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2 一緒に……
しおりを挟むアイツは、硬派なスポーツマン女子のわたしと違って、フワフワ活動するエンジョイ勢だ。そして非常に人気者だ。
「蓮くんおはよー! 昨日もサイコーだったよぉ」
「蓮っ、わたしも見たからねっ」
「イタイタちゃんねる、中学校になっても続けるの? 絶対視るからね~!」
主な話題はアイツの黒歴史にしかならないであろう微妙なチャレンジ動画【イタイタちゃんねる☆】について。最初は文字通り痛すぎる内容に引く人続出だったけど、本人が堂々としているから皆もそれがいつの間にか楽しくなったみたいだ。わたしは最初から微笑ましかったけどね!
こんなアイツが、このまま2つの小学校区が合わさる中学校に通い始めたら―――
まずいわ、うん。ライバル激増の可能性しか見えないわ……
彼に声を掛けた女子たちが、わたしのところにスッと寄ってくる。
「蓮くんってカッコいいよね」
「聞いて! 笑ってくれたの!」
今朝の対・蓮、好感触報告を彼女たちから受けるのは、いつもの流れだ。寄って来るのは、わたしと同じスポ小仲間で、気心は知れている……。ニコニコ顔で蓮への好感を、わたしに報告するのは何故に!? そんなの聞かされても、胸が苦しいだけなんだけど!
けどだからって、告白なんて出来ないし。お隣同士だもん、万が一……困った顔でもされたら、それだけで毎日が気まずくなっちゃう。はうぅぅ……悩ましいわ!
そんな風に考え事をしつつ歩いていたのが悪かったんだろう。
「環奈! 横! 」
「えっ」
レアすぎる、登校中にわたしに向けた蓮の声。どきっと胸が弾んで、ぱっと顔を向ける。
目に飛び込んできたのは、期待とは違う、切羽詰まった険しい表情の蓮で。
けどこちらに向かって伸ばされた手に、やっぱりちょっと、ときめいて。
ブブ――なんてがなり声めいたトラックのクラクションに聴覚が占領される。そんな中、前を歩く4年生の弟が、音の主の方向に顔を向けたまま硬直する。
「危ない!!」
ジャンプキャッチするみたいに、全身のバネを使って横っ飛びしながら、弟のランドセルを思い切り押しやる。弟に押されてその前の子たちも、この危険地帯から遠ざけられたみたいだった。
――よかった。
と思った瞬間、横からワケの分からない衝撃が来て
世界は暗転した。
一緒に居られて嬉しいって、それだけでも伝えればよかった。
せめて一言……
―――――― 一緒に……
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