平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ

文字の大きさ
8 / 27

現れた両親

しおりを挟む
 なぜここに……。
 今さら何の理由があって私に会いに来たのでしょうか。ニ年前は私をいらない子だとばかり罵ってきましたのに。

「ステラ、久しぶりね。会いたかったわ!」
「ああ。しかしなかなか時間が無くてな」

 不自然な笑みを顔に貼り付けて、かつての両親は私の元まで歩み寄って来ました。今まで冷たい視線ばかり浴びせられていた私にとって、それは不気味以外のなにものでもありません。
 ……怖い。
 私は素直に恐怖を感じました。
 彼らは何を企んでこんなところにまで来たのでしょう。私の周りの人々にも彼らは危害を加えるのでしょうか。
 様々な憶測が脳を飛び交います。どうしても嫌な方向に想像してしまうので、自然に手足が震えてきました。
 人間、いざ恐怖に直面するとこうも体が自由に動かせなくなるものなんですね。
 固まる私の異変に気づいたのか、先程の常連客さん二人が私ともと両親の間に割り込んでくれました。

「ちょっと、平民ごときが、何の権利があって私たちの邪魔を」
「無礼だぞ、平民!」

 元両親はお二人にどなりつけます。しかしお二人は全く怯むこともなく、むしろ呆れ顔で肩をすぼめました。

「全く、お貴族様っていうのは血の気が多いなぁ。そんな状態でステラちゃんを渡すわけがねぇだろ。絶対にどかねぇからな」
「ああ。何か話すことがあんならな、俺たちを通してステラちゃんに話してくれ」
「無礼な……っ!平民は口の聞き方がなってない!」
「いや、敬語くらいさすがに平民でも使えるぜ。だがな、あんたらは敬語を使うほどの相手でもねぇからさ」
「さっさと要件を済ませて帰ってくれ」

 元両親はお二人を退かすことを諦めます。でも負けたなんてプライドの高い彼らは絶対に認めません。

「貴方、相手にするだけ無駄ですわ」
「ああ、そうだな。私としたことが、平民と対等に張り合おうとするとは……危なかった」

 どこまでも失礼な人たち。
 何だか、大事な人たちを貶されているのに彼らに守られている自分が情けないです。私がいるから引き起こされた騒動なのに、私が逃げてどうするんですか。
 ……大丈夫です、今の私には居場所があるのですから。きっと追い返してみせます。
 私の思いが伝わったのか、お二人はそれ以上動きませんでした。
 意を決して私はお二人の背中から出て両親の元まで歩きました。彼らの顔がパァッと明るくなります。

「ステラ!やっぱり私たちの子ね。平民なんかに騙されないで出てきてくれるって信じていたわよ」
「おお、少し痩せたか?辛かったろうに。これからはまた屋敷で仲良く暮らそうな」

 ……今さら何を仲良くするんですか。貴方たちの本性を知っている以上仲良くなんて出来るはずがない。

「お断りです。さっさとカレンの元へお帰りになってください。カレンが王太子妃になる日ももうすぐでしょう?」
「「…………」」

 私がそう言うと、何故か元両親は黙りこくってしまいました。そしてお父様が重々しく口を開かれたのです。


「カレンなら、王太子との婚約を破棄してこの国を去った」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

【完結】婚約者に忘れられていた私

稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」  「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」  私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。  エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。  ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。  私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。  あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?    まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?  誰?  あれ?  せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?  もうあなたなんてポイよポイッ。  ※ゆる~い設定です。  ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。  ※視点が一話一話変わる場面もあります。

誰にも信じてもらえなかった公爵令嬢は、もう誰も信じません。

salt
恋愛
王都で罪を犯した悪役令嬢との婚姻を結んだ、東の辺境伯地ディオグーン領を治める、フェイドリンド辺境伯子息、アルバスの懺悔と後悔の記録。 6000文字くらいで摂取するお手軽絶望バッドエンドです。 *なろう・pixivにも掲載しています。

「義妹に譲れ」と言われたので、公爵家で幸せになります

恋せよ恋
恋愛
「しっかり者の姉なら、婚約者を妹に譲ってあげなさい」 「そうだよ、バネッサ。君なら、わかるだろう」 十五歳の冬。父と婚約者パトリックから放たれた無慈悲な言葉。 再婚相手の連れ子・ナタリアの図々しさに耐えてきたバネッサは、 その瞬間に決意した。 「ええ、喜んで差し上げますわ」 将来性のない男も、私を軽んじる家族も、もういらない。 跡継ぎの重責から解放されたバネッサは、その類まれなる知性を見込まれ、 王国の重鎮・ヴィンセント公爵家へ嫁ぐことに。 「私は、私を一番に愛してくれる場所で幸せになります!」 聡明すぎる令嬢による、自立と逆転のハッピーエンド。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

〖完結〗では、婚約解消いたしましょう。

藍川みいな
恋愛
三年婚約しているオリバー殿下は、最近別の女性とばかり一緒にいる。 学園で行われる年に一度のダンスパーティーにも、私ではなくセシリー様を誘っていた。まるで二人が婚約者同士のように思える。 そのダンスパーティーで、オリバー殿下は私を責め、婚約を考え直すと言い出した。 それなら、婚約を解消いたしましょう。 そしてすぐに、婚約者に立候補したいという人が現れて……!? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話しです。

心を失った彼女は、もう婚約者を見ない

基本二度寝
恋愛
女癖の悪い王太子は呪われた。 寝台から起き上がれず、食事も身体が拒否し、原因不明な状態の心労もあり、やせ細っていった。 「こりゃあすごい」 解呪に呼ばれた魔女は、しゃがれ声で場違いにも感嘆した。 「王族に呪いなんて効かないはずなのにと思ったけれど、これほど大きい呪いは見たことがないよ。どれだけの女の恨みを買ったんだい」 王太子には思い当たる節はない。 相手が勝手に勘違いして想いを寄せられているだけなのに。 「こりゃあ対価は大きいよ?」 金ならいくらでも出すと豪語する国王と、「早く息子を助けて」と喚く王妃。 「なら、その娘の心を対価にどうだい」 魔女はぐるりと部屋を見渡し、壁際に使用人らと共に立たされている王太子の婚約者の令嬢を指差した。

誤解なんですが。~とある婚約破棄の場で~

舘野寧依
恋愛
「王太子デニス・ハイランダーは、罪人メリッサ・モスカートとの婚約を破棄し、新たにキャロルと婚約する!」 わたくしはメリッサ、ここマーベリン王国の未来の王妃と目されている者です。 ところが、この国の貴族どころか、各国のお偉方が招待された立太式にて、馬鹿四人と見たこともない少女がとんでもないことをやらかしてくれました。 驚きすぎて声も出ないか? はい、本当にびっくりしました。あなた達が馬鹿すぎて。 ※話自体は三人称で進みます。

【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。

凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」 リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。 その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。 当然、注目は私達に向く。 ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた── 「私はシファナと共にありたい。」 「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」 (私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。) 妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。 しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。 そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。 それとは逆に、妹は── ※全11話構成です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。

処理中です...