独占欲強めの最高神は、モブ娘からの一途な愛をお望みです!

弥生ちえ

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第3章 乙女ゲーム始動 編

第108話 【攻略対象 美貌の大魔法使いと王子様】平凡村娘は、ご令嬢方の口撃に遭う!

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 王立ダルクヴィスト貴族学院の一日目は、以前の世界と変わらず「入学式」が執り行われた。

 学院生のほか、保護者であるお歴々が集う式典は、王子の入学年と云うこともあり、例年以上の賑わいと物々しさをみせている。

 格式高いオペラハウスを思わせる、豪奢で広大な講堂のステージ。そこでは、王子が新入生代表として、演題の向こうに立った学院長に挨拶を述べているのだが――。

『あら、あの子ったら何であの宝珠オーブの気配がするのかしら』

 レーナの膝の上に立ち上がったプチドラが、王子の姿をじっと見詰めつつ、伸び上がったり、首を傾げたりと落ち着きなく動いている。

「王子は陽の宝珠オーブのお膝元で育ってるんだから、多少気配がくっ付いていたっておかしなことじゃないでしょ? 大事な式の最中だし、とにかく落ち着いて?」

『そうじゃなくって!』

 話を打ち切ろうとしたレーナの対応が気に入らなかったのか、大声を上げたプチドラに、周囲の視線が集まる。

 新入生席で王子の挨拶を邪魔する者に向けられる視線は、恐ろしく刺々しい。

「プチドラちゃん、シーッよ?」

 モブの悪目立ちなど、ロクな目に遭うはずがない。必死にプチドラを咎めるレーナに、彼女も納得のいかない表情ではあったが、ぐっと言葉を飲み込んだようだった。








 式典が無事終わり、教室へ向かう渡り廊下。

 学院生の大半を占める貴族子弟の、滑らかで静かな動きに導かれて、少数派の平民らもぎこちないながら楚々と歩を進める。そんな中、やっと解放されたとばかりにレーナの胸に抱えられたプチドラが、彼女の腕から抜け出して、ふわりと宙へ浮かんだ。

『レーナっ、あの王子のとこに行ってくれない? さっきからずぅーーっと気になってんのよ!』

 くいくいと、背中の中ほどまで伸びた黒髪をひと房引っ張る。プチドラが、手綱よろしくレーナを曳いて行こうとしているのは、随分先を歩いている王子のところだ。

「へぁっ!? いやいや、そんな恐れ多いし。わたしは全く気にならないし!」

 入学早々メイン攻略者である王子との邂逅など、ヒロインでもないレーナには不要なイベントだ。全力で拒否する姿勢を取る。

『だって、気になるんだってば』

「わたしは気にならない。プチドラちゃん、わたしは平穏無事で学院生活を乗り越えたいの!」

『ちょっとだけ! おねがいっ! 聞いてくれなきゃ泣いちゃうんだからね!』

「それは絶対に止めて!!!」

『じゃあ、王子のところに――』



「あなた方? 恥という感情は荷物と一緒に、庶民コモン寮に置き忘れていらしたのかしら?」

 レーナとプチドラの間に、少女の鋭い声が割り込んだ。

『はぁ!?』

 突然のこちらを蔑む発言に、気色ばむプチドラを抱え込んだレーナが慌てて声の主を振り返れば、見知らぬ少女が女子の集団を伴ってこちらを睨み付けている。

「まったく。荷下ろしの時から品なく騒ぎ立てる人がいると見ていれば、予想通りこんな所でもはしたなく大声を出して……。下賤でマナーも身に付けていない者など、見苦しくて仕方ありませんわね」

立て続けに口撃を放つ先頭に立った少女は、揃いの制服を着ているにも関わらず、手入れの行き届いた肌や、艶やかな髪、上質な髪飾りが群を抜いている。先程の発言と鑑みれば、財力の有る貴族なのだと推測できた。

(これはっ……!! ひょっとしなくとも、お貴族様の逆鱗に触れちゃった!? 物語によくある、あの場面が来ちゃった!?)
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