幼なじみに毎晩寝込みを襲われています

西 美月

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第二十七夜(3)

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 那覇空港からレンタカーで1時間ほどで目的のホテルに到着した。

「おい」

 チェックインを済ませたあと、ベルスタッフの案内に従って歩みを進めていた恭介は、声を潜ませて隣を歩く海斗を小突いた。

「ん?」

「ん?、じゃないだろ……!何だこれ?間違ってないか?」

 小声なのは案内をしてくれているスタッフへの配慮だ。
 しかし今恭介たちはどう見ても、ホテルの建物を出て緩やかな坂道を下っていっている。この先にホテルらしき背の高い建物は見当たらない。

「まあまあ」そんな焦りひとつない海斗の様子に、なんとなく嫌な予感がした。

「お前、なんか知ってんな?」

 詰め寄ろうとした時、「こちらのお部屋です」とスタッフから声が掛かった。

 ホテルから海に向かって伸びる、なだらかな下り坂の道中だ。

 顔を上げると白い外観の小さな平屋の前だった。

 白亜の外壁と琉球赤瓦が美しい戸建てが十数棟並ぶエリアが、宿泊ホテルの敷地内、西側にあった。

 スタッフがカードキーをかざして、重そうな木製の開き戸を開けてくれた。

 大理石の短い廊下を真っ直ぐ進むと、突き当たりの掃き出し窓の向こうには、プライベートプール付きのテラスがあって、そのさらに先には濃青の海がどこまでも広がっている。

 目線を左に向ければ、そこはリビングルームで、3人がけのゆったりとしたソファが大きな壁掛けテレビの前に設置されている。

 そして、その奥は寝室だ。大きなベッドが2つ近い距離に置かれており、勝手に気まずくなって恭介は目線を彷徨わせた。


「では、ごゆっくりお過ごし下さいませ」

 部屋の設備の説明を終えたスタッフが退出し、遠くで扉が閉まる音が聞こえると、恭介の緊張の糸はやっとほぐれた。

 程よい硬さのソファに腰を下ろして、海斗を睨むようにして見上げる。

「なんだよこれ?お前……いくら使ったの?」

 1番にそんなことが気になってしまう。確かに今日は恭介の誕生日だが、22歳という言ってしまえば中途半端な年齢の誕生日だ。

 こんな大層な場所で祝わってもらう覚えはない。

「いや今日平日だし、年度始めだしで安かったんだよ」

「それにしたって……」

 贅沢すぎる部屋をぐるりと見渡して、窓の外の景色を眺める。

 間も無く夕暮れ時だ。このヴィラは西を向いているようだ。
 オレンジの夕陽が海に沈んでいく様は、さぞロマンチックだろうと容易に推測できる。

──これじゃあまるで……。

「なんか新婚旅行みたいだな。俺いつプロポーズされたっけ」

 冗談めかして笑いながら海斗を見やると、笑みひとつ浮かんでない真剣な眼差しで恭介を見ていたから驚いてしまう。

「……今日だよ。今からする」

 海斗が隣に座る。じっと見つめられて思わず恭介は後退するが、すぐに背中はソファの肘掛けに当たった。

 じわじわと頰が熱くなるのがわかった。

「そんなの、卑怯だっ」

 これからプロポーズしますと言われて、いったいどんな顔でそれを聞けばいいのか。
 ぷっ、とそこでやっと少しだけ海斗が笑った。

「恭介真っ赤」

「だって、あ、お前もしかして冗談か……!?」

 不意に手首を掴まれ、見下ろせば左の手首にシンプルなシルバーのアナログ腕時計がつけられていた。

 顔を上げると視線が海斗と絡み合う。逸らすことができなかった。


「指輪より使いやすいかなと思ってこれにした。まあ、全然給料3ヶ月分じゃないけど……。俺はこの先も恭介と一緒にいたい。ずっと隣にいてください」


 ジェットコースターみたいに目まぐるしい1日だった。

 最後の最後でとんでもない急上昇が待ち受けていたかのような、全く予測していなかった展開に、恭介は何度も何度も目を瞬いた。

 やがて瞳は濡れる。

 恭介が頷くと、ぽろりと水滴が一粒こぼれ落ちた。
 

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