独占欲強めの最高神は、モブ娘からの一途な愛をお望みです!

弥生ちえ

文字の大きさ
103 / 237
第2章 火龍・水龍 編

第104話 【閑話】乙女ゲームの攻略対象は、小箱とモブ少女にやきもきが止まりません! 前編

しおりを挟む

 ドリアーデ辺境伯邸の豪奢な館が、早朝の仕事を済ませた使用人らの寛いだ空気に包まれるひと時。

 草抜きを小休止した庭師の老爺が、喉を潤そうと木陰に向かう。その側を、黒髪の少女が網籠を小脇に抱えて駆け抜けて行った。

 ここ最近、連日見掛けるようになったその姿に、ドリアーデ辺境伯嫡男であるエドヴィンの目は自然と引き寄せられた。

 三階の自室の窓から見下ろす彼は、彼女の行動に気付いてからと言うもの、いつも決まってこの場所でその様子を目で追うようになってしまった。

 少女の名はレーナ。黒髪黒目、肩に付く長さのおかっぱ髪を軽やかに揺らし、簡素なワンピースに身を包んでいる。エドヴィンと同じ14歳だが、彼女にはなんと18歳まで生きた前世の記憶があるらしい。そんな話を打ち明けてもらえるほどには、打ち解けたつもりだった。

『あら、レーナったらまたあの子に会いに行くのね。ここのとこ毎日よね』

 エドヴィンの肩の上から、呆れた調子の少女の声が響く。

「ご先祖様……、レーナとアイツは、ただの幼馴染みだと彼女からは聞いています」

 やや傷付いた面持ちで声の主に顔を向ければ、彼の肩にちょこんと座った少女も、仏頂面で視線を返す。全身が薄緑の光に包まれた、エドヴィンの膝までほどの身長しかない彼女は、この土地の守り神である聖霊姫ドライアドの分体だ。

『もぉぉっ!! よびかた! それでホントに乙女ゲームの攻略対象なの!? 全っ然、乙女心が分かってないんだからっ。そんなだから、あの赤髪に後れを取るんでしょ!?』

「んなっ!?」

 そう、この世界はレーナが前世でプレイしていた乙女ゲームの世界で、エドヴィンは6人居る攻略対象のひとりなのだ。因みに『赤髪』こと、アルルクという少年もそれに含まれている。

「赤髪と私が、何故張り合わなければならないのですか!? 変な勘違いは止めていただきたい!」

『はーん? 素直じゃないわねぇ。あたしはね、愛する男の子孫である貴方の味方なのよ? 素直に言いなさいよ、レーナが気になってんでしょ』

 ニヨニヨと口元を緩ませる緑の少女のからかいに、エドヴィンの頬がカッと朱を上らせる。

「そのようなことはっ……!」

 反射的に声を荒げるも、軽やかに駆けるレーナに改めて視線を向けたエドヴィンは、ぐっと下唇を噛み締めると、あきらめた様にため息を吐いた。

「――珍しかったんだ。私達家族を見て、美術品や宝石に向けるような興味を向けるのではなく、同じ人間としてこちらを探る目を向けてくるレーナが」

『結果、気持ち悪がられたみたいだけどね。貴方たち、聖霊あたしの血を引いてるから綺麗なんだもんね。それを無意識に自認しちゃってるから、普段の仕草や表情でも、他人の心を操ろうとしちゃってんのを見透かされたのよ』

「そんなつもりはっ……!」

 遠慮無くキャラキャラと笑う緑の少女に、エドヴィンはカッとして目を剥く。だが己の内心に向き合ってみれば、あながち外れてもいない気がした。

「いや、そうなのですか?」

『あらやだ、分かってなかったの?』

 気付いていなかったのだ。こう視線を動かせば、こう唇を形作れば、相手がどんな反応を返してくるのか――確かに、想像できていた気がする。それが、レーナには通用しなかったのだ。

『効果的に使うのは結構だけど、レーナは無意識下の本心を見抜いちゃってるみたいね』

「それで、真っ直ぐ私を見てくれている気がしたんだな」

『だから、レーナが気になるんでしょ? なら負けていられないわよね』

 穏やかに励ますご先祖様・・・に視線を向ければ、彼を見守る暖かな視線に行き当たる。

「ですね」

 短く返したエドヴィンは、レーナの後を大急ぎで追い始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─

石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」 貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。 「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」 かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。 ときどき舞い込んでくるトラブル。 慌ててミーナを探しているルカ。 果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。 甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。 *サイトより転載になります。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら

渡里あずま
恋愛
転生先は、乙女ゲーの「悪役」ポジション!? このまま、謀殺とか絶対に嫌なので、絶望中のルームメイト(魂)連れて、修道院へ遁走!! 前世(現代)の智慧で、快適生活目指します♡ 「この娘は、私が幸せにしなくちゃ!!」 ※※※ 現代の知識を持つ主人公と、異世界の幼女がルームシェア状態で生きていく話です。ざまぁなし。 今年、ダウンロード販売を考えているのでタイトル変更しました!(旧題:人見知りな私が、悪役令嬢? しかも気づかずフェードアウトしたら、今度は聖女と呼ばれています!)そして、第三章開始しました! ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...