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第十一夜
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玄関から音がしたのは、もう深夜1時近かった。
ブラックコーヒー片手にうつらうつらとしながらも、なんとか起きていた恭介は、すぐに玄関に向かった。
するとそこには、海斗ともう1人、恭介の知らない顔があった。じゃらじゃらとアクセサリーを見に纏った、バンドマンのようないでたちの男がいたのだ。
さらに驚いたのは、海斗がその人物に、担がれていたことだ。
とろんとした赤い顔で、「うぇーい、きょうすけえ」と挨拶してくる姿はどう見ても、酔っ払っている。
聞けばその人は、海斗のバイト先の先輩らしい。
「遅くにごめんねー。コイツ、女の子たちに酒飲まされちゃってさ」
「酒?でも今日は海斗、バイトだったんじゃ……?」
「え?今日は普通に合コンだよ~?」
言いながら、肩に担いでいた海斗を渡してくるから、恭介は仕方なく受け取る。
「合コン……?」
海斗から、むわっと、アルコールの匂いが香った。どれだけ飲まされたんだ、と唖然とする。
「あ、きょーすけだ?」にへっと笑う海斗は、泥酔しているくせに、どこか可愛らしさがある。
ぐりぐりと、ドリルのように自分の頭を恭介に押し付けてくる。
「やめろ酔っ払い」意味不明な行為を力ずくで止めさせるが、海斗は楽しそうにへらへらと笑うだけだ。
一応礼を言うも、すぐに先輩とやらは帰ってしまい、恭介はなんとか海斗をベッドまで運んでやった。
水でも飲めば体内のアルコールが少しは薄まるのだろうか。
そう思って水を注いだグラスを海斗に渡したが、口まであと少しのところで傾けてしまうから、Tシャツをしとどに濡らしてしまう。
「お前なあ……」
「ぬれた。つめてえ」
もぞもぞと、徐に服を脱ぎ始めるから、恭介はドキリとする。
「っもう、さっさと寝ろよ」
自分は一体、何のためにわざわざ起きて待っていたのか。だんだんとアホらしくなってくる。
そもそも海斗は、恭介のことが好きだと言っておきながら、合コンに行っていたのだ。それもバイトだと嘘をついて。
あの告白は結局、悪ふざけだったのだろうか。
枕元のリモコンを掴んで照明を消して、早く自分の部屋へ戻ろうとした時、右足に海斗が巻きついてきた。
「お、おい何して……うわっ!」
そのままぐいっと引き寄せられると、バランスを崩してベッドに倒れ込んでしまう。
「ふざけんなよ海斗……」と舌打ちをしながら目を開けると、なぜかもう恭介は、海斗に組み敷かれていた。
しかも海斗はいつの間にか服を全部脱いでしまっていて、下着1枚の姿だ。
ごくりと唾を飲む。
恭介の両手は覆いかぶさるようにして、シーツに縫い付けられている。
暗い部屋、ベッドの上、どうすることもできない体勢。
恭介の心臓は、途端に速く鼓動しはじめる。
「きょーすけ」
熱の籠もった呼び方をされ、ぎゅうっと目を瞑って顔を背ける。
──やっぱりこいつ、俺のこと……。
「きょーすけは、むかしから、ちいさくて、かわいいのがすきだな」
「……へ?」
話が読めず、恭介は思わず真上の海斗を見た。
薄暗くても分かる。その瞳は、あからさまに寂しそうな色をしている。
「おまえのかのじょ、リスみたいだった……。むかしおまえ、ぶさいくなシマリス飼ってたもんな」
「オイ、誰が不細工な…………ひゃっ」
すぐさま異論を唱えようとして、でも途切れたのは、恭介の首元に海斗が顔を寄せてきたからだ。
「おれは……」聞こえるか聞こえないかギリギリの本当に小さな声で、海斗は言った。
「……おれは、どうして、ちいさくないんだろうな……。どうして、かわいくないんだ。どうして、……おとこなんだ……」
ぎゅっと、潰れてしまいそうなほど強く抱きしめられて、恭介はもう抵抗する気にもなれなかった。
別に、好きだと言われたわけではない。
……ないのに、とんでもなく苦しい愛を、囁かれたように思えてならない。
「海斗……?」
なかなか起き上がらない海斗を不思議に思って覗き込めば、彼はまつ毛を濡らして、静かに眠っていた。
ブラックコーヒー片手にうつらうつらとしながらも、なんとか起きていた恭介は、すぐに玄関に向かった。
するとそこには、海斗ともう1人、恭介の知らない顔があった。じゃらじゃらとアクセサリーを見に纏った、バンドマンのようないでたちの男がいたのだ。
さらに驚いたのは、海斗がその人物に、担がれていたことだ。
とろんとした赤い顔で、「うぇーい、きょうすけえ」と挨拶してくる姿はどう見ても、酔っ払っている。
聞けばその人は、海斗のバイト先の先輩らしい。
「遅くにごめんねー。コイツ、女の子たちに酒飲まされちゃってさ」
「酒?でも今日は海斗、バイトだったんじゃ……?」
「え?今日は普通に合コンだよ~?」
言いながら、肩に担いでいた海斗を渡してくるから、恭介は仕方なく受け取る。
「合コン……?」
海斗から、むわっと、アルコールの匂いが香った。どれだけ飲まされたんだ、と唖然とする。
「あ、きょーすけだ?」にへっと笑う海斗は、泥酔しているくせに、どこか可愛らしさがある。
ぐりぐりと、ドリルのように自分の頭を恭介に押し付けてくる。
「やめろ酔っ払い」意味不明な行為を力ずくで止めさせるが、海斗は楽しそうにへらへらと笑うだけだ。
一応礼を言うも、すぐに先輩とやらは帰ってしまい、恭介はなんとか海斗をベッドまで運んでやった。
水でも飲めば体内のアルコールが少しは薄まるのだろうか。
そう思って水を注いだグラスを海斗に渡したが、口まであと少しのところで傾けてしまうから、Tシャツをしとどに濡らしてしまう。
「お前なあ……」
「ぬれた。つめてえ」
もぞもぞと、徐に服を脱ぎ始めるから、恭介はドキリとする。
「っもう、さっさと寝ろよ」
自分は一体、何のためにわざわざ起きて待っていたのか。だんだんとアホらしくなってくる。
そもそも海斗は、恭介のことが好きだと言っておきながら、合コンに行っていたのだ。それもバイトだと嘘をついて。
あの告白は結局、悪ふざけだったのだろうか。
枕元のリモコンを掴んで照明を消して、早く自分の部屋へ戻ろうとした時、右足に海斗が巻きついてきた。
「お、おい何して……うわっ!」
そのままぐいっと引き寄せられると、バランスを崩してベッドに倒れ込んでしまう。
「ふざけんなよ海斗……」と舌打ちをしながら目を開けると、なぜかもう恭介は、海斗に組み敷かれていた。
しかも海斗はいつの間にか服を全部脱いでしまっていて、下着1枚の姿だ。
ごくりと唾を飲む。
恭介の両手は覆いかぶさるようにして、シーツに縫い付けられている。
暗い部屋、ベッドの上、どうすることもできない体勢。
恭介の心臓は、途端に速く鼓動しはじめる。
「きょーすけ」
熱の籠もった呼び方をされ、ぎゅうっと目を瞑って顔を背ける。
──やっぱりこいつ、俺のこと……。
「きょーすけは、むかしから、ちいさくて、かわいいのがすきだな」
「……へ?」
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「おまえのかのじょ、リスみたいだった……。むかしおまえ、ぶさいくなシマリス飼ってたもんな」
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すぐさま異論を唱えようとして、でも途切れたのは、恭介の首元に海斗が顔を寄せてきたからだ。
「おれは……」聞こえるか聞こえないかギリギリの本当に小さな声で、海斗は言った。
「……おれは、どうして、ちいさくないんだろうな……。どうして、かわいくないんだ。どうして、……おとこなんだ……」
ぎゅっと、潰れてしまいそうなほど強く抱きしめられて、恭介はもう抵抗する気にもなれなかった。
別に、好きだと言われたわけではない。
……ないのに、とんでもなく苦しい愛を、囁かれたように思えてならない。
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