1 / 19
新しい家族
「お前に新しい家族を紹介する」
滅多に帰ってこない父が久しぶりに顔を出したかと思えば、いきなりとんでもないことを言い出し、エミーヌは思わず声を上げそうになる。
父の隣には笑みを絶やさない温厚そうな美人が一人とその後ろに……。
「おいで、ヴィヴィ」
エミーヌが一度も聞いたことのない優しい声音で、お父様は女性の背中に張り付く少女を呼び寄せた。
「お前の妹になるヴィヴィだ」
少女は恥ずかしげに顔を女性の後ろから覗かせた。
緩くカーブのかかったブロンドの髪の毛に、くりくりの愛らしい緑色の瞳。
可愛らしいな、という印象だった。
「ヴィヴィ、お前の義姉となるエミーヌだ。挨拶しなさい」
「はい」
少女はテクテクとエミーヌの前に来ると恥ずかしげに顔を俯かせた。それでも父に背中を優しく撫でられると、意を消したようにもう一度顔を上げる。
「ヴィヴィです。よろしくおねがいします、おねえさま」
父が満足気に頷いた。大きな手で小さな彼女の頭を撫でる。その手つきは優しく愛情がひしひしと込められているのが伝わってくる。でもエミーヌはそれを見ても何も感じなかった。ただ笑みをそのポーカーフェイスに貼り付けるだけ。
「よろしくお願いいたします」
彼女の顔がパッと明るくなった。嬉しそうに女性の元へ戻っていく。
すると今度は女性が私の方へと顔を向けた。
「私も宜しくね。この子の母親で、今日からあなたの母にもなるベルチェよ。好きに呼んでくれて構わないわ」
「エミーヌです。よろしくお願いいたします」
エミーヌの身長に合わせて屈んだ女性はやはり少女の母親であり、父の新たな妻となる方だった。
「エミーヌちゃんって呼んでも良い?」
「はい」
「まぁ嬉しい!こんなに可愛い子が娘になるなんて夢みたい」
「落ち着けベルチェ。それより他の者たちも紹介しよう」
「ええお願い。早くここに馴染まなくちゃ!」
父は楽しそうに声を弾ませる義母を愛おしげに見つめた。見たことのない表情だ。今日は新しい発見が沢山。
「ここで待ってろ、今呼んでくるから。……エミーヌ」
ボーッとしていたエミーヌは急に手を掴まれ、突然のことに目を見開く。
しかしそんなエミーヌの様子は気にも止めず、彼女の父はエミーヌの手を引っ張って部屋の外へ出ると彼女に向かって忠告した。
「エミーヌ、彼女たちは俺の一番愛する者たちだ。傷つけることは絶対に許さない。もし彼女たちに何かあったら、俺はお前を一生許さない」
その日エミーヌは実の父から、小さな子供が背負うのには重すぎる言葉、ある意味脅迫とも等しい言葉を受けた。
エミーヌが十歳、ヴィヴィが九歳の時のことだった。
滅多に帰ってこない父が久しぶりに顔を出したかと思えば、いきなりとんでもないことを言い出し、エミーヌは思わず声を上げそうになる。
父の隣には笑みを絶やさない温厚そうな美人が一人とその後ろに……。
「おいで、ヴィヴィ」
エミーヌが一度も聞いたことのない優しい声音で、お父様は女性の背中に張り付く少女を呼び寄せた。
「お前の妹になるヴィヴィだ」
少女は恥ずかしげに顔を女性の後ろから覗かせた。
緩くカーブのかかったブロンドの髪の毛に、くりくりの愛らしい緑色の瞳。
可愛らしいな、という印象だった。
「ヴィヴィ、お前の義姉となるエミーヌだ。挨拶しなさい」
「はい」
少女はテクテクとエミーヌの前に来ると恥ずかしげに顔を俯かせた。それでも父に背中を優しく撫でられると、意を消したようにもう一度顔を上げる。
「ヴィヴィです。よろしくおねがいします、おねえさま」
父が満足気に頷いた。大きな手で小さな彼女の頭を撫でる。その手つきは優しく愛情がひしひしと込められているのが伝わってくる。でもエミーヌはそれを見ても何も感じなかった。ただ笑みをそのポーカーフェイスに貼り付けるだけ。
「よろしくお願いいたします」
彼女の顔がパッと明るくなった。嬉しそうに女性の元へ戻っていく。
すると今度は女性が私の方へと顔を向けた。
「私も宜しくね。この子の母親で、今日からあなたの母にもなるベルチェよ。好きに呼んでくれて構わないわ」
「エミーヌです。よろしくお願いいたします」
エミーヌの身長に合わせて屈んだ女性はやはり少女の母親であり、父の新たな妻となる方だった。
「エミーヌちゃんって呼んでも良い?」
「はい」
「まぁ嬉しい!こんなに可愛い子が娘になるなんて夢みたい」
「落ち着けベルチェ。それより他の者たちも紹介しよう」
「ええお願い。早くここに馴染まなくちゃ!」
父は楽しそうに声を弾ませる義母を愛おしげに見つめた。見たことのない表情だ。今日は新しい発見が沢山。
「ここで待ってろ、今呼んでくるから。……エミーヌ」
ボーッとしていたエミーヌは急に手を掴まれ、突然のことに目を見開く。
しかしそんなエミーヌの様子は気にも止めず、彼女の父はエミーヌの手を引っ張って部屋の外へ出ると彼女に向かって忠告した。
「エミーヌ、彼女たちは俺の一番愛する者たちだ。傷つけることは絶対に許さない。もし彼女たちに何かあったら、俺はお前を一生許さない」
その日エミーヌは実の父から、小さな子供が背負うのには重すぎる言葉、ある意味脅迫とも等しい言葉を受けた。
エミーヌが十歳、ヴィヴィが九歳の時のことだった。
あなたにおすすめの小説
【完結】『私に譲って?』そういうお姉様はそれで幸せなのかしら?譲って差し上げてたら、私は幸せになったので良いのですけれど!
まりぃべる
恋愛
二歳年上のお姉様。病弱なのですって。それでいつも『私に譲って?』と言ってきます。
私が持っているものは、素敵に見えるのかしら?初めはものすごく嫌でしたけれど…だんだん面倒になってきたのです。
今度は婚約者まで!?
まぁ、私はいいですけれどね。だってそのおかげで…!
☆★
27話で終わりです。
書き上げてありますので、随時更新していきます。読んでもらえると嬉しいです。
見直しているつもりなのですが、たまにミスします…。寛大な心で読んでいただきありがたいです。
教えて下さった方ありがとうございます。
〈完結〉ここは私のお家です。出て行くのはそちらでしょう。
江戸川ばた散歩
恋愛
「私」マニュレット・マゴベイド男爵令嬢は、男爵家の婿である父から追い出される。
そもそも男爵の娘であった母の婿であった父は結婚後ほとんど寄りつかず、愛人のもとに行っており、マニュレットと同じ歳のアリシアという娘を儲けていた。
母の死後、屋根裏部屋に住まわされ、使用人の暮らしを余儀なくされていたマニュレット。
アリシアの社交界デビューのためのドレスの仕上げで起こった事故をきっかけに、責任を押しつけられ、ついに父親から家を追い出される。
だがそれが、この「館」を母親から受け継いだマニュレットの反逆のはじまりだった。
わたしがお屋敷を去った結果
柚木ゆず
恋愛
両親、妹、婚約者、使用人。ロドレル子爵令嬢カプシーヌは周囲の人々から理不尽に疎まれ酷い扱いを受け続けており、これ以上はこの場所で生きていけないと感じ人知れずお屋敷を去りました。
――カプシーヌさえいなくなれば、何もかもうまく行く――。
――カプシーヌがいなくなったおかげで、嬉しいことが起きるようになった――。
関係者たちは大喜びしていましたが、誰もまだ知りません。今まで幸せな日常を過ごせていたのはカプシーヌのおかげで、そんな彼女が居なくなったことで自分達の人生は間もなく180度変わってしまうことを。
17日本編完結。4月1日より、それぞれのその後を描く番外編の投稿をさせていただきます。
聞き分けよくしていたら婚約者が妹にばかり構うので、困らせてみることにした
今川幸乃
恋愛
カレン・ブライスとクライン・ガスターはどちらも公爵家の生まれで政略結婚のために婚約したが、お互い愛し合っていた……はずだった。
二人は貴族が通う学園の同級生で、クラスメイトたちにもその仲の良さは知られていた。
しかし、昨年クラインの妹、レイラが貴族が学園に入学してから状況が変わった。
元々人のいいところがあるクラインは、甘えがちな妹にばかり構う。
そのたびにカレンは聞き分けよく我慢せざるをえなかった。
が、ある日クラインがレイラのためにデートをすっぽかしてからカレンは決心する。
このまま聞き分けのいい婚約者をしていたところで状況は悪くなるだけだ、と。
※ざまぁというよりは改心系です。
※4/5【レイラ視点】【リーアム視点】の間に、入れ忘れていた【女友達視点】の話を追加しました。申し訳ありません。
もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました
柚木ゆず
恋愛
《もうすぐアンナに婚約の破棄を宣告できるようになる。そうしたらいつでも会えるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ》
最近お忙しく、めっきり会えなくなってしまった婚約者のロマニ様。そんなロマニ様から届いた私アンナへのお手紙には、そういった内容が記されていました。
そのため、詳しいお話を伺うべくレルザー侯爵邸に――ロマニ様のもとへ向かおうとしていた、そんな時でした。ロマニ様の双子の弟であるダヴィッド様が突然ご来訪され、予想だにしなかったことを仰られ始めたのでした。
妹さんが婚約者の私より大切なのですね
はまみ
恋愛
私の婚約者、オリオン子爵令息様は、
妹のフローラ様をとても大切にされているの。
家族と仲の良いオリオン様は、きっととてもお優しいのだわ。
でも彼は、妹君のことばかり…
この頃、ずっとお会いできていないの。
☆お気に入りやエール、♥など、ありがとうございます!励みになります!
※本作品をAIの学習教材として使用することを禁じます。
※無断著作物利用禁止
困った時だけ泣き付いてくるのは、やめていただけますか?
柚木ゆず
恋愛
「アン! お前の礼儀がなっていないから夜会で恥をかいたじゃないか! そんな女となんて一緒に居られない! この婚約は破棄する!!」
「アン君、婚約の際にわが家が借りた金は全て返す。速やかにこの屋敷から出ていってくれ」
新興貴族である我がフェリルーザ男爵家は『地位』を求め、多額の借金を抱えるハーニエル伯爵家は『財』を目当てとして、各当主の命により長女であるわたしアンと嫡男であるイブライム様は婚約を交わす。そうしてわたしは両家当主の打算により、婚約後すぐハーニエル邸で暮らすようになりました。
わたしの待遇を良くしていれば、フェリルーザ家は喜んでより好条件で支援をしてくれるかもしれない。
こんな理由でわたしは手厚く迎えられましたが、そんな日常はハーニエル家が投資の成功により大金を手にしたことで一変してしまいます。
イブライム様は男爵令嬢如きと婚約したくはなく、当主様は格下貴族と深い関係を築きたくはなかった。それらの理由で様々な暴言や冷遇を受けることとなり、最終的には根も葉もない非を理由として婚約を破棄されることになってしまったのでした。
ですが――。
やがて不意に、とても不思議なことが起きるのでした。
「アンっ、今まで酷いことをしてごめんっ。心から反省しています! これからは仲良く一緒に暮らしていこうねっ!」
わたしをゴミのように扱っていたイブライム様が、涙ながらに謝罪をしてきたのです。
…………あのような真似を平然する人が、突然反省をするはずはありません。
なにか、裏がありますね。
【完結】婚約者は私を大切にしてくれるけれど、好きでは無かったみたい。
まりぃべる
恋愛
伯爵家の娘、クラーラ。彼女の婚約者は、いつも優しくエスコートしてくれる。そして蕩けるような甘い言葉をくれる。
少しだけ疑問に思う部分もあるけれど、彼が不器用なだけなのだと思っていた。
そんな甘い言葉に騙されて、きっと幸せな結婚生活が送れると思ったのに、それは偽りだった……。
そんな人と結婚生活を送りたくないと両親に相談すると、それに向けて動いてくれる。
人生を変える人にも出会い、学院生活を送りながら新しい一歩を踏み出していくお話。
☆※感想頂いたからからのご指摘により、この一文を追加します。
王道(?)の、世間にありふれたお話とは多分一味違います。
王道のお話がいい方は、引っ掛かるご様子ですので、申し訳ありませんが引き返して下さいませ。
☆現実にも似たような名前、言い回し、言葉、表現などがあると思いますが、作者の世界観の為、現実世界とは少し異なります。
作者の、緩い世界観だと思って頂けると幸いです。
☆以前投稿した作品の中に出てくる子がチラッと出てきます。分かる人は少ないと思いますが、万が一分かって下さった方がいましたら嬉しいです。(全く物語には響きませんので、読んでいなくても全く問題ありません。)
☆完結してますので、随時更新していきます。番外編も含めて全35話です。
★感想いただきまして、さすがにちょっと可哀想かなと最後の35話、文を少し付けたしました。私めの表現の力不足でした…それでも読んで下さいまして嬉しいです。