独占欲強めの最高神は、モブ娘からの一途な愛をお望みです!

弥生ちえ

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第3章 乙女ゲーム始動 編

第107話 【攻略対象 美貌の大魔法使いと王子様】不穏な視線

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 王立ダルクヴィスト貴族学院には、ベルファレア王国中から貴族の子弟が集まる。将来の縁を繋ぎ、家門により良き発展をもたらすため、当人の修学意欲よりもさらに大きな当主の期待を背負って。

 王国各地から集う子らのため、この学院には敷地内に学生寮が設えられている。一般的な家具は備え付けの物があるし、食事や洗濯など基本的な生活に関わる世話も、学院側が用意した使用人があたる。

「よし、これで全部ね!」

 だから、手持ちの荷物は着替えを押し込んだ小さなトランク一つで事足りた。

 馬車から降りて周囲を見渡したレーナの目には、同じくらいのトランクを持った者のほか、何人もの従者を伴い、いくつもの荷物を持たせた者も映る。

 各家庭で雇った専属の使用人を連れて来ることも可能なのだ。伯爵以上の家の者は、ほぼ全員が使用人を連れて来ており、使用人部屋の有る別棟の高貴ノブレス寮に入居する。

「レーナは本当にそれ一つだけだったのか!?」

「色々揃ってるもの。それに、動きやすいように身軽でいたいし」

 在学中の行動計画に心弾ませるレーナの思惑を知っているエドヴィンは、微かに口角を下げて口ごもる。

『あたしを口実にするなんて、随分不遜なヒトの子よね、レーナってば』

 不意にキャラキャラ笑いながら声を発したのは、エドヴィンの肩に腰掛けた、緑髪の小さな精霊姫プチ・ドライアドだ。

「プチドラちゃんだって、心配するシュルベルツ領の皆の反対を押し切って付いてきてるでしょ。わたしが定期的に緑の多い場所に連れ出すってことで納得してくれてるんだから」

『でもそれって、もともとレーナがやろうとしてた、あるじ様探しのついでよね』

「利害の一致による協力関係よね!」

『んもぉ、ちょーし良いんだから』

 物言いたげなエドヴィンだったが、言葉を飲み込んだらしい。リュザス探しについては、何度も実行を主張し続けてきたレーナだ。そのためにドリアーデ辺境伯の庇護を受け入れた経緯もある。

「それでも、レディ2人にそれだけの荷物で、身の回りを固める使用人も付けないとは……」

 同行した使用人に幾つもの荷物の包みやトランクを運ばせながら、エドヴィンが嘆いている。ここへ至る前にもレーナは説明していたのだが、生粋の貴族である彼は冗談だとでも受け取っていたのかもしれない。

「問題ないわ。エドのお家で鍛えてもらったから、ちょっとは身を守れるつもりよ。学院にしたって、全講義キッチリ受けなきゃならないエドと違って、わたしはプチドラちゃんのお陰で自由が利くことになってるし」

「ご先祖様とレーナに敵うものなど、いないのかもしれないが……。安全面よりも、住環境の問題を言っているんだ。もっと我が家を頼ってくれても良いのに」

 ぶつぶつと続くエドヴィンの呟きは、無視を決め込むレーナだ。使用人であっても、ドリアーデ辺境伯の息のかかった者が、ずっと側に居るのは息が詰まる。

 なぜならレーナは平凡モブ村娘なのだから。

 それに、大人しく学院卒業を待っていては、世界は終焉を迎えてしまう――かもしれない。ヒロインの立ち回りでそれが大きく遅れることになるのかもしれないが、ゲームでは世界の衰退についてスッキリ憂いの晴れるエンドは無かった。続編への布石なのかもしれないが。

 そうなる前に、レーナがやるべきことは学園生活で攻略対象との親睦を深めることではない。宝珠オーブの試練の攻略でもない。それはヒロインの仕事だ。

 レーナは、ストーリー主軸の外で、前世からの推しであるリュザスに会いたいのだ。

「学院から始まる王都生活、張り切っていくわよー!」

 元気いっぱい声を上げるレーナに、荷下ろしの行列の影から、険しい視線を向ける者がいた。推し探しに揚々と気勢を上げるレーナは、全く気付いていない。


 ――この出来事は聖女ヒロインの根幹にもかかわる事態に結びついて行くのだが、この時のレーナはそんなこと知る由もないのである。
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