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12 強メンタル&口八丁な蓮の活躍
しおりを挟む卑怯だ。10歳そこそこの8年の差は大きい。そう言おうとしたところで、口が動かないことに気付いた。身体の主導権はまだ蓮が握っているみたいだ。
「どうでしょうか? 10歳のあどけなさの残る幼気な美少年を、18歳の成人男性と変わらない鍛えられた青年が一方的に嬲る様子を想像してみてください。綺麗な女性の前で言うのもなんですが、とんでもない倒錯趣味な男だと勘違いされるか、恐ろしい鬼畜だと白い目で見られるか……。いえ、純粋に教育だと思う人も居るでしょうけど」
蓮は、にっこりと微笑みながらリビアンに気遣わし気な視線を送る。すると、彼女もその状況を想像してしまったのか、顔を引き攣らせてトンスラとわたしを交互に見る。
「まぁ、俺が剣も握らずに泣き叫んで走り回ってみせないかぎり、そんな勘違いを誘発する状況にはならないでしょうけど。……ただ、心配ではあるんですよ? 俺は剣の訓練もまともに受けちゃいませんから、いつ手から剣が滑り落ちてしまうのか分からないし、幼いですから、いつパニックに陥って泣き叫んでしまうか分からない」
「コルネリウス、お前……一人前に私を脅す気か」
余裕の笑みが崩れたトンスラ王子の鋭い目が、ギロリとわたしを捉える。怒りを含んだ声音に、わたしなら手が震えそうだけれど、強メンタルな蓮は動じない。更ににこやかな表情をつくって、あざとく小首を傾げてみせる。
「嫌だなぁ、大きな大人のお兄さんを前にして、俺みたいな庇護欲をそそる少年が、そんな恐ろしいことなんて出来っこないですよー。ろくに教師もついていない末っこ王子だって皆が知っているんですから、計画的にお兄さんを嵌めるような真似ができるなんてそんなこと……―――わざとだとは誰も思いませんよね」
最後だけ声を潜めた。
「ちっ! もう良い!! 帰れ! 今後も騎士団の邪魔をするな」
トンスラ王子が言い放って、執務室の話はお開きとなった。同席していた王様は、最初から最後まで探る様にこちらを見ていたけど、結局何も言われないままだった。
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