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第3章 乙女ゲーム始動 編
第129話 【攻略対象 美貌の大魔法使いと王子様】あ、あああああ、ある・まじ、ろ? アルマジロぉ!?
しおりを挟む落ちた先は、幾つもの『光る塊』を壁や天井に鏤めた、広い地下空洞となっていた。赤みを帯びた穏やかな光は、安心感をもたらしてくれる。
柱も調度もない、ただのドーム状の空間。そこは、プペ村のレーナの家がすっぽり収まる程度には広いが、教会の大聖堂や、お城のダンスホールほど広いわけでもない。程よいサイズ感の、心地の良い空間だった。
巣穴のような空洞が作り出す、落ち着きを与えられる感覚に、レーナはプチドラの言葉を思い出した。
「プチドラちゃん! もしかして、ここって同類さんの住処なの!?」
『半分正解で、半分間違いね。あいつはもう長くはなさそうだから終焉を待つ場所ってとこかしら』
さらりと告げられた言葉だが、内容の重要性にレーナは顔を青くする。
「それって、化身の誰かが消えそうってこと!?」
『そう……だか、ら……まに、あった……って』
帰って来たのはプチドラではなく、穴に引きずり込まれる前に聞こえた声だ。
『よかった、きみなら……ぼくの、あとを、まかせ……られる』
途切れ途切れの声と共に床面がグラリと揺れ、前方の床が盛り上がったかと思えば、それは動物の細長い顔となっていた。
「あ、あああああ、ある・まじ、ろ? アルマジロぉ!?」
愕然と叫ぶレーナの反応は当然のものだった。何故なら、玲於奈が12回クリアした何れの場合も、このような形態の化身は登場していない。
しかも、レーナらの降り立った空間の「床」と捉えていた場所は、土の中に巌のように丸まってじっとしている巨大なアルマジロの背――その、固い甲羅の上だったらしい。彼が身動ぎすると、床もグラリグラリと揺れるのだ。
「一体何なのですか、彼は!? いや、アルマジロ……殿、は」
レーナとアルマジロを、交互に忙しく見比べながら、バルザックが前に出る。すると、初めてバルザックの存在に気付いたアルマジロは、何かを感じ取ったのかハッとして彼を見詰め、次いで瞳を輝かせる。
『ああ、きみ、も……わるくない。うれし、い、な。ふたりも、きてくれ……た』
弱々しいながらも、嬉しくて堪らないのか、身体を揺すって笑い始める。レーナらにしてみれば、震度3の揺れに見舞われている状況だ。
(いや、勝手に話を進めないで欲しいし、この揺れも勘弁して欲しいんだけど!?)
ゆさゆさと揺れる床から、赤ん坊の握り拳サイズの『光る塊』がポンポン飛び出す。どうやら、光る正体不明の物体は、彼の衰えた甲羅が、崩れ落ちた欠片だったようだ。
『ねぇ、土のあなた。喜んでるとこ悪いけど、レーナのことはあきらめた方が良いわ』
レーナの左肩に座ったままのプチドラが、すげなく言えば、アルマジロが分かりやすく悲観に顔を歪ませる。
『なん……で、そん、な酷い……こと……を、言う、の?』
『ひどくなんかないわ。むしろ、あなたのタメね。レーナに大きな魔力を感じて期待しちゃったのは分かるんだけどぉ。手を出して良いものと、悪いものがあるわ』
言いながら、ふわりと宙に浮いたプチドラがレーナの髪をひと房手に取る。その上には、虹色の蝶の髪飾りがギラリと鋭い光を放って張り付いている。
『ひっ……』
(アルマジロさん!? 何その反応ーー! リュザス様の蝶のあるところよね!?)
『ぼっ……ぼ、ぼ、ぼっ、ぼくは、なんって、おそろ……しいことを、しようとしていたん、だ!!』
(いやいや、むしろ何をされそうになってたかってことよ! 化身の思考、怖いんだけどぉ!?)
火龍ファルークとの一件で、彼ら宝珠の化身の考え方に空恐ろしさを感じていたレーナだ。否応にも警戒心が増す。気と間の抜けたアルマジロではあるが、最高神の力を受け継いでいるのだ。
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