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最後の晩餐
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…父の余命が宣告されてから、体調の良い日は、病院近くに住んでいた末弟が、外に連れ出してくれていた。
完全看護の病院に泊まる施設や設備も無く、私は日帰りするかホテル泊になるので、その日の状況に応じて、対応していた。
そんなある日。
父が久しぶりに、嬉しそうに私を迎えてくれた。
「いつもすまんなぁ、お前も自分の家庭と仕事有るのに、こんな所まで通ってもろて」
「そんな事気にせんでよ、お父さんに逢いたくて来てるんやから」
そう話してると、徐に、
「この前なぁ、末弟と実家へ様子見に行きがてら、鰻食べてきたんや、美味かったでぇ」
病院食をかなりの量残していた父が、いきなり鰻?
ビックリして、よくよく聞いてみると、
「本当に行ってみたかった店は、定休日でな、仕方なしに入った店が、こりゃまた美味かったんや、食べきれんかったけどな」
と、満面の笑み。
「良かったなぁ、末弟に感謝やね」
「おお、そうやな。それとな、末弟が、こっちで一緒に暮らそって準備してくれたんや。この街やったら、通院も楽やしな」
父のあんなに嬉しそうな顔を見たのは、後にも先にもあの時だけだった。
宣告を受けた人間に、将来の夢を見せる事の出来る末弟が、羨ましくも有り、有難くも有り、妬ましくも有った。
それでも、父のこれからの実生活の事を思うと末弟の決断が正しいのだということは、解ってる。
だから、その時の私には、父に
「良かったね、退院後も安心して暮らせるね」
と、言うしか出来なかった。
次に病院へ行った時には、末弟が仕事が休みだとかで、病室に居て、父の体調もかなり良いと言う事で、外出許可が出たらしく。
「久しぶりに水入らずで、美味しい昼飯食べに行こか」
との父の号令の元、病院近くの高級和牛レストランへ。
お腹がビックリしないの?と、いう私の心配も他所に、2人はメニュー表とにらめっこ。
…多分、これが、3人で摂れる最後の食事なんだろうなと、心の奥から聞こえてくる声を無視して、会食を楽しんだ。
完全看護の病院に泊まる施設や設備も無く、私は日帰りするかホテル泊になるので、その日の状況に応じて、対応していた。
そんなある日。
父が久しぶりに、嬉しそうに私を迎えてくれた。
「いつもすまんなぁ、お前も自分の家庭と仕事有るのに、こんな所まで通ってもろて」
「そんな事気にせんでよ、お父さんに逢いたくて来てるんやから」
そう話してると、徐に、
「この前なぁ、末弟と実家へ様子見に行きがてら、鰻食べてきたんや、美味かったでぇ」
病院食をかなりの量残していた父が、いきなり鰻?
ビックリして、よくよく聞いてみると、
「本当に行ってみたかった店は、定休日でな、仕方なしに入った店が、こりゃまた美味かったんや、食べきれんかったけどな」
と、満面の笑み。
「良かったなぁ、末弟に感謝やね」
「おお、そうやな。それとな、末弟が、こっちで一緒に暮らそって準備してくれたんや。この街やったら、通院も楽やしな」
父のあんなに嬉しそうな顔を見たのは、後にも先にもあの時だけだった。
宣告を受けた人間に、将来の夢を見せる事の出来る末弟が、羨ましくも有り、有難くも有り、妬ましくも有った。
それでも、父のこれからの実生活の事を思うと末弟の決断が正しいのだということは、解ってる。
だから、その時の私には、父に
「良かったね、退院後も安心して暮らせるね」
と、言うしか出来なかった。
次に病院へ行った時には、末弟が仕事が休みだとかで、病室に居て、父の体調もかなり良いと言う事で、外出許可が出たらしく。
「久しぶりに水入らずで、美味しい昼飯食べに行こか」
との父の号令の元、病院近くの高級和牛レストランへ。
お腹がビックリしないの?と、いう私の心配も他所に、2人はメニュー表とにらめっこ。
…多分、これが、3人で摂れる最後の食事なんだろうなと、心の奥から聞こえてくる声を無視して、会食を楽しんだ。
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