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第3章 乙女ゲーム始動 編
第128話 【攻略対象 美貌の大魔法使いと王子様】攻略対象の顔圧が強すぎる
しおりを挟むレーナが落ちた――いや、引き摺り込まれた穴。それは、腰かけた大人がギリギリ通れる狭いパイプ状になっていた。更には、下方に向かってついた傾斜が、ウオータースライダーさながらのスピードで、レーナを地下へ勢いよく運んで行く。
入り口は、巨木の根元に出来た裂け目だった。けれど今、滑って行く隧道は、木ではなく、土中を掘削したもののようだ。
光が一切届かない場所だから、手に触れる場所の湿り気とザラつき、そして匂いから判断してのことだったけれど。
ぽわり
前方に、微かな光の点が見えて来る。
ぽわり ぽわり
どこか温かみを感じる光は、徐々に大きさを増して行く。
「あの光……カロリーナ達が見付けた象牙色の塊から出てた光と、おんなじ色をしてるわ」
『でしょうね。あの子たちの見付けたのと、同じ魔力が漂って来るもの。レーナってば、なんでいつも引き寄せちゃうのかしら』
耳の傍から、呆れ返ったプチドラの声がする。
「むぅ……。好きで厄介ごとを引き寄せてるわけじゃないわよ?」
『厄介ごとっていうか、あたしの同類のことよ』
「それって!?」
即座に平凡村娘の立場を脅かす面倒な面々に思い当たり、思わず声を上げたところで
どすん
と、尻への衝撃を受けると共に、赤茶けた光に包まれた空間に辿り着いた。結構な衝撃があったはずだが、その痛みを感じるよりも先に『同類』の言葉が示す相手と意味――そしてそれが及ぼす多大なる迷惑について、頭が占められる。
「プチドラちゃん! まさか同類って――」
「ええ、是非ともご説明願いたいものです。貴女の尋常でない状態と、関わりも有りそうですしね」
レーナの言葉に被せるように、背後から発せられたのは聞き覚えのある声だ。ギクリと身を強張らせたレーナが、そろりと振り返れば、好奇心に目を輝かせるバルザックが居る。
「先生! うぇっ、今の聞いて……」
「採点する立場である以上、手助けはいけないんですけどね。それでも好奇心に抗えず……いえ、心配のあまり貴女を助けようとしたら、一緒に落ちてしまいました。穴から面白そうな魔力も漏れ出ていましたし、まぁ、それも良いかな・と」
立場より、安全より、好奇心が勝ったのが駄々漏れている。そして、とても清々しい美麗な笑顔だ。
(くうっ! 言ってる内容はおかしいのに、キラキラしてるし! 攻略対象補正なの!?)
改めてここが乙女ゲームの世界だと実感させられる顔面チートの威力に、ウムムと眉を顰める。
「おや、教えてはいただけないのですか? 貴女の力となり、護る栄誉を私に与えてはいただけませんか? 貴女のために、私はそれだけの力を揮う覚悟がありますよ」
大人の余裕と、上品さ、そして色気まで兼ね備えたバルザックに、騎士じみたセリフを告げられる。乙女垂涎のゲームさながらのシチュエーションに、思わず【はい! お話しします!】の選択肢を探しそうになる。
――が、急に主張を始めた落下時の尻の痛みに、現実に引き戻された。
「いたたっ……! はっ! わたしはただの平凡村娘ですよ。目立ったことも、変わったところも無い、ただのレーナですわ。うふふふふ」
笑顔の圧は、同じく笑いで誤魔化そうと試みる。
「それは残念。ようやく、貴女を覆う虹色の強力な魔力の秘密を、知ることが出来ると思ったのですが」
ふぅ、と漏らされた吐息は悩まし気で、アメジストの瞳は、物憂げに細められたにもかかわらず、吸い込まれそうな輝きを放って真っ直ぐにレーナの心を射抜いてくる。
(こわ! 攻略対象の顔圧が強すぎるわ!! 平凡村娘には刺激が強すぎるのよーー!!)
心の中で絶叫していれば、肩の上のプチドラが『危機感なさすぎぃ』と呆れ返った表情で見返してくる。
そう言えば、あの長すぎる滑降スラロームの先に辿り着いたのだった――と、改めて周囲を見渡したのだった。
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