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第十四夜(2)
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「ねえ」
汗を流すため先にシャワーだけ済ませようと、廊下を進もうとしたところ、恭介は背後から呼び止められた。
振り向けば清彦が、居丈高に腰に手を当てて仁王立ちしている。昨日が初対面だと言うのに随分な態度だ。
「アンタ、先輩のこと好きなの?」
「え…………ち、ちがうっ」
予想の遥か斜め上をいく問いに、恭介は目を白黒させた。そして、よく考えることなく、反射的にすぐに首を横に振ってしまう。
海斗が恭介を好きらしいのであって、恭介は違う。違うのだ。
「俺は、ただの、幼なじみで……」
それが嘘偽りのない事実だ。
なのに、自分が発した『ただの幼なじみ』という言葉に、胸が痛むのはなぜだろう。
「だったらさあ」と清彦が言う。
いいこと思いついた、と言わんばかりの無邪気な笑顔に、嫌な予感がして、恭介はごくりと唾を飲み込む。
でも、なんとなく、予想はついていた。
「協力してよ。俺、先輩のことがずっと好きなんだ」
だから、驚きはしなかった。むしろ、やはりな、と思ったくらいだ。
それに今、恭介の疑問は他にあった。
「好きって、男同士なのに……?」
偏見以前の、純粋な疑問だった。
すると清彦は、面倒臭そうにふーっと、長いため息をついた。うんざりするほど何度も受けている質問だったのかもしれない。
「性別なんて関係ない。まあ、ノンケのあんたには分からないだろうけど。だから、協力してくれてもいいでしょ?」
「でも……」
「でも?」遮るように食い気味に聞かれ、恭介は口をつぐむ。まさか、海斗は自分のことが好きだ、なんて言えない。
黙ってしまうと、それを肯定ととったのか、清彦は満足そうに「よろしくね」と恭介の肩をぽんと叩いたのだった。
それからは、恭介が清彦に協力するということで、話はどんどん進んで行った。
恭介が夕飯の準備をしていると、「ねえねえ」と彼はやって来た。
昨日のカレーの残りを使ってカレーうどんを作っているところだった。ネット検索して一番最初に出てきたレシピだ。
「またカレー?しかもこんな暑い日にカレーうどん?」
清彦はすぐに文句を言ってきたが、仕方がない。恭介と海斗は親からの仕送りを貰っていないのだ。できるだけ節約をしなければならない。
食料や消耗品は、家計財布から購入しており、恭介と海斗はお互いに毎月2万円をその財布に入れている。
光熱費は海斗の口座から落ちるようになっているので、恭介はきっちりその半額を海斗に手渡している。
ルームシェアを始めた当初、「そんなの適当でいい」と海斗は言ったが、恭介の性格上、気心知れた幼なじみと言えど、金の管理を雑にすることは我慢できなかった。そのためこのようなルールになったのだ。
「家計の管理はどうやってるの?」と尋ねられ、恭介は一緒に夕飯を取りながら説明をした。
「ふうん。じゃあ、来年からはボクがやるね」
「え……?」
意味が分からなかった恭介が首を横に倒すと、清彦はくすくす笑った。
「だから、来年大学生になったら、ボクがここで先輩と一緒に暮らすってこと。アンタも一人暮らしのほうが気楽でいいじゃん」
どうやら、ここから出て行けと言いたいらしい。それも協力のうちの1つなのだろう。
また、恭介は何も言えない。
いいよとも、嫌だとも、何も言えないのだ。
首を縦にも横に振れずに小さくため息をつくと、頭に浮かぶのは幼なじみの顔だった。
するとおのずと、唇の感触や囁く吐息まで鮮明に思い出してしまって、耳を赤くして俯くことしかできなかった。
汗を流すため先にシャワーだけ済ませようと、廊下を進もうとしたところ、恭介は背後から呼び止められた。
振り向けば清彦が、居丈高に腰に手を当てて仁王立ちしている。昨日が初対面だと言うのに随分な態度だ。
「アンタ、先輩のこと好きなの?」
「え…………ち、ちがうっ」
予想の遥か斜め上をいく問いに、恭介は目を白黒させた。そして、よく考えることなく、反射的にすぐに首を横に振ってしまう。
海斗が恭介を好きらしいのであって、恭介は違う。違うのだ。
「俺は、ただの、幼なじみで……」
それが嘘偽りのない事実だ。
なのに、自分が発した『ただの幼なじみ』という言葉に、胸が痛むのはなぜだろう。
「だったらさあ」と清彦が言う。
いいこと思いついた、と言わんばかりの無邪気な笑顔に、嫌な予感がして、恭介はごくりと唾を飲み込む。
でも、なんとなく、予想はついていた。
「協力してよ。俺、先輩のことがずっと好きなんだ」
だから、驚きはしなかった。むしろ、やはりな、と思ったくらいだ。
それに今、恭介の疑問は他にあった。
「好きって、男同士なのに……?」
偏見以前の、純粋な疑問だった。
すると清彦は、面倒臭そうにふーっと、長いため息をついた。うんざりするほど何度も受けている質問だったのかもしれない。
「性別なんて関係ない。まあ、ノンケのあんたには分からないだろうけど。だから、協力してくれてもいいでしょ?」
「でも……」
「でも?」遮るように食い気味に聞かれ、恭介は口をつぐむ。まさか、海斗は自分のことが好きだ、なんて言えない。
黙ってしまうと、それを肯定ととったのか、清彦は満足そうに「よろしくね」と恭介の肩をぽんと叩いたのだった。
それからは、恭介が清彦に協力するということで、話はどんどん進んで行った。
恭介が夕飯の準備をしていると、「ねえねえ」と彼はやって来た。
昨日のカレーの残りを使ってカレーうどんを作っているところだった。ネット検索して一番最初に出てきたレシピだ。
「またカレー?しかもこんな暑い日にカレーうどん?」
清彦はすぐに文句を言ってきたが、仕方がない。恭介と海斗は親からの仕送りを貰っていないのだ。できるだけ節約をしなければならない。
食料や消耗品は、家計財布から購入しており、恭介と海斗はお互いに毎月2万円をその財布に入れている。
光熱費は海斗の口座から落ちるようになっているので、恭介はきっちりその半額を海斗に手渡している。
ルームシェアを始めた当初、「そんなの適当でいい」と海斗は言ったが、恭介の性格上、気心知れた幼なじみと言えど、金の管理を雑にすることは我慢できなかった。そのためこのようなルールになったのだ。
「家計の管理はどうやってるの?」と尋ねられ、恭介は一緒に夕飯を取りながら説明をした。
「ふうん。じゃあ、来年からはボクがやるね」
「え……?」
意味が分からなかった恭介が首を横に倒すと、清彦はくすくす笑った。
「だから、来年大学生になったら、ボクがここで先輩と一緒に暮らすってこと。アンタも一人暮らしのほうが気楽でいいじゃん」
どうやら、ここから出て行けと言いたいらしい。それも協力のうちの1つなのだろう。
また、恭介は何も言えない。
いいよとも、嫌だとも、何も言えないのだ。
首を縦にも横に振れずに小さくため息をつくと、頭に浮かぶのは幼なじみの顔だった。
するとおのずと、唇の感触や囁く吐息まで鮮明に思い出してしまって、耳を赤くして俯くことしかできなかった。
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