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4枚のチケットには絵だけで文字が書いていなかったから、イズール一人では会場にたどり着くこともできなかっただろう。
なるべく丁寧に髪を整え、化粧をして、なんだかんだ迷って落ち着く灰色の地味な街着を選んだ。
チケットのお礼に昼食をと言われて、だいぶ早めに待ち合わせたアドルがイズールの姿を見て慌てる。
アドルは礼服を着ていた。
「その服装だと入れないよ。この前の劇場だから」
国一番の歌劇場か!
「ドレスに着替えてくるわ。先に入っていて」
「いや、近いから俺のよく行く店に頼もう」
面倒見のいい人である。
いや、誰だって連れてゆく女性が貧相なのはイヤだろう。
北門近くの歴史のありそうな大きな店に飛び込むと、アドルが店員に事情を説明してくれた。
ドレスを買いたいと言っている。
それはもらいすぎである、と焦っていると奥から白髪の男が出てきた。
「王族もいらっしゃいませんし、今日の公演ならば小物を加えればその服で充分でございますよ。生地も縫製も素晴らしいものです」
二人でびっくりした。
番頭だという彼は艶のある明るい紺のレースのストールをふわりとまとわせてくれる。
ちょうど手持ちがあったので、アドルが番頭と相談しているうちにお金を払ってしまう。
だいぶ高かった。痛い出費である。
番頭はさらに歩きやすい金色の靴と金色のバッグを渡してくれた。
「サリラ様のお気に入りの一着でしたね?あの方はこういう目立たない贅沢をして遊ぶのがお好きですが、若い方が着ていると新鮮ですね」
分かる人には分かってしまうのである。
しかし自分の服はもうサリラのおさがりばかりだ。
余計な出費はしたくないし、気に入って大事にしている服ばかりだし、着続けるしかない。
「よく、セイラン様とネリー様と女性向けのお店にいらしておいでですね?よろしければ今後は当店もごひいき下さい」
街の情報網はおそろしい。
いや、最近の私たちは確かに目立っていた、と反省する。
靴とバッグの代金を店の人に渡そうとすると、アドルは困った顔をした。
「チケットのお礼にならないよ」
なるほど、良く分からないがあのチケットには価値があったのだった。
ありがたく払っていただく。
「これを彼女のどこにつけたらいいだろう?」
アドルが胸元からピンを抜いて番頭にたずねた。
竜の小さな紋章が彫ってある。
きれいだな、これが例のピンか、とのんきに見ていると、
「一番目立たせるにはストールをまとめて胸元に止めればいいと思いますよ」
と、言われ、アドルがつけてくれた。
かがんだアドルのつむじを見下ろして、なでたいな、と思ったのである。
なるべく丁寧に髪を整え、化粧をして、なんだかんだ迷って落ち着く灰色の地味な街着を選んだ。
チケットのお礼に昼食をと言われて、だいぶ早めに待ち合わせたアドルがイズールの姿を見て慌てる。
アドルは礼服を着ていた。
「その服装だと入れないよ。この前の劇場だから」
国一番の歌劇場か!
「ドレスに着替えてくるわ。先に入っていて」
「いや、近いから俺のよく行く店に頼もう」
面倒見のいい人である。
いや、誰だって連れてゆく女性が貧相なのはイヤだろう。
北門近くの歴史のありそうな大きな店に飛び込むと、アドルが店員に事情を説明してくれた。
ドレスを買いたいと言っている。
それはもらいすぎである、と焦っていると奥から白髪の男が出てきた。
「王族もいらっしゃいませんし、今日の公演ならば小物を加えればその服で充分でございますよ。生地も縫製も素晴らしいものです」
二人でびっくりした。
番頭だという彼は艶のある明るい紺のレースのストールをふわりとまとわせてくれる。
ちょうど手持ちがあったので、アドルが番頭と相談しているうちにお金を払ってしまう。
だいぶ高かった。痛い出費である。
番頭はさらに歩きやすい金色の靴と金色のバッグを渡してくれた。
「サリラ様のお気に入りの一着でしたね?あの方はこういう目立たない贅沢をして遊ぶのがお好きですが、若い方が着ていると新鮮ですね」
分かる人には分かってしまうのである。
しかし自分の服はもうサリラのおさがりばかりだ。
余計な出費はしたくないし、気に入って大事にしている服ばかりだし、着続けるしかない。
「よく、セイラン様とネリー様と女性向けのお店にいらしておいでですね?よろしければ今後は当店もごひいき下さい」
街の情報網はおそろしい。
いや、最近の私たちは確かに目立っていた、と反省する。
靴とバッグの代金を店の人に渡そうとすると、アドルは困った顔をした。
「チケットのお礼にならないよ」
なるほど、良く分からないがあのチケットには価値があったのだった。
ありがたく払っていただく。
「これを彼女のどこにつけたらいいだろう?」
アドルが胸元からピンを抜いて番頭にたずねた。
竜の小さな紋章が彫ってある。
きれいだな、これが例のピンか、とのんきに見ていると、
「一番目立たせるにはストールをまとめて胸元に止めればいいと思いますよ」
と、言われ、アドルがつけてくれた。
かがんだアドルのつむじを見下ろして、なでたいな、と思ったのである。
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