16 / 16
番外編 ※カーシス視点
しおりを挟む
ミリィが天使の皮を被った悪魔だと知ったのは、僕が大事な婚約者を手放してしまった時のことだった。
リディーが伯爵家を去って一週間。
僕は今日も伯爵家の屋敷を訪れ、今の婚約者であるミリィとお茶をしていた。
しかし流れるのは沈黙。
いたたまれない空間であるが、どうしようもない。それよりも僕は、自分が犯してしまった罪への罪悪感で頭がいっぱいだった。
リディー……、君が冤罪だったなんて。
今でも信じられない。
君はずっとミリィを虐げているのだと思っていた。
だから遠ざけて、怒って、婚約破棄までしたのに。
それが嘘で、僕はただミリィの嘘にずっと踊らされていて……。
「はぁー」
ため息が聞こえる。
これは僕のじゃない。ミリィのだ。
全てを引き起こしたのはミリィなのに、彼女はため息をついている。
全部彼女のせいなのに。
「ミリィ、そんなにため息をつかないでくれ。僕にまで移る」
それから「君にため息を吐く資格はない」という言葉まで喉まで出かかったが、やめる。
言うだけ無駄だ。
きっと彼女には何も響かない。
姉を冤罪に陥れても罪悪感を感じなかったのだ。
僕らをずっと騙していたことにたいしてもまだ謝罪しないで否定し続けている。
僕はもう一度リディーと会えるなら、謝罪をしたいと思っているのに……。
ずっと、リディーは変わってしまったと思っていた。でも、変わってしまったのは僕の方だったのだ。
一目でいいから会いたい。会って話したい。
でもそれすらもう叶わない。
なぜなら王子に二度とリディーに近づくなと警告されてしまったから。
僕にはもうどうすることもできないのだ。
「ごめんなさい、カーシス様」
「謝るならリディーに謝りなよ。君が嘘をつき続けていたせいで僕まで加害者だ。はぁー、君は本当に最悪だよ」
「…………」
またもや沈黙が流れる。
すると、ミリィがぎこちない笑顔で話しかけてきた。
「あ、の、カーシス様、今度のパーティーのことなんですけれど……」
やっぱりミリィは天使の皮を被った悪魔だ。
「君は呑気 だね。姉を冤罪で追い出したことを反省もしないで、そんなことを言うなんて……」
「それはだってカーシス様が……」
「君の言い訳は信じるだけ無駄だから聞かないよ。それにパーティーも一緒には出席しない。パートナーは別の人を探してくれ」
「そんな……」
ショックを受けるミリィだけれど、その顔はリディーに向けるべきだ。僕ではない。
それにパーティーなんて気分じゃない。招待されたからには行かないわけにはいかないが、ミリィと一緒には行きたくない。
それに、このままミリィとやっていくなんて僕には考えられない。
今までの時間が全て無駄だったと気づいてから、ミリィに対する想いはどんどん消えていくばかりだった。
リディーが伯爵家を去って一週間。
僕は今日も伯爵家の屋敷を訪れ、今の婚約者であるミリィとお茶をしていた。
しかし流れるのは沈黙。
いたたまれない空間であるが、どうしようもない。それよりも僕は、自分が犯してしまった罪への罪悪感で頭がいっぱいだった。
リディー……、君が冤罪だったなんて。
今でも信じられない。
君はずっとミリィを虐げているのだと思っていた。
だから遠ざけて、怒って、婚約破棄までしたのに。
それが嘘で、僕はただミリィの嘘にずっと踊らされていて……。
「はぁー」
ため息が聞こえる。
これは僕のじゃない。ミリィのだ。
全てを引き起こしたのはミリィなのに、彼女はため息をついている。
全部彼女のせいなのに。
「ミリィ、そんなにため息をつかないでくれ。僕にまで移る」
それから「君にため息を吐く資格はない」という言葉まで喉まで出かかったが、やめる。
言うだけ無駄だ。
きっと彼女には何も響かない。
姉を冤罪に陥れても罪悪感を感じなかったのだ。
僕らをずっと騙していたことにたいしてもまだ謝罪しないで否定し続けている。
僕はもう一度リディーと会えるなら、謝罪をしたいと思っているのに……。
ずっと、リディーは変わってしまったと思っていた。でも、変わってしまったのは僕の方だったのだ。
一目でいいから会いたい。会って話したい。
でもそれすらもう叶わない。
なぜなら王子に二度とリディーに近づくなと警告されてしまったから。
僕にはもうどうすることもできないのだ。
「ごめんなさい、カーシス様」
「謝るならリディーに謝りなよ。君が嘘をつき続けていたせいで僕まで加害者だ。はぁー、君は本当に最悪だよ」
「…………」
またもや沈黙が流れる。
すると、ミリィがぎこちない笑顔で話しかけてきた。
「あ、の、カーシス様、今度のパーティーのことなんですけれど……」
やっぱりミリィは天使の皮を被った悪魔だ。
「君は呑気 だね。姉を冤罪で追い出したことを反省もしないで、そんなことを言うなんて……」
「それはだってカーシス様が……」
「君の言い訳は信じるだけ無駄だから聞かないよ。それにパーティーも一緒には出席しない。パートナーは別の人を探してくれ」
「そんな……」
ショックを受けるミリィだけれど、その顔はリディーに向けるべきだ。僕ではない。
それにパーティーなんて気分じゃない。招待されたからには行かないわけにはいかないが、ミリィと一緒には行きたくない。
それに、このままミリィとやっていくなんて僕には考えられない。
今までの時間が全て無駄だったと気づいてから、ミリィに対する想いはどんどん消えていくばかりだった。
1,112
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
【完結】で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?
Debby
恋愛
キャナリィ・ウィスタリア侯爵令嬢とクラレット・メイズ伯爵令嬢は困惑していた。
最近何故か良く目にする平民の生徒──エボニーがいる。
とても可愛らしい女子生徒であるが視界の隅をウロウロしていたりジッと見られたりするため嫌でも目に入る。立場的に視線を集めることも多いため、わざわざ声をかけることでも無いと放置していた。
クラレットから自分に任せて欲しいと言われたことも理由のひとつだ。
しかし一度だけ声をかけたことを皮切りに身に覚えの無い噂が学園内を駆け巡る。
次期フロスティ公爵夫人として日頃から所作にも気を付けているキャナリィはそのような噂を信じられてしまうなんてと反省するが、それはキャナリィが婚約者であるフロスティ公爵令息のジェードと仲の良いエボニーに嫉妬しての所業だと言われ──
「私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
そう問うたキャナリィは
「それはこちらの台詞だ。どうしてエボニーを執拗に苛めるのだ」
逆にジェードに問い返されたのだった。
★このお話は「で。」シリーズの第一弾です。
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾は沢山の方に読んでいただいて、一位になることが出来ました!良かったら覗いてみてくださいね。
(*´▽`人)アリガトウ
婚約破棄ですか? では、この家から出て行ってください
八代奏多
恋愛
伯爵令嬢で次期伯爵になることが決まっているイルシア・グレイヴは、自らが主催したパーティーで婚約破棄を告げられてしまった。
元、婚約者の子爵令息アドルフハークスはイルシアの行動を責め、しまいには家から出て行けと言うが……。
出ていくのは、貴方の方ですわよ?
※カクヨム様でも公開しております。
虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?
リオール
恋愛
両親に虐げられ
姉に虐げられ
妹に虐げられ
そして婚約者にも虐げられ
公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。
虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。
それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。
けれど彼らは知らない、誰も知らない。
彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を──
そして今日も、彼女はひっそりと。
ざまあするのです。
そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか?
=====
シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。
細かいことはあまり気にせずお読み下さい。
多分ハッピーエンド。
多分主人公だけはハッピーエンド。
あとは……
妹と再婚約?殿下ありがとうございます!
八つ刻
恋愛
第一王子と侯爵令嬢は婚約を白紙撤回することにした。
第一王子が侯爵令嬢の妹と真実の愛を見つけてしまったからだ。
「彼女のことは私に任せろ」
殿下!言質は取りましたからね!妹を宜しくお願いします!
令嬢は妹を王子に丸投げし、自分は家族と平穏な幸せを手に入れる。
妹は謝らない
青葉めいこ
恋愛
物心つく頃から、わたくし、ウィスタリア・アーテル公爵令嬢の物を奪ってきた双子の妹エレクトラは、当然のように、わたくしの婚約者である第二王子さえも奪い取った。
手に入れた途端、興味を失くして放り出すのはいつもの事だが、妹の態度に怒った第二王子は口論の末、妹の首を絞めた。
気絶し、目覚めた妹は、今までの妹とは真逆な人間になっていた。
「彼女」曰く、自分は妹の前世の人格だというのだ。
わたくしが恋する義兄シオンにも前世の記憶があり、「彼女」とシオンは前世で因縁があるようで――。
「彼女」と会った時、シオンは、どうなるのだろう?
小説家になろうにも投稿しています。
なにをおっしゃいますやら
基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。
エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。
微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。
エブリシアは苦笑した。
今日までなのだから。
今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる