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9 集団女子の口撃はえぐいのだ
しおりを挟むこの体は王子様のはずなのに、何でこんなに侮られるんだろう。そんな憤りと、極限が迫った心理状態がわたしの腹……じゃなく背中を押す!
「けどね、あと10年経ったらみてなさい! 衰えていく大人と違って、子供のわたしは成長するから! それできっと、わたしが勝つから! ううん、この身体はしっかり鍛えられてるもの、あと5年ってとこね!!」
「なっ、なんだと!? 愚弄だ! 決闘だ!!」
「ふざけんな! 言葉じゃなくて手が出るのは敗けを認めるようなものですー! わたしは5年後って言ったんですがぁ? 頭の方は全っ然、鍛え足りないんじゃないんですかぁ?」
スポ少女子チームの集団生活で揉まれた女子の口撃を舐めるな! スポーツとは言え勝敗のある活動、自然と運動能力だけでなく言葉だって鍛えられていく。脳筋おじさんになんて負けない。
『 ふふっ……あははは! スッキリしたよ。君は強いな 』
頭の中で少年の笑い声が響き渡る中、大男は真っ赤な顔をして「邪魔だけはしないでいただきたい!」と捨て台詞を吐いて立ち去って行った。訓練場の人たちが驚いた表情でこちらを見ていたけど、まぁ、気にしたら負けよ。
そして、また一つ分かったことがある。このコルネリウス王子は、お兄さんたちと比べられた末に、期待に及ばずと見放され、放置され、虐げられていたらしい。
わたしの中の王子様は、今の一件で心を許してくれたのか、そんな身の上話を少しづつ聞かせてくれるようになった。魔力量と高火力魔法は長男に叶わない。体力と剣の腕は次男に遠く及ばない。だから、王太子レースに勝てる見込みが無いとして、親兄弟をはじめ、周囲からも軽んじられていたってことだった。
だから、無理をして熱中症になるくらい稽古をしていたなんて! 不憫すぎて助けてあげたくなる。って云うか、今はわたし自身のことだ。今後快適な生活を送るためにも待遇改善を目指して、ちょっとづつでも問題を解決……って、わたし何か忘れてない―――あ!!
「トイレっ」
『 えっ!! 』
パタパタと廊下を全力疾走し、ようやく着いたトイレと思しき場所。個室に入り、ズボンに手を掛けたところで―――手が動かなくなった。
『 いくらなんでも駄目だから―――!!! 』
「でもっ」
言い掛けたところで、頭をガンッと殴られた様な衝撃に襲われ……
『 んなもんみるんじゃね――――!! 』
聞きなれた別の声が頭の中に木霊した。
そこでわたしの意識は途切れ、世界は暗転したのだった。
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