩ませた。


 3日が経ち、ついに芽衣が家にやってくる前日になったが、恭介の体調は、すこぶる悪かった。

「ねえ、大丈夫?」

 バイトを退勤し終えるや否や、芽衣が心配そうに尋ねてきたほど、恭介の顔色は目に見えてよくないらしい。

「いや、大丈夫……。ちょっと寝不足、かな」

 しっかりと寝ているのに、寝不足はないだろうと思うのだが、とりあえずそう答えておく。

 まるで、寝るたびに精気を吸い取られているかのように、日ごと恭介はやつれていく思いだった。でも、自分でも意味が分かっていないその現象を、うまく説明できる気がしないのだ。

「わたし、今日は1人で帰るのに」

 帰り道、何度も芽衣はそう言ってきたが、恭介は送ることをやめなかった。

 少しでも長く一緒にいれば、もっと好きになれるはずだと思ったからだ。
 こんなにも想ってもらっているのだから、はやく同じだけの想いを返したい。返さなければと思うのだ。

 ぼんやりと考え事をしていると、芽衣が立ち止まった。

「ねえ、恭介くん、ここまででいいよ。あの角曲がったらすぐ家だし」

 気がつけばいつの間にか、例のあの小さな公園も通り過ぎて、もう芽衣の家のそばまで来ていた。

 「そう?じゃあ……」繋いでいた小さな手を離そうとすると、でもその手は恭介を離さなかった。

 じっと、つぶらな瞳がこちらを見上げてくる。
 やはり小動物のようで、ふと昔飼っていたシマリスを思い出した。愛嬌のある仕草が可愛くて、恭介はそれ以来、小動物全般が好きになった。

 芽衣が目を閉じる。いつもの流れだ。恭介は背を屈めて、唇を合わせにいく。
 
『……お前、本当に彼女のこと好きなの?』

 唇と唇とが触れ合う直前、なぜか海斗の言葉が脳裏を過ぎる。
 ぎゅっと目を瞑って、無視をする。

 ちゅ、と触れるか触れないかくらいの軽いキスを交わして顔を離すと、芽衣が小さく笑みをこぼした。
 眉尻を下げて、あーあ、と言わんばかりに困り顔をする。
 
「……恭介くんは、真面目で優しいね」

「え?」

 どういう意味かと聞き返しても、芽衣は小さく首を横に振るだけだ。

 また明日話そう、お大事にね、と恭介の手を離すと、足早に帰っていってしまった。


 ひとり置き去りにされ、恭介は呆然と立ち尽くす。

──真面目で、優しい……。

 それは、なんとなく、いい意味ではない気がした。

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