元平民の義妹は私の婚約者を狙っている

カレイ

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雲行き

 ヴィヴィの言葉にエミーヌは心の中で深いため息をついた。

「私だって、ロバート様と仲良くなりたいですっ。そりゃあ、お姉様は美しくて勉強も出来るし完璧だからロバート様から好かれるのは当たり前ですけど、私も頑張って勉強したりしてロバート様に近づけるように頑張っているんですっ」

 どう聞いても、ヴィヴィが完全にロバートを好きになっていることは明白だ。
 薄々気づいていたことではあるが、まさかこれほどまでヴィヴィがロバートを好いているとは思わなかった。
 でもロバートはエミーヌの婚約者だ。

「あまり近づきすぎても、貴方とロバートの恋仲を疑われたりなんかすると大変なので、必要ないかと」
「なんでそんな冷たいこと言うんですかっ。私には確かに平民っていう弊害がありますけど、近づくななんて酷いですっ!」

 近づくな、なんて言っていない。ただ仲良くする必要はないと言っただけだ。
 ほんと、つくづく勝手に解釈するわよね。
 エミーヌはだんだん腹立ちを覚えてきた。
 少なからずロバートについてのことになると、エミーヌは内心冷静ではいられない。

「貴方は自分の気持ちを押し付け過ぎです。もっとロバートの気持ちを尊重すべきですわ」
「平民上がりだから、私の気持ちは必要ないってことですね。なんで私ばっかり……ただ、仲良くしたいだけなのに、それすら叶わないなんてっ」

 ヴィヴィは泣きじゃくりながら、勢いよく私の部屋を飛び出して行った。
 ヴィヴィの勘違いの酷さにエミーヌは放心状態になっていた。
 エミーヌは相手にしないようにと気を付けていたのに、ついカッとなってヴィヴィに口走ってしまった。

「はぁ」

 エミーヌの口から漏れるのはため息ばかりで気分は最悪だった。
 でも、これだけでは騒動は終わらない。
 ヴィヴィから話を聞いたのだろうか、扉を勢いよくバタンと開ける音がして、今度は父の怒りたった姿が現れる。
 そして大股でエミーヌの元まで近づくと、その勢いのままエミーヌの頬に大きく拳を振るわせた。

「きゃっ!」

 エミーヌ付きの侍女がその光景を見て、小さく悲鳴を上げる。
 まだ手のひらだったらマシだったのに……。
 エミーヌは抵抗する暇もなくただされるがままにぶたれ、そして次の瞬間には地面に体を強く打ちつけた。

「ヴィヴィに何を言った!まさかお前がヴィヴィを泣かせるほど恨んでいるとは」

 エミーヌは言い返さなかった。
 ぶたれたことによるショックと父への恐怖、そして諦めに、痛みで余裕がないこと。エミーヌはこの瞬間、完全に父のことを「家族」と思わなくなった。

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