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私は戻らない
しおりを挟む「カレンが……王太子様と婚約破棄?」
何故、そんなことに。
私が去った時はカレンも王太子もあんなに嬉しそうに婚約を結んでいたというのに。
「カレンはニ週間前、この国を来訪した砂漠の国の王に見染められ、殿下との婚約破棄を我々に任せて、この国を旅立った」
「ええ、あと少しで結婚式だったのに!急に運命の人を見つけたとか言って、ホイホイついて行ってしまったの!」
元お母様が手で顔を覆って泣き出しました。元お父様も苦しそうに顔を歪めています。
「一方的に婚約を破棄した我々公爵家は今、王家側から大量の慰謝料を求められている。それと同時に爵位剥奪も話に上がっているらしい」
「あんなに大切に育てたのに、こうもあっさり捨てられるなんて酷すぎるわ!」
「私たちの本当の娘はカレンではなくお前だったのだ。私たちがずっとカレンに騙されていたことに、今更ながら気づいた」
「今までごめんなさい、ステラ。戻ってきてちょうだい。また家族になって今度こそ幸せになるのよ」
何を、都合の良いことを。
こんなことを言われても、私の心は全くと言っていいほど動きません。
何が自分たちはずっと騙されていたですか。戻ってきて欲しいですか。
自分たちの過ちを認めない者に寄り添うほど、私も愚かではないです。
「お断りします。お帰り願います、公爵、公爵夫人」
「そんな……っ!頼れる人はもう貴方しかいないのよ。召使い達を雇う余裕はもうないし、貴方が私たちの世話をしてくれないと困るわ。親孝行だと思ってやって頂戴!」
「ああ。身の回りの世話だけでなく、お前には働きにも出てもらわないとだしな」
ついポロッと元両親が本音を口にしました。
やっぱり、私への愛なんてかけらもない。
話を聞いて余計にそう感じました。
何故私が両親のためにそんなことをしなければならないのでしょう。それに親孝行と言っておりますが、もう私の籍は公爵家から外れています。
「私はもう貴方たちの娘でも何でもありません。ただの平民ごときです」
「やだ、その言葉は貴方に使ったんじゃないわよ、そこの二人に……」
「どちらにせよ、私が貴方たちに従うことは絶対にないです」
私がはっきりとした意志を述べると、今度は急に元両親の態度が変わります。
「こっちが下手に出れば良い気になりやがって、出来損ないが」
「お前の平民になりたいって願いを叶えてやったんだから、次はお前が私たちの願いを叶える番なのよ」
それでも私は静かに首を横に振りました。
私の反応に元お父様は目を釣り上げ、そして大きく手を振り上げました。
殴られる……!
思わず目を瞑りましたが、いつまで経っても痛みがありません。
恐る恐る瞼を開けると誰かがお父様の手首を掴んでいるのが見えました。
「……もう、その辺にしてください」
庇ってくれたのは、私を拾い雇ってくれたこの店の店主シドさんでした。
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